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試験召喚戦争編
第十二問
問題 以下の文章の( )にはいる正しい物質を答えなさい
『ハーバー法と呼ばれる方法にてアンモニアを生成する場合、用いられる材料は塩化アンモニウムと( )である』

姫路瑞希の答え
『水酸化カルシウム』

教師のコメント
正解です。アンモニアを生成するハーバー法は工業的にも重要な内容なので、確実に覚えておいてください


久遠光一の答え
『小便』

教師のコメント
下品な回答はやめてください


土屋康太の答え
『塩化吸収材』

教師のコメント
勝手に便利な物質を作らないように


吉井明久の答え
『アンモニア』

教師のコメント
それは反則です










午前10時、Aクラス教室にて。

「改めてみると、すごいな」
「だよね」

巨大サイズのプラズマディスプレイ、人数分用意されたシステムデスクにリクライニングシート。
パソコンや個人用エアコンや冷蔵庫まであり、その中身も学園側で管理。

「しかも担任が美人で才女の高橋女史と来れば、破格もいい所だ」
「私の担任するクラスになりたかったのなら、振り分け試験で相応の結果を出すべきです」
「ご最もで」

立ち会いとなるのは、Aクラス担任であり学年主任である、高橋女史本人。

「では、両名とも準備は良いですか?」
「ああ」
「……問題ない」

それぞれの代表が、決意表明。

「それでは、1人目の方、どうぞ」
「Fは当然、俺からだ」
「アタシから行くよ」

Fクラスから真っ先に名乗り出たのは、切り込み隊長こと久遠光一。
対するAクラスはその幼馴染である木下優子。

「科目は何にします?」
「じゃあ、物理に……」
「ちょっと待って」

光一の科目選択の申し出を、優子が割り込んだ。
……怒りのオーラを纏った素敵な笑顔で。

「? ……どっ、どうしたんだ、優子?」
「ちょっと話があるんだけど、良いかな? 秀吉も」
「えっ!? あっ、姉上? せめて、この勝負が終わってからで構わんかの?」
「じゃあ光一は後でいいわ。大丈夫よ、すぐ終わるから」

逃げようとした秀吉を取り押さえ、そのまま優子は教室の外へ連れ出す。
助けを求める秀吉に、光一は頭を下げた。

「アンタ達、Cクラスで何してくれたのかしら? どうしてアタシがCクラスの人たちをブタ呼ばわりしてる事になってるのかなぁ?」
「それは、姉上の本性をワシなりに推測して……あ、姉上! ちがっ、その関節はそっちには曲がらなっ……!!」

ガラガラガラ!

「秀吉、急用ができたから帰るってさっ」
「世間一般では、急用じゃなく救急と呼ぶんじゃないか?」
「じゃあ光一、あんたとも早く話をしたいから、早く済ませましょ?」

光一にとって、それは死刑宣告だった。

「……せめて、話し合う余地くらいは欲しいんだが?」
「なあに?」
「……いえ、何でもありません」

せめてもの抵抗だったが、優子の良い感じの笑顔に二の句を告げられなくなった。
ついでだがAクラスの面々に、過激派筆頭の意外な一面を垣間見た。

「……改めて、教科は物理でお願いします」

終わったら人目のある所をメインに、さっさと逃げよう。
と、光一は心の底で、逃亡ルートを考えてると……

「ねえ光一、一つ提案があるんだけど、良いかしら?」
「提案? 何だよ?」
「この戦い、2回線目も含めたタッグ戦にしない? 教科は物理で良いから」
「おいおい、どういうこった?」

Aクラス相手では難しいかもしれないが、明久の召喚獣の操作技術は3~4倍の点数相手に十分有利に戦える。
それに加え、光一の召喚獣は遠距離からの精密射撃に長けている為、コンビとしては相性が良い。

少なくとも、DクラスやBクラスでコンビとしてそれなりに戦果をあげている事は、知れ渡っている。

「もちろん、貴方達のコンビを倒せる自信があるからよ」
「大口叩いてくれるじゃねえか。明久、俺達タッグの力見せてやろう」
「うん、わかった」

明久が一歩前に出て、光一と拳をうちあった。
それに対し、Aクラス側は次鋒を予定していた佐藤美穂。

「待ってくれ木下さん、佐藤さん。タッグであれば、僕に……」
「その言い分は却下した筈よ、久保君」
「だが僕には、奴を倒さなければならない理由が……」
「これは競争じゃなく戦争よ? 文系の久保君に、物理で光一に勝つ事は出来ないわ」

