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間話集 (4)
第百三十八問 間話 とあるはぐれ武闘派コンビのガチ対話
問題 次の問いに答えなさい

日本で初めて実測で日本地図を書いた人物を答えなさい


姫路瑞希の答え
『伊能忠敬』

吉井明久の答え
『伊能忠敬』

教師のコメント
正解です、流石姫路さんです。
そして吉井君も、先生は実にうれしいです。


久遠光一の答え
『わかりません』

教師のコメント
開き直るくらいなら、最初から白紙で提出してください。


坂本雄二の答え
『翔子から逃げるための地図を作ってほしい』

霧島翔子の答え
『雄二を捕まえるための地図を作ってほしい』

教師のコメント
仲が良いカップルのようで、何よりです。


土屋康太の答え
『学園の見取り図なら、頭にしっかり刻みこんである』

教師のコメント
その意味について、職員室で話を聞かせてもらいます。










明久が白夜と出くわしたその少し前。

「やれやれ、6人分に加えて2日分の買い出しとなると、結構な量になるな」

今日は仲良し5人組に、姫路を加えて光一の家で遊ぶ日。
どうせなので昼食を一緒に食べる約束もしてるため、光一は現在買い出しに出ていた。

量が量のため、非力な光一はキャリーケースでもなければ運びきれないので、それもちで。

「しかし、ちょっと前までは想像できなかったかな? 姫路も参加するなんて」

まだまだ信用はしていないものの、今日1日は様子次第では信用することにしていた。
現在の雄二が姫路がらみで事を起こせば、確実にまた妙な噂が蔓延するような状況であることを考慮しての配慮である。

実を言うと、雄二による瑞希と美波の3股という噂の真の狙いは、その辺りにあった。
雄二が事を起こせば、自動的にカウンターがかかる状況を作り上げる。
あわよくば、自分たちの行動を2人に自覚させるという狙いもあったが、そっちは半分が予想外にも外れた。

「……原始人じゃあるまいし、どうしてうちの学園の女どもは獣でも出来る慎重な行動が出来なくて、力ずくの発想ばっかりやるのかね?」

内心呆れつつ、まだまだ自分の気苦労は終わらないことにため息をついた。
現状ではハメて信用を落としでもしなければ、自分もそうだが明久にも平穏はとても訪れはしない。

それに彼の奇天烈な姉である、玲のこともある。

「さて、どうしたものか……?」

明久にも厳しく接することは決めていても、(雄二と玉野と島田の所為で)1セットで不幸が降りかかることが多い以上、どうやっても自衛が明久の保護につながる。
なのでこれは仕方のないことだ、とほぼ無理やりな納得をして……。

「……まずは漫研潰すことから始めるか。あのバカども、あれだけやったのに性懲りもなく“バカと銃神とバラの世界(明久×光一)”の新刊出しやがるみたいだし、予約の前金奪った上で設備と原稿ダメにしよう。部費の一部の使途ごまかしてカラオケ通いしてる証拠でも突き付けてやれば、何も言えなくなるだろうし」

とりあえず、噂の地盤を破壊することにした。
……兄のことがある以上、公にしないための配慮をした上で。

ちなみに雄二の件は、新聞部にある程度リークしてるため、責任が雄二に向くようになっている。

「事は目立たないよう、静かに迅速に的確にってね」

方針も決まったことで、光一はひとまず頭痛の種から頭を離した。
今日一日次第で、瑞希の監視をやめて普通に接する意味合いも兼ねた今日の事がある以上、こういう考えのまま接しては平等性に欠ける。

「これで少しは気苦労が……ん?」

ふと見た先で、何かこそこそしてるゴリラ……もとい、顔みしりを見つけた。

「何やってんだ雄二?」
「うおっ! こっ、光一!? くそっ!!」

ビュッ!! (雄二がとっさに光一めがけてパンチを繰り出す)
ガンッ!! (光一がとっさにフライパンを取り出し、雄二のパンチをガードした音)
バタバタバタッ!! (雄二が拳の痛みにのたうちまわる音)

「いてて、完全には耐えきれなかった……いきなり何すんだよあぶねえな!」
「お前こそフライパンでガードすんな!」
「「…………(ガンのくれ合い)」」

ドドドドドドドドッ!!

