小走りホラー〜出涸らし編〜
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「今日のカレー旨いじゃん」
「ねえ」
「なに?」
「カレー味のウ○コと、ウ○コ味のカレー、どっちがよかった?」
「え……」
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「ねえ、あたしのためだったら死ねるって言ってくれたわよね」
「ああ、もちろんさ、ハニー」
「じゃあ、今死んでっ!」
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おでんの季節だ。
玉子の代わりに、あなたの目玉とか、
白滝の代わりに、あなたの髪の毛とか、
巾着の代わりに、あなたのきピーッとか……
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あなたが私にくれたもの。
この胸いっぱいの愛と。
このおなかに宿る新しい命と。
この子が生まれるまでの間の食料。
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僕の腕に蚊が一匹止まった。
そのときの僕は、とても優しい気持ちだったので、微笑みながら言ったんだ。
さあ、好きなだけ飲んだらいいよ。
『○○さんが、死体で発見されました。不可解なことに、その体には一滴の血も残されておらず……』
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眠れない……
明かりを消そうとすると蛍光灯が、
消さないで
って涙をこぼすから。
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俺は町で拾った女と、霊園に来ていた。好都合なことに、誰もいない。
「ほんと、あなたしかいないものね」
――イキテイルニンゲンハ……
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……み……みずを……
渇きのために朦朧とした俺の口に、ひんやりとしたものが注がれた。
ああ……
だがそれは、うねうねとくねり――
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月食のとき、月は暗い赤に染まるんだ。
みんな、月を見上げているから気づかないけど、
人の影も赤くなるんだよ。
でもね、それを見たらいけない。
だって……見たら本当になっちゃうから。
影を染めるのが、あなたの血だって――
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妻の遺書を見つけた。
僕を殺して自分も死ぬって書いてあった。
ちょっと見つけるのが遅かったなぁ……
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「そういう趣向は前もって言ってくれないと……」
一週間前、長期出張の直前に届いた大きな箱の中身に向かって、僕はつぶやいた。
――誕生日おめでとー。プレゼントは、わ た し♪
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「赤が好きーっ!」
そう叫びながら走り去って行く彼女の両手は、
僕の血で染まっていた。
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(おしまい?)
そう、おしまい……