第4話:ルクスリア王国の歴史
「こちらがリョウ様のお座りになられる、我らがルクスリア王国の玉座…そしてこの部屋が玉座の間にございます」
「ふむ…」
召喚の間(名前は後で知った)でシズを大いにビビらせた後、俺はアヤちゃんに城の要所を案内してもらっていた。
このルクスリア城に限らず、この世界はこう言った…石造りの居住施設が普遍的で、地方に行けば土塗りの壁で作った土居や、ログハウスみたいに丸太製の木屋と言った石以外の材質で出来た居住施設もあると言う。
「石造りは重厚で荘厳な雰囲気を醸し出しやすいけど、磨かないと手触りは悪いのが欠点だな…」
「木を磨いた物を使う壁とはやはり違いますか?」
初っぱなから自分達の住まう居住施設にケチを付けられ、何故か悲しい顔をするアヤちゃん。
お?1つ読めた。
この子…多分アレだ。
「先に言っとくけど、城が気に入らないからって魔王をやりたくないとは言わないからさ…暴君だけど」
「あ、ありがとうございます!」
そう、言うなら…
『ともかく機嫌を損ねないように』
『如何なる場合も万難を排する』
…と言った具合か?
まぁ俺にどうしても魔王をやって欲しいって魂胆は分かるよ?
でもアヤちゃん、少々露骨過ぎやしませんか?
その内…
『こうなれば私の体と引き替えに魔王を』
…とか言いそうで困る。
私の体?
「…ごくっ」
こちらに背を向け、ゆっくりと歩くアヤちゃん。
ローブの下にある柔肌を想像してしまい、俺は思わず生唾を呑んだ。
召喚の間で『翻訳の魔法』とやらを使った際、腕で挟まれた胸…いやそれよりも、召喚された直後のアクシデントで揉んだ胸は結構大きかった気がする。
「……っ」
…イカン。
思い出したら言い知れぬ衝動が湧き上がってきた。
変だ…俺。
今、どうしようもなくアヤちゃんのおっぱいが揉みたい。
揉んで捏ねて握りたい。
…が、それをすると俺の中で何かが終わってしまう。
俺はアヤちゃんに悟られぬよう、自身の両腕を腕組みで固め…暴走せぬよう抑えるのに必死だった。
だが…
「こちら……っ!?リョウ様?どうなさいました!?」
「ッ!?」
必死の形相で腕を組むのがマズかったのか、アヤちゃんが心配した様子でこちらを振り向いた。
彼女は召喚の間で、俺があのシズに啖呵を切って以来ずっとフードを脱いでいる。
そのせいかその可愛らしい美貌が今顔の前に…。
パタパタパタ(理性が白旗を振る音)
プチッ(やがて本能に負けて切れた理性の糸)
その可愛さのあまり俺の理性は白旗を振り、そして呆気なく切れてしまう。
―むにゅっ―
「あっ…リョウ様、何を…」
気付けば理性と言う枷を失ったマイハンズは、なんとその手指で…あろう事かアヤちゃんの胸を侵攻していた。
「やっ…あ、あん…リョウ、様…」
…スゲー。
何だこの柔らかさは?
俺はアヤちゃんの背後に回り、脇の下から手を差し込んでなお揉む。
手にしっくり来る形と重さ…素晴らしい。
「着痩せするタイプか」
「あふっ…お、お戯れを……」
指が俺に知らせるバストサイズはBカップ。
いつまでも揉んでいたい素晴らしい胸だ。
綾子の方が大きいには大きいが、アイツのを揉むわけにはいかない。
「ひぅっ、な…何か…く、くるっ、くぁ…あっ…う、うぁああああああ!」
俺の眼の前には仰向けで安らかな表情を浮かべ、眼を閉じて眠るアヤちゃんの姿が。
今、俺…何をした?
案内中のアヤちゃんが心配してくれたのを良い事に…そんな彼女を背後から、半ば羽交い絞めにして力ずくでそのおっぱいを?
うわ、俺…最低だ。
暴君とか何とか言ったけど、これだとただのエロ魔王じゃん!?