「ん?」
「っ! まずい!!」

雄二がとっさに路地裏の殻のごみ箱を開け、そこに避難した。
それと同時に、光一の視界にはFFF団が押し寄せてくる。

「休日出勤とは、お前らも暇だなー」
「暇なものか! 俺達は正義のために日々戦っているんだ!!」
「それより貴様、そのキャリーケースに詰め込まれている食材はなんだ? まさか工藤に木下を餌付けして陥落しようと……」
「アホか。今日は安売りだから、しばらくの食材を買い込んだだけ……で、今度は誰を襲ってんだ?」
「G級異端者坂本雄二だ、奴め霧島翔子嬢を無理矢理教会に連れ込もうとしていたのだ!!」

いや、事実はむしろ絶対逆だろ。
というツッコミはなしにしておいた。

「雄二なら学園の方に逃げてったぞ?」
「そうか、恩にきる!」
「そう思うんなら、異端審問会の1回位は免除してほしいよ」
「それは無理な相談だ」
「だろうな。それよりいいのか?」
「そうだ、行くぞ諸君! 異端者に死を!!」
「「「異端者に死を!!」」」

まるでバッファローの群れのように、FFF団は土煙を上げながら文月学園を目指し突進していった。
光一はゆっくりと携帯を取り出し、文月学園につなぐ。

口元を押さえながら、秀吉に教えてもらった声真似で。

「すみません。文月学園ですか? おたくの生徒らしき妙な集団が、迷惑行為をしながらそちらに向かってます」

匿名の情報提供者のフリをして報告し、即座に通話を切った。
一応番号非通知処理は忘れずに。

「……どういう風の吹きまわしだ?」

光一に疑うような視線をぶつけながら、隠れていたゴミ箱から這い出る雄二。
もともと折り合いが悪い2人だけに、助けることなど疑問を生むだけにすぎない。

「俺のちょっとした都合だよ、ゴミラ」
「ゴミとゴリラを混ぜて斬新な呼び方するな!」
「寄るなゴミ臭い。そんなことより、助けてやったのに感謝の言葉も言えんのかお前は?」
「こうなったのは全部お前のせいなんだよ!! お前が姫路をだました3股なんて濡れ衣着せやがった所為で、翔子が結婚の予定を早めるべきなんて言い出して無理矢理教会に連れ込まれたんだ!!」
「別に俺は何一つ嘘は言ってないし、軽はずみなことをして噂を勝手に蔓延させたのはお前らだろ。そんなだから俺の手で踊る手乗りゴリラから上にあがれねえんだ」
「「…………(メンチの切り合い)」」

ちなみにこのやり取りをしてる間に、周囲には人気がなくなっていた。
巷では悪鬼羅刹と呼ばれる雄二と、凶王と呼ばれる光一のにらみ合いだけに、その度合いは一般人にはとても耐えられる代物ではない。

「いつも思うことだけど、お前は逃げるしか出来んのか? 事の責任は俺達に押し付けようとするわ、霧島の事にしろ責任もろくに取ろうともしねえと、逃げ回ってばかりじゃねえか」
「うっ、うるせえな。大体はお前らがヘマやった所為だし、お前にゃ翔子の事は関係ねえだろ」
「じゃあ聞くけど、お前のその言葉は建て前か本音か、どっちなんだ?」
「っ! ……何のことだ?」

光一の指摘に、雄二は顔をそむけた。

「そうやって責任から逃げ続けて、霧島を不幸にするんだな?」
「……いつもいつも、人を見透かしたかのような事言いやがって。俺はお前のそういうすかした態度が、お前と明久の幸福よりも大嫌いなんだよ!」
「奇遇だな。俺もお前のそういう逃げ腰を隠してるフリが、お前の自由より大嫌いだ」
「……(ぎりっ!)」


その数十分後、路地裏の人気のない細道にて。

「はぁっ、はぁっ……流石悪鬼羅刹、簡単ってわけにはいかないか」
「くっそぉっ……どこまでもむかつく針金モヤシが」

壁に寄り掛かる雄二と、そこらで拾った棒を杖に肩で息をしながら、脇腹を押える光一。
実はこの2人、こうしてガチで相対することは久々だった。

「……お前の眼から見て、霧島の気持ちは偽物だと思うのか?」
「……思ってねえし、俺じゃなかったら素晴らしいものだとも思ってる。だが!」
「だったら否定なんかするな。何があったかは知らねえが、霧島の気持ちは他の誰でもない霧島だけのものなんだ。受け入れろとは言わないけど、理解だけはしてやれよ」
「っ! ……やっぱりてめえは気に入らねえ!」
「それで結構だ! 俺もそれは否定しねえし、俺だってお前なんか気に入らねえし大嫌いだ!」

殴られた脇腹を抑えながら、雄二に歩み寄り拳を突き出す。
雄二は乱暴に拳をそれに合わせ、強めに合わせた。

「……光一、お前が翔子を理解出来るんなら、お前にもあるんだな? まあお前の場合は翔子とは違うベクトルだろう、他の誰でもないお前だけの感情が」
「……ああっ、あるさ。変わる事も消える事もなく、拭うことも出来やしない、他の誰でもない俺だけの感情がな」
「へっ! 精々その感情とお前の兄貴につぶされちまえ。それを見て大笑いしてやるからよ」
「ぬかせ。お前と霧島のガキの名付け親になってやるまで、潰されてたまるか」
「「…………(ガンのくれあい)……ふんっ!」」

光一はキャリーケースを手に、よろよろとその場を去っていった。
その場に残された雄二は……

「痛い所突きやがって……わかってんだよ、そんな事……」

吐き捨てるように、そして自身を責めるように、頭をかきむしるようにして顔を手で覆った。


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