文月新聞 号外
『召喚大会 2-Fクラス所属の3ペア大健闘!』
清涼祭名物“召喚大会”において、2回戦が終了。
各ブロックにおいて激戦を勝ち抜いた学力戦士たちが、一般の方々の目に映る事となる。
その中に、2-Fクラスの3組のペアが快進撃を続けていた。
“姫路瑞希&島田美波ペア 通称『ゴミ溜めに咲く花コンビ』”
“久遠光一&木下秀吉ペア 通称『危険物と美少女コンビ』”
“吉井明久&坂本雄二ペア 通称『文月学園最低コンビ』”
Fクラスと言えば最下層のクラスであるが、先の試召戦争においてDクラスとBクラスを破る快挙達成。
そのFクラスからの参加者は以上の6名のみであるが、その6名全員が3回戦進出を達成。
これはFクラスが最下層という認識を改めるべきかもしれない。
という意見が多数出ております。
さあ、試召戦争から続くFクラス旋風はどこまで吹き荒れるのか?
2回戦も危な気なく勝ち進み、光一と秀吉は教室へ。
秀吉も召喚獣の扱いにはだいぶ慣れ、光一との連携もとれるようになってきていた。
「光一には助かるわい」
「何言ってんだよ秀吉、お互い助け合うのがタッグって……ん?」
「……別れましょう」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! これには事情が……」
ふと、殺伐とした雰囲気で別れ話が持ちあげられている、とあるカップルの姿が。
女子の手には、ある写真集が握られている。
「あれ、BクラスのクソヤローにCクラスのヒステリーじゃないか」
「どうやら、あの写真集を見られたらしいの」
「是非見たかったな、あのクソヤロー君が慌てふためく姿を」
光一と秀吉は、巻き込まれる前にさっさと自分達の教室へ。
「ただいま……あれ? 全然人がいないな?」
「うむっ……風評の改善はしたと言うのに、何故ここまで閑散としておるのじゃ?」
自分達が駆け回り手に入れたテーブルと、その上で飲茶を楽しむ人たち。
……が居ると思ったが、教室には殆どお客さんがおらず、閑散としている。
「あ、光一に秀吉、おかえり。無事三回戦進出でしょ?」
「おっ、わかってるじゃないか相棒」
「光一、今の相棒はワシじゃぞ?」
「あっ、そうだったな。悪い悪い、勘弁してくださいな」
秀吉が拗ねたように言うと、光一もおどけた様に謝る。
「それで、雄二は?」
「トイレ行って来るってさ。それよりはい、これ返すよ」
明久が手渡したのは、根本恭二写真集“生まれ変わった私を見て”である。
実は明久に頼まれ貸していたのだが、雄二が用意してあった為不要になったのである。
「お兄さん、すいませんです」
「いや、気にするな、ちびっ子」
「ちびっ子じゃなくて、葉月ですっ!」
そこへ、雄二の声と一緒に小さな女の子の声が響いた。
そこでガラっと扉が開かれ、雄二が姿を現す。
「んで、探しているのはどんな奴だ?」
と、雄二は連れて来た少女に声をかけた」
「お、坂本。妹か?」
「可愛い子だな~。ねぇ、5年後にお兄さんと付き合わない?」
「俺はむしろ、今だからこそ付き合いたいなあ」
2人はあっという間に、Fクラスの面々に囲まれた。
客が来る事がなく、ヒマなのである。
「あ、あの、葉月は2人のお兄ちゃんを探しているんですっ」
「お兄ちゃん? 名前はなんて言うんだ?」
「あぅ……わからないです……」
「? 家族の兄じゃないのか? それなら、何か特徴は?」
雄二は割と面倒見がよく、代表としても気配りはできている方である。
例外として、常に追い込む明久を除いて。
