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目的の無い旅 作者:スガ
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ヤーシ村

近くに見えた村に到着。
マサキ達はアルマジロ型のモンスターを倒した後10分ほど歩き、ヤーシ村と呼ばれる村にたどり着いた。

「ところでルビィ」

「どうしました?」

「俺は『何』を聞いたらいいんだ?」

「はい?」

「俺は知らない場所で知らない人に何を聞けばいいんだ。不審者に思われるのは嫌なんだよ」

「マサキさんはゲームをしてる時にそんなこと考えながら村人に話しかけたりしましたか?」

「まぁ・・・、考えたこともないな」

「つまり話題なんて適当でいいんですよ。案ずるより産むが易し、ってことで行動してください」

人見知りな性格ではないと思っていたが、こんなシチュエーションは初めてなせいでどうしても緊張してしまう。そんな不安を持ちながら村の入り口近くのベンチに座っている老人に話しかける。

「おじいさん。少しお時間いいですか?」

「なんじゃ?」

「旅行で来たんですけど、ここは一泊できるところはありますか?」

「泊まれるところか。ここは観光地でもないからそういうのは無いんじゃよ」

「そうですか・・・。本を取り扱ってるようなところもないですか?」

「商店ならあるが扱ってるのは食品と衣料品くらいじゃよ。そういうのは月1回の行商団が来ないと手に入らんのう」

「つ、月1回って・・・」

「わしの家なら多少は書物はあるぞ。よかったら家に来てみるか?」

「いいんですか?」

「ほっほ。書物の数は期待できんがのぅ。こんなジジイの話し相手になってくれるのなら構わんぞ」

「それじゃあお言葉に甘えさせてもらいます」

そんな会話をしながらモックと名乗る老人の家に招待してもらうことになった。数分ほど歩きモックの家に到着したが、道中で村の様子を見ていくと色々と分かるところがあった。村には畑や田んぼの場所が多く分類としては農村に当たるのだろう。住居は全て木造となっており、教科書で見た江戸時代の長屋のような形になっていた。そんなことを確認しているとモックの家に到着すると、居間にあげてもらうとモックはさっそく数冊の本と1つの大陸が載っている地図を用意してくれた。

「この地図は最近のものですか?」

「いや、数年前に発行されたものじゃよ。大きな変化自体が無いから発行自体毎年されてるわけではないんじゃ。世界地図が必要なら行商団に注文しないといかんの」

「これは世界地図じゃないのか・・・。こっちの本は?」

「この辺りの生物の図鑑じゃよ。生態以外にも捕まえ方や捌き方まで一通り記載されとる」

「こっちの本は農業の本に医療の本。種類豊富ですね」

「書物は娯楽というよりも必要だから持っとるんじゃよ」

「モックさん。少しよろしいですか?」

本の種類について聞いていると玄関の方向から女性の声が聞こえた。
振り向くと40歳ほどのきれいな女性が玄関に立っていた。

「イースさん、何か用事ですか?」

「屋根の修理をしたいのですが、修理の道具を貸してもらってよろしいですか?」

「それなら構いませんよ。こっちの棚に工具が・・・」

「ところでモックさん、こちらの男性は?」

「初めまして、マサキと言います。旅行をしてる者でモックさんにこの村のことを聞いていたんです」

「そうだったんですか。ぜひともゆっくりしていってくださいね」

イースと呼ばれた女性と軽い挨拶を交わすと、工具を持ってきたモックが口を開いた

「ありましたよイースさん。マサキ君、屋根の修理を手伝ってやってくれんか?」

「自分がですか?まぁ構いませんが・・・」

「そんな悪いですよ!初めて会った方にこんなこと」

「日曜大工なら慣れてますから大丈夫ですよ。それに女性だけでは大変でしょう」

「ほれ、マサキ君もこう言っておる。男手が無いんじゃからこんな時くらい頼っていいんじゃよ」

「そうですか・・・。でしたらお言葉に甘えてよろしいですか?」

「簡単な修理ですがそれでよければ」

モックの急な提案により屋根の修理を行うことになり、工具一式を受け取りイースの家に向かった。その道中でルビィが耳元で話しかけてくる。

「初対面の人のために動くなんてボランティア精神豊かですね」

「そんなんじゃない。何でもいいから行動しないと話が進まなさそうだからだ」

「あららツンデレってやつですか?」

「ひっぱたくぞ」

「マサキさん、どうされたんですか?」

「いえ、気にしないでください」

なんとなく解ってはいたがルビィの姿や声は自分以外には認知できないようだ。人前で会話をしてはいけないことを決意しているとイースの家に到着した。ここもモックの家と同じように木造1階建てになっており屋根まで3メートルほどの高さだ。

