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キョーハク少女  作者: ヒロセ
第三章 空回る僕ら
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楽しい文化祭準備

 二時間丸々準備をしたことでほとんどの小物がそろった。

 机や椅子を全部後ろへ追いやり教室前方に作ったスペース。そこに並べられた今日作られた様々な飾りを一度眺め、沼田君が隣に立つ僕に聞いてきた。


「あと少しだな。これが終わったらすることなくなっちゃうのか?」


「えーっと、後は、バックヤードって言えばいいのかな? そこと教室を区切る仕切りに模様を掻いたり、おはぎを作るところに屋台みたいなのを組み立てたりするみたい。でもこれは時間が余ればでいいって書いてあるよ」


「んじゃ、余ったしそれも作るか。それ作らなかったら暇すぎるし」


「そうだね」


「その仕切りってのはパーテーションみたいなのどこからか借りてくんの?」


 借りようと思えば、恐らく学校にあるはず。


「えっと、でも、それだと模様描けないんじゃ……」


「紙に書いて貼り付ければいいんじゃね?」


「あ、そうだね」


 直接書く必要はないよね。さすが沼田君。


「屋台みたいなのってのは、自分たちで木の棒買ってきて組み立てればいいんだよな?」


「多分、そうだと思う」


「まだ三週間あるし、楽勝だなぁ。忙しいのは当日だけか」


「そうだね。飲食系ってどこも大体そんな気がするよ」


「そっかそっか。じゃあ仕切りと屋台が終わればすることなくなるのか?」


「えーっと、後は客引き用の看板を作っても面白いかもって書いてある」


「あー、それはあった方が面白そうだな。それ作ろう」


「そうだね」


 沼田君はやっぱりすごい。僕なんか比べ物にならないね。リーダーの素質が僕とは天と地だよ。すごいや。


「じゃあ、まずは――」


 沼田君が何か指示を出そうとしたとき、


キーンコーンカーンコーン……


 六時間目が終わった。終ってしまった。


「終わっちゃったなぁ」


「うん」


 五時間目のはじめにホームルームを済ませているのでもう放課後だ。もう先生は教室に来ない。

 他のクラスは授業が終わっても準備をしているところが多いけれど、僕らはどうしようか。

 そんな意図を込めて沼田君を見てみた。いつの間にか沼田君は教室の後ろの方にカバンを取りに行っており、遠くの方から僕に声をかけてきた。


「じゃあおれ部活行くから、後は佐藤任せた!」


「え、あ、うん」


 沼田君は部活があるもんね。今は文化祭の準備で部活を休んでもいいことになっているけれど、レギュラーで頼られている沼田君なら行かなくちゃいけないよね。


「じゃあみんな、佐藤の指示に従って俺に構わず準備を進めておいてくれ! じゃ!」


 沼田君が颯爽と教室を飛び出して行った。


「……」


 その瞬間、明らかに教室の空気が変わった。


「えっと、あの、みんな――」


 僕の声はすぐにかき消される。


「俺らも部活行くか」


「そうだな」


 男子達も後ろに追いやられた自分の机からカバンを取り教室を出て部活へ向かった。

 このクラスの男子は、僕以外みんな部活に所属しているから仕方がない事だ。

 今教室内には数名の女子と僕だけが残っている。


「その……――」


「私達も帰ろうか」


「そうだね」


 僕の言葉を聞くことなく、女子達も先ほどの男子達と同じようにカバンをとって教室を出て行ってしまった。

 僕だけが一人教室内にいる。

 机や椅子のない広いスペースで、作った小物たちに囲まれて一人みんなが出て行ったドアを眺めている。

 寂しい。

 やっぱり、沼田君がいなければ何もできなかったようだ。

 僕はどうしようもなく嫌われてしまっているようだ。

 とりあえず作った飾りを片付けてから、後ろへ詰めていたみんなの机を元の位置に戻しながら考えてみた。

 どこで間違ったのだろう。

 今の状況を間違っているとは言いたくはないけれど、完全に正しいとは言えないはず。

 あの時、違う人ならもっとうまくやれたはず。うまく楠さんを助けられたはず。そうしたら違う未来が僕を待っていたんだ。

 ここは僕が夢見ていた未来なのかな。

 後悔はしていない。後悔なんてするはずがない。

 楠さんを助けることが出来た、それだけで僕にとっては上出来なのだから。

 