重ね重ね言うが、彼、久保利光(♂)は、吉井明久(♂)に好意を抱いている。
その為相棒という間柄で最も親しい親友であり、“デキてる”との噂まである光一を忌み嫌っていた。

「……何でかな? 久保君が現れた途端、妙な寒気がおさまらない」
「前にも言ったが、それはお前がノーマルである証拠だ。むしろ寒気を感じなくなった時が、お前の最後だと言ってもいい。忘れるなよ?」
「? ……うん、わかった」

久保が渋々と後ろに下がり、タッグ戦の組み合わせは決まった。

『Fクラス 久遠光一&吉井明久 物理498点&62点』
  VS
『Aクラス 木下優子&佐藤美穂 物理398点&389点』

「やっぱり見劣りするな……」
「まあまあ、不足分はコンビネーションで埋めればいいさ」

学年で最も戦ったFクラスの中で、常に先陣をきってきたコンビ。
それだけに、コンビネーションに関しては学年1を誇る技量を持っていた。

「光一が腕輪所有とは言え、遠距離型。距離を詰めればどうという事はないわ」
「はい。実質2対1ですし、何とかなりそうですね」
「ちょっと! 完全に僕は眼中なしですか!?」

当たり前である。

「それでは、始めてください」
「よし、行くぞ明久。サモン!」
「うん。サモン!」

改造制服に木刀という装備の、明久の召喚獣。
毛皮のジャケットに右手にライフル、左手に自動拳銃を持った光一の召喚獣。
その2体が姿を現した。

「覚悟しなさい光一、サモン!」
「では、行きます。サモン!」

西洋鎧に、ランスという装備の優子の召喚獣。
方や、同様に和式の服を纏い鎖鎌という装備の召喚獣。

「近距離型と中距離型か……明久、優子を頼む。俺は佐藤だったか? その召喚獣とやるから」
「うん、わかった。でも良いの? 僕が木下さんで」
「良いに決まってる……というか、むしろお願いします」
「だったら先鋒辞退すればいいのに……っと!」

そこへ、ランスを持って突撃してくる優子の召喚獣。

「ちょっ、強い上に早すぎ!!」
「当たり前だろ。2人とも姫路クラスの点数なんだから!」

木刀で横からなぎ払い、そのまま軌道をそらす。
そのまま明久の召喚獣は木刀を振り上げ、優子の召喚獣に一撃!

「よし、行けるか!」
「よそ見をしないでください」

そこへ光一の召喚獣めがけて、鎖鎌が投げ放たれた。
が、苦もなくライフルで撃墜。

「俺の弾丸は当たる。それは当然、最も弾き易い個所も例外じゃない」
「良く召喚獣でそんな芸当が出来ますね?」
「そういう一芸に秀でてるのが、Fクラスなんだよ。たかが最低クラスと甘く見るな!」

自動拳銃を構え、佐藤および優子の召喚獣に向けて発砲。
……だが。

「え?」
「あなたの攻撃パターンは研究済みです」

武器を持つ腕、あるいは脚を狙って発砲した弾丸は、全てよけられた。

「だったら何だってんだよ!」

先ほどと同じく、足元めがけて発砲。
それを回避した直後……。

「明久、突き飛ばせ!」
「うん、わかった!」

ランスを振り下ろす優子の召喚獣の懐に入り、そのまま突き飛ばす。
それを狙うかのように、光一はキーワードを。

「“爆発”!」

光一の召喚獣の腕輪が光り、その次の瞬間打ち出した弾丸が着弾。
それを中心に弾丸が爆発し、Aクラス召喚獣のみを吹き飛ばす。

「あっ、危ないよ光一。僕もギリギリだったんだけど?」
「俺がそんな下らん凡ミスをするか」
「まあ雄二と違って、光一はそんなことする訳ないから信じれるけど……あれ?」

煙が晴れると、そこにはよろよろと立つ敵召喚獣。

『木下優子 物理136点』
『佐藤美穂 物理149点』

「流石はAクラス、一筋縄じゃいかんか」
「当たり前よ……けど、どうしよう?」

光一の腕輪の能力は、Bクラス戦での使用のみ。
その為まだあまり知られておらず、対策も立てていなかった。

「よし、良いぞ久遠に吉井! そのままたたみかけろ!」
「やったれFクラスの切り込み隊長コンビ!」
「お前をフった木下優子に、目にものを見せてやれ!!」

ドスッ!!

