第5話:魔法とは?
「ではまず、魔法と言う物の定義に関してですが、扱うには原則3つの物と2つの動作が必要になります」
エイサムの葉を煎じたと言う赤く温かい液体をすすりながらアヤちゃんが言う。
コレ、美味くね?つか紅茶じゃん…エイサムエイサム、あぁ俺らの言う『アッサム』か?
「3つの物と2つの動作?」
「はい、まずは3つの物について…これは魔力・精神力・マナパワーの事を指します」
魔力とは放った魔法の威力に直接影響し、持てる魔力・込める魔力が高いほど高威力の魔法を放てる。
精神力は放った魔法の範囲・軌道に直接影響し、持てる精神力が高いほど広範囲かつ複雑な軌道で魔法を放てる。
マナパワーは放てる魔法量に影響し、これが高ければ高いほど多くの魔法が放てるようになる…つまり魔法を使えば減り、ゼロになると一時的に魔法が使えなくなる。
「例えば力が強いとか素早いとか、そう言った個々の能力値がいくつかあるんですが…その中で『魔力・精神力・マナパワー』の3つが、平均値より高い人の事を『魔法使い』と呼びます」
「…どこぞで聞いたような話だな」
「はい?」
「いや俺のいた世界に『ゲーム』って擬似体験型嗜好品?があるんだが、その『ゲーム』にも色んな種類があるんだよ…その種類の1種に『RPG』ってのがあるんだが…それに魔法が出てきて、設定がよく似てるって話さ」
「はぁ…オホン、そしてそう言った魔法は魔法使いしか使えませんが、元々非魔法使い…例えば戦士や商人と言った人が、訓練により微々たる威力の魔法を使えるようになる例もあります」
…ファイナル○ァンタジーか?
…テイル○系か?
…ドラゴン○エストか?
いやこの国の名前が「ルクスリア」だから、多分3○aysだろうな。
「では次です…魔法は発動させる歳、マナパワーを消費して放ちますが…放つ際どうしても魔力や精神力も磨耗しますので、極論として魔法を無理して撃ち続けると死にます」
おおう、やっぱり乱用は死を招くか。
やはり『サ○ダー』や『ファイ○ボール』『ヒャ○』と言った初級魔法から始める他はないって訳か。
つかいきなり「シル○ェ、疾く!」なんて言ったらその場で死にそうだな。
「なるほど」
「またマナパワーは大気や自然の中にあるマナパワーを取り込んだり、体の中で常時生み出されるのです…なのでマナパワーだけは時間経過と共に少しずつ回復しますが、魔力と精神力に関しては睡眠を伴う休みを取らない限り回復しませんのでご注意を」
「大気や自然の中のマナパワーはどうやって取り込むんだ?」
「大気中のマナパワーは基本的に呼吸で、自然の中は食事で取り込みます」
アヤちゃん曰く誰しもが平然と当たり前に行っている呼吸は、酸素や水素…窒素や二酸化炭素だけでなく、同じく大気中に含まれる『魔法原子』も一緒に取り込むのだと言う。
またこの『魔法原子』は自然物にも付着、蓄積され…それを経口摂取しても取り込むことが出来ると言う。
「なるほど…じゃあ魔力・精神力・マナパワーの3つは訓練や経験で上限が上がったりする訳だ?」
「ハイ、ですがその上昇量が微妙で…しかもマナパワーの基本的にあまり上がりません」
「だよなぁ、MPって育てるの難しいし」
「えむぴー?」
「いや、マナパワーの俺式略語…マナパワーって育てるの難しいし…って言ったの」
「良くご存知ですね…それも『あーるぴ-じー』ではよくあるんですか?」
「まぁね」
ならほぼ決められたMPを使い、効果的な魔法を魔力と精神力で撃つ必要がある訳か。