「ん…う~……私ったら一体…」
と、悩む俺にはまるで気づかすアヤちゃんは身を起こし、現状の把握に務めていた。
「えと、確かリョウ様を案内していて…リョウ様が苦しそうになさっているのに気が付いて……」
顎に手をやり考え込むアヤちゃん。
斜め後ろに俺がいる事などまるで気が付いていないようだ。
「そうよ、あの後リョウ様の手が私の胸を…やだ、下着が濡れてる……///」
俺がアヤちゃんの胸を揉んでいる光景を想像したのか…突然、ポンッと音を立てて真っ赤になるアヤちゃん。
危ない呟きが聞こえたのは気のせいか?
居たたまれなくなった俺は意を決し、アヤちゃんに声をかける。
「…アヤちゃん」
「ひゃうっ!?」
そこにいるとは思ってなかったらしい、ビックリしきったようなアヤちゃんの返事。
振り向いたその顔は、眼がウルウルしている。
「リ、リョウ様…あの、私…その……」
「あ、気にしな…いでってのは無理な話か」
「え?」
「アヤちゃん、ゴメン」
ここで泣かれて――「泣かす事しといて」ってのはナシな?―― 後の関係がこじれてもヤバい。
そう思った俺は正直に頭を下げ、事の次第を話す事にする。
「……なるほど…とすればリョウ様のその…お、女の子のおっぱいが揉みたくて仕方がなくなる…と言うのは、そのアヤコ様の誘惑に屈しないよう押さえつけられてきた衝動かもしれませんね」
「かもしれない…けど、やっぱゴメン」
「と言う事は、私の…胸は……リョウ様のお眼鏡にかなったと言う事ですね」
「……は!?」
チョットマテ。
「アヤちゃん?普通そこは怒るとこでは?」
「まさか…魔王さ、いえリョウ様のお眼鏡にかなえたのに、どうして怒る必要があるんですか?」
すまんアヤちゃん。
「それに召喚の間でもリョウ様に揉まれましたが、何故か嫌悪感は感じず…むしろ不思議な充足感がありましたし…」
まさか揉まれた事を怒らず、揉まれる対象になり得た事を喜ぶ女の子が、我が義妹以外に存在しようとは…。
「あの…私のおっぱいでよかったら、いくらでも揉んで下さいね?リョウ様でしたら構いませんから、いつでも好きな時に好きなだけ揉んで下さい///」
ニコポ?ナデポ?
いや、これは新種…モミポだ。
「私、リョウ様でしたらその先に進まれても…リョウ様が暴君でも独裁者でも色情王でも、決して嫌わず貶さず…何があっても最後までお供しますから」
やっぱモミポだよな?
「ウォッホン!…とりあえず、案内を再開しようか?」
「あ…ハイ」
その後俺はアヤちゃんを後ろに従え、城の中を歩き回る。
途中何度か兵士らしき人とすれ違いはしたが、姫巫女…つまりアヤちゃんを後ろに従える人物、イコール魔王と言う事で特に話しかけられはしなかった。
そうして俺は玉座の間・執務室・会議室・寝所・食堂・宝物庫・大広間を案内してもらい…執務室に戻る事にする。
何でも俺が言った「俺のやり方」には色々興味があるらしく、そこでまず自分が話を聞きたいとアヤちゃんは言う。
「ではリョウ様、リョウ様の仰られた『リョウ様なりのやり方』についてですが…」
「その前にまず聞きたいんだけど…」
「ハイ、何なりと」
「アヤちゃんが俺を喚んだのは分かった……でもさ、何で喚んだの?」
喚ばれるからには理由があるはずだと俺は思う。
まぁ国がピンチだからと言われればそれは理由っちゃ理由だけど…。
「例えば外向きへの看板とするのか、また例えば内向きへの盾にするのか…どっちに『魔王』が必要なのかを言ってくれなくちゃ」
そう…つまりルクスリアが大きくなる為の標としてか、他国からの侵略を打ち払う剣としてか。
「そうですね…ではまずこの国の事と、現在状況を御説明致します」
時は遡り、今から200年ほど昔…ここルクスリア王国は当時戦乱の炎に晒され、その時王位にいた『メスチルト=ダーステイル』も病に臥し、王国消滅は目の前だった。
そこでメスチルトは城にいる名だたる魔術師10名を従え、城の地下にある施設へ赴き…偶然発見した古の魔術に全てを懸けた。