「あっ、あれ? 光一!?」
「……だッ大丈夫だ。これしきで参る俺じゃない」

「余計な事言うな須川! さっきの事を忘れたのか!?」
「すっすまん……」

実は光一、内心では吹っ切れてはおらず、今だ未練タラタラだった。

「あの、木下さん。フったというのは、どういう事です? 久遠君と交際されているのでは?」
「なっ! ちっ違うわよ! あんな犯罪者臭いバカなんて、知り合いどころか接点がある事すら嫌だっていうのに!!」

ドスッ!!!

「……あの、光一?」
「……」
「光一? ねえ、光一!? ……すみません、タッグ戦棄権します。雄二、運ぶの手伝って!」
「あっ、ああ、わかった! 光一、しっかりしろ!!」

『Fクラス 久遠光一&吉井明久 物理401点&68点』
  VS
『Aクラス 木下優子&佐藤美穂 物理136点&149点』

Fクラス棄権につき、Aクラス勝利

「あの、木下さん。もっと言い方というものが……」
「……優子、今の言い方は酷過ぎる」
「あの、そういう意味で言ったんじゃなくて、その……」

だが木下優子に対して、Aクラスの面々は冷たかった。

「では、3人目のかたどうぞ」
「…………(スック)」
「じゃあ、ボクが行こうかな? 1年の終わりに転入してきた工藤愛子です、よろしくね」

Fクラスからは、ムッツリーニ事土屋康太。
Aクラスからは、ショートカットのボーイッシュな女の子が出て来た。

「どう、落ち着いた?」
「すまん……本当に、どう詫びたらいいのか」
「気にするな。惚れた女にあんな事言われたら、ああなるのも無理もない」

その傍らでは、復活した光一が許可を貰ってハーブティーを呑んでいる。
その辺りも、しっかりと完備されているAクラスだった。

「教科は何にしますか?」
「…………保健体育」
「土屋君だっけ? 随分と保健体育が得意みたいだね。でも、ボクだってかなり得意なんだよ? ……キミと違って、実技でね」

その言葉に、Fクラスの面々は沸いた。
そのうち、明久も例外ではない。

「そこのキミ、吉井君だっけ? 勉強苦手そうだし、保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?」
「あっ、俺も混ぜて。出来れば実技での教授を希望したい」
「良いよ……って、もう復活したの?」
「元々フラれてる訳だし、優子の性格もガキの頃から知ってるから、これ位どうという事はない」

それを聞いて、優子は少々複雑な表情を見せた。

「じゃあ光一も交えて、是非ご教授を……」
「吉井には永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育の勉強なんていらないのよ!」
「そうです! 永遠に必要ありません!」
「島田に姫路、明久がさっきの光一位に死ぬ程悲しそうな顔をしているんだが」

