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第102話…シャリマ武闘大会・登録【その1】
世界歴2005年、10月24日、土節、AM10時24分。



綾子side

「これがシャリマ武闘大会…」

私はグリント及びエニグマに奪われた、お義兄様の愛刀『神断緋刃(かんだちのひじん)』を奪い返すべく…シャリマ女王の勅命を私的利用出来る機会を得られる大会『シャリマ武闘大会』への参加を決めた。

元来はここで画策されているらしい、シャリマ女王の暗殺を阻止する任務を帯びているのだけど…

「随分、世紀末な人が多いのね」

参加者と思わしき人波を見渡し、ボソッと呟く。

まずは男の参加者が多い…それも大男の類い。
いずれも巨大な剣や斧、棍棒を持ち…他者を風体だけで威圧している。

次に目立つのは魔法使いと思わしき連中。
いずれも三角帽子やローブを身に纏い、杖や魔導書を携えている。
線は細い。

最後が私みたいな標準体型の参加者。
絶対数は参加者全体の1割にも満たないが、その中でも極少数から感じられる闘志や覇気はお義兄様や春明に匹敵するだろう。

「前者・中者はともかく、後者とは極力当たりたくないわね」

大会の参加者は互いが名前しか知らない状態だけれど、名が売れている人は登録の段階で話題を呼んでいるらしい。

「とりあえず参加申し込みをしなくちゃ」

私は会場の入口にある『武闘大会参加申込受付』の看板があがっている建物へ入った。

「……」

建物の中は様々な人でごったがえしており、所々で小さな騒ぎが起こっているようだ。

「……何だ、人間か尖耳霊人(エルフ)の小娘か…」

「放っておけ…所詮、己の力量を弁えられない小物さ」

私に対して発せられた侮蔑の言葉も聞こえるが、耳にひっかけるだけに留めて無視しておく。
尖耳霊人(エルフ)に黒髪は居ないはずなんだけど。

「すみません、参加登録をしたいのですが」

「ようこそいらっしゃいました…参加登録ですね?ではまず指輪を拝見しますが、宜しいでしょうか?」

武闘大会の参加には3つの条件があるのは知っている。
指輪の拝見…即ち傭兵としてのランクの確認だ。

「シャリマネスト所属のアヤコ・ミカガミ様…Bランクでお間違えございませんか?」

「はい」

周囲から『あんな身なりでBランクだと!?』とか『くそ、俺より上だと!?』と言った声が聞こえる。
けど無視よ無視。

「ではこちらの水晶玉を水晶をお触り下さい」

「これは?」

「これは触れた相手が魔法を使えるかどうかを調べる水晶玉でして、大会参加資格の『魔法使用能力』の有無をこれで調べるんですよ」

なるほど。
メイサさんの言ってい大会参加資格の1つ『魔法が使える事』はこの水晶玉に触れる事で調べる、と。

―スッ…―

私は水晶玉に触れた。
すると水晶玉は仄かな光を放った。

「…はい、結構です…アヤコ様の魔法使い技能を確認しました…こちらをお読み頂き、ご了承下さいましたらこちらの同意書へ…自血での署名をお願い致します」

言われて受け取ったのは、ルール表と同意書。
私はルール表に目を通した。

ルール表には小難しい単語が並び、ある程度のラグナロク語の識字能力が無ければ読めない。
まぁ簡単に説明すると…


【ルール】
1.参加者は身分立場種族年齢性別の隔たり無く、己の全てをぶつけて戦う事。

2.円台の上は戦場なので、不意打ちや卑怯と言った言葉は適用しない…ただし、ヒトとしての最低限の倫理は厳守する事。

3.審判の言葉には必ず従い、審判からの質問には正直に答える事。

4.武器は公平を期す為、大会運営側が用意した物を最大2種までとする事…ただし魔法専門家は発動媒体として杖の使用がある為、審査はあるが専用杖の持ち込みを認める。

5.戦う事で負傷し、その怪我が原因で死に至っても大会運営側は一切関知しない…ただし、舞台上での殺害は問答無用で失格の上に投獄とする。

