文月新聞 号外
『今年の清涼祭も反響を見せている中、名物ともいえる召喚大会も盛り上がってまいりました。
準決勝は、AブロックとDブロック、BブロックとCブロックの勝者が戦う事になります
第一試合
久遠光一(2-F)・木下秀吉(2-F)ペア(Bブロック代表)
VS
夏川俊平(3-A)・常村勇作(3-A)ペア(Cブロック代表)
第二試合
吉井明久(2-F)・坂本雄二(2-F)ペア(Dブロック代表)
VS
霧島翔子(2-A)・木下優子(2-A)ペア(Aブロック代表)
驚いた事に、BブロックとDブロックを勝ちあがってきたのは、2-Fのペア。
ここで久遠・木下ペアと吉井・坂本ペアが勝ち上がれば、明日の決勝はFクラス一色という事になる。
それを防いでAクラスと上級生の意地を見せるか?
この戦いの行方が、気になるところです!』
「さて、準決勝だ」
明久達にとっては、これを勝てば目的が達成される。
ただし、明久と雄二、光一と秀吉のどちらかが負けてもダメ。
しかし準決勝となると、それ相応の学力戦士が生き残っている。
「僕たちの相手は、あの霧島さんと秀吉のお姉さんだよ? きつそうだなあ……」
「俺達の相手は……っ! 常夏コンビ!?」
「あいつらが!?」
準決勝は、光一・秀吉ペアは常夏コンビ。
そして明久・雄二ペアは翔子・優子ペアとの対戦。
両方が2年3年のAクラスであり、まさに正念場ともいえる戦い
「お互い、因縁の対決ってことか」
「ああ……って、そっちは違うだろ? 雄二のいとしい霧島との将来を約束すれば楽勝だろうに」
「うるさい黙れ!!」
「……まあいいや」
準決勝の科目は保健体育。
光一もそれなりに点数はとれているため、そうあわてる事もなく試合会場へ。
ちなみに光一と秀吉のペアが先の為、これが終わったらある作戦を実行予定である。
「さて……行くか秀吉?」
「うむっ。光一よ、ワシはお主を信頼しておる。だから、存分に腕をふるえ」
「ああ。俺もお前を信頼してるし、お前の信頼にこたえてやる……だから、な?」
光一が手を差し伸べると、秀吉が握り返す。
そして頷きあい、試合会場へ。
「やっぱりあんた達か」
「お前らが公衆の面前で恥をかかないように、という優しい配慮だったんだがな」
「それで俺たちみたいな最下級クラス相手に卑怯な手か? 随分と小物臭い事クズどもだ事で」
光一や秀吉は、この2人のした事に当然腹を立てていた。
特に好戦的な性格の光一は、相手を逆上させるような暴言を平然と言い放つ。
「テメェっ、先輩に向かってなんだその態度は?」
「先輩なら先輩らしくしろよ。あんな真似が尊敬されて当然だとでもいう気かこの変態坊主」
「ああっ!?」
その前哨戦として、光一が夏川とにらみ合い。
本当ならリアルで一戦交えたいところだったが、場が場の為にこれでとどめる事に。
「先輩として忠告しておくぞ? 恥かきたくなかったら、とっととギブアップしろ。お前らFクラスのクズどもとの一戦なんざ、時間の無駄でしかねえんだよ」
「そうはいかんの。ワシとて、お主らのしたことには腹を立てておる」
「たかが喫茶店ごときで随分な入れ込みようだな? バカは嫌だね」
事情も知らず好き勝手言う態度に、秀吉も珍しく相手を睨みつける。
「君たち! 何をしているんですか!?」
それを立ち会いの教師に見咎められ、一旦距離を取る。
光一は秀吉に、夏川は常村になだめられながら。
「光一よ、気持ちは分かるが落ち着くのじゃ」
「わかってるよ……秀吉、勝つぞ」
「承知した」
『2-F 久遠光一&木下秀吉 保健体育 189点&67点』
VS
『3-A 常村勇作&夏川俊平 保健体育 210点&193点』
「へぇっ、Aクラスだけあって勉強はできるんですね。先輩方」
「お前、本当にFクラスか!?」
「物理ならお前ら一瞬だぜ? 命拾いしたな」
保健体育は本来はDクラス並みだったが、準決勝で行う作戦故に光一は勉強していた。
とある女生徒に教えてもらおうかと考えていたのだが、その辺りは断念してあるのであしからず。