「それが今で言う『救世主召喚計画』の前身だったって事か?」
「その通りです」
刻一刻と危うくなる国に嘆きつつ、自らもまた卓越した魔術師であったメスチルトは…5日5晩の祈祷を経て、全ての魔力と引き替えにある1人の若者を喚び出す事に成功する。
「喚ばれたのは別の大陸で武勇を誇っていましたが、家臣の謀反により投獄され…残り少ない命をただ浪費するだけの猛将でした」
「ははぁ…猛将って呼ばれるぐらいだから、戦力としては申し分無かった訳だ?」
「ハイ」
彼は名をフレイフォン=シルバーサイスと言い、その絶大な戦闘能力を大いに活かして敵国を相手に圧倒的勝利を収めた。
未だ辛うじて存命中だったメスチルトはフレイフォンより勝利の報を聞き、安堵し…彼に王位を継承して崩御する。
よってフレイフォンは歴代最初の『召喚されし救世主』となった。
「今この国で騎士団が身につけた武装は、そのほとんどがフレイフォンの使った武具に倣って作られたそうです」
「そんな由緒ある剣を弾き飛ばしたのか、俺は」
「あはは…」
フレイフォンはその後ルクスリア王として奮闘…同時に自分が喚ばれるに至る様式を『救世主召喚術』として確立し、今後現れるであろう…自分より優れた者を王として喚べるようにした。
「フレイフォンは自らも立ち合う実験により、喚ばれる者は、先祖に魔族やモンスター…つまり人間以外の血が混じった者である事を突き止めました」
「じゃあフレイフォン本人も先祖に魔族が?」
「フレイフォンの先祖は単眼巨人と呼ばれる種族らしいです」
瞬間、俺の脳裏に…眼から破壊光線を放つ生意気な小僧が浮かんだのは黙っておこう。
喚んだ者はいずれも凄まじい潜在能力を秘めていて、フレイフォンはそれを元に国の基盤を改変…王を唯一にして絶対の主として動く騎士団を設立した。
「ルクスリアナイツの前身か…」
「あのシズさんのお婆様が当時の隊長だったようですよ?」
「なんてこった…」
またこの時既に高齢であったフレイフォンは王位を当時の私兵騎士団隊長に継ぎ、自らはそれまでに蓄えた知識を形として残すべく、世界初となる『図書館』の設立と建立に尽力した。
「ぐわ…祖母さん元国王かよ…シズは」
「ふふっ…あの気の強さはお婆様譲りかも」
「…俺ん家の義祖母ちゃんも気が強いからな…孫は負けん気が強くて当然か」
「…?」
家族構成の辺りはまだ話してない。
すぐに話す必要が無いと思ったからだ。
「あ、続けて?」
首をかしげるアヤちゃんに話を急かす俺。
「は、はぁ…」
フレイフォンが崩御した時、既にルクスリア王国は没落の危機を回避…同時に今度は国内の安定が求められた。
当時の王だった前騎士団隊長は…新しい技術として、いままで召喚専用だった魔術を『魔法』として改革し、同時にそれを生活にも使えるよう国民に手引きし始めた。
「ここでようやく魔法が出てくるのか…今俺がアヤちゃんと喋れてるのも魔法なんだよな?」
「いかに異なる言語であっても、使用者には全て理解出来る『翻訳』の魔力です」
「まず覚えるべき魔法が決まったな」
「あら♪」
こうしてルクスリア王国内部が魔法と武具術によって安定した頃、当時の王が急病により崩御した。
しかし国は即座に新しい王を立てて混乱を回避…新しい王は召喚専用魔術を、専用に行使出来る役『姫巫女』の育成に着手した。
「姫巫女ってアレか?召喚の間でアヤちゃんが呼ばれてた…」
「お恥ずかしながら…」
「つう事は何か?この国で召喚専用魔術が使える連中は、全員が『姫巫女』って呼ばれるのか?」
「まさか…姫巫女は召喚専用魔術を会得し、完全に行使出来る者に与えられる…言わば称号のような物、召喚専用魔術を扱おうとする者は通常『神官巫女』と呼びます」
こうして国の基盤が固まり、ようやく平和が訪れたのだが翌年の王国暦1988年に事件は起きた。
先代国王が18歳、まだ王女の時…夫が魔法を失敗・暴発させ…俺を異空間に放り出してしまう事件が発生。
