リング・オブ・カーズ(42/73)PDFで表示縦書き表示RDF


リング・オブ・カーズ
作:鷹嶺 綺羅



第四十一話


 その頃、お手洗いに出たはずの綾乃は、病院の裏手にいた。

 鉄筋コンクリート製の建物が立ち並ぶ裏手に人気はない。
 それなのに、綾乃はそこに呼びかけた。

「カノッサ」

 返事は、ない。

「いるのはわかっているのですよ?カノッサ」

 風一つない世界に綾乃の声だけが響く。

「お仕置きされたいのですか?」

 あくまで冷静さを保った声のように聞こえるが―――

 ブンッ。

 どこから取り出したのだろう。
 綾乃はその手に剣を握っていた。

「カノッサ?」

「は、はいはいはいっ!」
 その声に脅されたように、突如、綾乃以外の声が響き渡った。
 綾乃が振り向いた先、病棟の壁に開いた黒い穴から、身を乗り出してきたのは、豹柄の毛皮の帽子を被った小柄な女の子。

 女の子が出ると同時に、穴は消滅した。

「こんな所で、何をしているんです?カノッサ」
 そう、問いかける綾乃に、カノッサと呼ばれた少女は、まるで飼い犬のようにまとわりつきながら言った。

「勿論♪ご主人様のお側にいるためです♪」
 まるで猫のような愛らしい顔立ちは、よく見ると左右の瞳の色が違う。彼女がヘテロクロミアであることを告げていた。

 そんなカノッサに、綾乃は剣をしまいつつ、冷たく言った。
「昨日の夜から、姿が見えませんでしたけど?」

「ギクッ」
 まずいことを言われた!という顔で、凍り付くカノッサに、綾乃は容赦なく言った。

「どうせ、人間界で遊びほうけていたんでしょう?」

「ち、違います!」
 カノッサはムキになって答えた。
「ちゃんと第四軍司令部から人間界侵攻作戦の手順を聞き出したり」

「……ああ。あれですか」
 しばらく考えた後、ようやく思い出したらしい綾乃は、カノッサに言った。

「確かに“ゲート”で待機するよう、第四軍に命じたのは私です。ですが?」

 そろーっ。と距離をとろうとするカノッサの首根っこを捕まえた綾乃は、

「人間界侵攻作戦の手順とは?まさかあなた、“姫様が人間界に侵攻を企てている”とか言いふらしたのではないでしょうね!?」

「ち、違うんですか!?」
 カノッサは驚愕の表情を浮かべた。
「てっきり、そういうもんだと思って!」

「何を言っているのです!もういいです!さっさと第四軍には撤退命令を。私からの勅命です!」

「えーっ!?」
 突然の撤退命令に、カノッサは不満そうに口を尖らせた。

「みんな殺る気満々ですよ?人類根絶やしにしちゃえって」

「誰がそんなことを命じるものですか」
 綾乃はカノッサから手を離した。

「いいですか?私は今、とても大切な局面に」

「ああ!知ってますよ?」
 カノッサは自信満々に言った。
「姫様が城から“世界樹の葉”を持ち出して、あげくに盗まれたことでしょう?」
「な、なんでそれを!?」
 今度は綾乃が驚愕の表情を浮かべる番だった。