かと言って要所だからいきなり最強魔法を撃てばいいって話でも無い…死んじゃうし。
ア○テマとかインディグ○イションとかギガデ○ンと言った強力な魔法は即死級、と。
「具体的にはどうやって撃つの?」
「そうですね…それが必要な行動の2つ、即ち『想像する事』と『正しい言葉を発する』ですね」
「『想像する事』と『正しい言葉を発する』…か」
「後々説明はしますが、例えばこの魔法…雫よ集いて球と成せ、水の球!」
―コポポポポ…―
言うとアヤちゃんの手の上に丸い…直径6cmほどの水の球が出現し、それが中空でフヨフヨ漂っている。
「水の球を投げる自分を想像し、それに適切な言葉を該当させるんです…ただこの時注意してほしいのが『正しい言葉』には、これから自分が魔法として起こす現象を象徴するに相応しい単語を入れる事を忘れないでください…入れ忘れると魔法としては形を成しません」
例えば水の魔法を使うなら『雫』や『水』、『アクア』や『ウォーター』
例えば土の魔法を使うなら『砂』や『岩』、『マット』や『アース』
「なるほど…水の球を投げる自分を『想像』し…そのイメージを的確に表現できる『正しい言葉の発声』が必要って事か…よし」
俺は想像する。
投げ放つと一直線に飛んで行き、着弾地点で炸裂四散する圧縮された火の球。
そしてその火の球を野球のオーバースローで投げる俺を。
投げるは火の球でだから相応しい単語は『火』で、後はアヤちゃんの『水の球』の【正しい言葉】をアレンジして…
「火よ燃えて爆ぜよ、火の球!」
―シュバッ!―
「きゃっ!」
すると俺の手から丸い…直径4cmほどの火のボールが出現してまっすぐ飛び、それが狙い通りアヤちゃんの手の上にある水球と激突…一瞬にしてそれを蒸発させ、水蒸気を発生させる。
「リョウ、様?」
「あ…ゴメン」
「どうして謝られるんですか!?」
「いやだって驚かせちゃったし…」
「そうではありません、今!リョウ様は!あれだけの説明で!魔法を撃ち!私の魔法を!相殺したんです!」
ふんふんと鼻息荒く語るアヤちゃん。
何でもあれだけの説明で魔法を撃ち、あまつさえ距離が近いとは言え…たった6cmの小さな的を正確に射抜き、あまつさえ誰も怪我をしないのは物凄く珍しいと言う。
「俺って魔法の才能あるのかな?」
「大アリです!凄いです!流石リョウ様ですっ!」
まるで自分の事の様に嬉しそうなアヤちゃん。
そんな彼女を俺は、子犬を見るような顔で見ていた。
…衝動はどうとして、この子は俺の癒しだ…。
「では次のステップです…雫よ集いて集いて集いて球と成せ、水の球!」
―ゴボボボッ!―
言いつつアヤちゃんはその手に今度は3つ、水球を出現させる。
「このように魔力・精神力が高ければ、同じ魔法をいくつも同時に使う事も出来ます」
「ふむ…そう言った場合、正しき言葉はどうなるの?」
「同じ物を数回…例えば今の場合ですと『集いて』を3回唱えるだけですが、それだと唱える度に魔力・精神力・マナパワーの3つを同じだけ消費します」
「つまり今アヤちゃんは水の球を同時に3つ出してるから、その分魔力・精神力・マナパワーの3つの消費量は3回分って事か」
「その通りです」
「じゃあアレだ、例えばその『水球3つ』ってのを具体的に想像できる言葉があれば、ひょっとすると魔力・精神力・マナパワーの消費も少なくて済む?」
「理論的にはそうですが…今の所『水の球を同時に3つ』を的確に示す言葉…魔法名は誰も開発してないんですよ」
そりゃそうだ…マテマテ。
俺の世界にゃそんな魔法として使えば有効な言葉、ゴマンとあるぞ?
