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少女と時の時計
作:葵カザミ



一時 優しい少年と新しい生活


周りが真っ暗な場所で男性と少女が居た。
男性は私の父だった、父が少女を見る。
その目には怒りの感情が込められている様な目だった。
父がゆっくりと口を開く。

『ちくしょう・・・俺が何をしたってんだ、ああ!!』

父の手が少女の髪をつかむ。
その少女は幼い頃の私だった。

『いや、やめてお父さん。』

泣きながら少女は父に言った。
すると、父は顔を真っ赤にさせて言った。

『うるせぇ!! お父さんなんて呼ぶんじゃねぇ!!』

そして、少女を殴る。
力が強かったのか少女は頭から血を出しながら倒れる。

「いや、・・・・やめて。」

私は思わず声を上げる。
父は倒れた少女を何回も蹴る。
そして、これで最後とばかりに大きく足を上げる。

「いやぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

その足が少女、幼い頃の私の腹部に入る。
サッカーボールのように飛び、地面を三回ほど転がって止まる。
その時、視界が黒から白に変わり、目が覚めた。





がばっと、ベットから体を起こす。

「あれは・・・夢? それに・・・・ここは何処?」


息が荒く、汗も凄く掻いていた。
昔の事だ、あれは夢、今は大丈夫、そう思うことにして、周りを見てみた。
今いる場所は、部屋の隅のベットの上、周りの家具は綺麗にされており、埃ひとつ無い。
外は土砂降り、窓を打つ雨の音がすごくうるさい。

「私の家とは違う、こんなに綺麗な部屋もあるんだ。」

春の家は掃除なんて滅多にしなかったので、いつも埃だらけだったし、
他にもカップ麺などのゴミで散らかっており、足の踏み場も無いほどだった。
この部屋は違う、余計なものが何一つなく、よく言えばさっぱり、悪く言えば殺風景な部屋だ。

「ってなんで悪く言わなきゃいけないの、元の家に比べたら十分だよ。」

なんて言っていたら扉が開いて、自分と同い年くらいの少年が入ってきた。

「起きてたの、大丈夫?」

その少年を見た時、私は思わずこう言ってしまった。

「え、・・・・・・・・しょう・・・君?」

そっくりだったのだ、幼馴染の翔君に、でも少年は。

「違うよ、僕は椿つばき、翔って名前じゃない、君は。」
「わ、私安藤春あんどうはるって椿君、名前は?」
「ないよ。」
「え?」
「それよりもこれ、安藤さんのだよね。」

そう言って、椿君はポケットから懐中時計を取り出した。

「あ、そう私の。」

私がそう言うと、時計を渡してくれた。
時計はまだ止まったままだ。

「ずいぶん古いね。」
「そうなの、おばあちゃんので。」
「そっか。」

そう言って椿君は、服をタンスから取り出し、私に渡す。

「着替えなよ、汗、掻いてるでしょ。」
「・・・・ありがと。」

久し振りに素直にお礼が言えた気がした。

「どういたしまして。」

そう言って椿君は部屋の外へ出て行った。
あっ、早く着替えないと、汗で気持ち悪いし。





「単刀直入で聞くけど、君はどうしてこんな所に?」

着替えが終わり、部屋に戻ってきた椿君に真剣な顔で聞かれた、しかもいきなり確信。
でも、私は隠さずに全て話した。
こうやって、全てを話せる人が居なかったから、親に虐待を受けた事、生徒にいじめられた事、全て話した。
途中から涙が出てきた、擦っても止まらない。

「もう、あの家に・・・・帰りたく・・・ない。」

口から嗚咽が漏れる、みっともないと思っても出てくる涙。
それをしばらく見ていた椿君がこう言った。

「じゃあ、ここに住めばいいよ。」
「ふぇ?」

驚いた、まさかそんな事を言われるとは思ってなかった。

「ここは椿荘って言ってね、簡単に言うと親がいない子が集まる所、今の所住人は四人いるけど、安藤さんはどう?」

嬉しかった、初めてだった、こうやって人に聞かれるのは、今までは有無を言う事なんて無かった、決めた、私はここで変わる。
涙を拭いて、力強く言った。

「よろしくお願いします!!」

そう言うと椿君は、少しだけ笑ってこう言った。

「はい、ようこそ、椿荘へ。」

私はここで変わる、そう決意した日、土砂降りだった外は眩しいほどに晴れていた。


補足人物説明

安藤 春あんどう はる
腰まであるスーパーロングの黒髪、瞳は黒。
会話はあまり慣れていない。
常に懐中時計を首にかけている。
椿荘に住む事になる、4号室に入居。

椿つばき
整った少し長めの黒髪、瞳は翠。
常に目を細めて、笑顔を心がけている。
椿荘の二代目管理人、様々な情報、人脈を持つ。

頑張って更新しますので、応援よろしくお願いします。











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