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かなたへ 第八部 Rewind(リワインド) 終章 旅の果てに
 もう、何年になるのかな、かたた?
「外界の時間では九十二年になりますね、私とあなたが過ごした時間では丁度百五十年です、あなた、どうなさったの?」
 かなた、お前はいくつになっても綺麗だ、わしの目にはまだ二十歳そこそこに見える。
「眼鏡をおかけにならないからですよ、貴方に嫌われない程度にはちゃんと老けていますから」
 そうだな、ついお前が特別だった事を忘れてしまう。お前のお陰でこうやって人様より長く世間様を見させてもらった。解っているんだ、もう人間としての細胞の寿命が果てようとしているのはな。だから、その時が来る前に、かなたに礼を言いたかったんだ。本当に有難う、かなたがわしの家内になってくれて感謝している。わしは満足だ、だから、わしが息をしなくなって向こうへ行っても、悲しまないでくれ。
「いいえ、あなた、私はあなたに子供を、孫を抱かせてあげることが出来ませんでした。ごめんなさい」
 なあに、そんな事はなあんとも思っておらん、色々あったが、今ではこの世界そのものがわしの子供であり孫だと思っておる、かなたとわしがおらなんだら、あの時逃げて帰っていたら恐らくこの世界は絶滅さえむかえておったじゃろう、それも何度にも渡ってな。場合によってはこの宇宙そのものの滅亡すらあったろう、今思ってもハルヒは本当に無茶をしおったな。わしらが是正せなんだら、宇宙の連続性がほころんで崩れていたのではないか? そうすれば当然この宇宙に重なるわしらが後にしてきた宇宙も、かなたの故郷の宇宙にも害をなしたであろう? 言わずとも、かなたとこれだけ一緒にいれば、そのぐらいわかっておる。
「キョン先輩、分かってらしたんですね、有難うございます、私、そのために有希姉さまからあなたを奪っていしまったと、恥ずかしく思っていました」
 かなたは自分のなすべきことをしたのじゃろ、恥ずかしがったり、悔やんだりする事は何も無い、わしはそんなかなたを妻にできた、全宇宙で一番の幸せ物じゃ。かなた、あり、がとう。
 キョン先輩、おつかれさまでした、休んでください。いま、かなたがお連れしますから。
 息をする力が急激に失せ、かなたの腕のなかで深い闇へと還元されようとしたとき、俺の唇に柔らかくみずみずしいかなたの唇が触れた。薄れ行く意識の中、かなたの声が聞こえる。
「キョン先輩、さあ、お連れします。元の世界へ、あの時記録したデータ、再生します。
 かなた、本当に幸せでした、私がぎゅっとします、つかまって、行きましょう」
 かなたの強い抱擁をうけ、俺は旅立った

 くらくらとするめまいを感じ目を開ける、深く息を吸い込む。
 俺は、生きているのか?
 俺に抱きつくかなたの髪をなでながら目を上げると、長門が涙を流し立っていた。
「あなた、お帰りなさい。時空震は調整されました」

 長門はそう言うと、俺とかなたに抱きついた。
「あなた、あなた、あなた、逢いたかった」
 そう言って、長門は声を上げて泣いた。

 やがて、机の上に置いた携帯から声が洩れる。何だ? 反射的に携帯を持ち上げ耳に当てる。
「キョン、寝ちまったのか、この薄情者!」
「佐々木、寝ちゃいない、腕が痛くなって携帯を置いていただけだ。
 佐々木、無事か?」
「ああ、君の言うとおり顔を洗ったらスッキリしたよ。
 なんだか頭の靄が晴れたようだ、
 遅い時間の電話で、ちょっと夢の中で君に泣かされたような気がしたよ。
 どうしたのかね、僕ともあろうものが。
 大丈夫、君もつまらない事なんぞ思い出して電話なんかするんじゃない。
 ふっと中学時代に戻ったような、一瞬懐かしい夢をみてしまったじゃないか。
 キョンも遅咲きだけど勉強頑張ってるんだな、僕も安心したよ。
 進学先、今度こそ同じになれるかもな、その時はまた同級生だ、
 二年後、楽しみにしてるぞ。
 お休み、キョン」
「ああ、佐々木、済まなかった、そして、有難う。
 今の俺が在るのは佐々木のお陰だ、
 俺は今でもずっと佐々木に支えられてる、これからも多分。
 だから、お互い頑張ろうな、お休み」

 通話を切り携帯を机において振り返ると長門とかなたは手をとりあって立ち尽くしていた。
 互いに長い話を交わすように


 Rewindリワインド
次作は「かなたへ 第九部 The rainy days(雨の日々に)http://ncode.syosetu.com/n3769k/」です。お楽しみに。
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