 その綾乃に、カノッサはあっさりと言った。

「城から“世界樹の葉”が盗まれれば、すぐに知れわたりますよぉ。天界・獄界にも話は伝わっています」

「―――くっ」
 脱力してその場にへたり込む綾乃。

「生きてます?」
 つんつん。と、綾乃の後頭部をつつくカノッサに綾乃は答えた。

「死にたい気分ですが―――まだ生きています」

「ですからぁ。もう諦めて第四軍使って、この地上を焼き払っちゃいましょうよ。その方が圧倒的に楽ですし」

「後処理はどうなるというのです?」

「むぅ……昔どおり、魔界の植民地にしちゃうとか♪」

まつりごとは、あなたが考えているより難しいものです」
 綾乃はなんとか立ち直った様子で、膝についた土を払った。

「そんなことは出来ません。ただし」

 その視線は冷たい決意を秘めていることを、カノッサはすぐに見抜いた。

「“世界樹の葉”を放置することもまた、出来ません。あのグリムから奪還し、あるべき所に戻さねばなりません。さもなければ、私は永遠の汚名を背負うことになるでしょう」

「そうしなければ、グロリア陛下からどんな沙汰を受けるか―――の間違いじゃなくて?」

「肉体捨てなければならないまで追いつめるなんて、親のすることですか!?」

「親に叱られて、肉体残して家出する娘って方がすごいと思う」

「―――痛み分け。そうですね?」

「まぁまぁ」
 カノッサは綾乃を何度もぽんぽん叩きながら言った。
「そんな気張らなくても、なるようにしかなりませんよ?」

「貴女ほど気楽に生きられれば、人生楽しいのでしょうけど……」

「万一の時には“これ”使いますよ?グリムの居場所は情報局でも掴めていないようですけど」
 そう言ってカノッサが取り出したのは、小さな銀色のダーツの矢。
 それを見た綾乃の顔が何故か怒りに歪んだ。
「カノッサ」

「使う?」

「今回の件でその使用は厳禁です」

「えーっ!?」
 カノッサは相当心外だ。という顔になった。

「使いなよぉ!獄族だって無事じゃ済まない呪いの矢だよ?せっかく私が軍団から特別にもらったんだからさぁ!」

「ダメです」
 その矢を見たくない。といわんばかりに、綾乃は視線をそらせた。

「むぅ……そうだ!」
 思い出したように、カノッサは言った。
「人間界のこの国の皇女にならいいでしょう?殿下の大嫌いな恋のライバル」

「カノッサ」

「ね!ねねっ!?そうしようそうしよう!そうすればあの“天界の玩具”は姫様の者だよ?その人間の“器”使わなくても―――」

 チャッ。

 カノッサは、喉元に突きつけられた剣の切っ先によって、それ以上の言葉を粉砕された。

「忠告しておきます」
 綾乃は無表情を演じているが、内面の怒気は隠しようがない。
「まず、水瀬悠理を好きなのは私じゃありません。瀬戸綾乃です。それを間違えないように。それと、私はその“呪具”が大嫌いです。私に許しもなく使ったら―――わかっていますね?」

「ううっ……憎きライバルを苦しみ抜いて殺せるチャンスなのにぃ。―――じゃ、どうですか?息抜きに見物なんて」

「見物?」

「そう。け・ん・ぶ・つ♪」
 ウププッ。と、口元を押さえながら意味深な笑みを浮かべるカノッサの様子が、綾乃には気になった。

「何です?」

「あのですね?」
 カノッサは先程の黒い穴が開いていた壁を指さした。

「あっちでね?女の子が女に犯されているの。―――見物みものだよ?」

「?……ああ」
 綾乃は先程の悠菜を巡るやりとりを思い出し、小さくため息をついた。

「あの子もお気の毒に」
 そっ。
 綾乃は手を合わせた。



 一方、手を合わされた相手はどうなっていたかといえば―――。

「ひっ、ひぁぁぁぁっ!」

 ベッドの上で悠菜は歓喜の声を上げた。

「はい♪12回目」

 16歳にしては未成熟な悠菜の乳房を舌で攻めながら、栗須は満足げに悠菜の顔を見た。
 真の絶頂に達したことを示す、激しい余韻に身を委ねるその顔を見るだけで背筋がぞくっとする。
 幼いと言い切れる未成熟な体が快楽によって痙攣する様でさえ、栗須にとっては情欲の炎に注がれる油に過ぎない。