6.勝敗は場外への着地か気絶、あるいは降参…または審判の判断により決する…ただし飛行可能な種族は、舞台から10秒以上足を離すと場外着地と見なす。

7.降参者及び気絶し、敗北が決定した者への追撃…及び舞台に上がるまでの間、登録完了者の戦闘行為は一切を禁じる。

8.上記7項目をいずれか破った者は、厳罰に処す。

9.上記8項目は老若男女魔人のいずれ対しても、立場や権限等を無視して平等に処す。


…ってな事が書いてあった。

「了解っと…すみません、血印用のナイフを」

「ご理解頂けて何よりです…ではこちらのナイフをどうぞ」

―ぷつっ…―

言われて渡されたナイフで左手親指の先端を軽く切り、滴る血を専用の小皿に溜める。
それを備え付けの羽根ペンに吸わせ、署名をする。

「アヤコ…ミカガミ、っと…これでいいですか?」

「はい、結構です…アヤコ様、こちらをお納め下さいませ」

受付の人は机の下から、小さな銀板が付いた革の腕輪を取り出した。

「それは?」

「武闘大会の参加者全員に配布しております効果付与武具(ミスティック)になります」

受付の人曰く『銀板の部分に魔法文字(ルーン)を刻印して使用する』『個人で好きな魔法を刻印する事が出来るが、刻印が苦手ならこの場で所定の魔法の刻印を受け付ける』との事だった。

「じゃあ刻印はこっちでするわ」

「かしこまりました…ではこちらをどうぞ」

手渡されたのは『422』と刻印の入った、鉄の腕輪。
裏には、刻印された物体の重量をゼロにすると言う補助系の大魔法『天馬の大翼(ペガスズウィング)』の魔法文字(ルーン)が刻まれている。

「これは整理券かしら」

「それは参加者認識証で、それを着用して頂く事で登録完了者と見なされます…記載の番号についてはアヤコ様の仰る通り、422番目の参加者であると言う事を示しております」

既に参加者が500人を超えているらしく、大会側の意向にて午後からふるい分けの初戦があると言う。

「特設の舞台で大乱闘をやって…」

「はい、12名1グループが8つ出来るよう仕分けるんです」

後に残った96人をA〜Hの8グループに分ける。

試合は3日間開催され、初日がAからDグループの予選で各グループから勝ち上がった4人が本選へ。

翌日がEからHグループの予選で、同じく勝ち上がった4人が本選へ。

最終日は各グループから勝ち上がった、計8人によるトーナメントになるらしい。

「天下一武闘会みたいね…」

「あら、良くご存知ですね」

「…はい?」

聞けばこの大会形式は主たる開催者で、現シャリマ女王『ミャービ・シャルダス』様がある時に入手した【龍球】と言う書物に書いてあった大会を参考に生まれたと言う。

「龍球…ね」

主人公は生まれながらお尻に尻尾を生やした少年で、祖父の形見である『7つ集めるとどんな願いでも1つだけ叶う』と言う【龍球】を求め世界を旅して強くなると言う冒険活劇。

どう考えたって『ドラゴ〇ボール』でしょうが!!

…とは言えないので、とりあえずは黙っておく。

にしてもドラゴン〇ールを知ってる女王…か。
私みたいに地球から来て、女王に即位したのかしら…いえ、それは無いわね…何故ならシャリマ女王はヴァルハラ王クレシアの実子だから。

「キャアアッ!レイフォス様よぉっ!」

「あの金髪に優しげな瞳…長身でお金持ちで、カッコいいし強いし…痺れるわぁ!」

思考の海に沈んでいた私は、参加者の間から沸き上がった黄色い歓声に意識を引き上げられた。

見ればそこは女の参加者が人だかりを作っており、中央には歓声を向けられているであろう長身の男がいた。

「…アレ、何?」

「レイフォス=ブラスティア…前大会の優勝者で傭兵ランクはS、実力は確かなんですけど…あの通りの色男ですよ」

「ふぅん…」

とりあえず見た目。
【F〇STA!】の広〇翔にそっくり。
と言う事は聖丘(ウチ)のば会長とそっくりって事なんだけど…ダメね、ば会長の方がまだ好感が持てるわ。

って…良く見たら、先日…リディアさんを口説いて断られた男じゃない?