「アヤちゃん、もし仮にその『水の球を同時に3つ』を的確に示す言葉を誰かが開発したら、それは凄いの?」
「それはとんでもなく素晴らしいです…この世界に伝わる魔法は全て開発者がいて、開発者の生み出した魔法は全て書物で記録されて永劫保管されます」
「うわ…じゃあ迂闊に新魔法名を開発したら国は大騒ぎか」
「ハイ、もう魔法絡みのお偉いさんがやってきて上から下への大騒ぎになりますので…力ある魔法使いは、自身オリジナルの魔法を非公開にし、隠匿する方も居られます」
「……アヤちゃん、多分その『水の球を同時に3つ』だけど、俺…1回で発動出来るよ?」
「…は?」
「火の球でだけど……見ててね?」
俺はイメージする。
燭台を、その上に乗ったロウソクの先端で燃える複数の火を。
「火よ我が指先で点りて燃え踊れ、燭台の先端火炎!」
―ボボボボッ!―
魔法名を唱えると、広げた俺の指先で直径5cmほどの火球が4つ…親指を除く全ての指の先端で燃え上がる。
誰だ『五指爆炎弾』だなんて言う奴は?
「そんな…まさか新魔法開発成功の瞬間に立ち合えるなんて……何を想像したんですか?差し支えなければ教えて頂きたいのですが」
「う~ん…どうしようかなぁ」
やっぱ隠匿するだろ、普通。
「リョウ様ぁ~…」
そんな事を考える俺を、目をウルウルさせて見上げるアヤちゃん。
アヤちゃんの身長は目測155cm…身長170cmの俺からすりゃ…ヤバイ、やっぱりアヤちゃんは子犬だ。
抱き締めてわふわふしたりギュッてしたい…。
「じゃあコレ、俺とアヤちゃんだけが使える魔法って事で」
「…ハイ!」
「想像するのは簡単だよ…元の題材はアヤちゃんも見た事があるはずだし、あぁ…この部屋にもあるよ?」
「えっ?」
「…アレ」
俺の指差す先には、ロウソクを4本乗っけた金細工の燭台が。
それと俺の手をジッと見比べ…やがてしたり顔で頷くアヤちゃん。
「燭台…あぁなるほど!それぞれのロウソクを単体で想像するのではなくて、燭台そのものを『手』として想像するんですね!?」
「そうそう、アヤちゃんも充分頭いいじゃん」
「あ、ありがとうございます……えと火は苦手で、んと…火よ我が指先で点りて燃え踊れ、燭台の先端火炎!」
言ってアヤちゃんも右手の親指以外の全指に、俺と同じような直径5cmほどの火球をそれぞれ浮かべる。
「あぁっ!出来ました!!」
「ホラね?」
俺は執務室の机の上にある燭台から火を消し、燭台から離れる。
すると俺の意を汲んだのか、アヤちゃんがその燭台に向かって先端で火の点る手指を振った。
―シュボボボボッ!―
綺麗な放物線を描いて飛んだ4つの火球は見事ロウソクの芯を捉え、俺が消した火とは別の火を点火する。
「あぁ、感激です…」
「よし、魔法の事は大体掴んだな」
「そうですね…じゃあ魔法の最終ステップです」
「よっしゃ、ドンと来い!」
「魔法にはそれぞれ属性があります」
「やっぱな」
「それは今使った水、リョウ様が私の水の球を打ち消した火など…総じて火・水・風・土の4つが基本です」
「ふむ」
四則か?