「えっと……鉄砲を持ってるお兄ちゃんと、バカなお兄ちゃんでした。とっても仲良しだったです」
「そうか……バカはたくさんいるんだが、もう一つで明らかだな」
「「「久遠と吉井だな」」」
「おーい、何で俺達が即座に出る?」
「「「この日本で銃を持ち歩くのはお前だけだ!」」」
それと仲良しでバカとなると、明久位しかいない。
「あっ! 鉄砲のお兄ちゃんと、バカなお兄ちゃんだ!」
光一と明久の姿を見るや否や、満面の笑顔で駆け寄る少女。
その少女は真っ先に明久に抱きついて、腹に顔を埋めた。
「ふむっ……明久、お前モテないからとついに」
「何を想像してるんだバカ雄二!! ……えっと、光一知ってる? 僕に、小学生位の知り合いいないはずだけど?」
「えーっと……もしかして、ぬいぐるみの子じゃないか? ホラ、お前が観察処分者になるきっかけの」
「僕が……ああっ! あの時のぬいぐるみの子か!」
「ぬいぐるみの子じゃないです、葉月です。折角のフィアンセとの再会なのに、失礼です!」
葉月ちゃんの言葉で、光一以外の空気が凍った。
光一はそんなことあったな……と、少し遠い目をして思い出す。
「瑞希!」
「美波ちゃん!」
「「殺るわよ!」」
「ごぶぁっ!?」
そこへ、美波と瑞希のコンビネーション技が明久に炸裂した。
「姫路に島田か。どうやら、勝ったようだな」
と、雄二はいたって落ち着いている。
「瑞希、そのまま首を真後ろにひねって。ウチは膝を逆方向に曲げるから!」
「こ、こうですか?」
「ちょっ、ちょっと待て! 子供の言う事だろ!?」
「子供なんて酷いです! 葉月のファーストキスもあげたんですから」
さらなる爆弾発言に、2人して激努。
明久の骨が危ない音を出し始める。
「坂本、包丁持ってきて! 5本あれば足りると思う!」
「吉井君、そんな悪い事をするのはこの口ですか?」
完全に殺意とみても過言じゃないオーラで身を包み、明久を痛めつける2人。
光一はそれに気押されつつも、何とか弁解しようと試みる。
「だっ、だから、ちょっと落ち着け! キスって言っても……」
「あ、お姉ちゃん。遊びに来たよっ!」
葉月が美波を見て、そんな事を言った。
「え? お姉ちゃん?」
「あれ? 葉月! え? 葉月とアキ達って、知りあいなの?」
「ああ、去年ちょっとな。それより、まさか葉月ちゃんのお姉ちゃんって」
「ウチの事よ?」
技から解放された明久は、倒れこみつつ2人を見比べた。
良く見ると目元などが良く似ている為、成程と頷いた。
「大丈夫か明久? 災難だったな」
「……幾ら幼女暴行犯と誤解されたとはいえ、あんまりだよ」
「まあドンマイだ」
殆ど処刑なのだから、無理もないだろう
「吉井君はずるいです……どうして美波ちゃんとは、家族ぐるみの付き合いなんですか? 私はまだ、両親にもあって貰ってないのに……もしかして、実はもう“お義兄ちゃん”になっちゃってたり……」
「姫路、とりあえず落ち着け」
光一と明久、秀吉は瑞希の変貌ぶりに流石に怖気を感じ、一刻も早く設備の改善をと改めて心に決めた。
「ところで、この客の少なさはどういう事だ?」
雄二の言葉で、光一達は再度辺りを見回した。
「そう言えば葉月、ここに来る途中で色々な話を聞いたよ?」
「ん? どんな話?」
光一が屈み込んで、葉月の目線に合わせる。
「えっとね、中華喫茶は汚いから行かない方が良いって」
店内の装飾は元々のボロ教室の面影をなくしており、掃除もきちんとしてある。
唯一の“汚い”はみかん箱テーブルだったが、それも解決している為どこにも不安要素はない筈。
