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異世界で幼女化したので養女になったり書記官になったりします 番外編置き場 作者:瀬尾優梨

番外編

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☆ある少年の日記より抜粋☆

少年が誰なのかは、一文目で分かると思います。
某月某日

 なんか変なのがうちに来た。やたらちびっこくて地味な顔立ちの少年……だと思ったら少女だった。どうやら、父上が領土巡回中に見つけて拾ってきたらしい。身寄りのない八歳程度の女の子らしい。年齢すら不定とは……どこかの名家の私生児ってところか。それにしては大人しいし、俺に対しても頭を下げてきた。変なやつ。
 父上が近いうちに、養子届けを出すそうだ。つまり、俺の妹になるわけだ。
 妹ってものの扱いはなんとなく分かってるし、まあなんとかなるかな。
 ……仲よくなれたら、いいな。


某月某日

 レーナは変だ。すごく変だ。
 なんだ、あいつ。本当に八歳なのか? 頭よすぎだろう?
 字は読めないし書けない。そこらの子どもでも知っているような一般常識は欠落しているくせに、話すことはいちいち正論で、わけわからない。
 さっき、試しにレーナに百ゴルド硬貨を見せてみた。百ゴルドといったら、レーナくらいの年の子どもでは決して手に入らない。
 でもレーナは、百ゴルド硬貨を見ても「きれいですね」で終わらせた。その後で価値を教えると驚いていた。やっぱりおかしい。どんな貧民層の子どもでも、ゴルド硬貨の違いくらいは分かるはずだ。
 ……あいつ、一体何なんだ?


某月某日

 ……気にくわない。
 俺の義妹レーナ。最近あいつを見るとイライラする。
 理由は分かってる。あいつは、俺よりずっと頭がいい。最初は字の読み書きでさえできなかったというのに、あっという間にいろいろなものを覚えて、お茶会では一丁前に客人に挨拶して。
 父上はレーナがすっかりお気に入りになっている。母上も、レーナのためにあれこれ買い与えようとしている。
 俺が、のけ者じゃないか。
 みんなみんな、レーナ、レーナって。あいつばっかりちやほやされて。
 ……でも、レーナが笑うと俺もなんとなく安心する。でも、やっぱり(この後、何度も書き直されており解読不可)


某月某日

 レーナが書記官の仕事に興味を持っている。
 探りを入れよう。
 もしものことは、起きてほしくないけれど。


日付なし

 レーナ
 何だ
 あれは、俺は
 あいつは、レーナは(この後、字の乱れが激しく、解読不可)


某月某日

 嫌いだ
 レーナがいなければ
 あいつがいなければ
 俺は
 俺が


某月某日

 レーナがいなくなった。
 名前と性別を偽って、王都に行った。
 俺があんなことを言ったから。
 俺は悪くない。あいつが、怪しいんだ。おかしいんだ。
 悪くない。


日付なし

 楽しくない。


日付なし

 これを書くのもだるい。屋敷がさみしい。
 体が重い。


日付なし

 あいつ、生きてる?


日付なし

 俺のせい?


日付なし

 あいつ、帰ってくる。
 書記官になってる。
 俺、どうしたらいい?


某月某日

 レーナが帰ってきた。これをまともに書くのも久しい。
 やっぱりレーナはおかしかった。王都で、死にかけたってのに、あんなにけろってしている。馬鹿だろ。
 俺が、あんな酷いことを言ったのに、笑ってた。俺の話、聞いてくれた。





 あやまれて、よかった。


某月某日

 今日は領内の祭だった。レーナがいろいろな味のパンを作っていた。まさか、パン生地に食材を練り込むとは思ってもなかったが、見た目の割においしいものばかりだった。それを言ったら、あいつすごい喜んだ。
 メモ→俺の敵、髭カールのジジイ。覚えてろ。


某月某日

 認めたくないけど。
 レーナと一緒にいると、楽しい。


日付なし

 た・、ぁ……:”っぶ●<・==(解読不可能)


某月某日

 俺は、二度と、女を信じない。


某月某日

 将来これを読む俺自身のために、一応メモしておく。将来の俺。決してこれを他人に見せないように。





↓次のページ






 すごかった。
 初めて見た。
 その日の夜、寝れなかった。
 あれって、俺と血の繋がりないよな。異世界人だし。
 なら、




(この辺、ぐちゃぐちゃに消した跡あり)ても、いいよな




某月某日

 城の夜会に行った。
 レーナは、最初書記官の格好をしていた。あの服、俺も着てみたい。
 それから、レーナの姿で出てきた。あんましそっち見なかったけど、かわいかった。
 それから、大人になった。ドレスを着てた。
 きれいだった。とても。


