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ゾディアックファンタジー
作:佐倉信輔



第四章 異世界その2  第一部 獣人の国 その3


「ふむ、これでもう大丈夫じゃろう」
 包帯で固めた足を見てうなずきながらガイアは言った。
 女の子の右足はガイアの手で処置がおこなわれ、包帯によって固定されている。
 診療所を視界に捕えてからたどり着くまで、さらに十五分の時間を要した。
 なにしろ、足腰がかなり限界に近かった上、診療所まで少し斜面を登らなければならなかった。おかげで、診療所にたどりついた頃にはもう足が動かなくなっていた程だった。
 幸い女の子の怪我は右足の捻挫だけで、それも比較的軽い程度のものだった。ガイア曰く、二、三日安静にしていればよくなるだろう、とのことだった。
 一方龍也の足の方ももうパンパンだった。この分だと、明日は筋肉痛だろう。
 女の子は最初ガイアの顔を見て怯えた表情を見せて龍也の方にしがみついてきたが、龍也がこの人(?)は心配ないからと熱心に説明し、なんとか多少は信用してくれたようだった。
 相変わらずほとんど自分からは話そうとはしなかったが、それでもどうにか彼女の名前が綾戸沙紀あやと さきである事は訊きだす事ができた。
「で、俺達が元の世界に戻る方法は、何かないんスか?」
 ようやく落ち着いた頃、龍也はガイアに向かって切りだした。
 とにかく、何とかして元の世界に戻らなければ――。
 しかし、ガイアの答えはあまり期待していたものではなかった。
「さてなあ――。なにしろ、儂も星人ホルータを拝むのは初めてじゃからのう」
 ちなみに星人ホルータというのが、龍也達異世界からやって来た人間を指す言葉だという事は、後で教えられた。
「とりあえず、守護者様にお会いしてみてはどうかの? お前さん達を呼んだものならば、帰る方法も知っておるかもしれんしな」
 ガイアはあご髭をなでながらそう言った。
「守護者様?」
 龍也はオウム返しに呟いた。
「そうじゃ。"星の守護者"――と儂等は呼んでおる。ま、儂ら獣人にとっては神様みたいなものじゃよ」
 ガイアはそう言ってほっほ、と笑った。
「その"守護者"とやらは、一体どこに行けば会えるんスか?」
 龍也の問いに、ガイアはふうむ、とうなった。
 そしてガイアはしばらく考えたあと、こんな事を言った。
「儂も直接お会いした事はないので正確な場所まではのう――。じゃが、伝説によると守護者様達は北の果てにある神の島におわす、とされておる。そこに行けば手がかりがつかめるやもしれんのう――」
「それって、ここからどのくらいかかるんですか?」
 龍也は身を乗り出して訊いた。
 元の世界に帰る手がかりがあるなら、どこへだって――。
「このクー村はトリッカの南東の外れに位置しておる。じゃから北の果てまでは相当距離がある――。長い旅になるじゃろう。――しかも、"神の島"あくまで伝説で語られておるだけの代物で、実在するかどうかはわからん。神の島を目指した者は数多いが、北の果ては海流が複雑な上に常に大嵐が吹き荒れておる。そのせいで未だ無事に帰って来た者もおらんと言われておる。――それでも行くというのか?」
 龍也はしばらくの間の後に、ゆっくりとうなずいた。
 ガイアはしばらく目をつぶってなにやら考え事をしていたが、やがてゆっくりと目を開いて言った。
「お前さんは良い目をしておる。長く険しい旅になるが、己と仲間を信じて頑張るが良い。そして、どうしても自分達の力だけではどうにもならぬ状況に陥った時は、祈るがよい。そうすればきっと守護者様がお助けくださるじゃろうて」
 守護者様がね――。と、龍也は思った。
 この世界の住人達は、よっぽどその守護者様とやらを崇拝しているらしい。
「まあ、ともかく出発するのはあのの足が良くなってからじゃな」
 と、ガイアは言った。
 確かに沙紀も同じ世界から来た人間。ということは必然的に一緒に行動する必要があるわけで、そのためには沙紀の足がきちんと完治してからの方がいいに決まっている。
 その点に関しては龍也も特に異論はなかった。
「では、その間ここに滞在するといい。この世界の事や、守護者様について儂の知っている事をもっと詳しく教えてやろう」
 ガイアは微笑んでそう言った。
 壮大な旅の幕開け――。そんな予感が龍也の体を伝わっていた。


こうして二人の旅が幕を開けます。
一体どのような冒険が待ち構えているのか。
前途多難な雰囲気アリアリですが、こうご期待、です。






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