問題
『バルト三国と呼ばれる国名をすべてあげなさい』
姫路瑞希の答え
『リトアニア、エストニア、ラトビア』
教師のコメント
その通りです
久遠光一の答え
『魏、呉、蜀』
教師のコメント
先生も三国志は好きです
土屋康太の答え
『アジア、ヨーロッパ、浦安』
教師のコメント
土屋君にとっての国の定義が気になります
吉井明久の答え
『香川、徳島、愛媛、高地』
教師のコメント
正解不正解の前に、数が合っていないことに違和感を覚えましょう
終戦後のBクラスにて。
「明久よ、随分と思い切った行動に出たのう」
「うぅ……痛いよう、痛いよう……」
「大丈夫か?」
痛みのフィードバックで、両手を抑えて呻いている明久。
召喚獣でやったとは言え、鉄筋コンクリートを壊したフィードバックは、相当なもの。
「ま、でもお前らしい作戦だな」
「で、でしょ? もっと褒めても良いと思うよ?」
「後の事を考えず自分の立場を追い詰める、男気溢れる素晴らしい作戦じゃな」
「……遠まわしにバカって言ってない?」
明久の作戦は当然問題にならない訳もなく、放課後は職員室で過ごす事が決定。
初犯でなければ、留年や退学も大いにありうる事である。
「ま、それが明久の強みだからな」
そこへ雄二が歩み寄って、明久の肩をバンバンと叩く。
明久の方は、バカが強みと言われ多少ショックを受けていたが……。
「さて、それじゃ嬉し恥ずかし戦後対談と行くか。な、負け組代表?」
「では不貞腐れたクソヤロー君、覚悟は良いかね?」
「……」
雄二と光一の視線の先には、先ほどまでの強気がウソの様に大人しくなった根元が床に座り込んでいる。
それを見る光一は、実に楽しそうだった。
「本来なら設備を明け渡して貰い、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントする所だが、特別に免除してやらんでもない」
雄二の発言に対して、周囲が騒ぎ始める。
Fクラスは当然として、敵側の面々も。
「落ち着け皆。前にも言ったが、俺達の目標はAクラスだ。ここがゴールじゃない」
「ここはあくまで通過点でしかない……そういう事だろ? 代表」
「ああ。だから、Bクラスが条件を呑めば解放してやろうと思っている」
光一の補足も合わさり、Fクラスの面々は雄二の性格を理解し始め、納得した表情となった。
Bクラスも3ヶ月間ボロボロの教室に縛られる可能性からの脱却ともあり、雄二に視線が集まる。
「……条件はなんだ?」
「条件? それはお前だよ、負け組代表さん」
「俺、だと?」
「ああ。お前には散々好き勝手やって貰ったし、正直去年から目ざわりだったんだよな」
と、普通に聞けば雄二の言葉は酷い言い様だが、彼はそれだけの事をやってきた。
その証拠にFクラスどころか、Bクラスの面々も誰1人としてフォローしようとしない。
「そこで、取引だ。Aクラスに行って、試召戦争の準備が出来てると宣言して来い。そうすれば今回は設備については見逃してやっても良い。ただし、宣戦布告はするな。すると戦争が避けられないから、あくまで戦争の意思と準備があるとだけ伝えるんだ」
「……それだけでいいのか?」
訝しげに尋ねる根本に、光一は冷たく言い放つ。
「ああ……だが残念な事に、お前にはさっき最悪の罵倒をされたんで、それ相応の罰を受けてもらう」
「そういう事だから、Bクラスがコレを着て先程言った通りの行動をしてくれたら、見逃そう」
そう言って雄二が取り出したのは、秀吉の変装の為に用意しておいた女子制服。
雄二の方も、どこか楽しそうにしていた。
「ば、バカな事を言うな! この俺が、そんなふざけた事を!」
「Bクラス生徒全員で、必ず実行させよう!」
「任せて! 必ずやらせるから!」
「それだけで教室を守れるなら、やらない手はないな!」
懐からエアガンとスタンガンを取り出そうとした光一だが、Bクラス面々の主張に手を止めた。
慌てふためいていた根本だが、その面々の同調にさらに慌てふためき始める。
「やっぱり随分と評判が悪いな、お前は」
「んじゃ、決定だな」
「くっ! よ、よるな変態ぐふぅっ!!」
逃げようとした根本だが、Bクラスの面々が取り押さえ腹部に一撃。
「とりあえず、黙らせました」
「お、おう。ありがとう」
「手間が省けた。明久、早速着付けに入ろう」
変わり身の早さに、雄二もあっけにとられた。
が、すぐに気を取り直した光一は、明久とで早速着付けに移り始める。
「……男の服を脱がすって、思った以上に苦痛だな」
「うん……けど、これも目的のため」
2人してゲンナリとしつつ、服を脱がしていく。
まあ男が男の服を、それもクズ相手なのだから無理もない。
「うっ、うう……」
「ん? 明久、ちょっと離れろ」
「うん」
うめき声を上げる根本から明久を離し、光一は懐からスタンガンを取り出す。
「寝てろ」
「がふぅっ!!」
最大出力(50万ボルト)のスタンガンを当てて一発。
根本の服をすべて脱がしたうえで、光一と明久は女子制服をあてがう。
「うーん……これどうやって着せるんだろ?」
「その前に、順序はどうなんだ?」
だが男子制服と勝手も違う為、全然わからず難航し始める。
「私がやってあげるよ」
「そう? じゃあ折角だし、可愛くしてあげて」
Bの女子相手に、明久はそう提案するも……。
「それは無理、土台が腐ってるから」
だが否定する様に手を振って、笑顔でそう言い放った。