 でも、それでも。


 こういう時には、寂しくなった時にはついつい違う未来を想像してしまう。

 もしあの時――楠さんを助けたのが沼田君だったら、とか。

 きっと沼田君ならみんなが笑顔で終れたんだ。罵っていたみんなも、前橋さんも、雛ちゃんも、楠さんも、そして自分自身も、みんな笑顔。

 あの時の僕は、楠さんを笑顔にできただけ。

 それでも僕は満足だけれども、結局はどう取り繕っても僕には不相応の役目だったという事実は変わらない。

 後悔はしていないけれど、今の状況はとても寂しい。後悔はしていないけれど、違う人ならあの時もっとうまくやれた。

 後悔はしていないけれど、後悔はしていないけれど――

 いくつもの『後悔に似たもの』があふれ出してくる。

 友達がいなければ、その『後悔に似たもの』は全部後悔になっていた。

 友達ができたことはおつりがくるほどの幸せだから、なにものにも勝る最高の幸せだから、僕は後悔なんかしない。

 大切な物を得られた僕は幸運だったんだ。後悔する理由が無い。

 力不足の僕が楠さんを助ける役に抜擢されたことはこれ以上に無い幸運なんだ。


 あの時山で白馬を見ていなかったのなら。白馬を見ていたのが他の人だったのなら。楠さんが責められているとき傍観者だったのなら。


 そんなこと、考えたくもない。

 もし他の人が楠さんの秘密を目撃していたのなら、僕は今も一人だったのだろう。

 今ほどは冷たくない視線の中、孤独な僕。

 家に帰って弟やお姉ちゃんと遊んだり、自室にこもりスカイぺ越しにまりもさんと会話をしたり、一人でアニメを見て無為に時間を過ごしたり。

 少し前の自分の姿のはずなのに妙に寂しく見える。この生活が続いていたと思うとぞっとする。さらにその生活の中で幸せだと感じる瞬間があったことにも驚くばかりだ。

 確かに不満は無かったから幸せと言えば幸せだったのだろうけれど、それ以外の幸せを知らなかったからそう言えたのだ。今は、もう無理だ。孤独は本当に寂しいものだと知ってしまったから。

 だから、冷たい視線をもらいながらも友達が一緒にいてくれる生活は幸せ以外に言いようがない。

 後悔はしていない。後悔なんかするはずがない――

 ――……でもひょっとしたら、もう少し良い未来もあったのかもって、そう思うことがあるんだ。

 孤独ではないけれど瞬間的に孤独を感じることがあるので、それが寂しくて、悲しくて……。

 沼田君みたいにみんなから好かれる人間だったのならよかったのになって。そう思うことがあるんだ。

 時々ね。


「ふぅ」


 みんなの机をもとに戻し終え、一息。

 一度教室全体を見渡してみる。

 綺麗に並んだ机と椅子。

 やけに重い机があったけれど、教科書を持って帰っていないんだね。

 調理班と裁縫班がまだ帰ってきていないのでひとまず自分の机に座り少しだけ残った飾り作りを進めていく。

 外から聞こえてくる部活の声はいつもより小さい。結構な数の人が文化祭の準備を続けているんだ。来年は準備も楽しめるような催し物を考えてみようかな。当日忙しいんじゃあ文化祭を楽しめないし、なんだかんだ言って準備の時が一番楽しかったりするものね。

