深夜の出来事
深夜の交番、警官が机に向かい事務処理を行っている。そこへ、一人のタクシー運転手が訪れた。警官は運転手に席を勧め、促されるまま腰を掛けた運転手は、困惑した表情で切り出した。
「信じて頂けるか分かりませんが、先程、とても不思議な体験をしまして…。事故と言っていいものか、事件と言っていいものなのか…」
躊躇う運転手に、警官は慣れた口調で言った。
「あなたは駅で髪の長い女性を乗せた。すると、その女性は行き先に霊園を告げ、目的地に着くと、乗せた筈の女性の姿は消え、後部座席が濡れていた。…と言うんでしょう?」
自分の言いたい事をズバリ言い当てられた運転手は目を丸くして、警官に聞く。
「凄い、何で分かったのですか?」
「だって、あなたがここに訪れるのは数十回目ですからね。どうせ、私がトイレか飲み物を取りに行っている間に、あなたも消えていなくなり、その椅子が濡れているんでしょ?」