これを気に病んで当時のルクスリア王ミラー=チルードは病に倒れ、同時に王女の夫で当時の王ミラーの息子ジョゼフは発狂…自室を血みどろにして、壁に血で遺書を書いた後自殺した。
王女は息子と夫を失った悲しみを糧に、その年の末…女王に即位。
「うわ~…せっかく産まれた初孫を、間違ったとは言え自ら亜空間に失うとは……あれ?チルードってまさか…」
「やはりリョウ様は御聡明であらせられますね…そう、ミラー=チルード様はルクスリア王国の先々代国王、そして王女様が先代ルクスリア女王…クール=チルード様にございます」
それからさらに1年後の王国暦1989年、クール=チルード陛下が19の時…陛下は敵国の敵将との戦闘中、敵将の罠にかかり負傷…その際に発動させた回復魔法が、詠唱文を噛むと言う初歩的ミスによりなんと『次元跳躍の魔法』として発動し、ルクスリアから姿を消した。
「そして今日に至るまでの16年、当国は王位が空席……これが現在に至るまでの我らがルクスリア王国の現状にございます」
「随分波瀾に満ちた歴史を歩んでんだな…」
「ハイ、ではリョウ様はこの国を…どう御導きになられますか?」
…どう導くか…か。
それ即ち『敵に立ち向かう』か『敵から身を守る』か…俺はこう言ってやる。
「国を強くする」
「国を…強く?」
「あぁ、国が強ければ立ち向かう事も出来るし敵から守る事も容易い…即ち」
「両方…と?」
「そうだ…俺が喚ばれる前に住んでた国に『二兎を追う者一兎も得ず』って言葉がある」
二兎…つまり2匹のウサギ、両方捕らえる事が出来れば大儲け。
しかし欲に目が眩んで両方共追うと、結局は両方とも逃してしまう。
そう言う意味だとアヤちゃんに教えてあげた。
「ですがそれだと『敵に立ち向かう』も『敵から身を守る』も出来なくなるって事ですよね?」
「ああそうだ…だが俺は幸か不幸か『異世界人』だ…俺の居た世界には二兎を追って、二兎どころか何故か四兎も五兎も得てる奴がいる…例えば……俺の義母とかな」
「えっ?」
聞いた話…義母さんは昔、知り合いも居ない・お金も無い・家も無い・仕事も無い…つまりゼロの状態から出発、己の身一つで国から上京してきたらしい。
そして生き抜く為の努力をして『友達』を『金』を『家』を『仕事』を、そしてまた努力して『伴侶』を『新たな家』を『義息子』を『義娘』を…八兎も得た成功者だ。
「…素晴らしいお母様ですね」
「あぁ、俺は義母さんに拾われた孤児なんだ…その点ではゼロから始めた義母さんと同じ…そして俺は既に『家』『両親』を得、また今ここで『魔王と言う力』『アヤちゃんと言う味方』を新たに得た…」
「そんな私まで…///」
「他が俺の事をどう言うかはともかく、俺はアヤちゃんの味方だし、味方でいたい…で、四兎も得られたなら後も必ず手に入れる」
その為にはまずアレコレ知る必要がある。
「だからこそ?まずここで生き抜く力として…魔法を教えて欲しいんだ」
「魔法…ですか?」
「そうだ…まず言葉の壁を取っ払うのさ、その為にはまずアレだ…翻訳の魔法を覚えたい」
まずはコレだな。
俺が頭を下げるとアヤちゃんが慌てる。
「頭をお上げ下さいリョウ様!魔王たる貴方様が、ただの配下たる私に頭を下げるなど…」
「いや、これは俺のやり方の一環でね…教えを乞う・悪いと思ったなら頭も下げる」
俺がそう言うとアヤちゃんはビックリしたらしい。
「なるほど…だからさっき、私の…胸を……揉んだ………後も…///」
「あ…あ、うん…///」
頬を染めて自分の胸を抱くアヤちゃん…ヤバイ、可愛い。
俺も照れてしまう。
「…分かりました…ではお教えしましょう……でもまずは少し休憩しましょうか?お互い喋り倒して喉も渇いてるでしょうし」
その言葉に俺は頭を上げ、そしてようやく…喉がカラカラなのを知ったのだった。
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