「ふふっ……何?自分でシたこともなかったんでしょう?こんなにエッチになっちゃっていいの?」

 栗須の指先が、誰にも触らせたこともない……いや、誰にも見せたことすらない、悠菜の最も敏感な部分をつまみ上げた。

「ひゃぁん!」
 悠菜は涙を流しながら悲鳴を上げたが、栗須の耳には、それが泣声ではなく、可愛いペットの鳴声にしか聞こえない。

「……も、もう許してよぉ……」

 息も絶え絶えの苦しい息の下、悠菜は栗須に許しを請う。

 それは絶対的な存在に慈悲を願うのと同じ。

 この部屋という世界の主―――栗須明奈にはそんな慈悲は最初から存在しない。

 加虐心がかき立てられ、どうようか考えるだけで栗須は軽い絶頂に達してしまう。

「許してよ?……それが」

「きゃうんっ!」

「ふふっ……可愛い声あげてもダメよ?お姉さまに対する口の利き方から教えてあげようかしら?」

「ご、ごめんなさい!」
 伸ばされた栗須の手から逃げたい。
 悠菜はとっさにそう思った。
 それなのに、悠菜の体は逃げない。
 逃げられないのではない。

 逃げないのだ。

 体が、歓喜を与えてくれる栗須の手を歓迎している。

 どんなに恥ずかしい、嫌だと思っても、それが頭の中だけのことだと、悠菜は初めて理解し、そして驚愕した。
「そ、そんな―――」

「ふふっ?体が言うこと聞かないんでしょう?」
 栗須の顔は楽しげにさえ見える。
 その手が触るだろう所を、悠菜の体は自らさらけ出してしまう。

 下腹部を栗須の手がさする感覚に、頭では嫌悪感を感じつつ、体は喜んで太股を開いてしまう。

 ありえない。
 こんなこと。
 それなのに、栗須は“これで当たり前”といわんばかりだ。

 悠菜は恐る恐る、栗須に訊ねた。

「く、クスリ?」

「まさか」
 いいつつ、悠菜の唇を栗須が強引に塞いだ。
 息が詰まりそうになる苦しさに目をつむる悠菜だが、

「―――くっ……ウグッ……」

 舌が絡まるだけで電気が走ったような快楽が脳内を駆け回る。
 自分の舌が、まるで別の生き物のように口の中で動き回るのを、悠菜は止められない。

「ハッ……ムグッ……ウウンッ」

 舌が動かされる度に小刻みに体を走る電気で、ようやく止まった湿り気を感じ、悠菜は内股をモジモジと動かさずにはいられない。
 それが、自分が絶頂を迎えている証だと、性には疎い悠菜でも朧気ながらも覚ることが出来た。

「ふぅっ……快楽を覚えちゃうとね?こうなるの」
 唇が離れ、栗須の舌が首筋を這うのが恐ろしくもどかしい。
 栗須が離れるのを、体が、そしていつしか、頭までもが拒んでしまう。

「―――さぁ」
 栗須は悠菜の耳元で囁いた。

「お姉さまにしゃべりなさい。知っていること全て」

「や、やだ―――」
 それでもなお、頑なに何かを拒む悠菜に、栗須は諦めずに続けた。
「“あれ”は喋ると―――困る」
 そう言う悠菜の内股に、栗須の手が伸びる。
 身を固くして“その瞬間”を待つ悠菜だが、栗須の手はそのまま太股をさすっただけで離れしてまう。

「あっ―――」
 悠菜は慌てて口を閉じ、これ以上ないほどに赤くなった。

 ヤダ。もっと。

 悠菜はその哀願を口から出さずに済ませることが出来た。
 出来た、はずなのに……。

「ヤダ?うふふっ。もっとして欲しい?」
 図星を突くような言葉を浴びせられ、悠菜は返答にさえ困ってしまう。

 その悠菜に、栗須は囁いた。

「しゃべってくれたら―――もっともっと、気持ちよくしてあげる♪」

 より強い快楽。
 何も知らない悠菜にとって、それは恐怖であり、興味、いや、願望でさえある。
 華雅女子学園時代、自分で慰めることさえ知らない未成熟な女の子を、趣味で無数に調教した経験がある栗須は、こうした女の子の変化に恐ろしく敏感だった。