光一の召喚獣が銃を構え、秀吉の召喚獣が長刀を構える。
向こうの夏川が剣を構え、突進してきた。
「甘い!」
光一の召喚獣が銃を構え、脚を狙い撃ち出す。
それは当然の様に夏川の召喚獣の脚を撃ち抜き、動きを止めた。
「っ!」
「アンタ達には恥かいて貰わないと気が済まないんでね。悪いが、即決でとどめをさす」
「くぅっ!」
ふと、秀吉の声が上がり見てみると、長刀でガードしつつも剣で圧されている秀吉の召喚獣が。
「待ってろ、すぐに援護に……」
「させるか!」
夏川の召喚獣が、秀吉の召喚獣に向って剣を投げつける。
それを光一の召喚獣が撃ち落とした。
「そら、ひっかかった!」
「なっ!?」
それに気を取られてる好きに、光一の目に砂利が投げつけられた。
「よし、今のうちだ常村! さっさとそいつを潰しちまえ!」
「ああ。くたばれやお嬢ちゃんよ!」
見えなければ撃つ事は出来ない。
秀吉は2人に対抗する程力がない。
「ワシとて男じゃ! いつまでも光一に甘えてばかりはおれぬ!!」
が、秀吉の召喚獣が長刀で剣を横にないで、そのまま敵召喚獣の喉に突きたてる。
「なっ!?」
そのまま縦一文字に切り裂き、常村の召喚獣が消え去っていく。
そこで目をこすり、視界を取り戻した光一が秀吉の肩に手をのせる。
「ワリィ、手間かけた」
「何を言っておる? 光一のしたことに比べれば、些細な事じゃ」
「そうかい。じゃあ最後くらい……」
動けない夏川の召喚獣の頭に向け、ライフルを撃ち出した。
「カッコつけさせてもらうぜ?」
「勝者、久遠・木下ペア!」
光一が秀吉の腕をつかんで、高々と掲げた。
それに合わせて、観客から歓声が沸いた。
「よし、急いで戻るぞ。(優子を取り押さえに……な?)」
「うむっ(……何故そこらのチンピラより強い光一が怖気づくのじゃ?)」
「(優子相手じゃ無理ないだろ!)」
「(確かにのう……)」
そして時間が過ぎて……
「……雄二、邪魔しないで」
「そうは行くか。俺はまだやりたい事がたくさんあるんだ!」
明久・雄二ペア VS 翔子・優子ペア
ペアチケット目当ての翔子は、その相手となる雄二を前にして悲しい顔をする。
「さあ、頼むぞ秀吉!」
雄二の作戦は、秀吉と優子のすり替え作戦。
準決勝を終えた光一と秀吉が、そのまま優子を拉致しての入れ替えである。
「……ふふっ」
「秀吉、もう木下さんの演技は良いから、早く僕らと……」
「秀吉? 秀吉って、あそこの生ゴミどもの事?」
優子が指差したステージの一角。
そこには、ボロボロにされた揚句、手足も縛られた秀吉と光一の姿。
「ばっ、バカな!?」
「雄二の考えてる事くらい、私にはお見通し」
「アタシも、光一がやること位お見通しよ。まっ、匿名の情報提供もあったんだけどね」
優子の言葉に、明久は目を見開く。
明久はここにくるまで、作戦の概要を知らなかった。
それを知ると言うのは、常に自分達をマークしていなければ不可能だと言う事。
「くっ……すまぬ、雄二。ドジを踏んだ……」
「優子め……容赦って言葉の意味知らねえのかよ?」
「…………!!(パシャパシャパシャ)」
「撮影なんかしてないで、早く秀吉と光一の縄をほどいてあげてよ!(その秀吉の写真、後で売って欲しい)」
「明久、本音が混ざってるぞ?」
優子の降伏勧告があり、その間にムッツリーニは即座に2人の縄を解いた。
(雄二、僕に考えがあるから、指示通りの台詞を言ってほしい)
と言った後に、多少のやり取りをして明久は雄二の背に身を隠す。
(翔子、俺の話を聞いてくれ)
「翔子、俺の話を聞いてくれ」
(お前の気持ちは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ)
「お前の気持ちは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ」
明久の指示通りに、雄二は棒読みにならない様気を付けてセリフを合わせる。
「……雄二の考え?」
(俺は自分の力でペアチケットを手に入れたい。そして、胸を張ってお前と幸せになりたいんだ!)