 まあ、来年は委員長職についてはいないだろうけど。

 とりあえず飾りを作って行こう。

 もう少しで教室二周分に到達する折り紙の鎖の先を伸ばす作業。不器用な僕にもできる簡単なお仕事です。

 いっちょまえにも色の配分を気にしたり最後の輪っかは金色の折り紙を使ってみようかなとか考えたり一人にやにやと楽しんでいると、廊下の方からざわざわと話し声が聞こえてきた。恐らく調理班か裁縫班が帰ってきたのだろう。

 手を止め戸の方を見ていると、勢いよく戸がスライドして人が入ってきた。


「だからてめえ役に立たねえのなら掃除でもしてろよ!」


「うるせえな! 俺だって一生懸命手伝おうとしたんだよ! 縫うところ間違えただけでそんなにキャンキャン喚くなよ!」


「小嶋君!? 有野さんに向かってなんて口のきき方をしているんですか?! そのふざけた口を縫うミシンを買う貯金を始めますよ?!」


「勝手にしてろよ」


「じゃあします! お金が溜まったらミシン買いますからね?!」


 楽しげに裁縫班の人たちが帰ってきた。


「ん? おー優大」


 雛ちゃんが教室の隅っこに座っていた僕に気づき笑顔で手を挙げてくれた。

 縫っていた物は家庭科室に置いているようで手には何も持っていない。進行状況が気になった僕はどんな様子か聞いてみた。


「おかえり。調子はどう?」


 僕の問いに苦々しい表情を作り答える雛ちゃん。


「ああ。小嶋がいなけりゃ完成してた」


 それを聞いて横に立っている小嶋君が苛立たしげな様子で言う。


「だからちょっと間違えただけじゃねえか! お前はねちねちうるせえなぁ!」


「あり得ねえ間違いするからこうやって言ってるんだよバカ。ほんっとお前は役に立たねえなぁ。もう帰れよ。しっし」


 犬を追い払うかのように手を振る雛ちゃんを見て小嶋君は怒りゲージを増加させる。


「お前いらね」


 雛ちゃんのこの言葉でゲージが溜まった。爆発だ。


「ふざけんじゃねえよこいつ! じゃあお前ミスるなよ! 間違ったところ縫うなよ?!」


「縫わねえよこの役立たず。あんな間違え方するのは学年最下位のお前くらいだよ」


 ぐぐぐと唸る小嶋君。

 前橋さんが雛ちゃんを見て興奮している。


「そうですね! 小嶋君は役に立たないので今度二人でお裁縫をしましょう有野さん!」


「んー? あー、そうだな」


「約束ですよ?!」


「はいはい」


 うっと鼻を押さえる前橋さんの目はハート形に見えた。

 なんだか、とっても楽しそうだね。少しだけ疎外感。

 僕らの班も楽しかったけれど、正確には僕は輪に入れていなかったし、最後は一人になってしまったし。みんなとわいわい準備したかったな。

 こっそり落ち込んでいる僕に向かって雛ちゃん。


「みんなはもう帰ったのか? 若菜は?」


「調理室に行った人はまだ帰って来てないよ。飾りを作っていたみんなはもう帰ったよ」


「……なんで優大一人で作業続けてるんだよ」


 雛ちゃんの目つきが鋭くなる。


「あ、これはみんなが帰ってくるのを待とうと思って、暇だったから」


「一人でやらされてたってことはねえよな」


「それは無いよ。大丈夫」


 鋭い目つきをほにゃんと閉じてはぁと息を吐いた雛ちゃん。


「……ならいいんだけど」


 心配してくれてありがとう雛ちゃん。

 そんな雛ちゃんの周りには、僕を軽蔑したような目で見つめる女の子たちが立っている。雛ちゃんが僕のような人間に気を遣っているからだろう。気を遣わせるなよ、と。ちなみに小嶋君はまだイライラしているようで、少し離れたところで「絶対に間違えるだろあれは……」とか「大したミスじゃねえよ」などと小さくつぶやいていた。一体どんなミスしたのかとても気になるけれど、人のミスを根掘り葉掘り聞くのもあまりいいことだとは言えないから聞くのはやめよう。


