ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
かなたへ 第八部 Rewind(リワインド) 第一章 見知らぬ少女 第1節
 眠気覚ましのドリンクを買いに出たコンビニの出入り口の横の雑誌売り場の色とりどりの表紙に少々辟易としながら通り過ぎる、あれは、国木田だよな、あいつもこんな雑誌を立ち読みしているのか?
 レジの前にある棚から愛用の眠気覚ましのドリンクを二本取り出し、何の気なしに積んであったレジ籠を取り、その中に小さな瓶を放り込む、一瞬目の前がくらっとした、やばい、疲れすぎなのか?
 他に何を買うつもりもなかったのだが、ついフラフラと店内を一周する。苺フェアとかいって、苺のスイーツが並んでいる、もう苺のシーズンは終わったと思っていたが、最近は年中苺が手に入るからな。別に妹の顔が浮かんだわけでも、お袋の顔が浮かんだわけでも、まして自分で食べようと思った訳でもないのに、何故か苺クリーム大福とかいう、冷蔵棚に一つだけ残っていた不可思議なパッケージを籠に入れていた、何故だろう。ストレスたまってるから、甘いものが欲しくなったのか、それならこっちのコーヒーの方が良いか? きっと体が欲したんだろう、両方買っておこう。雑誌売り場の内側の通路を通りレジへ向おうとして、中学時代の同級生と目が合ってしまった。
「やあ、キョンだよね、久しぶりだね、どう、元気?」
「ああ、なんとかな、国木田も元気そうだな」
「まあね、あ、こっちの、僕の同級生でさ、谷口って言うんだ。で、こっちのがキョン、僕の中学時代の同級生だったんだけどね、何を間違ったか進学専門みたいな私学にいっちゃって、ほんと、久しぶりだ。懐かしいな、佐々木さんとは上手く行ってるの?」
「上手くって、前と同じだ、電車通学だからな、一緒に通ってはいるが、それだけだ」
「ふうん、彼女と付き合っていたから同じ高校を受験したんだって専らの噂だったんだけどな、
 キョン、本当なんだろ?」
「いや、当事者の俺が初耳なんだから、そりゃ、完全なガセネタだな」
「そうかな、だって、彼女、夏頃までは偏差値の高い女子高の進学校に行くって言ってたって聞いたよ」
「俺はそんな話は知らないな。確かに俺、北高専願のつもりだったけど、あいつが願書とか資料とか取り寄せて、まぐれ狙いで受けたら受かっちまったって感じだ、その分付いていくのが辛くてピーピー言ってる」
 何故だ、久しぶりに会っただけで、何故俺はこんな事まで喋っちまってるんだ、やっぱり疲れて現実逃避したくなってるのかな、ここ三日間は完全徹夜だもんな。
「久しぶりに顔見て、元気そうで良かったよ。じゃ、ごめん、先、帰るわ、皆によろしくな」
 国木田に手を振って分かれると急いでレジに並ぶ、いらない時間使っちまった。早く帰って続きをやらないと、明日のリーダーは絶対当てられるからな。数学もまだ山ほど課題が残ってるし、マジ、時間、足らないぜ。
 レジをすませ、まだ立ち読みしている国木田を横目でみながら、俺はコンビニを急いで飛び出した。

 一瞬、俺は何が起こったか見当がつかなかった、気が付くと後ろ頭をドアに打ち付けて尻餅をついていた。目の前には見知らぬ女子高生が倒れている、あの制服は、北高の生徒か、国木田と同じだな、意識、無さそう、呆然とした回らない頭でそんな事を思うとも無く頭に浮かべていた。俺はコンビニから出た瞬間、何かにぶち当たり、今買ったコンビニのレジ袋を抱えて後ろにひっくりかえったんだよな、それじゃ、あの子、俺が突き飛ばしちゃったのか?
 何もわからないうちにコンビニから人がザワザワと出てくる。
「あのスケベ顔のお前の中学時代の同級生、卒倒強盗じゃなくて卒倒ナンパでもやってるのか?」
 谷口とかいう何処にもありそうな名前の奴が訳が分からん事を言ってる、国木田、そんな奴とつきあってたらろくでもない事になるぞ。だが、当面の問題は、目の前で意識を無くしている女の子だ、絶対怪我もしているぞ。俺はフラフラしながらその子の所へ行って抱え起こす。
「すみません、大丈夫ですか、分かりますか?」
 周りで救急車だ、警察だ、という声が聞こえる、そんな、俺、逮捕されちまうのか、帰って勉強しなくちゃいけないのに。
 その時、女の子が薄っすらと目を開け、不思議そうにあたりを見回し、抱えあげている俺をみてやら、囁いた。
「キョン、先輩、あえ、た」
 そう言って、また意識を失いそうになる。慌てた俺はその子に肩をかすとコンビニ前から逃げるように歩き出した。
「大丈夫か。名前は、家、何処だ?
 すまない、俺が前を見ないで飛び出して、ぶつかってしまった、本当にごめんよ。
 どこか、痛いところ、有るか?
 怪我して無いか? 俺の家、直ぐ近くなんだ、手当てするから、来るか?」
「はい、キョン先輩、お願いします」
 その時、俺は気が動転して気が付かなかった、何故、この子は俺の呼び名を知っていたんだ?


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。