夢見てた自分に
今日も天気はよかった。
澄み渡った空は爽やかで、今の私にはなんとなく、憎い存在だ。
そして、今日も手を繋ぐ彼とあの子とすれ違った。彼とは一度だけ、ともちゃんを交えて話したことがあったけれど、彼は私に相変わらず気づかない。
あの子は、ドラマのヒロインで私は脇役。それをすれ違った瞬間に再認識させられるけれど、振り向いて欲しいなんて我が儘なのかな。
「それでね、あたしは言ってやったの!
あんたが思わせぶりだからその子はベタベタと隙を見つけてはしてくるんじゃないのって!」
お弁当を広げた席でともちゃんは最愛の彼氏さんの話をしてくる。
彼氏さんはモテるらしく、ともちゃんは頭を悩ませているらしい。
「そしたらね、こう言ってきたの!思わせぶりな態度で勘違いを人にさせてるのはあたしだって!」
ともちゃんは、綺麗だ。
だから、彼氏さんも心配なんだろう。
ともちゃんの隙を見て告白をしてくる男子が学部内にも結構いるのを私は知っているから彼氏さんの気持ちが分からなくもない。
ともちゃんは誰にでも笑いかけて明るく接してくれる。
綺麗で性格がいい、ともちゃんは私のように人を羨んだりしないだろう。
目の前にいる彼女は痴話喧嘩の内容に怒っているが、私から見たら幸せそうで羨ましい。キラキラ輝いている。
いいなぁ、私もともちゃんみたいに、あの子みたいに。
「……可愛くなりたい」
しまった!と思っても、すでに漏れてしまった心の声は回収不可能だ。小さな呟きだったが、ともちゃんには聞こえたろう。
「あのね、ともちゃん、今のは」
取り繕ろうと私は必死だけど、ともちゃんはニンマリ顔だ。
「菜々子、
恋をしたね?好きな人出来たのね?」
ともちゃんに問い詰められ私は白状した。彼が好きなこと、毎朝すれ違うこと、あの子が羨ましいこと、私が変わりたいこと。
「やっぱりねー?菜々子、あいつが好きって私は勘づいていたよ?
だけど、彼女いるし辛いよね」
ともちゃんは、拙い私の説明でも要領を充分に掴んだみたいで私の心情を察してくれる。
「菜々子、女の子はね、可愛くなりたいって思ったときから変われるんだよ」
「可愛く?」
「そう。特に誰かを好きになったらね、可愛くなれるよ。メイクを研究してみたり、髪型を変えてみたり。
少しずつでも、少しでも夢の自分に近付こうとすることが近道かな?」
「夢の自分……」
私は毎日、夢見てたんだ。
もっと可愛くて、おしゃれでキラキラした目をした女の子に変わる自分を。
ショーウィンドウで地味な女の子を目にする度に。
駅で彼とすれ違う度に。
「ともちゃん!!
私に可愛くなる方法、教えて!!」