火は水に弱く、水は土に弱く、土は風に弱く、風は火に弱く…これ四剋じゃん。
「例えば局地的な地盤隆起を起こす土属性の魔法『岩盤の反乱』や、突風の刃を引き起こして相手にぶつける風属性の魔法『強風の白刃』などもあります」
テンプレだな。
後はいかに想像でき、それを言葉で表現できるか…か。
「そしてその4つを4元素と呼び、ここから習得するのが魔法使いとしての第一歩です」
「4元素ね?」
「ハイ…そしてそれを踏まえた上で、適性ある者が4元素の派生種…分素魔法の習得に進みます」
「分素魔法?」
「ハイ、分素は4元素の2つを混ぜ合わせる事で生み出されます…例えば
火 ← 水
↓ ↑
風 → 土
…これが4元素の基本的な強弱関係ですが、この関係を精神力で押し潰して乗り越えるのが分素魔法です」
紙に書いて説明するアヤちゃん。
なるほど…強弱関係を見る限り、やはり『四剋』と言う表現は正しいようだ。
あれだ、ピンクブロンドで当初は魔法の使えないツンデレ少女が出てくる小説で言う『ラインメイジ』の領域だな。
「例えば水と風で氷属性、土と水で木属性…と言った具合です」
「なるほど…強弱関係にある4元素だと両方使わなくちゃダメで、弱い方を意図して強く発動させなくちゃならないわけか」
「その通りです…そして更に、例えば火・水・風の3つとそれに纏わる分素を極めて光属性としたり、風・土・水の3つとその分素で闇属性なんて言い方をする『始素魔法』と言う魔法属性もあります」
始素は基本的に3元素2分素の魔法を扱えなければならないため習得は非常に困難だとアヤちゃんは言う。
これは『トライアングルメイジ』あるいは『スクウェアメイジ』だな。
「始素はまだ光と闇のみが見つかっているだけで、他にもあるかもしれません…これも見つける、開発すると大騒ぎですが」
またそれぞれの基本となる4元素は人によって得て不得手があり、それを『得意元素』と呼び…またそれによって始素はおろか分素の習得すら難しいとも教えてもらった。
「ちなみに私は得意元素が水、シズさんは風です」
「あ、だから召喚の間が密室なのにアイツが動くだけで風が起こるのか?」
「ええ、あれは風属性の『疾風の斬撃』と言う魔法を利用した高速剣技です…とは言ってもシズさんは訓練で風魔法を使えるようになったタイプでして、もともと得意属性は持ってなかったんですよ?」
「抜剣から接近までが見えないはずだぜ…なるほどな、訓練次第ではあそこまで使えるようになる訳か」
ルクスリア王国では全人口中2割が魔法を使え、2割中の約70%が火…のこり20%が風を得意元素としている事が分かった。
ちなみにアヤちゃんの様に得意元素が水、または土だと言うのは非常に稀らしいが…アヤちゃんにはある秘密があるから水が得意らしい。
また火も風も、もともとそれを得意元素として所持しているのはどちらも10%程度だという。
「得意元素の属性は習得も簡単なら成長度合いも高く、訓練を絶やさなければほぼ確実に強力な魔法を撃てるようになります…ですがその得意元素を打ち消してしまう元素の魔法は習得も難しく中々成長しません」
だから魔法使いは基本、自身の得意元素1つを集中的に伸ばすのだと言う。
「さて、そんな始素・分素・元素の魔法ですが、それらを纏めた『素系魔法』とは別に『補助魔法』と言うのがありまして…こちらは属性の強弱関係や得意元素は一切影響せず、魔法使いならば訓練すれば誰でも使えます」
「使い方は?」
「そうですね…素系魔法はその系統を示す言葉を、例えば火や水と言った言葉を魔法名に含ませる必要がありますが…補助魔法はそれらを一切含みません…その上で言語解釈的に矛盾のない言葉を唱えるとそれが補助魔法になります…もちろん『3つの物と2つの動作』は必要になりますが」
「その場合『正しい言葉』も、起こす現象を的確に表現する単語を?」
「はい…ただこの『補助魔法』における『正しい言葉』は、起こす現象を…他者が聞いて理解・納得できる単語を含ませなければなければならないんです」
「動きを速くするなら『我が身の動きを加速せよ』とか?」
「そう…ですね、はい…その通りです」
他者が聞いて理解・納得出来る単語を含ませる、か…ん?
