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夜のドライブVer.2 〜故障〜
作者:結城陸空
グループ小説企画の作品です。二人称小説ってテーマのようです。他の先生の作品はグループ小説や二人称小説で検索すると見れます。
 君はあの日、車が故障してとても困っていたね。こんな山奥で、時間も夜遅くだっていうのに。

 偶然にも出会えたからよかったものの、もし出会ってなければ君は何時間もかけて街まで歩かなければならないところだったね。

 君を乗せた車には君以外に四人の人間が乗っていたんだ。君以外は全員友達だ。全員で山奥までバーベキューをしにいった帰りだったんだ。君は車に乗る時に言ってたね。祖母が倒れたから早く病院に行きたいって。

 君の表情などを見てると、とても急いでいるのが手に取るようにわかったよ。こんな山奥で車が故障して一人きり、早く病院にいきたいけど足がない。こんな時にこの車に出会えた君は本当に幸運だよね。

 だから君がそんな場合じゃないのは分かっていたけど、みんなテンションが上がってる。バーベキューですごく盛り上がったからね。車内でもみんな大声で歌を歌ったり、君を口説こうとしたり、ほんと非常識な奴らばっかりで君は困りながらも、車に乗せてもらったお礼の意味を込めてなのか、そんなみんなに合わせてくれていたね。

 君のおかげで、車内はほんとに楽しい雰囲気になったね。

 あの日は休日だったから、みんな仕事のこととか、嫌なこととか忘れて遊びにいってた。君は思わない? 仕事やってたらストレスは溜まるし、生きてても特に楽しいこともないんだから、たまには思いっきりハメをはずしたいって。

 みんなそう思って、遊びにいったんだ。でもみんな中途半端は嫌みたいなんだ。だからこんな夜遅くまで時間がかかってしまった。でもそのおかげで君はこの車に乗ることができたんだから偶然ってすばらしいよね。

 車内は男ばっかりだったからさ。女の子が入ってとても嬉しかったんだ。みんな喜んでた。みんなのテンションの高さを見れば君も分かっただろ? みんな仲間を欲しがってた。

 実は、みんなあの日が初対面だったんだ。ネットで募集して集まった仲間なんだ。ネットでは長い付き合いだけど、実際にあったのはあの日が始めて。みんな社会が嫌になって集まったんだ。だから君も始めてだけどもう友達だ。

 君にその話をしたら、急に車を降りるって言い出したね。ちょっとビックリしたかな? でもここから街まではまだ距離があるし、こんなところを一人で歩いて野犬にでも襲われたりしたら大変だから男としても人間としても降ろすわけにはいかない。なにより君はもう仲間なんだから。

 みんな、あの日という日を楽しんだんだ。それはもうお祭り騒ぎさ。人生で一番楽しいときだったと思うよ。一度くらいあったっていいと思わない? 人生で一番楽しい瞬間ってのがさ。毎日毎日仕事に追われる日々じゃなく、そんなこと全て忘れて無になれる時がさ。

 車はだんだんと山を降りていく。途中たくさんの曲がり角があって、ガードレールで仕切られてるけどそこを越えると崖から真っ逆さま。みんなドライブ気分、いやお祭り気分でハイテンションだったね。君も車内で暴れて暴れてもう手がつけられないくらいだった。

 全員が車内でハイテンション。そうやって全て忘れて、全て終わりにしたんだ。

 曲がりくねった道なのに誰もハンドル操作なんかしていない。する気もない。みんなそのために集まったんだから。今日は人生で一番楽しい日。ハメをはずして全てを忘れて。お祭り騒ぎで。人生最後の夜を楽しむ。この集まりは『集団自殺サークル』。君も、仲間だ。

 ガードレールを突き破って、真っ逆さまに落ちていく車。とても浮遊感があっただろ。地上についた途端、大爆発を起こして、車内にいた人間はみんな即死だった。

 ――君の車はあの日故障したけど、みんなの心はとっくの昔に故障していたんだよ。


 ああ、そうそう。一つ言い忘れてた。君の車が故障してたのはほんとに幸運だったよ。もともとは歩いて帰る予定だったんだけど、君が急いでいるようだったから、代わりに残って君の車を直してたけど、君の車がすぐに直ったおかげで、歩いて帰る必要がなくなった。こんな山奥から歩いて帰るのは大変だからね。

 みんな自殺したと思ってるところがなかなか笑えるだろ? ほんとは、『集団自殺サークル』って言う名目を被った『殺人サークル』なんだけどね。これで君を含め四人の人間を殺せた。この車は次の殺人の道具として使わせてもらうよ。

 それにしても君の車が故障していて、君が代わりに車に乗ってくれたおかげで幸先のいいスタートが切れたよ。

 君はほんとに、幸運な人間だね――。


                了
読んでいただきありがとうございます。初の二人称小説です。二人称小説ってこれであっているのか不安ですが、がんばりました。感想、指摘等くださると幸いです。
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