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第二学期試召戦争Cクラス戦 前篇
第二百三十九問
「……どうでしたか?」
「Fクラスは一、二週間以内にAクラスに攻め入る予定だそうです」
「そうですか……では代表の予想通り、幾つかの通過点を経て攻め入る予定の様ですね」
「はい……でも」
「久遠君の事なら、放っておけとの事です」
「え? ……わかりました」
「戦争の準備の方は?」
「そちらは言われたとおりに間隔をあけて、少しずつ進めています」
「わかりました。では、次は明日に」
「……はい」


時間は流れ、時は放課後。

「なんか、こうやって平和に帰れる日って久しぶりな感じがするな」
「だろうな」
「ここの所、ずっと補習だらけだったからね」

この学園はシステムの都合上、どうしても放課後の補習授業が増えてしまう。

「アンタ達は脱走しようとするから、他の人よりもさらに補習時間が多いんでしょ」
「はいはいうるさいうるさい。それよりどうする?」

と、光一がこれからについて問うてみた。

「折角だし、どっか寄って帰るか?」
「そうだな。秀頼には悪いけど、今日くらいはどっか寄って行きたい」
「僕はやめとくよ。ちょっとスーパーに寄って夕食の買い物をしていきたいからね」

雄二の提案に光一が乗ろうとするが、明久は断った。

「ふーん。今日は月曜だから、卵と肉が安かったぞ?」
「うん。だから今日はお肉にしようかなって。献立はそうだなぁ……姫路さんはぶっ!」
「すまん明久、今蚊がいたから(姫路に聞くな、バレるだろ!)」
「そっそう?(ごめん、ありがとう)」
「「「…………」」」

そのやりとりに、周囲がジトっとした目を向けた。

「おい明久、今姫路に夕食の相談しようとしてなかったか?」
「え? 今のはちょっと意見が欲しかっただけだよ?」
「だったらお前の場合、光一に聞くべきだろうが」
「女性の好みも聞いておきたかったんだろ? 一々目くじら立てる理由もないと思うがな」
「…………」

雄二は何か勘ぐるかのように、光一と明久にジト目を向けていた。

「えっと――じゃあ僕はスーパーによって帰るから、この辺でっ!」
「わ、私もちょっと用事があるので失礼しますっ!」

と言って、追及を逃れるように2人は走り出した。
残されたメンバーは……

「おい光一、お前絶対何か知ってるだろ?」

光一に追及を始めた。

「知らねえよ。そもそも人のプライベートを詮索しようとする奴に、誰が喋るか」
「ったく、面白みがねえな」
「霧島に同棲を持ちかけられてる状況で、よくそんな余裕もってられるな?」

ピキッ……

「……なぜそれを?」
「昨日お前との愛の巣の設計を頼まれたんだよ。その時にな」
「何ぃっ!? テメエ!!」
「心配しなくても、断っといたよ。今はな」
「そっそうか……って今?」
「試召戦争が終わるまではって意味だ」

この野郎……と雄二は思うが、今は我慢をしておいた。
ヘタに刺激して、翔子の家にじんせいはかばの設計にかかわらせたら、完全に人生がアウトになる。

「……一応礼は言っておく」
「一応時期が時期だから、何かありそうなら協力してやるからお前も自嘲しろ。今だけでいいから」
「……わかった」

一応利を示している以上、雄二にとっては乗らない理由はない。
そこまで言うと、光一は荷物を纏め教室の外へ。

「? どこ行く気だ?」
「Cクラスの情報集めに」

と言って、出て言った。

「なんだかんだで、久遠も割と面倒見がいいわね」
「じゃからワシの兄貴分なのじゃ」

と言う話を背に、雄二は仕方ないと帰り支度を整え外へ。
そこでふと……

「さっきの驚いたよね?」
「はい。2年の吉井君と姫路さんが、あんなに仲が良いだなんて」

聞き覚えのある名が出て、雄二は話をしてる2人に聞き耳を立てた。

「さっき仲良さそうに一緒に帰ってたけど、もしかして付き合ってるのかな?」
「付き合ってるんじゃない? 夕食の献立について話してたみたいだし、スーパーで仲良くお買い物じゃない?」

「……夕食ねえ」

明久の様子は明らかにおかしい。
……が、光一がああも言ってる以上、雄二とて妙な事にするのは得策ではない。

「でももしかしてだけど、同棲とか……」

ピキッ!

「……調べてみる価値はありそうだな」

汗だくになりながら、明久の家と学園の間にあるスーパーへとダッシュで向かった。

「……ターゲットがそっち行ったよ?」


所変わって、スーパーにて。

「おや。奇遇ですね吉井君」
「あれ? 岩崎先輩?」

瑞希とスーパーでお買い物中。
そこで見知った顔と出会った。

「あの、こちらは?」
「これは失礼。僕は3-A所属の岩崎賢二と申します、以後お見知りおきを」
「あっ、はっはい。私は、姫路瑞希と言います」
「これはご丁寧にどうも。吉井君と仲がよろしい様ですが、お付き合いされてるのですか?」

ボッ! ×2

「え!? そっそんな……お嫁さんだなんて……」
「いえ、そこまで言ってはいませんが……まあ良いでしょう。吉井君もこんな可愛らしい方と仲睦まじいとは、なかなか隅に置けませんね」
「ちっ、違いますよ! 僕なんかが、姫路さんと釣り合う訳がないじゃないですか!」

