かなたへ 第八部 Rewind(リワインド) 第四章 分裂 第3節 β
なあ、かなた、長門とは何か打ち合わせをしたのか?
「いいえ、キョン先輩、私もビックリしました。
はい、サクランボ、先輩も食べてください、とっても美味しいですから、先輩と一緒に食べたいです」
ちゃんと種は自分で出せよ。
「あ、先に言われちゃった、残念。
あの時、とっても素敵だったのに、かなたすねちゃおうかな」
目先のことに目を奪われるのが俺の悪い癖だって言ってくれたのはかなただったと思ったがな。今はもっと大事な懸案事項があるだろう、佐々木のことも、ハルヒの事も、そして多分この長門の事が一番大切じゃないかと思う。
「そういえば、佐々木さんからの随分暗い情報フレアが蔓延しかけていたんですけど、さっきの涼宮さんの喜び色の情報フレアが打ち消してくれていました。やっぱりこの世界でも涼宮さんの力は健在みたいですね」
それにしても、俺達抜きでSOS団が出来ているとは驚いたな。
「キョン先輩が帰っていらっしゃるまでに伺ったんですけど、
『一年間待っていたけど、待っているだけの女じゃ駄目だってわかったから』
って、5月の連休明けに部員一人の文芸部を乗っ取るように結成されたそうです。
この世界では古泉さんは二年の5月に編入したばかり、涼宮さんと同じクラスだそうです」
そうか、じゃ、あの髪型、宇宙人対策かどうか、聞いてやればよかったな。かなた。覚えておいてくれ。ところで、長門が俺たちの事を知っているのは、何故だ? 朝倉は認識していないようだから、統合思念体を介しての知識では恐らく無いだろう。多分、長門の個人的な知識だ。その理由を今夜、教えてくれるのだろうか。つい、長門だけは信用したくなるが、本当に大丈夫なのだろうか?
「キョン先輩、お顔が暗いですよ。それより、お弁当、どうでした?
から揚げとか橘さんの取られちゃったんでしょ?
月曜は取られないように橘さんのお弁当もつくっちゃいましょうか?」
佐々木にも弁当を作って懐柔するのは、無理かな?
「それは、多分逆効果です。キョン先輩、私、キョン先輩と佐々木さんの関係、良く分からないんです。でも、今朝、お会いしたとき、痛いほど鋭い視線を浴びちゃいました。きっと、佐々木さん、私の事、キョン先輩を盗っていく泥棒みたいに思ったんじゃないかしら?」
いくらなんでも、それは無いだろ? 盗る、盗られるって、俺は別に佐々木の物でもなんでもないはずだ。
「そうでしょうか、佐々木さん、キョン先輩に絶対、特別な感情を持っておられると思いますよ」
特別な感情って、俺には信じがたいんだが、第一、特別って、何の事だ。俺はあいつの玩具なのか?
「多分、恋愛感情がそれに一番近いんだと思います」
そんな、佐々木はハルヒと同じで恋愛感情なんて病気だと言い切った奴なんだぞ。そんな奴がまして俺なんかに、無い無い、絶対にない。
「涼宮先輩にも、本当に無いと思ってらっしゃるんですか?」
ハルヒは、デートとか結構嬉しそうだったし、俺を公認の彼氏にするとかって、前の時間軸、神の視座から緊急ポッドで帰る直前に言っていたから、ちょっとはそんな気の迷いもあるときがあったかもしれないが、最終的にはそんなにはなっていないだろ?
「キョン先輩、鈍すぎです、これからキョン先輩の事、鈍キョンって呼んであげましょうか?」
そんな、ハルヒみたいな言い方はやめて欲しいな。
俺は、今のままのかなたが一番だ。
「キョン先輩、きっとそんな優しい事言うから、佐々木さんだって、きっと特別な関係だとキョン先輩が思ってくれていると思ってます」
すまん、話が俺の理解の限界を超えてきている。その話は、今夜、帰ってからしような。
「はい、じゃ、お母様と今夜のお食事の相談してきますね、キョン先輩、それまで休憩するか、お勉強するかしていてくださいね。手が空いたら、直ぐお部屋に行きますから。」
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