「……」

 悠菜の眼が、快楽と理性の狭間で揺れ動いているのが、栗須にはわかる。

 経験が、“あと一押し”を告げている。

 栗須はトドメの一言を悠菜に囁いた。

「悠菜に快楽を与えられるのは、お姉さまだけなのですよ?」

「……くっ」
 首筋から胸にかけて這わされる舌の心地よさ。
 それに屈したのか、悠菜はきつく眼を閉じた後、

 そっ

 栗須の首を抱きしめ、その耳元に何事かを囁いた。

 それは、悠菜が栗須に陥落した瞬間でもあった。

「いい子ね―――仔猫ちゃん」

 そして、二人の唇が、熱く重ねられた。




 さらにもう一方。
「どうした?ルシフェル」
「桜田門の人から渡してくれって、さっき理沙さんが」
 “愛人”を“人”と略した娘の手から、封筒を受け取った由忠は、中を軽く見ただけでルシフェルに言った。
「で?かいつまんで説明してくれ」
「自分で読んだらどうです?」
「それでは面白みがない」
 由忠は笑った。
「たまには、ルシフェルとも話をしたいさ―――親子だろう?」
「それは、そうですけど」
 ルシフェルは何だか割り切れない。という顔で遥香に言った。
「御母様?御父様、何かズルしてません?」
「御父様はそう言う方です」
 遥香はきっぱりとそう言い切った。
「でもね?ルシフェルちゃんとお話ししたいっていうのは、御母様も同じよ?」
 その優しさがルシフェルにとっては泣けるほどありがたい。
「それがどんなことでもね?」
「で?ルシフェル、村田理沙から何を言われた?」
 ルシフェルは、両親に理沙の言葉を告げた。

 武原琥珀の死。

 その首謀者の霧島源一郎。

 そして―――

「理沙さんは、この自殺現場が気になると言っています」
 封筒からルシフェルが取り出したのは一枚の写真。

 それを見た両親の内、由忠は眉をひそめた。

「お前……これって」

「あら?あなた、ご存じで?」

「当たり前だ」

 由忠は食い入るように写真を見つめた。

「これ……召還魔法陣だぞ?」

「召還?」
 遥香とルシフェルが思わず顔を見合わせた。

火龍サラマンダーでも召還するつもりだった。とでも?」

「馬鹿な」
 由忠は妻の軽率な発言をたしなめるように、その写真を指に挟んで遥香に見せた。

「この魔法陣は“禁呪”の一種……獄族の召還魔法陣だ」

「召還魔法陣?」
「ああ……遥香は知らないか」
 由忠は妻と娘に語り出した。

 人間―――魔導師が他界の存在を招き寄せる魔法を召還魔法という。
 魔界や天界の精霊を召還する精霊召還魔法に使用されることが多く、その方法も魔導師のレベルや技術によって多岐にわたる。
 この魔法の存在そのものは一般的に知られているし、“火龍”に代表される“四大精霊”(地精:ノーム、水精:ウンディーネ、 火精:サラマンダー、風精:シルフ )を呼び出す魔法そのものも一般的といえば一般的だ。
 だから、魔法に無知な者は、この召還魔法一つで、どんな存在でも―――例え“神”と呼ばれる存在でも―――すべてをこの世に召還し、使役出来ると勘違いしている。

 召還魔法はそんな単純な代物ではない。

 召還する対象は、四大精霊のように、この世界でも存在する元素であるが故に召還が単純なものばかりではないのだ。

 これが“魔族”などの高位存在を呼び出すとなれば話はまったく異なる。

 去年の倉橋での一件(『呪われた姫神』参照のこと)に代表されるような気の遠くなるような手間と準備、そして犠牲、対象によってそれらは全く異なる上に、どんな存在が来るか、まるで制御できないのも厄介な話なのだ。

 何より、高位存在であればあるほど、召還の成功率は下がるし、相手が言うことを聞いてくれる可能性は低くなる。すなわち、それは召還を行う魔導師の命が危険にさらされる確率が高くなることでもある。

 そのリスクを考えたなら、どんな問題でも、人間の手でどうにかした方が絶対にいい。 それが、魔導師達のほぼ統一された見解というのが、召還魔法の難しさを照明していると言えよう。
 それでも高位存在を呼び出したいと考える命知らずのために編み出されたのが、“召還魔法陣”。
 それは、あくまで召還を可能にする基礎中の基礎で、成功も、使用者の命を保証するのでもない。