「ダメね……お義兄(にい)様の方がずーっと素敵ね」

「アヤコ様にはお兄様が?」

「ええ、私の想い人なんです…いずれは結婚を考えてます」

「お兄様とご結婚を?と言う事は血が?」

「ええ、繋がってないんですよ」

「ははぁ…羨ましいですね」

あぁいとしのお義兄様…今はどちらに居られるのでしょうか?
綾子はお兄様を、お慕いしております…

―くちゅ…―

ヤダ…下着が///
お兄様の事を考えるだけで私…

「ふふ、アヤコ様とは気が合いそうですね…私もああいう手合いはちょっと遠慮したいですね」

「どう言うタイプが好きなの?」

「そうですね…あそこで静かにたたずんでいる、黒髪の方でしょうか?」

受付の人が指し示す先には、傍に白髪の女の子を伴った…袖無しの柔道着らしき服を着込み、剥き出しの腕には見るからに重そうなウェイトリストを着けた黒髪の青年がいた。
着衣の膨らみを見るに、腕だけじゃなく全身にウェイトリストを着けてるんだろう。

壁にもたれ掛かるようにして立ち、俯いているから顔はハッキリとは分からない…けど感じる事の出来る闘気は、この受付内の誰よりも強い。

「……強いわね」

「分かります?」

「滲み出てる闘気の濃度が半端じゃないわ…あの人の名前は?」

「えっと……あったあった、名前はスプリングライズ=リーフロッサム…隣の大陸にあるアケディアと言う国のネストに所属してる…種族は人間(サピエンス)、ネスト登録から10日ほどでBランクまで上がった実力者ですよ…参加番号は402番です」

スプリングライズ・リーフロッサムか…なるほど、彼は要注意って事ね。

「そこのお美しいお嬢さん」

スプリングライズさんをマークする私に、件の優男…レイフォスが話しかけてきた。

「……何か?」

「ふるい分け戦が始まるまでの一時、私とお茶でもいかがです?」

…それだけの綺麗どころを侍らせといて、まだナンパする気?

「結構です、他をあたって下さい」

「まぁそう言わずに…

―スッ…―
―バチッ!―

…痛っ!」

言って優男が私の肩に手を伸ばしたけど、私が鎧に刻んだ補助魔法『永遠の処女(エターナルヴァージン)』でそれは阻まれる。

エニグマの一件で下手をこいた事もあり、私は全装備品に『永久の処女(エターナルヴァージン)』の魔法文字(ルーン)を刻んだ。
…と言うよりこの魔法、効果から考えて全身に刻めば無敵じゃないのかしら?

「……この身と心は、私の想い人だけの物…想い人以外に触れる事は絶対に許しません」

「……どうしてもダメかい?」

「無理ですね…周りの方々にも悪いですので」

…この手の手合いは放っておくとドンドン付け上がる。
最初から強気な言葉と態度で蹴らなくちゃダメだ。

「…(この人、登録は済んでる?)」

私は受付に目線でアイコンタクトを図る。
彼女が私と同じタイプなら通じるはず!

「…(いえ、まだ未登録ですよ?もちろんアヤコさんも、ですが♪)」

すると彼女はそう、私に言った。
どうやらアイコンタクトが通じ、彼女の特技(念話と言うらしい)で答えてくれた。
彼女は私の左手を見る。
そこにあるのは“握られたままの”腕輪。

…なるほど。
装着して初めて登録完了者と認められるって言ってたわね…なら。

「…(沈めちゃっていいかしら?)」

「…(もちろんです、ド派手に沈めちゃって下さいな♪)」

チラッと周囲を見れば、たくさんの男性参加者…そして受付嬢の同僚と思わしき多数の女性が、首を縦に激しく振っている。

「(色男に天誅を!)」

「(リア充爆発しろ!いやむしろモゲロ!)」

「(女の敵に制裁を!)」

「(受付の外までブッ飛ばしちゃって!)」

…そこまでお願いされちゃ、やらない訳にはいかないわね。

そう思い、私は左手に握った参加者証をレイフォスに良く見えるように突き出した。

「?」

私が突き出した証を見て、レイフォスは首を傾げる…やはり意味が通じていないらしい。

…好都合ね。

「(氣闘拳(きとうけん)発気(はつ)弐型にのかた固気ノ法(こきのほう)』初式)」

腰溜めに構えた右拳に氣を纏わせて固め、左足の震脚で生み出した力に全身の捻りに乗せて渾身の力で撃ち放つ!

「ゴッドハーーンド、スマァァッシュ!」

―ズドォンッ!―

「がはっ!」

―バギャン!―

油断しきっていたところへ強烈なコークスクリューを体にもらい、レイフォスは錐揉み回転しながら飛んでいった。

そしてそれを見ながら一言。

「成敗!」

…我ながら決まったわね。
剣狼的に。

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