「ふむ……例の連中の妨害が続いているんだろうな。探し出してシバき倒した上で、撃ち殺すか」
雄二の言葉で、光一は懐から自動拳銃を取り出し、安全装置を解除する。
「例の連中って、さっきの常夏コンビ? まさか、そこまで暇じゃないでしょ?」
「ったく、学園祭で下らねえ真似しやがって……いっそ俺のコレクション最高級を撃てば良かったか?」
と、奥の方へとスタスタと速足で去っていき、腕にバルカン砲を抱えて戻ってきた。
「……光一、そんなの持ってきてたの?」
「以前言ったろ? バルカン砲持って待つってな。高かったけど」
「エアガンとは言え、マジで用意するか普通!?」
するのが久遠光一という男である。
だからこそ彼は、危険人物№1の称号が与えられているのだ。
「……まあ良い。一先ず、様子を見に行く必要があるな。光一、それを早く隠せ。イメージに傷がつく」
「ああ、悪い悪い。少なくとも、どこから流れてどこまで広がってるかの確認もしたいな」
小学生が聞くぐらいだから、どこまで広がっているか。
悪評が続けば売り上げに響くともあって、不安を隠しきれない。
「という訳で、敵情視察も兼ねて昼飯でも食いに行くか。葉月ちゃん、一緒にご飯食べにいかない?」
「じゃあ葉月ちゃんと光一には、僕が奢るよ。光一には助けられてるし、葉月ちゃんも再会祝いにね」
「わーい、ありがとうございます」
明久もそう何度も光一に世話になる事に引け目を感じる為、多少は我慢すると言う事を覚えていた。
だからと言っても、“塩と水”から“カップめんと水”に変わった程度だが
「じゃあ、お言葉に甘えるか。召喚大会があるから、早めに昼を済ましたいし……秀吉も来るか?」
「うむっ、相伴にあずかろう」
「私もご一緒します」
「じゃあ葉月、お姉ちゃんも一緒に行くね?」
美波の口調は、普段と違って柔らかく優しい姉その物。
これでトータル7人、学園祭を歩き回るには少々不便な人数となった。
「それで葉月ちゃん、中華喫茶の話はどの辺で聞いた?」
「えっとですね……短いスカートをはいた、綺麗なお姉さんがいっぱい居るお店……」
それを聞いて、真っ先に反応したのは3人。
「何だって!? 光一、雄二、それはすぐに向かわないと!」
「そうだな明久! 我がFクラスの成功のために、(低いアングルから)綿密に調査しないとな!」
「ああ。これもFクラスの為だ! 未開の楽園へと、いざゆかん!」
「「おおーっ!!」」
と、全力ダッシュで駆け出していく3人。
そして、取り残された面々は……
「アキ、最低」
「吉井君、酷いです……」
「お兄ちゃん達のバカ!」
「光一……姉上にフラれた故の錯乱と信じたいのじゃが、良いのかの?」
所変わって……
「明久、ここはやめよう」
「ここまで来て何を言ってるのさ! 早く中に入るよ!」
「頼む! ここだけは、Aクラスだけは勘弁してくれ!!」
Fクラスが宿敵Aクラスが経営する、メイド喫茶『ご主人さまとおよび』の前にて。
雄二は心底嫌そうに、光一はすごく複雑そうな顔で立っていた。
「というか、主人なのかメイドなのか、どっちなんだ?」
「そっか。ここって坂本の大好きな霧島さんと、久遠の大好きな木下さんが居るクラスだもんね」
「坂本君、女の子から逃げ回るなんてダメですよ? 久遠君も、気持ちはわかりますけど……」
「……いや、大丈夫。いい加減未練は断ち切るべきだし、敵情視察何だから、な?」
「光一……」
その姿に、相棒の明久と優子の弟にして光一の親友である秀吉は、いたたまれない気持ちとなった。