「優大。私もそれ手伝うわ」


「あ、大丈夫だよ? もう終わるし」


「いいから」


 雛ちゃんが近づいてきて僕の前の席に腰を下ろした。


「あ、みんなはもう帰っていいから」


 ドア付近に立っていたみんなに手を振り折り紙にハサミを入れ始めた。

 みんなはと言えばやはり僕に向かってマイナスな感情のこもった視線を送ってからそれぞれの放課後に移って行った。前橋さんはマイナスではなく零の視線を僕に向けている。零の視線がよく分からないけれど僕を消し去りたいという願望が視線に現れているのだろう。とりあえず白目を剥いている。怖い。


「じゃあ俺も帰るか。じゃあな佐藤。なんかおすすめのアニメがあれば持ってくるわ」


「あ、うん。ありがとう。またね」


 僕はもう与えられる側なんだね。嬉しい事なのか、悲しい事なのか。多分、総合的に見て悲しい事。


「じゃあな佐藤。有野はバーカ」


「うるせえな役立たず! 死ね!」


 雛ちゃんが中指を立てて小嶋君を送り出していた。


「ったく、あの野郎ムカつくぜ……」


「その、仲がいいね」


「あぁん? どこをどう見ればそう見えるんだよ。ふざけたこと言うと優大だろうが許さねえ……ことはねえけどちょっと嫌だぞ」


「ごめんね。でも、とっても仲良しに見えたよ?」


「どこがだよ。ああ、いやどうでもいいわ。そんなことよりこれしようぜ。懐かしー」


 折り紙の鎖を伸ばしていく雛ちゃんはとても楽しそうに見える。


「でも面白くねえな」


 楽しくは無かったらしい。

 鎖を置いて新しい折り紙を手に取った雛ちゃん。折り紙の色は雛ちゃんの髪の毛と同じ色。一枚しかないぴかぴかの折り紙。


「私鶴折るわ」


 何故か鶴を折り始めた雛ちゃん。折鶴は作る物リストに含まれていなかったけれど、これも飾りに使えるからいいよね。

 何度目の『ちなみに』か分からないけれど、ちなみに、前橋さんは白目を剥いたまま僕を見続けている。……怖い。


「優大って折り紙苦手だったっけ?」


「え、あ、うん」


 白目。


「鶴くらいは折れるだろ」


「その、多分」


 白目。


「ちょっと折ってみろよ」


「あ、はい」


 白目。というか、白目を剥いていたら僕は見えていないよね。……瞬きもしていないけれど、もしかして気絶しているの……?

 横目でちらちらと見ていたところ、ゆっくりと口が動いたので気絶はしていないらしい。


『ウ セ ロ』


 ぱくぱくしている。前橋さんそんなキャラだったっけ?

