第二章 異世界その1 第一部 ブランカ その3
トラベルセンターは町の西の外れ、ちょうど商店街の端っこにひっそりとたたずんでいた。
勇樹の世界で言えば、ちょうと金券ショップのたたずまいだ。
入り口にはガラス製のショーケースカウンターが設置され、その中にいくつものチケットらしい紙片が無造作におかれている。そしてそのチケット事に値段の書いたタグがくっつけられていた。
上の方には"トラベルセンター"と言う看板――勇樹の一度も見た事のない文字だったが、なぜかそう読めた。
なぜか――そういえば、ゾディアークにやってきてから間もないはずなのに、なぜかタガールの言葉が普通に理解出来ていたし、こちらの言葉もタガールにちゃんと通じていた。
なんだか分からない事だらけだな――そう勇樹は思った。
が、今はとりあえず目の前のチケットに集中しなくては。
そういえばここに飛ばされるとき財布を持っていただろうか――って、向こうの世界の通貨がここで使えるわけないか。
「バプ行きの通行証が欲しいんだが、入荷してるかい?」
タガールがお店の小父さんに尋ねた。
店の小父さんも半獣族のようだ。小父さんは馬のそれのような形をした耳をピクピクと動かしながら言った。
「バプ行きかい? それなら1200モルだな――といいたいところだが悪ぃな、今売り切れだ。次の入荷は一週間先だな」
売り切れか――。勇樹は少し落胆した表情になった。
ということはあとは"マーケット"とやらが始まるまで待つしかないということか。
その時小父さんが勇樹とタガールを交互に見比べてから、言った。
「お客さんたちもバプに行きたいのかい? ――いや、どういうわけか今日はバプ行きの通行証を欲しがる奴がやたら多くてな。今日は二枚入ってたんだがあっちゅう間に売れちまったよ」
勇樹とタガールは顔を見合わせた。そして勇樹小父さんに向かって訊いた。
「ねえ、そのチケットを買っていったの、どんな人たちだった?」
「ん? ああ、坊主と似たような年格好をした人間族だったぜ」
間違いない。他にもここからバプにいった人間――勇樹達の世界からやって来た――がいたのだ。
なんとしてでも、そして出来るだけ早くバプに行かなければ。
だが、通行証を手にいれるためにはマーケットの開催を待たなければならない。
「おい、今月のマーケットの開催日はいつだ?」
「今月か? たしか三日後だぜ」
三日か――。待つには長い時間だが、他に方法はなかった。
「そうと決まれば、早速マーケットに向けて対策を練らなきゃな」
タガールがそういって駆けだそうとした時、小父さんがその後姿を呼びとめた。
「なんだか訳ありみたいだから耳寄り情報教えてやるぜ。ちっと前、同じバプ行きのチケットを捜してる人間族の子供がもう一人来たぜ。売り切れだって言ったら、どうしても通行証が欲しいんだ、って言うからマーケットの事を教えてやったんだが」
ってことは、まだもう一人この街にいるって事か。
「で、その子はどうしたの?」
「さあな、通りを北の方に曲がって行ったのは見えたが――マーケットまで三日あるし、宿でも探しに行ったんじゃねえか?」
勇樹とタガールは小父さんに礼を言うと、店を後にした。
とりあえずその人間の後を追ってみよう――そういう事になり、勇樹たちは北へ伸びる路地道へ入って行った。 |