僕の宝物(57/59)縦書き表示RDF


僕の宝物
作:バックハイ



57諦め


「綺麗な髪なのに勿体ないですね」

美容師さんが、私の髪を撫でながらそう言った。
私は鏡に写る自分の姿を見て
「構わないです。お願いします。」
と言う。

美容師さんは私の言葉を聞くと、ハサミを取り出し私の髪に入れていく。

そう言えば、松山先生を好きになってからずっと伸ばしたままだったっけ…


…あの日から既に一週間が過ぎようとしていた。

夜になると、馬鹿みたいにいつも一人で泣き続けてた。

マコを忘れようと決めたはずなのに、あの日のマコの温もりが…
…プールでのキスの感触が
…なかなか消えてはくれなかった。

あれ以来、マコからの連絡はなかった。
代わりに、由恵からは何度も電話がかかって来た。
トモから話を聞いたのか、

「私の事は気にしないで!美咲はマコが好きなんでしょ?」

って、そればっかり言ってたっけ…


でも、私知ってるんだよ?

あの日、プールで元子の胸で泣きじゃくる由恵を…


私は何も言えないま買ったジュースを持って皆の元へ戻ったんだ。


由恵を一人で泣かせる事なんて出来ないよ。


それに、もうこれ以上マコの困った顔は見たくなかった。


「…これ位の長さでよろしいですか?」

美容師さんが、鏡に写る私を見ながら聞いてきた。

私はそれに頷くと、美容師さんに促されるままシャンプー台へと足を進めた。


 

************

…さてと、次は何をしようかな…


私は行くあてもないまま、ぶらぶらと足を進める。

ふと、目に入ったブティックのウインドウ。
夏に向けてのふわふわのスカートで、由恵を思いださせる。


(…私はマコしか居ないのに!)

あの日、そう言いながら私を睨みつけた由恵。


(…やっぱりマコが好き…諦めたくない…)

そう言って泣いていた由恵。


 

(…頑張ったね)

隣でそう言ってくれた由恵。


…これで良かったんだ…



〜♪

不意に聞き慣れた着信音が流れ始める。
私は慌ててバックから携帯を取り出す。


着信は…

由恵。

「もしもし?」

「もしもし?美咲?あのね、明日休みでしょ?…久々に二人で買い物でも行かない?」

突然の由恵からの誘いにOKの返事をして電話を切る。

…よかった…

一人で家に居ると、どうしてもマコを思い出してしまう。

家に一人で居たくはなかった。

少しでもマコを忘れたい…

今は何も考えたくはなかった。
久々に、由恵と二人で出かけるのも楽しみだし…


そんな事を考えながら、手にしていた携帯をバックにしまおうとする。

…しかし、目に入ってきたのはウッドビーズのストラップ。

未だに外せないまま私の携帯にぶら下がっていた。


本当に色々な所に残っているマコとの思い出…


私は手にしたままの携帯をバックにしまい込むと、人込みの中を歩き始めた。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう