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幸せの種
作:倖


僕がまだ小さい頃、半ズボンなんか履いちゃってお気に入りのプロ野球のキャップをかぶって、朝から晩まで泥だらけになりながら遊んでいたあの頃。
家に帰れば汚した服を見て怒る母さんに、
「男はそうでなくちゃ」
と笑う父さん、何して遊んだのと聞く姉さん。ごく普通の家庭で育った僕の将来設計は壮大だった。
まず自分の意識をもち喋ったりご飯を食べるロボットがいて、自分の職業は宇宙船か何かのパイロットで世界を股にかけてて家に帰れば美人な奥さんがいる。

そんな“すごく幸せな僕”イメージをしていた。

あれから十数年、小さい頃想像していた“大人の僕”になった。
届かなかった本棚の上段の本も簡単に取れる声は女の子と間違えられない、少しは賢くなったし働くようにもなった。だけど想像していたように凄いものはないし、案外普通だ。

だけどあの頃より粗末にしているものが一つある。何かを粗末にしている。
小さい僕、何だかわかる?

例えば…
“好きな子”君にもいただろ?好き同士とかじゃなくて、
「僕の好きな子はね」
っていえるような素敵な女の子。いたよね。その子に朝誰よりも早く一番に笑顔で会えたとしたら?

給食に大好きな焼きそばが出て、しかも自分のお皿のは山盛りだったら?

君だったらもうキャッキャッとはしゃいじゃうよね?
それがちょっと落ち込んでる時にあったとすれば?落ち込んでたのが嘘のように元気になっちゃうよね?

そんな時に僕がよくいってたのが“幸せの種”の話。
『好きな子に会えるのも、焼きそばが大盛りなのも、気分がちょっぴり晴れるのも、僕が大切にしてる“幸せの種”がやっと花を咲かせたから、叶ったんだよ。大事に大事に育てた種が花開いたんだ』
そう、大人の僕は“幸せ”を粗末にしているんだ。

“好きな子”とは好き同士になれたよ?だけど会うのが当たり前、いつも傍にいるのが当たり前になってて、そこに“幸せ”なんてちゃんと感じてない。

会社の食堂で、焼きそばがいつもよりちょっと多めで盛られて出された。お金は払ってるんだからそれくらい当たり前。そんなふうに偉そうな考え方になってしまっている。

僕は大きくなるにつれ、“幸せの種”の育て方を忘れちゃったんだね。
種を大事に大事に育てなきゃ“幸せの種”を花咲かせ幸せを手に入れれなかった僕は、簡単に得られるようになった“幸せの花”の価値を分かってなかったようだ。
“幸せの種”を粗末にしてる僕に、小さい僕はがっかりしちゃった?

その癖に面白くないとか苦しいとかの“不幸”には凄く過剰に反応する。
“幸せ”は大きいのにしか気付かないくせに、“不幸”はどんなに小さくても敏感。
小さくたって“幸せの種”はいろんな所にあるのにね。
小さな事には気付かなくなるのは、大人になったら普通なのかもしれない。

でも僕は僕が小さい頃の日記に書いてあった“幸せの種”の話を読んで、小さい幸せだって“幸せ”なんだっていう“幸せの種”を手に入れたから、大事に育てなくちゃならない。
だって、それに気付けたことも“幸せ”なんだもんね。

パイロットにはなれないけど君が想像してた幸せな僕の姿になれるように、君からもらった“幸せの種”を粗末にしないでいつかはいっぱいの花を咲かせるよ。そして花からまた種を作って、いっぱい育てるね。

ありがとう、小さい僕。僕は今“幸せ”だよ。


はい、いかがでしたか?「I wish…」の更新しつつ、短編をまた書いてみました。
こう書いていますが、実際は難しいものです。どうしても不幸に敏感なんですよね、人って。そんなこと思いながら、書きました。
感想なとありましたら、聞かせて下さい☆
読んでいただきありがとうございました。













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