「俺は自分の力でペアチケットを手に入れたい。そして、胸を張ってお前と幸せになりたい……って、ちょっと待て!」
「……雄二」
雄二が明久の方を慌てて向こうとするが、明久が強引に頭を押さえつける。
一方、翔子は雄二の台詞に、うっとりとした表情を浮かべ始めた。
(だから、ここは譲ってくれ。そして、優勝したら結婚しよう)
「だっ、誰がそんな事言うかボケぇッ!!」
光一がスタンガン(40万ボルト)を取りだし、放り投げる。
明久はそれを受け取ると雄二の首に最大出力でおしつけた。
「くたばれ」
「くぺっ!?」
「……雄二?」
続きの台詞を待ち望む翔子に、明久と光一は目配せ。
(おい、秀吉)
(うむ、了解じゃ)
光一の指示に従い、秀吉がゆっくりと深呼吸。
「だからここは譲ってくれ。そして、優勝したら結婚しよう。愛している、翔子」
本人と区別がつかない声真似で、最後の台詞が紡がれた。
指示していないセリフまで追加となっていたが、この際はと誰も気にしなかった。
「……雄二、私も愛している」
「ま、待て……俺は、愛してなど……こぺっ!?」
明久が雄二の首をひねり、そのまま黙らせた。
「ふはははは! これで最強の敵は封じ込めた! 残るはキミだけだ、木下優子さん!」
「ひ、卑怯な……!」
翔子は雄二の亡骸に抱きつき、戦意喪失。
だが雄二の方も力なく項垂れており、とても戦える状態にない。
「おーい明久、明日の決勝はよろしく頼む!」
「光一、バカにしないで! アタシ1人でも吉井君に負けないはず! 行くよ……サモン!」
「ふふっ。それはどうかな? この勝負の科目が保健体育だった事を恨むんだね!」
明久がムッツリーニに目配せし、元々の秘策を実行。
「行くよ、サーモン(新巻鮭)!」
(…………サモン(試獣召喚))
「え!? それ、土屋君の……!」
これぞ秘策『代理召喚(バレない反則は高等技術)』である。
(…………加速)
「ほ、本当に卑怯……きゃあっ!」
一撃で仕留め、勝負が決まった。
『2-A 木下優子&霧島翔子 保健体育321点&UNKNOWN』
VS
『2-F 土屋康太&坂本雄二 保健体育521点&UNKNOWN』
「よしっ! 僕と雄二の勝ちだ!」
明久は高らかに勝鬨を上げておいた。
「……ただ今の勝負ですが」
「霧島さん、僕らの勝ちで良いよね?」
物言いがつきそうなところを、明久が遮った。
「……それは」
「翔子、愛してる(by秀吉)」
「……私達の負け」
「……わかりました。坂本・吉井ペアの勝利です!」
観客は冷めた目でそれを見ていた。
それもそのはず、召喚獣の勝負を見に来たのにこの終結では、しらけてもしょうがない。
増して、先程が接戦だっただけに、その差は激しい。
「それじゃ、僕等はこれで」
ブーイングが出る前に、明久はさっさとその場を後にした。
「明久よ、中々の機転であったな」
「……作戦勝ち」
「ああ。見直したぜ」
「光一や秀吉、ムッツリーニのサポートがあったからだよ」
光一と秀吉は既に決勝進出を決めており、今自分達も決まった。
これで2つの問題が一気に解決されたともあり、明久はとてもうれしそうだった。
決勝戦は明日の午後1時から。
「やったね。これで僕たちの問題は解決したよ」
「いーや、まだだ。明日は姫路のお父さんも来るって話だろ? なら姦計やら策略やら抜きにして、それ相応の戦いって物を見せてやらないとな?」
「うむっ、手加減はせんぞ? 明久よ」
光一と秀吉の言葉に、明久は力強く頷いた。
「ああ! どんとこい!」
明久が拳を差し出したのを、光一と秀吉はそれにゴツっと合わせた。
「ところで、雄二はあのままにしておいていいのかの?」
「別にいいんじゃない?」
「そうそう。あいつもたまには素直になるべきだと思うし」
と、光一と明久は特に気にもしない。
「じゃが、霧島が雄二に一服盛って、持ち帰ろうとしておったので……」
「霧島さん! 雄二にはまだ決勝があるから、クスリは勘弁して!!」
「式には是非呼んでほしいけど、それはせめて決勝が終わってからにしてくれ!!」
2人が引き返してみたのは、うつろな目をしながらタキシードに着替える雄二の姿だった。
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