試召戦争で精神的に瀕死に追い込まれた人物は、おそらく後にも先にもこの2人だけだろう。

「そろそろ召喚を開始してください」
「はーい。サモンっと」
「……サモン」

DにBと、出番がなかった忍び装束に2本の小太刀を持つムッツリーニの召喚獣。
そして愛子の召喚獣は、セーラー服に巨大な斧を持ち、その腕には腕輪も装備されていた。

「実戦派と理論派、どっちが強いか見せてあげるよ」

愛子の召喚獣が、腕輪を光らせて踏み込む。
斧が雷光を纏い、高得点で得たスピードで距離を詰め飛び上がった。

「それじゃ、バイバイ。ムッツリーニくん」
「…………加速」
「え?」

突如ムッツリーニの召喚獣の姿が消え、相手の射程外に。
そして……

「…………加速、終了」

ムッツリーニが呟いてから一呼吸置き、愛子の召喚獣が倒れた。

『Fクラス 土屋康太 保健体育572点』
  VS
『Aクラス 工藤愛子 保健体育446点』

「そ、そんな……! この、ボクが……!」

相当ショックを受け、愛子は床に膝をついた。

「これで2対1ですね。次の方は?」
「あ、は、はいっ。私ですっ!」
「それなら、僕が相手をしよう」

Fクラスからは姫路瑞希、Aクラスからは学年次席である久保利光。

「ここが一番の心配所だな」
「ああ……事実上の、学年次席争いってところか」

振り分け試験でリタイアこそしたものの、そうでなければどちらが学年次席の座でもおかしくはない。
それほど点数はほとんど同じだった。

「科目はどうしますか?」
「総合科目でお願いします」

と進言したのは、久保利光。
総合科目は学年順位がそのまま影響する。

「ちょっと待った! それは……」
「構いません!」
「姫路さん……」
「信じてやれよ明久、Fクラスの姫路瑞希をよ」

『Fクラス 姫路瑞希 総合科目4409点』
  VS
『Aクラス 久保利光 総合科目3997点』

「ま、マジか!?」
「いつの間にこんな実力を!?」
「この点数、霧島翔子に匹敵するぞ……!」

至る所から驚きの声が上がった。
点数差400点オーバーなのだから、無理もない。

「ぐっ……! 姫路さん、どうやってそんなに強くなったんだ?」
「……私、このクラスのみんなが好きなんです。人の為に一生懸命な皆の居る、Fクラスが」
「Fクラスが好き?」
「はい。だから、頑張れるんです」

瑞希が礼をした後に、下がる。
光一に背を軽く叩かれた明久は、一歩前に。

「御苦労さま、姫路さん」
「……はい」

「……もしかして、杞憂?」

ただ1人、その光景を見て安心しつつ羨ましげに見ていた人が居た。

「これで2対2です。最後の1人、どうぞ」

圧倒的勝利の上、敗北も殆ど運による物という結果。
Fクラスがここまでやるとは思っていなかったのか、高橋女史も若干焦りの表情を浮かべる。

「……はい」
「俺の出番だな」

最後は当然、互いのクラスの代表同士。

「教科はどうしますか?」
「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は100点満点の上限ありだ!」
「わかりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。少しこのまま待っていてください」

ノートパソコンを閉じ、高橋女史は教室を出ていく。
そして、Aクラスの面々はどよめいた。

「上限ありだって?」
「しかも小学生レベル、万点確実じゃないか」
「注意力と集中力の勝負になるぞ……」

2人の代表は、一旦自分達の陣地へと戻る。
まず雄二に声をかけたのは、明久。

「雄二、後は任せたよ」
「ああ、任された」

明久が差し出した手を、雄二はぐっと握る。
次にムッツリーニが歩み寄り、ピースサインを雄二に向けた。

「お前の力には随分助けられた。感謝している」
「…………(ふっ)」

口の端を軽く上げた笑みを浮かべ、ゆっくりと戻っていく。
次は瑞希が歩み寄った。

「坂本君、あのこと、教えてくれてありがとうございました」
「ああ、明久の事か。気にするな、後は頑張れよ」
「はいっ!」

最後に光一が、雄二に向って拳を差し出す。

「泣いても笑ってもこれが最後だ。気を引き締めろよ」
「ああ。光一、お前と明久が一緒に成した功績には、随分助けられた」
「なあに、俺がやりたいからやったまでだ……頼むぞ、代表」
「ああ」

コツっと、拳をぶつけ合わせた。


所変わって視聴覚室。

「では、最後の勝負、日本史テストを行います。制限時間は50分、満点は100点です」

その様子はAクラスの巨大プラズマディスプレイに映し出され、他の面々はそこで待機。

「不正行為などは即失格になります。良いですね?」
「……はい」
「わかっているさ」
「では、始めてください」

そして、問題は始まった。
Fクラスの面々は、ディスプレイに映し出される問題を凝視し始める。

勝利のカギを、懸命に探すために。

<<次の( )に正しい年号を記入しなさい>>
( )年 平城京に遷都
( )年 平安京に遷都
   ・
   ・
   ・
( )年 鎌倉幕府設立
   ・
   ・
   ・
( )年 大化の改新

「あった……あったぞ!」
「じゃあ、ウチ等の卓袱台が……」
「うん! 最下層に位置した僕たちの、歴史的な勝利だ!!」
「「「うおぉぉおおおおおお!!!」」」

Fクラスの面々が、歓喜の雄たけびを上げた





<日本史勝負 限定テスト 100点満点>
『Aクラス 霧島翔子 97点』
  VS
『Fクラス 坂本雄二 53点』




Fクラスの卓袱台が、みかん箱になった

「総員、武器をとれ! これよりあのゴリラ野郎を処刑するぞ!!」
「光一に続け! 期待と信頼を裏切ったあのバカ野郎に、僕たちの怒り全てをぶつけてやるんだ!!」
「「「おおおおおおおお!!!」」」

Fクラスの面々は、怒りの雄たけびを上げ視聴覚室へと
先陣を切るのは久遠光一、続くは吉井明久。
全員の手には久遠光一のコレクションが握られていた。


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