「屋根の一部から雨漏りしているんです。本格的な修理は行商団の方にお願いするので、それまでの繋ぎとして修理をしたいんです。木の板と梯子くらいならありますのでとりあえずの補強をお願いします」

「わかりました」

梯子を使い屋根に上る。こんな体験は田舎に住む親戚の家に行った以来だと思っていると、すぐそこにおよそ20cm四方で変色している部分があった。

「こけら葺きで屋根を作ってるってことは文化としては日本に近いのか?それともこの地域独特のものか・・・」

作業に取り掛かりながらもそんなことをつぶやく。『修理』ではなく『応急処置』なので変色している部分の上に新しい木の板を置き、釘を打っていく。足元が安定していなかったため多少時間が掛かったが、10分ほどで応急処置は完了した。

「よし、これでいいな。イースさん!終わりましたよ!」

「お疲れ様。飲み物用意したから上がってください」

「ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えさせてもらいますね」

屋根を下りイースの家に入るとおにぎりと水、その隣にはモックの家で見たものとは違う地図が置いてあった。

「とりあえず雨漏りは防げるかと思いますが、屋根の腐食が進むかもしれないのでちゃんとした修理を急いだ方がいいと思います」

「前に行商団の方に話はしてるから来てはくれるけど、それまで持ってくれるかしら・・・」

「ところでイースさん、この地図は?」

「さっきあなたがモックさんの家でいろいろ見てたでしょ。お礼と言ってはなんですが参考にしてください」

「この地図に載ってるのは大陸全体じゃなくて村の周辺ですか。でも地図の村はこのヤーシ村ではないですよね?」

「ネコンの都よ。このガシア大陸の首都に当たるわ。そこも知らないの?」

「・・・かなり遠くから来たものでこの辺りの地理に疎いんです」

「大変な旅でしょうね。このネコンは大陸全体の治安維持を目的とした軍隊があるわよ。街も発展してるし行商団もこの街からやってくるのよ。ちなみに私の夫はネコンの街で兵士として働いてるの」

この人に夫が結婚していることに内心少し安心した。会話を続けていく中で『夫は亡くなりました』なんて地雷を踏む必要が無くなったのだからだ。そんなことを思っていると、イースは何かを思い出したかのように手をたたき提案をしてきた。

「そうだ!マサキさん、メヒラ村に行ってみたらどうかしら?」

「メヒラ村?どこにあるんですか?」

「ヤーシ村を南に向かうとチレイ森があるわ。そこを抜けるとメヒラ村に向かえるわよ」

南の森?最初にアルマジロ型のモンスターと戦ってた近くにあった森のことかと思い出す。

「メヒラ村で大きな厄払いのお祭りがあるの。私の母が住んでる村よ。それに娘もメヒラ村に向かってるわ」

「厄払いですか。ちょっと興味はありますね」

「向かうなら日が上がってるうちのがいいわね。よかったらこれも持って行ってください」

イースは小さな瓶とネックレスを渡された。

「これは?」

「瓶の中身は解毒薬よ。たまに森の中には魔力を持った動物や虫が出るから持って行ってね。ネックレスは普段から私がつけてる物よ。母か娘に会ったときに見せれば少しは安心してくれると思うの」

知らない男が家族のネックレスを持っているとむしろ不安ではないか。そんな疑問を持ちながら解毒薬とネックレスを受け取った。

「何から何までありがとうございます」

「娘の名前はエリカって言うの。栗色の髪をポニーテールでまとめてるわ。年齢はあなたと同じくらいかしら」

エリカと呼ばれる娘の特徴を聞きイースの家を後にする。そしてヤーシ村を出ようとしたとき村の出入り口にモックが立っていた。

「おや、もう屋根の修理は終わったのか?」

「はい。これからメヒラ村で行われる厄払いを見に行こうと思います」

「ほほう、じゃったらこれを持っていきなさい。チレイ森を抜けるときに役に立つかもしれん」

そう言うとモックは文字が書かれている小さな紙を渡してきた。

「紙?伝言か何かですか?」

「前回の祭でもらった厄払いの札じゃよ。祭りのたびに前回の札は納める決まりがあるからの。それをお願いしたいんじゃ」

「役に立つってよりもお使いじゃないですか」

「そんなことないぞ。多少は厄除けの効果が残っとるかもしれんし、この札にはわしの名前が書かれておる。紹介状代わりになると思うぞ」

「そうですかねぇ・・・」

「そうじゃよ。それじゃあマサキ君、頼んだぞ」

「それじゃあ頼まれました。せいぜいこのお札を使わせてもらいますね」

モックに別れの挨拶をし、村を出ていく。マサキはこの世界のスタート地点、チレイ森へ歩き出した。
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