某月某日

 書記官の試験を受けに行く。そのために、ここしばらく日記も書かずに勉強してきた。
 レーナには言っていない。驚かせてやるんだ。父上も母上も了承してくださった。
 絶対合格する。合格して――
 俺が、レーナを守るんだ。


某月某日

 あっという間に試験は終わった。俺は首席で合格。当たり前だ。レーナほど点は取れなかったみたいだが、まあいい。
 レーナは今日から俺の上司になった。あいつは俺が「レンさん」って呼ぶと変な顔していた。でも、けじめはきちんとしないと。俺も、もう子どもじゃないからな。


日付なし

 ジェレミー・グランツに聞いた。あいつ、レーナにラブレター贈ったらしい。
 禿げろ。


某月某日

 レーナが三つ目の名前をもらったらしい。レイリア・ハルヴァーク。とてもきれいな響きの名前だ。
 でも、俺にとってのあいつはいつまでも「レーナ」だ。あいつに「お兄様」と呼ばれるのはおかしいって分かってるし、呼ぶなって言ってるけど。
 でも、ちょっとだけ嬉(乱暴に殴り書きした跡があり、解読不能)


日付なし

 覚え書き→いつか報復リスト
 ・ジェレミー・グランツ……書記官。軽い。あほ。
 ・マーカス王子……王子。手強い。でもレーナは無視してる。いいざまだ。
 ・ヴェイン・アジェント……騎士。一番面倒。レーナが専属やっている。


某月某日

 レーナはやっぱりばかだった。
 二度と言ってやるもんか。
 でも、ここには書いておく。さすがに「お姉様」は女々しいから……。
 ……レーナ姉上。
 これからは、こっそり心の中で呼ぶことにする。
 直接言ったらあいつが喜んでくれるけど、俺のプライドが傷つく。
 レーナ姉上の、ばか。


某月某日

 レーナの願いで、バドライン伯爵領に一緒に行ってくる。
 気に入らないけど。あのヴェイン・アジェントのためらしいし、すごい腹立つけど。
 でも、あいつが喜ぶんなら。
 レーナ、あいつのことをすごく心配していた。でも、まさか、ひょっとして。
 ないよな?
 レーナが、あいつのことを好きだなんて……?


某月某日

 帰ってきた。疲れた。やっぱりレーナはいろいろすごい力を持ってる。
 あいつははぐらかしていたけれど、やっぱりヴェイン・アジェントのことが好きなんだ。バドライン伯爵令嬢との熱愛とか、俺はどうでもよかったのに。
 むしろ、有難かったのに。
 あいつ、ばかだ。
 もう、知らない。


某月某日

 レーナと一緒に買い物に行った。父上と母上の贈り物を買うって言ったけど、本当はそれは言い訳。レーナと一緒に過ごしたかった。最近、ヴェイン・アジェントがレーナを狙っているって聞いたし、余計に。
 やっぱりヴェイン・アジェントのことは好きになれない。でも、レーナはあいつのことが好きなんだろう。
 俺は。
 俺は、あいつの兄だから。応援すればいいって、分かってるのに。
 すごい、悔しい。
 俺は、
 俺は、レーナが。


日付なし

 レーナが、ヴェイン・アジェントと付き合うようになった。
 レーナが、精霊討伐隊に行くことになった。
 馬鹿。レーナの馬鹿。


某月某日

 レーナを見送る夜会に出た。あいつと、始めてダンスを踊った。
 やっぱり俺は、レーナをあいつに渡したくない。
 レーナが好きだ。
 俺は、他のやつよりずっと、レーナのことを知ってるのに。ヴェイン・アジェントよりもずっと。
 レーナは、あいつのことが好きなんだ。ヴェイン・アジェントもレーナのことが好きだった。
 俺は、レーナに想いを打ち明けた。もう何を言ったか覚えてないけど。
 レーナは、笑わず俺の告白を聞いてくれた。必ず帰ってくると、約束した。
 もう、十分だ。
 レーナは、あいつを選んだ。俺の元を離れて、あいつと一緒に討伐隊に参加していく。
 俺は、あいつを信じたい。馬鹿で、お人好しで、でも誰よりも大切な……レーナのことを、信じる。
 この日記は、しばらく封印する。レーナが無事に帰ってきたら、続きを書く。
 レーナ。
 どうか、無事で。
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