「一言で言えば―――」
 由忠は束になっていた現場写真を見ながら言った。
「費用対コストから見て恐ろしく非効率な、アホのやるコトだ」
「私達を人間が呼び出す魔法は知っていますが」
 遥香は首を傾げた。
「でも、ここ3千年で、召還に応じた者ってほとんど」
「聞かないだろうな。精霊以上を呼び出す高位召還で決定的なのは、魂の呼応……ロイズール様と綾乃ちゃんのようなきわめて希な関係がなければならんのだからな」
「じゃあ」
 ルシフェルは父親に訊ねた。
「この魔法陣は失敗したの?」
「そうとしか思えないが……」

 ペラッ。

 めくった一枚の写真。

 そこに映し出されたものに、由忠は凍り付いた。

「なっ!?」

「あなた?」
「御父様?」

「……」
 呆然としてその写真を見る由忠の頭がいつの間にか白くなり始めた。
「やだっ!」
 着物の袖に手を入れた遥香が、どこに入れていたのか、白髪染めを取り出すなり由忠の髪に塗り始めた。
「まだ早いですわ!」

 カチャッ。

 由忠が震える声で何かを言おうとした時だ。

「失礼いたします」

 一礼の後、病室に入ってきたのは栗須だった。

「悠菜ちゃんが白状しました」

「あら?早かったですね」
 白髪染めをしまいつつ、遥香が驚いたように言った。

「よほどの拷問でもかけなければ、悠君は白状しないと思ったんですけど」

「苦痛より快楽の方が、人の心を弱くさせます」
 栗須は何でもない。という顔で、ドアの横、悠菜を連行するまで座っていた椅子に腰を下ろした。

「ちょっと信じがたいことを言っています」
「信じがたいこと?」
 ルシフェルは首を傾げて言った。
「信じやすいことなんて、水瀬君言えないですけど?」
「そうねぇ……」
 遥香は否定するどころかむしろ肯定の立場らしい。
 とても身内の言葉とは思えない言葉をかけられる水瀬に、栗須は少しだけ同情した。
「で?」
 由忠は何やら、神に祈るような……いや、法定で判決を待つ死刑囚並みの神妙な顔で栗須に訊ねた。
「中佐……あいつは、何と?」
「はい」
 ちらり。と全員の顔を見た上で、栗須は言った。

「まず第一に、この病院の地下から魔素が発生している。その理由は、この地下の一部が、別世界の“ある施設”に強引につなげられている、そのゆがみによるものだと」

「ある……施設?」
 何かしら?思わず夫の顔を見た遥香の目の前で、由忠は一気に20歳は老けたように思えた。

「はい……なんでも、人間の死体を中心に、人間に対するあらゆる実験の材料―――悠菜ちゃんの言葉を借りると“モルモット”を確保することが目的。なお、このような場所は、いくつかの刑務所にも存在するそうです」
 突然、由忠が倒れた。

「つまり」
 夫を介抱しつつ、遥香は驚いたように言った。
「死体泥棒のために、この病院の地下がつなげられていると?」

「正確には、魔素影響による死体製造も期待してのことだそうです。ゆがみはそのためわざと作られた」
 栗須は言った。
「そのつながっている先なんですが」
「―――待て」
 手を突きだして栗須の言葉を止めた由忠は、突然、ベッドの下から酒瓶を取り出して一気にラッパ飲みした。
「あなた!」
「御父様!?」
 妻や娘の咎める声ですら、今の由忠の逆鱗に触れるだけだ。
「黙れっ!」
 由忠は怒鳴った。
「水瀬家の当主として、次の言葉はこうでもしなければ聞けたものではないわ!中佐!もう何が来ても動じない!続きを言えっ!」
 突然の由忠の豹変に呆然とする母子を後目に、由忠は栗須に続きを促す。

「は、はい―――その、神音商会かみねと」







ランキング登録しました。一票いただけると嬉しいです♪携帯小説Ranking





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう