のほほんと
のほほんとしません
その空間は、異常なまでの熱気と計り知れない緊張感で創られている……そう錯覚してしまうかのように思われるほど緊迫した状態にあった。
『【クイーン】お願いだ、俺の元へ来てくれないか』
焦る気持ちを押しとどめ彼、本宮信は必至の想いで懇願した。誰にか? 勿論、自らの運と半信半疑に信じている神にだ。彼を見て他力本願だ、と思う輩もいるだろう。だがこの場合はいた仕方がないのだ。
「早くしな……ま、お前はもう終わりだろうがな」
本宮を、見下すようなぬるい口調で追い詰めている佐藤楓は、余裕綽綽といった風に自らの優秀な駒たちを眺めていた。
「さあ? 安心するのはまだ早いと思うけど?」
本宮は自らの動揺を隠すかのように気丈に振る舞った。しかし彼はもう薄々とは感じていたのだ……自らの敗北が既にほぼ決定されているのだということを。
そう、【クイーン】が彼の元に訪れるということは奇跡に近いのだ。彼女が遠くにいるのか、はたまたすぐ近くにいるのかそれすら本宮は把握していないのだから。
「ふんっ、そう言うからには俺に勝てるんだよな? まさか駄法螺話じゃねえよな……さあさっさと自分の運命決めちまいな! 俺はさっきと同じくパスだ。それと分かってると思うがこれでラストだからな、くれぐれも慎重にいけよ?」
佐藤は自らの勝利が既に保障されているとでもいった風にその表情をシニカルな笑顔に歪めた。
「わぁーてるよ! きてくれ! クイーン!」
本宮はそう自らの願いを悲痛な叫び声に昇華させ、トランプを一枚その手に引いた。その直後、佐藤は強気な怒声を上げた。
「俺はエース三枚にキング二枚のフルハウスだ! 勝てるか? お前に?」
「ふっ! ははっ! 俺の勝ちだぜ、おい!」
本宮は歓喜の遠吠えを谺させ空に自らの札を舞い散らせた。
「……クイーンのフォー・オブ・ア・カインドかよ……」
佐藤の溜息にも似た断末魔の声は教室の壁に突き当たり朽ち果てた。
オチなんか三行読まずにわかってしまったという人もめっさ多いんではないのかなぁ?
なにかコメントをくれてやってもいいぜという慈悲深い方がおりましたらくれてやってくださいな