「酷い言い様だな……それじゃ明久、さっさと根本の制服捨ててから手を消毒しよう」
「光一、そっちの方が酷いよ……じゃあ、よろしくね」
「そうだ、これ消毒液だ。着替えさせたら使うといい」
「ありがとう」
消毒液を渡した後、2人してBクラスを後に。
それから明久が根元の制服を探り、ある封筒を取り出した。
「あったあった」
嬉しそうに封筒をポケットに入れて、用がすんだ制服は近くにあったゴミ箱へ。
彼は家まで女子制服の着心地を楽しむ事になるだろう。
そして2人は、手の洗浄および消毒を行った後Fクラスへ。
「それじゃ俺は帰るから」
「うん! じゃあまた明日」
光一は鞄を手に、明久も瑞希の卓袱台と駈けだしていった。
Fクラスを出て少し後に、瑞希が教室に入っていく姿を見つけた光一はにやりと笑みをうかべる。
「さて、明日の報告が楽しみだな」
「まあ明久じゃから、あまり期待は出来んじゃろうがな?」
「ん? ああ、秀吉か」
ふと横を見ると、秀吉の姿が。
「でもある意味、面白くはあるだろ? 実は雄二ではなく自分だった……って後で知ったら」
「確かに面白そうじゃな。さて、帰るとしようかの?」
「ああ」
「こっ、この服、やけにスカートが短いぞ!?」
ふと、聞こえて来た叫び声。
見てみると、そこには女子制服を纏い髪にリボンを付けた、根本氏の姿が。
「はっ、吐きそうじゃ……」
「ああっ。提案しといてなんだが、おぞましい」
「きっ、貴様は久遠! よくも俺にこんな事を!!」
第一印象を言い合ってると根本が気付いて突っかかろうとするが、付き添い2名に取り押さえられる。
光一は懐にやった手を戻し、笑顔で御苦労さまと労う。
「すまない久遠、これから撮影会があるから急がないといけないんだ」
「きっ聞いてないぞ!?」
「それはそれは。写真が出来たら送ってくれ、2度と舐めたマネをしない様しっかり管理するから」
付き添いの2人が笑顔で頷く傍らで、根元は忌々しげに久遠を睨みつける。
「久遠光一、この恨みは必ず返してやる!」
「無駄口をたたくな!! ほら、キリキリ歩け!」
「くっ……覚えていろ、絶対にこの事を後悔させてやる!!」
と、見事にお決まりの台詞を残して、去って行った。
「さて、帰るか?」
「うむっ……ところで光一よ、しばらく家に泊めてもらえんかの?」
「え? 何で?」
「……今朝の事じゃ。あれが姉上にばれたら、ワシは車椅子か寝たきりにされてしまうのじゃ」
ふと、秀吉が優子になりすまし、Cクラス相手に散々罵倒した事を思い出す光一。
あれが優子にばれたら……
「……じょっ、冗談はよせよ。俺まで共犯にされちまうかもしれないだろ」
「何を言うのじゃ光一。これはFクラスの作戦であるから、お主も同罪じゃ!」
「だったらお前も悪のりするなよ!」
「お主も楽しんだであろう? 頼む光一、ワシを見捨てんでくれ!」
涙目で上目使いに懇願する秀吉に、流石に光一も何も言えなくなる。
「……わかったよ。じゃあ早速優子に会う前に」
「アタシがどうかしたの?」
「「ぎゃあっ!!」」
突然割り込んできた声に、2人は心臓を鷲掴みされるかのように驚いた。
話題の中心人物である優子その人である。
「しっ心臓が……止まるかと思った、ぞい」
「いっ、いきなり声をかけるなよ優子……びっ、ビックリした」
「? なんだかよくわからないけど、ごめん」
その様子を見て、まだCクラスからの宣戦布告はないらしい。
そう安著し、深呼吸。
「いや、こっちも悪かった」
「そう。それじゃ一緒に帰りましょ?」
「あれ? 一緒に?」
「あんた達を2人で居ると誤解されるから。3人一緒の方がわかりやすいのよ」
光一は優子より、秀吉の方と仲が良い。
実は噂の大半は秀吉を優子と誤認してのものだった。
「お前も大変だな」
「全部アンタ達の所為でしょ!」
「その言い分はあまりにも理不尽じゃ姉上」
多少機嫌が悪そうな優子を伴い、靴箱へ。
「で、Bクラス戦はどうだったの?」
「勝ったけど、どうかしたか?」
「……設備の入れ替えは?」
「さあ?」
優子の質問を、のらりくらりとかわす光一。
「……もしかして坂本君は、Aクラスが狙いなのかしら?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも戦争は勝算があるからこそ仕掛けるものだろ?」
「そうだけど……じゃあ、大丈夫かしらね?」
Aクラス代表にして学年首席、霧島翔子。
彼女に太刀打ちできるのは、Fクラスにおいては姫路瑞樹くらい。
単科目で言えば、物理で光一、保健体育でムッツリーニと言ったところ。
しかしそれ以前に、Aクラスの戦力は当然Bクラス以上。
ハッキリ言って、雲の上の存在。
「まあ出来れば、静かにして貰いたいわね。Cクラスも殺気立ってる様だし」
「……そうだな。そうしたいところだな」
「……そうじゃの」
「?」
Cクラスという単語を聞いた時点で、2人は狼狽し始めた。
が、何の事かわからず、その場は適当にごまかされる。
「そうじゃ姉上、しばらくじゃが友人の家に泊まる事にしたぞい」
「そう? ……なんか怪しいわね?」
その次の日。
「……優子、どういう事か理由を説明して」
「そっそれは、アタシにもどういう事かさっぱり……まさか!」
Cクラスからの宣戦布告で、優子はその理由を知ることとなった。
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