顔を赤くしながらあたふたする2人に、岩崎は……

「わかりましたから落ちついてください。ここは公共の場なのですから」

と、2人を落ちつかせた。

「あの、先輩はこちらには?」
「夕食の買い出しです。僕の両親は共働きで、家事は僕がやってまして」
「大変ですね。先輩受験生なのに」
「いえいえ、日課にすれば特に苦もなく出来ますよ。お2人は一緒に買い物ですか?」
「はい、僕達も夕食の買い出しです。今日はお肉と卵が安いですし」
「あっ、今日はお茄子もお買い得みたいですよ?」

そこでふと、瑞希が野菜コーナーを見てそんな事を言った。

「おや、茄子ですか。そろそろ秋にも差し掛かってますし、是非買っておきたいですね」
「そうですね。揚げ茄子の煮びたしに、ピーマンやひき肉と合わせて炒めたり。そのまま焼いて生姜醤油で食べると言うのも良いなあ」
「他にも味噌田楽や、鶏肉と一緒に蒸し物と言うのも悪くはありませんよ。それにカロリーも低くヘルシーですから、姫路さんにもお勧めです」

明久は岩崎賢二と言う先輩に、親近感を感じ始めていた。
……成績こそ天地の差ではある物の、この人と仲良くなるのも良いかもしれない。

「そうなんですか……姫路さんは、茄子食べられる?」
「はい。大好きです」
「おや、今日は御一緒に夕食を?」
「はい。私今、明久君の家で…」
「あっ、姫路さん!」

瑞希を口止めしようとしたが、もう遅かった。
岩崎はキッと眼を細める。

「……あの……まさか、同居されてるのですか?」
「いいいいイヤイヤ、そんなわけあるわけないわけないじゃないですか」
「そそそそそうですよ。そんなことありえなくないこともないこともないようなきがしなくもないじゃないですか」
「……落ちついてください。バレバレですから」

岩崎がある地点に目を向けると、くいっとメガネの位置を直す。

「あっ、あの……」
「わかってますよ。これが君のクラスの奇妙な集団に知られたりしたら、こちらとしても迷惑です」
「……ありがとうございます」
「礼はいりませんよ……騙している以上は」
「え?」
「なんでもありません。では、僕はこれで」

と言って、岩崎は去って行った。

「いい先輩ですね」
「うん。もう少し早く会ってみたかったかな?」


「……なんてこった。あいつ等、このタイミングでなんて事を……!」

その話を聞いてしまった雄二は、頭を抱えていた。
実は彼、翔子に“文月学園で同棲している生徒がいたら、自分達も同棲する”と言う“軽はずみな”約束をしていた。

「……だが、まだ不幸中の幸いか、知ってるのは俺とあの先輩だけだ。なんとか……」
「……雄二」
「……………………は?」
「……約束、覚えてる?」
「は……はは、は……翔子お前……いつからそこに……?」
「……最初から、ずっと。一緒に帰ってくれなかった雄二にお仕置きする為に、追いかけてきた」
「そ、そうか……それはそれは、すまなかったな……」
「……ううん。今はそんな事、もうどうでも良い」
「だよな。それじゃ……」
「……うん」
「さらばだっ!」
「……逃がさない。絶対に」
「ちくしょぉおおおおおーーっ!! 明久ぁああっ! テメェのせいだからなぁーっ!!」

雄二の絶叫と共に、逃亡劇の始まり。
そしてFクラスに襲いかかる最悪の事態の、幕開けでもあった。


次の日

「それではHRを終わる。余計な寄り道などせず帰る様に」

そう言って帰りのHRを終えると、鉄人が教室から出て言った。

「それじゃあ帰ろうか」
「いや、ちょっと気になる事があるから」
「そう? じゃあ光一、また明日」
「ああ」

そう言って光一が出ていき、秀吉と瑞希もそれに続いて出ていく。

「それじゃあ帰ろうか雄二」
「ん? ああ、ちょっと待ってくれ。ムッツリーニ、大丈夫か?」
「…………周辺に障害となりそうな人物の気配はなし。問題ない」
「……そうか。それでは皆、待たせてすまなかったな――祭りを始めよう」
『『『YEAH! Let‘s Party!』』』

明久が即座に殺気を察知し、横へ跳ぶ。
先ほどまでたっていた場所に、ちゃぶ台が突き刺さった。

「雄二! これはどういう事さ!?」
「明久……! 今日と言う日がテメェの命日だ! 生まれてきた事を地獄で後悔しやがれ!」
「朝坂本に話を聞いてから今まで、待ちに待ったぜ吉井ぃ……!」
「放課後になったからにはもう誰の邪魔もはいらねェ。たっぷりと地獄を見せてやるぜ吉井明久ぁぁぁあっ!」
「姫路と同棲生活たぁ恐れ入ったぜ。テメェのその幸せ、完膚なきまでに破壊しつくしてやろうじゃねェか!」

周囲をクラスメイトで囲まれる明久。
単純明快安直直情な連中が、秘密を知ったうえで今まで我慢していた事に驚愕する。

「朝なら授業が始まるまでと言うタイムリミットがあるが、今はそうはいかねえ。それに加えて、光一が居ない以上邪魔も入らねぇ。楽しい楽しい放課後を皆で過ごそうぜ明久ぁ……!」





「……始まったか」

ぽた……ぽた……

「代表……どうして、こちらに?」
「女性をつける男がいたからおかしいと思い、後を追ったまで」
「……まさか久遠を放っておいたのは」
「…………」

無言で威圧する白夜から、小暮と小山は目を背けた。

……正確には。

「……」

白夜に今投げ捨てられ、どさっと横たわる意識を失った光一から。


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