「って事は、その補助魔法がいかにハチャメチャでも…マナパワー・魔力・精神力が十分で、的確なイメージとそれを他者が聞いて的確に理解・納得できる単語が含まれてさえいれば…」
「はい、仰るとおりです…なので実際は素系魔法より補助魔法の方が恐ろしい場合もあるんです」
なんてこった…質量保存を筆頭とするあらゆる物理法則を無視できるのか。
しかし、聞いてみて実行してみて始めて理解できるだろう…イメージが貧相でなければ、補助魔法で相手を殺傷する事も出来るだろうからな。
「あとこの『補助魔法』に関して、効果付与武具と呼ばれる物があります」
永続的に補助魔法がかかったままの武具を指し、その武具を装備した物は装備解除するまで、その魔法が自身にかかったままに出来る装備品。
件の小説に出てくる、触れるだけで『現在発生中の相手の魔法』を吸い取る魔剣『デルフリ○ガー』もそれに近い道具なんだろうな。
「これはリョウ様が王政運営中に何度か見る機会もあると思います」
「へぇ…便利だな」
「ハイ、この効果付与武具は入手の方法が主に3つありまして…」
1つ…補助魔法が予めかかった効果付与武具を拾得する。
「モンスターや敵が落とした物を拾うって事か?」
「そうです…またコレには相手を殺害して奪う手段も含まれます」
2つ…補助魔法が予めかかった効果付与武具を購入する。
『デ○フリンガー』はこのパターン…あの話じゃ確か、金貨100枚だったよな。
「効果付与武具って売ってるのか!?」
「ハイ、それでも魔法効果により値段は変わりますが…基本的に数は少なく、扱っている武具屋は少ないですし…またこちらで調べるまで何の効果が付いているかは知る事が出来ません」
「運が良ければ何らかの効果付与武具を、大枚はたいて買う事が出来るって事だな」
3つ…補助魔法を文字で刻み込むことが出来る武具を自身で準備し、自分が使う事が出来る補助魔法の『魔法文字』をその武具に刻印してもらう。
「これが一番オススメですね…自分が使う事が出来る補助魔法の『魔法文字』を、自分が好きな武具に刻み込む事で効果付与武具とする方法です」
「そうだな…お気に入りのアクセサリーを効果付与武具化出来るんだ…好きな子へのプレゼントにもピッタリじゃね?」
「リョウ様には好きな人が?」
「いやいやいや、俺この世界来てまだ1日も過ごしてないし!」
「……ですよね」
ん?何でそこで急激に暗く?
ってか何だ今の間は……ちょっとマテ、その反応はそう言う意味なのか!?
恐るべしモミポ。
これはフォローをしとくべき…なのか?
なんだろうな。
「ま、好きな人が見つかれば良いナ…って事さ」
ちっがーう!言いたかったのはそんな言葉じゃなーい!
…ナイスヘタレだ、俺。
「なるほど…………」
「そうそう、ところでアヤちゃんさ」
「何でしょう?」
「さっきの効果付与武具だけど」
「ハイ」
「さっき言ってた効果付与武具入手法の3だけど…魔法文字を刻むのは誰でもできるの?」
もしコレが可能なら俺は少しの間大きな得をする事が出来る。
俺に秘められた数少ない特殊能力を使って…だ。
「可能だと思います」
「だと思う…とは?」
「理論的に『魔力を持つ』『その魔法の使用が出来る』と言う2つの条件を満たす者であれば可能には可能です…が、なにぶん前例がない物で」
「じゃあ俺らが初回実践者になってみようぜ?」
「え…えっ?」
俺がアヤちゃんに『翻訳魔法』の魔法を教わる。
俺がその魔法を使えるようにする。
『翻訳魔法』の『魔法文字』を教わる。
覚えた文字を俺が武具に刻む…と言うステップを踏んでみようと説明する。
「なるほど…面白い試みですね」
「だろ?」
「じゃあまずは魔法を覚えましょう…では先ほどと同じ要領で、全人の言葉を理解する事の出来ているご自分をご想像なさって下さい」
言われて俺はイメージする。
どんな難解言葉だって完璧に理解し、逆に話す事が出来ている俺を。
「そしてそのまま言葉『汝の言葉を我に繋ぎたまえ』と」
「汝の言葉を我に繋ぎたまえ」
言った瞬間だった。
俺が感じていた奇妙な違和感…アヤちゃんの唇の動きと、彼女が実際に話している言葉が一致している事に気が付いた。
「どうですか?」
「ど う で す か……どうですか、おお!」
これが翻訳魔法か…いいなこの感じ。
「成功です、おめでとうございます」
「よっしゃあ!じゃあこのまま次行ってみよう」
「ではそうですね…この紙で良いでしょう」
言ってアヤちゃんは1枚の紙を取り出し、それに『翻訳魔法』を文字化した物を書いていく。
これが『魔法文字』か…むむ、やはり記号の羅列にしか見えんな。
и…Чгд、χψ?