「…………!(パシャパシャパシャパシャ!)」
その空気を破ったのは、連続して聞こえるシャッター音。
「……ムッツリーニ?」
「…………人違い」
「どっからどう見てもムッツリーニだろ! 厨房責任者が何してやがる!?」
「…………敵情視察」
ローアングルの写真撮影では、とてもその説得力はない。
「ムッツリーニ、ダメじゃないか。盗撮とか、そんなことしたら撮られてる女の子が可哀想だと……」
「……1枚100円」
「2ダース買おう……可哀想だと思わないのかい?」
「アキ、普通に注文してるわよ」
言ってる事は正論だったが、途中あっさりと注文した事で説得力はなくなっていた。
「…………そろそろ当番だから戻る」
「全く、ムッツリーニにも困ったもんだね」
ムッツリーニは明久に写真を渡し、教室の方へ去っていく。
それを見つつ、明久は呆れたようにそう言った後にポケットに写真をしまった。
「吉井君、その写真をどうするつもりなんですか?」
「やだな~、もちろん処分するに決まってるじゃないか。それよりそろそろお店に入ろうよ? もうすごくおなかが減っちゃったよ」
「それもそうだな。雄二ももう腹くくれよ」
「……くそっ!」
雄二が吐き捨てるようにそう言い、観念したかのように同伴。
「あっ! 写ってるの、男の足ばかりじゃないか畜生!」
「やっぱり見てるじゃないですか!」
「ご、ごめんなひゃい! くひをひっぱらないで!」
明久は瑞希に頬を抓られ、葉月に腿をつねられての同伴となった。
「それじゃ入るわよ。お邪魔しまーす」
美波が1番手となり、いざメイド喫茶へ。
「……おかえりなさいませ、お嬢様」
出迎えたのは知的な美人メイド事、霧島翔子。
「わぁっ、きれい……」
長い黒髪にエプロンが映え、黒のストッキングが美脚を際立たせている。
これは女であろうと、見惚れる光景。
「それじゃ、僕らも」
「ふむっ、流石はAクラスじゃの。雰囲気も違うわい」
「はい、失礼します」
「お姉さん、きれ~!」
続いて瑞希と葉月と秀吉を連れた明久が、中に入る。
「……お帰りなさいませ、ご主人様にお嬢様」
と、模範的な礼儀で出迎えた。
「ほら、いつまでも仏頂面してんじゃねえ」
「ちっ……」
今度は光一と、それに連れられ不機嫌そうな雄二。
「……お帰りなさいませ。今夜は帰らせません、ダーリン」
と、雄二に対して、かなりアレンジが加えられた出迎えが贈られた。
「お帰りなさいませ。サービスとして、保健体育の特別実習を一晩中行います」
「……特別実習終了後、全身の関節が粉々になるまでマッサージをさせていただきます」
と、これまたかなりのアレンジが加えられた出迎えがあった。
「……って、あれ?」
光一を出迎えたのは翔子ではなく、工藤愛子と木下優子の2名。
ちなみに前者を出迎えはニコニコと笑顔の愛子が行い、後者は目が笑っていない笑顔の優子が行った。
「霧島さんに工藤さん、木下さんも大胆です……!」
「ウチも見習わないとね……」
「あのお姉さんたち、夜の間ずっと遊ぶのかな?」
「姫路、優子のは大胆じゃない。島田、お前は誰をどう見習って明久をどうする気だ? 葉月ちゃんは、ずっとそのままでいてね? ……という訳で、お邪魔しました!」
と、光一は即座に回れ右をして、駆け出そうとする。
雄二もそれにあわせ逃げ出そうとするが、あっさりと翔子につかまってしまい苦し紛れに光一に抱きついて巻き添えに。
「テメ、何しやがる!?」
「1人だけ逃げようったってそうはいかねえぞ!?」
「離せゴリラ、俺にそっちの趣味はねえ!」
