『綺麗』
『可愛い』
『すごい』
『美人』
これらが全て、私の『顔』に対する評価だ。
私の『顔』は、女優やモデルなどのいいとこ取りをして、作ったのだ。
本来の私は、小さい鼻に、小さい目。それに、太い輪郭だが、『顔』は違う。
黒い髪。サラサラしていて、触れば溶けてしまいそうだ。大きい目。ありきたりの言葉だが、どんぐりみたいと表現するのが一番当たりざわりがないだろう。高い鼻。スラっと綺麗なラインで、整形したかのようにシャープな形になっている。輪郭。三角形を思わせるような線でできていて、綺麗な蝋細工みたいだった。脆く、崩れやすい蝋細工。繊細な工芸品。
それを自サイトで動くようにプログラミングさせた。動きを不自然だと見破らせないため、色々な工夫をした。そして、影の位置も不自然ではないはずだ。
部屋だけは変えなかった。それだけで、ここに居る私がこの『顔』に移り変わったようだった。
溜息を付く。リアルでは、私はなんの魅力もないのだ。皆、「人間は顔じゃないよ」だの、「性格がいいんだから……」など綺麗事を言っているが、所詮は顔なのだ。それは、顔が綺麗だから言えることであり、私の立場になったら、絶対に言えないはずだ。
でも、と思う。顔なんて、所詮は仮面ではないか。優しそうな仮面をつければ人が惹かれるし、怖そうな仮面をつければ、人は遠ざかっていく。しかも、顔は崩れる。老人になれば、『綺麗』や『可愛い』顔は、すぐに崩れ、なんの意味もなくなる。周囲の反応も、変わるはずだ。
……平等になるのは、年をとってからというわけか。いや、違う。年をとる前に重ね上げてきた地位は、年をとっても変わることがない。だから、人間は皆『不平等』なのだ。
***
感想を確認する。
『一緒に食事でもどうですか?』
その後に、メールアドレスが入っていた。
気になった。私の本当の顔でも、彼らは認めてくれるのだろうか。
好奇心に負けて、返信した。
『いいですよ。では、秋葉原駅の改札で待ち合わせませんか? 私は、黒い帽子に、赤い洋服を着てきます』
駅内地図をメールに付属すると、私は携帯を抱きしめるように、胸へ持っていった。
***
「こんにちは、小池麻衣さんですか?」
男の声。振り向くと、4人の男がいた。
「はい。そうですけど……。なにか?」
一番端っこの男が、隣の人に目配せをして言う。「おいおい、他人じゃないか?」それに、隣の男が返した。「でもよ、同姓同名だぜ?」「小池なんて名前、掃くほど居るだろ」
「え? ……サイトの『フェイス』の方ですよね?」
「……はい」
「嘘だろ……不細工じゃないか」
誰かが。ポツリと漏らした。
……やはり、顔だけなのか。人間は、顔でしか生きれないのか。
私は、急いで家に帰った。
***
こっそり携帯で撮っておいた4人の顔写真を、自分のサイトに貼り付けた。
そして、カーソルを『開始』に合わせる。
全国に、彼らの顔が広がった。
そして、記事を捏造した。
『今日、ナンパされました。ウザかったです。なのに、彼らは……』思わせ気味な記事を貼り付ける。
私のサイト『フェイス』のアクセスはすごく多い。それに、日本の人口は東京に集中しているので、彼らが『フェイス』の住民に捕まるのはもうすぐだろう。
私は、ゆっくりと立ち上がると、ベットに飛ぶように寝っ転がった。
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