俺はアヤちゃんが書いた紙とは別の紙に『иЧгдχψ』と書いてみる。
「えと、こうか?」
「ちょっと字が汚いですが、そうですね…合ってますよ?もう一度書きますね?」
『иЧгдχψ』
「こう…だな?」
иЧг、дχψ
「いい感じです♪」
「よし、よし!」
иЧгд、χψ
иЧгдχ、ψ
иЧгдχψ
иЧгдχψ
иЧгдχψ…
「覚えたぞっと」
「凄い…たった1回見せて、6回書いただけで……でもどうして?」
「俺さ、小さいころから物真似が得意でさ…ある日、どんな難しい事だって何回か見ればほぼ…7割真似できるって事に気が付いてさ」
「7割…完璧じゃないんですか?」
「そう、そしてその3割はどうあっても埋まらない…例えば今かいてる『иЧгдχψ』
だってそう…アヤちゃんみたいに綺麗な字では書けないんだ」
「?」
「そうだな、例えば俺とアヤちゃんが全く同じ身体能力を持っている別人だとして…アヤちゃんが…そう、まだ俺が知らない物として『水の球』を全力で放ったとする……アヤちゃんは『水の球』を全力で放つと、手に発生する水球はどのくらいの大きさになる?」
「そうですね…直径10mほどかと」
「すると俺はその、今まで見た事がなかった『水の球』を、数回見るだけで…全力にしていきなり7.5mの大きさで作る事が出来るってわけさ」
どんな物だって真似をする事は出来る。
だがそれはそのオリジナルと比べて75%しか真似出来ない上っ面の能力。
「素晴らしい能力ではないですか!?」
「いや、どちらにしてもその真似した能力は所詮真似だから複製元には決して勝てないし、あまつさえその能力で覚えた技術は3日しか持たない…言ってしまえば、本物の技が金なら俺の技は金メッキって事…俺はこれを、なんの捻りもないがメッキ技と呼んでいる」
3日もすれば剥がれ、使えなくなってしまう偽物の真似技。
確かに捻りこそないが技名はピッタリだと思う。
「ただこんな技にも一応救いがあってさ…その効力が切れる3日の間に、努力して完全にモノにした技や技術は…例え3日経過しても使う事が出来るんだ」
「あ、なるほど!じゃあ3日と言う制限付きですが、その間に学んで覚えてしまえる事ならばドンドン覚えられる訳ですね!?」
「そう言う事だよ」
俺のセリフを聞いてアヤちゃんの眼がキラリと光り、口元がニヤリと歪むように笑みを浮かべる。
そして…
「じゃあリョウ様?今日から1日かけて、覚えるのには差して苦労しない様々な魔法…全て教えてさし上げますね♪」
「あ゛……」
俺のバカ……。
『世話焼きアヤちゃん』
恐るべし。
セブンシンズ魔法辞典Vol.1
火の球
手の平から火球が直線的に高速で撃ち出され、着弾地点で小さな爆発を起こす魔法
主な使用者:リョウスケ・ミカガミ 火属性
燭台の先端火炎【非公開】
上記『火の球』を片手の指4本で同時に放つ魔法
主な使用者:リョウスケ・ミカガミ、アヤ=ケリュアクアス 火属性
水の球
水を圧縮した弾丸を放物線を描く軌道で投げ、当たった相手を押し流す魔法
主な使用者:アヤ=ケリュアクアス 水属性
岩盤の反乱
精神力に応じた範囲の地面を魔力に応じた高さまで突然隆起させ、上にいる者を弾き飛ばす魔法
主な使用者:不明 土属性
強風の白刃
巻き起こした風を魔力応じた幅に広げて刃と化し、精神力に応じた距離までまっすぐ飛ばす魔法
主な使用者:不明 風属性
疾風の斬撃
風を意図的に強めて自身の背後から追い風のように吹かせて高速で接近し、同時に風を纏わせた武器や拳で攻撃する魔法
主な使用者:シズ=シャナス 風属性
翻訳の魔法(正式名称は『万語解釈』
使用者は如何なる言語をも完全に理解する事が出来る魔法
主な使用者:リョウスケ・ミカガミ、アヤ=ケリュアクアス 補助魔法
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