光一がそう言った処で、漆黒のオーラが放たれた。
「雄二、浮気は許さない……」
「まっ待て翔子、いくらなんでもこんな事で……」
「ちょっ、スタンガンはやめて! 俺まで……」
「代表、光一諸共にしっかりお仕置きしてやって」
と、優子の死刑宣告により、雄二は光一諸共に20万ボルトの餌食となった。
「では、お席にご案内いたします」
その他の面々は愛子の案内で席へと向かう事になった。
「……何で俺まで」
「お前が変な事言うからだろうが!」
「テメ、ゴリラ! お前が変な事するからだろうが!」
それから間もなく、光一と雄二がスタンガンのダメージを引きずりつつ、席へ。
一触即発の空気なので、自動的に離れた席に座る事を促す明久達。
「他のお客様の迷惑になりますので、騒ぎは控えてくださいませ。ご主人様」
と、優子に注意され、2人とも黙る事に
「あっ、悪いな……」
と、優子のメイド姿に、光一は絶句した。
「どうしたのよ、光一?」
「あっ、いや、その……」
「お前、やっぱりまだ吹っ切れてないだろ?」
雄二の突っ込みに、光一は苦虫を噛み潰した顔をした。
「ダメですよ、坂本君。誰かを想う気持ちを諦める事は、すごく辛いと思いますから」
「そうよ坂本。そう言う事でからかうなんて、感心しないわ」
そこへ、瑞希と美波のフォローが入り、その場は治まる。
余談だが、話し終えた2人の視線は明久へと向いた。
「あははっ、学園1の過激派って話だけど、随分と純情なんだね?」
そこには、ムッツリーニに敗れた“保健体育の実戦派”事、工藤愛子。
「あれ? 確か保健体育実践派の……」
「愛子、遊んでないであっちをお願い」
「あっ、うん」
優子に注意され、愛子は別のテーブルへと向かって言った。
それと入れ違いで、翔子が見るからに高級そうなメニューを持ってやってくる。
「……では、メニューをどうぞ」
翔子が用意したメニューを受け取り、それぞれ注文品を決定。
「うちは『ふわふわシフォンケーキ』で」
「あ、私もそれが良いです」
「葉月もー!」
と、女性陣は女性らしいメニューに。
「僕はえーっと……じゃあ、その、オレンジ、ジュースで。後、トーストお願い、します」
「ワシもそれで」
明久はそもそも、喫茶店で注文などする機会などない。
なので、少々無難な物で行く事にし、秀吉も便乗。
「俺はケーキセット。飲み物はコーヒー、エスプレッソで」
「んじゃ、俺は……」
「……ご注文を繰り返します」
雄二の注文を、翔子が遮るように声を上げる。
「……“ふわふわシフォンケーキ”を3つ、“トーストとオレンジジュース”を2つ、“ケーキセット、お飲み物はエスプレッソ”を1つ、“メイドとの婚姻届”を1つ、以上でよろしいですか?」
「全然よろしくねえぞ!」
「はい、以上でお願いします」
「テメ、光一!!」
「……では、食器をご用意いたします」
女子3人と光一の所にはフォークが、明久と秀吉の前にはストローが。
そして雄二の前には、実印と朱肉が用意された。
「しょ、翔子! これ本当にうちの実印だぞ! どうやって手に入れたんだ!?」
「……では、メイドとの新婚生活を想像しながら、おまちください」
と、翔子は優雅なお辞儀をして、キッチンと思わしき方向へと歩いて行った。
「さて、そろそろ本題に入るか。葉月ちゃん、この辺りで聞いたんだよね?」
「うん。嫌な感じのお兄さん2人が、おっきな声でお話してたの」
「もしかして、あの2人?」
たまたま話を聞きつけた優子が、入口を指差した。
そこには、坊主とモヒカンの2人組が.
