今回は、ちょっと光一の過去を出してみます。
過去と言っても白夜がいた頃ではなく、凶王と呼ばれていた中学時代の頃です。
閑話集
第百九十五問 閑話 過去と後輩と凶王の憂鬱 前篇
「ゆっ、許し……」
「許してほしいか? ……ならくたばれゴミが」
「ひっ……! ぎゃああああああああっ!!」
時は核弾頭トリオが団結し、試験召喚戦争を起こす3年前。
その1人、過激派筆頭と呼ばれる少年久遠光一が、凶王と呼ばれていた中学二年時の事。
毎日の様にケンカに明け暮れ、時には警察に補導されの毎日だった頃。
そして……光一が何もかもが嫌いだった頃。
「……何度掃除しても、後から後から湧いて出やがって」
自分をバカにする者、貶す者を容赦なく攻撃し、病院送りにする事も一度や二度ではない。
そんな彼を教師や周囲は遠ざけ、いつしか光一は凶王と呼ばれるようになった。
「光一!? アンタまた!!」
「なんだ優子か」
「優子か、じゃないわよ! いつもいつもケンカばっかりして!!」
「うるせえな、ゴミ掃除して何が悪いんだブス!」
「ぶっ……アンタまた!!」
「うるせえ! ギャーギャーわめくなブス!!」
優子とも折り合いが悪く、顔を合わせては口ゲンカの日々。
教師も周囲も、光一に対して抗議出来る優子を重宝し、期待の視線を常に向けていた。
……が。
「あっ、久遠先輩! ここにいたんですか?」
光一は駆け寄った小動物系の女子に、顔をしかめた。
「朝倉……!? じゃあな。俺は寝る」
「そう言わずに」
「ちょっ、離せコラ!!」
「じゃあアタシ、秀吉呼んでくるから」
場所は屋上。
「……あのな朝倉、いい加減にしろ。うっとおしんだよ!」
「ひぅっ!」
「抑えるのじゃ光一」
「……ごめんなさいね」
「いえ、良いんです。私の勝手ですから……その、ごはん」
彼女は朝倉歩美、一年生。
とある偶然で知り合った経緯から、光一に対して懐いていた。
その日以来彼女は、光一と光一経由で知り合った優子、そして秀吉に毎日弁当を作っている。
助けてもらった事と、親しくしてくれるお礼として。
「ほら光一よ。今日も美味そうじゃ」
「……ちっ」
「礼くらい言いなさいよ。せっかく作ってきてくれたのに」
「頼んだ覚えはねえし、強制連行されて礼なんか言えるか!」
「あっ、あの。やめてください!」
が、光一としては、あまり信用する気になれなかった。
……というより、なぜ自分なのかが全く理解が出来ない。
「でもどうして光一に? もっと同年代の友達とかと……」
「私はその、先輩たち以外に、親しいって言える人いなくて……さびしいの嫌なんです」
「さびしいの嫌なんですーって、ウサギじゃあるまいし。てか何年生だよ?」
「光一!」
「るせえな! なんで寂しがりなガキのお守りなんざ!?」
「だっ、だからやめてください! 気に障ったんなら、謝りますから……ぐすっ!」
「……ごめん」
歩美がぐずり始めたのを見て、優子がしぶしぶと引き下がり光一はフンと鼻を鳴らす。
秀吉も歩美に謝りながら、光一を宥め始める。
「あーあ、うるせーうるせー」
「アンタホント最低ね!」
「今頃気づくなブス!」
「だからやめるのじゃ、姉上も光一も!」
そんなこんなで、昼休み終了。
そして放課後。
「あのクソジジイ、明日覚えて……なんで待ってるんだよお前は?」
昼休みの事で呼び出しを受け、説教を聞き流し続けた光一が、職員室を出てすぐ……
「なんでって、一緒に帰ろうと思いまして」
「思いまして……って。はぁっ」
歩美が笑顔で出迎え、一緒に帰ろうと誘った。
流石にこんな時間まで待っていた以上、とやかく言う気もなくなった光一。
仕方なく一緒に帰る事に。
「……あの、先輩。覚えてます?」
「ここでお前がいじめられてるのを、偶然助けたって事だろ? ……思えばあれが運命の分かれ目だったな」
「はい。運命の出会いです!」
「それ絶対俺が思ってるのと間逆の意味だな」
ある程度進んだ所で、おずおずと歩美が光一に問いかけた。
光一はこの辺りで歩美がいじめられる所に通りがかり、それを助けた経緯があった。
……というのも、光一にしてみればただの気まぐれでしかないが。
「……その気まぐれが、まさかこんな結果になるとは」
「はい?」
「てかまさか、俺を白馬の王子様とでも思ってるのかよ? ……自分で言って気持ち悪くなってきた」
「そっ、そんなまさか! 木下先輩に悪いですよ」
「だから違うっつってんだろ!」
不機嫌そうにムカムカとしながら、無言の帰路につき始める光一とそれに続く歩美。
そしてしばらく進むと……
「あっ、じゃあ私はここで」
「ああっ。出来ればもう二度と会いたくない」
「それではまた明日」
「だから聞けよ!」
笑顔で手を振り、去って行った歩美を見送り、光一はガシガシと頭を掻く。
「……ちっ!」
舌打ちをして、今日の夕食の買い出しの為にスーパーへと歩を進めた。
そして、光一の家にて。
「……ふぅっ、さっぱり」
Prrrrrrr!
「はいもしもし?」
『あっ、夜分遅くにすみません。久遠先輩のお宅ですか?』
「……どうしてうちの番号知ってる?」
『あっ、先輩ですか? ちょっとお話がしたくて』
「質問に答えろ」
『木下先輩からです。あの、明日ですけど』
「明日は用事がある」
プツッ! ツーツーツー……
「……あのブスが!!」
いきり立ちながら電話線を抜いて、ソファーにどっかと寝転び……
「……ZZZ」
寝息を立て始めた。
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