 言い訳にしかならないけれど、僕は手の震えが止められずその状態で作った鶴はとても酷い出来だった。見るに堪えないとはこのことだ。まさに僕そのもの。


「なんだよこれ」


 雛ちゃんが楽しそうに笑いながら僕の鶴を掲げている。


「お前不器用すぎるだろ。料理できるんだからこれくらい楽勝だろ」


「料理も、その、得意ではないし」


「弁当作れれば充分得意だろ」


 雛ちゃんの手に納まっている僕の作った鶴。見れば見るほどへたくそだ。でも、雛ちゃんは言った。


「これ、もらっていいか」


「え? そんな汚い鶴を?」


「そんなの関係ない。じゃあ、優大には変わりにこれやるから」


 雛ちゃんが金ぴかの鶴を僕に渡してきた。僕が作った物とは比べ物にならないほど美しい鶴。普通の折り紙ではないので少しだけ固くて重い。

 金色で、真っ直ぐで、しっかりしていて、とても綺麗だ。


「ありがとう」


 これは、僕の宝物。


 そうこうしているうちに再び廊下から話し声が聞こえてきた。

 もちろん調理班が帰ってきたからだ。

 前橋さんの背後の戸が開いた。


「おはぎも簡単だね」


「そうでしょ? 安いしおいしいしね」


 和気あいあいと教室に入ってくる楠さん御一行。前橋さんは我に返ったように後ろを振り向き楠さんと顔を合わせる。


「あれ? どうしたの前橋さん。なんでそんなところに立っているの?」


「……ふん! 別に楠さんには関係ありません!」


 ツンと冷たく顔をそらし自分の席へ行く前橋さん。首をかしげそれを見ていた楠さんが僕らに気づき近づいてきた。


「調子はどう? お二人さん」


 にこやかに問いかけてくる楠さんに、僕もにこやかに返す。


「うん。大体できたよ」


「有野さんの方は?」


 雛ちゃんは普通の顔で返していた。


「順調じゃねーの? あーでも小嶋いらねえ。あいつ邪魔」


「まあまあそう言わずに。で、どうして二人で飾りを作っているの? 他のみんなは?」


「裁縫班は帰した。内装班は帰った」


「なるほどね」


 何かに納得したようで大きく頷い楠さん。


「じゃあ私も飾り作ろうかな」


 僕の隣の席に腰を下ろす楠さん。


「あ、もうみんな帰っていいよー! お疲れ様! おはぎの作り方当日まで忘れないでねっ!」


 とても透き通った声を聞き、みんなが当然のように僕に例のあの視線を送ってから各々帰り支度を始めた。僕に視線を送るのは義務みたいだね。悲しいや。

 でもそれと交換で友達を手に入れたのだから。贅沢を言ってはいけないよ。

 楠さんから帰宅の許可をもらった調理班のみんなが帰り支度を始める中、一人だけ僕らのそばに寄ってくる人がいた。


「……あの……」


 三田さんだ。


「どうしたの三田さん? 帰ってもいいんだよ?」


 優しく言う楠さんをちらりと見たあと、今度は僕をちらりと見てすぐに目を伏せて言う。


「……私も、手伝うよ」


 そう言って僕の斜め前の席に座り紙の鎖をいじり始めた。

 これで、僕を含めて四人。

 みんな友達。

 なんだか、僕の望んでいた文化祭準備が実現した気がする。

 友達と一緒に楽しく準備する。さっきはうまく行かなかったけれど、今は楽しく――


「いいよお前ら帰っても。私たち二人で充分だよな、優大」


「そんなこと言わずに有野さん。みんなでやった方が早く終わるでしょ? ねえ三田さん?」


「あ、はい」


「そんなにかしこまらないでよ。私怖い?」


「……怖くは、無いです」


「ならどうして畏まるの? 仲良くしようよー」


「美月はお前をウザがってるんだよ」


「ちょっと、佐藤君はウザくないよ。あ、ウザいか」


「優大の事は言ってねえよ! お前のことだよ!」


「どうだか」


「てめえ……!」


「……その、佐藤君は、鬱陶しくないから……」


「え、あ、うん。ありがとう」


「ほら、有野さんも佐藤君を励ましてあげて」


「はげますよ! 優大はウザくねえからな! 安心しろ!」


「う、うん」


「で、佐藤君は私を励ます」


「……え?! なんで?!」


「なんでって……、あ、佐藤君すでに禿増してた」


「僕禿てないよ?!」


 楽し……く?

 ……。

 うん。楽しいね。

 これが僕らだもん。

 ふと、楠さんと三田さんの間から椅子に座る前橋さんの姿が目に飛び込んできた。


「……ふむ……」


 何故だかわからないけれど、前橋さんが興味深げな表情で僕らの様子を観察していた。

 よかった。白目で見られていたら堪らないからね……。

 そう言うわけで、僕は幸せだ。


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