「それにしても、この喫茶店は綺麗でいいな」
「そうだな。さっき言った2-Fの中華喫茶は酷かったからな!」
「テーブルは腐った箱だったし、虫もわいていたもんな!」
ワザとらしく、大声で悪評を叫び合う.。
特にAクラスの場合人が多い為、これなら噂もドンドン広まっていくだろう。
「待て、明久。光一も、懐から手を離せ」
連中を殴りに行こうとした明久と、懐からエアガンを取り出そうとした光一を止める雄二。
「雄二、どうして止めるのさ!? あの連中を早く止めないと!」
「落ち着け、こんなところで騒ぎを起こせば、悪評はさらに広まるだけだ」
「あんた達一体何したの? さっきからあの人たち何度もああしてるから、こっちも迷惑なんだけど」
訝しげに見る優子に、光一はさあというようにジェスチャーを。
「こっちが聞きたいよ。なあ優子、秀吉にメイド服を着せてやってくれないか?」
「なっ!? ちょっと、どういう意味よ!?」
「あのバカ共を黙らせる為だ。頼む」
「……わかった。秀吉、こっち」
光一の剣幕に押され、優子は秀吉を伴いバックへ。
「あの店、出している食い物もヤバいんじゃないか?」
「言えてるな。食中毒でも起こさなければ良いんだけどな!」
「2-Fには気を付けろってことだよな!」
今すぐ殴りかかりたい衝動を抑えつつ、秀吉の準備が終わるのを待つこと数分。
バックからメイド服を纏った瓜二つの2人が現れ、光一達の傍に駆け寄る。
「秀吉、良いか? あいつらにだな……」
「ふむふむ……わかったぞい」
と、ゆっくりと常夏コンビに歩み寄る秀吉。
「とにかく、汚い教室だったよな!」
「ま、教室のある旧校舎自体汚いし、当然だよな!」
タダの嫌がらせだろうと、明久達にとってはクラスメイトの命運がかかった喫茶店。
無論タダで済ますつもりもなく、雄二と明久はボキリと指を鳴らし、光一は懐からエアガンとスタンガン(30万ボルト)を取り出す。
「お客様」
秀吉が、さもこの喫茶店のウエイトレスの様に声をかける。
「何だ? へぇ。さっきのメイド……とはちょっと感じが違うな」
「結構可愛いな」
舐めまわすように見られ、秀吉は気持ち悪さに顔をゆがめる。
「お客様、こちらへどうぞ」
「おっ、何かサービスでもしてくれるってか?」
と、モヒカンの方の手を取ると大きく息を吸い込んで……。
「きゃあああああああああああっ!」
「え!? なっ、何でいきなりぐぁっ!!」
「こんな公衆の面前で痴漢行為とは、このゲス野郎が!」
「最低だね。雄二、とっちめてやろうよ!」
と、雄二と明久が2人を蹴飛ばした。
後ろの方では、スタンガンとエアガンを持つ光一の姿が。
「た、助けてください! この人たち、今私につかみかかって……」
「ちっ、違う! 今明らかに俺達の方がぐヴぁ!」
抗議しようとした夏川に、スタンガン(30万ボルト)が投擲された。
「ああ、明らかにお前らから襲いかかっていたな!」
「とんだ最低野郎だな。こんな公衆の面前で、辱めるとはよ」
「そうだ、俺達の目は節穴ではないぞ!」
誰もが節穴だと思うだろう。
「よし明久、光一、こいつらを連れていくぞ!」
「うん、わかったよ」
とりあえず、明久は先程スタンガンでダメージを追った坊主に歩み寄る。
「大丈夫? 君」
「ええ……ありがとうございます」
と、秀吉の服から何かがずれ落ちた。
明久はそれを拾い上げると、持ってた瞬間接着剤を使用して、坊主の頭にくっつける。
「くっ! 行くぞ、夏川!」
「こ、これ、外れねぇじゃねえか! 畜生、覚えてろ!」
モヒカンが逃げ出したにつれ、坊主の方も走り去って行った。
頭にブラをつけたまま。
「逃がすか! 追うぞ、明久、光一!」
「了解!」
「ああ。絶対にあいつらの黒幕、吐かせてやる!」
3人は2人を追いかけ、店を飛び出した。
「……お会計は、夏目漱石を2枚か坂本雄二の1名」
「並びに、久遠光一の1名ずつのどちらかとなります♪」
「ちょっ、ちょっと愛子!」
「坂本雄二と久遠光一の1名ずつでお願い」
そのあとの喫茶店では、女子3名と秀吉により光一と雄二が1人1000円で売り飛ばされていた。
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