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静かな男の熱

作者: tokoro10

 洋の東西を問わず、女性の美に対する熱意というものは凄まじいものがある。男性の側にはそういった情熱が無いとは言えない。男性とういうものはそういう熱意らしきものを、熱意と感じる事なく発揮しているだけのことである。


 男は、考えていた。

「雨が降って、水が流れて、大河にそそいで、んと」

両手をパソコンノキーボードにおいて。その両手はとまったまま。

ふっと立ち上がり、また座って。今度はペンを手にして。紙に向かう。

もう少し。あともう少し。自分の中のイメージを練り込む。うどんの生地を練るように、自分の気力という重しをかけて、その印象を混ぜあわせ、コシをだす。そうしてできたものから、余計なものを削いでいく。言うなれば、中国料理の刀削麺の如き作業で、頭の上に乗せた生地を特別な刃で撫でて、麺を形成していくのだ。

(天から降りた雨粒が)というフレーズが、その言葉の響きと同じように男の心中の雲から現れる。

「雨粒天より下り、山青く水抱いて、水は岩を伝い湧き、清き大河へと注がるる。」

男の口から、旋律が放たれる。その余韻に男は酔いしれて、紙に書き出し、キーボードで打ち込み、社内の女上司へのメール本文へと転写され、それは送信された。

 新製品「天酒」という日本酒のキャッチコピーを書き上げた男は、満足そうに椅子にもたれかかり、天井を見上げた。すると、デスクのPCがメールの着信を知らせる。上司からだ。

 そのメールを見た男の表情はみるみる内に痩せていった。

 女上司からのメールには「もっと情熱的にして。長い。」と書いてあった。


古の時代から男女においての、性質の違いというものがある。男女の情熱の注ぎ方、またはその対象や作法というものも、肉体が持つ姿形以上に違うものになる。だから、理解という誤解の中で伝わる情熱を人は期待し望み求めて、生きていくものなのかもしれない。

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