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閑話集(5)
第二百二十三問 閑話 とある超人の葛藤と探求
大神白夜は、酷く飢えていた。
それは決して身体的な空腹等ではなく……

価値を奪い取り、より強くより完全となりたいという、才能の空腹。

「……誰も彼もが、弱すぎる」

召喚野球大会。

点数を下げ、手を抜いてもなお、全く届かない3-B。
今更ながら、くだらない事をしたと言う後悔が押し寄せていた。

その後の2-Aこそそれなりだった物の、自身の才能が喰らうに値する価値は見つける事が出来ず。
そして、特に惜しまれたのが……

「……吉井明久との再戦は、果たせず仕舞か」

白夜の脳裏に浮かぶのは、学園1のバカと呼ばれながら召喚獣勝負で自身の召喚獣の腕を斬り飛ばした、とある少年。
思わぬ価値との遭遇と、勝敗が見え隠れし始めた勝負ともいえる戦い。
それが、乱入により無効となってしまった事。

その事が今も飢えとなり渇きとなり、白夜の脳髄にくすぶり続けていた。
かといって現状で再戦を行った所で、色々と誤差も無理も生じる事もまた事実。

無責任や自分勝手は、自分だけの失態にあらず。
それを理解し、自身の才能と信念に誇りを持つが故に、自分の失態の尻拭いを人任せにするなど言語道断。

それ故にこの空腹を呑みこみ、耐え続けるしかないのが現状。

「選ばれし者、天才と呼ばれてはいても、所詮は私も人間。出来ない事は当然の様に存在し、出来る事の限界は当然の様に存在する……わかりきってはいた事だがな」

それでも白夜にしてみれば、才能と能力を考慮すれば出来ない事を探す方が難しい。
実際白夜自身が勝敗の混在する勝負など、ごく最近まで全然と言って良いほどした事がないのだから。

「そんな事を言っても仕方がないな……そうだ、西村先生と勝負をするか」

と、早速職員室へと赴く白夜。

「……ん?」

ふと、職員室から怒号と騒音が響いてきた。

「……また2-Fか? 体育祭も終わったばかりだと言うのに、揃いも揃って体力が有り余っているとは。ある意味素晴らしき体力と根性、と言うべきか?」

私も見習い、トレーニングをして帰るべきだったな。
そう反省しつつ、職員室へ歩を……

ガタンっ!

「待たんか!」

進めようとして、騒ぎの一端がこちらへと近づいてきた為足を止める。

「くっそぉっ、また待ち伏せかよ!? 教師のクセに、汚え真似を!!」
「正々堂々の正面突破に対して、なんて卑怯な!」
「約束まで破った挙句、この酷過ぎる仕打ち。あいつ等は人間じゃ……んげっ!!」

雄二と近藤、君島の3人が進路方向にいる人物を見て、顔を青ざめた。
目の前にいるのは、冷血の暴君と呼ばれる超人こと大神白夜。
更に追ってくるのは鉄人。

今まさに“前門の超人、後門の鉄人”である。

「くそぉっ! こうなりゃあの超人野郎ブチのめすしか道はねえ!」
「なっ! バカ、よせ!!」
「考えてみりゃ、吉井ごときに腕を切り飛ばされてんだ。実は大した事ないってオチの可能性だって……」

雄二の制止も聞かず、近藤と君島が白夜に飛びかかり拳を突き出す。

「……吉井ごとき、か」

メキっ!! ×2

「「ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!!」」

腕を抑えながらのた打ち回る2人に目もくれず、白夜は鉄人西村を見て歩を進める。
それと同時に、雄二が鉄人に首根っこを掴まれた。

「西村先生。トライアスロンで勝負してもらえますか?」
「トライアスロンだと?」
「……アンタ、トライアスロンも出来るのかよ?」
「神に選ばれし者たるこの私には、現時点では西村先生が最も最適な相手だ」
「だったらどうして明久ごときに興味向けんだよ?」

また“ごとき”か……。
と白夜は思う。

「震えるしか出来ない猩々ごときには、何の関係もない事だ」
「ぐっ……揃いも揃って俺をゴリラ扱いとは、流石は兄弟だな」
「不快だが事実である以上、受け入れるしかあるまい。貴様の様な伴侶を否定し、足蹴にする矮小な器と一緒にされても困るな」
「俺は独身だ!」
「……それで西村先生?」
「明日の午前でいいならな」

白夜は頷くと踵を返し、靴箱へと歩を進めた

「……弱さは罪。つくづく思い知らされるな」

白夜は思う。

自身が光一に負けてすぐ、Bクラスは宣戦布告を仕掛けてきた。
それ以外でも、自身を狙い奇襲や闇討ちを仕掛けてくる者たち。

敗北した事は事実。
それは実力主義を掲げる者として、否定をする訳にはいかない。
しかし……

「なぜそれが私の弱体化につながる?」

四肢や内臓を失った訳でもなく、車椅子が必要となった訳でもなく、病にかかった訳でもなく……。
増してやこの才能も能力も、超反応も陰りを見せるどころか失った訳ではない。

光一には実力で負けた。
吉井明久には、私の腕を斬り飛ばすだけの力がある。

……これはまぎれもない事実だと言うのに。

「……弱者の思考は、私には理解出来んな」

それだけの単純な答えだと言うのに、弱者はまぐれや偶然と言う曖昧な不正解を、無理やり正解としたがる。
先ほど、吉井明久を貶したバカ共がそうである様に、真実を見ようともせずただ目先の戯言にしか目を向けない。

「……くだらないの一言だ」

実践主義と言うのは、そうじゃないだろう。
確かに吉井明久は、頭のねじが緩んでいる行動が目立つやもしれんが、だからと言って可能性に目もくれないと言うのは、どうなんだろうか?

聞けばあの戦いが原因で、吉井明久はクラス内で嫌悪されていると言う話も聞く。

「……やめるか。もうすぐ終わる以上、無駄な思考だ」

吉井明久との戦いで、自身の超反応にも弱点がある事がわかった。
そして条件こそ付くやもしれないが、自身を恐れても尚勝利に喰らいつこうとする貪欲さ。

得る物のある戦いを行い、そして初めて自分に対し最後まで勝とうとした。
自身の手足となろうと、自身の糧となろうと、決して無駄にはならないだろう。

「……まずは西村先生から、だな」


その次の日。

「……僅差か」
「ふふっ……良い勝負でした」

鉄人とのトライアスロンは、僅差で白夜の勝利。
競合ともいえる勝負は、自身を満たすには至らなかったが……

それでも、不完全燃焼を吹き飛ばすほどには満たされていた。

「……ではこれで。私はこれから次を探し出し、成さねばなりませんので」
「俺でもお前を満たすには足りない様だな」
「満たす? ふふっ、御冗談を……私の目指す、未知なる完全な存在となった私は、まだ影すらも見えはしない」
「……どこまでも、底知れない男だ」

満たされない……いや、満たされてはならない。
目指すべき物……そこに至っても、まだ足りない。

自分でもこれは傲慢な願いだと理解は出来ている。
ならば自分の強欲も力も才能も、憤怒すらもその傲慢の一部でしかない。

「……焦る必要はない。未知なる可能性が生まれては消えていく、この素晴らしき世界に私は存在している。次はどの可能性を……どんな未知なる私を選ぼうか?」


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