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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ プロローグ ◇◆

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1-8 <実践。だがそれは後編>

 プロローグ終了の後半です。
「お前―――絶氷の」
「アリス!!」
「ひ、人違いじゃないかな?………確かに俺は『絶氷』だけどアリスなんて子知ら―――っ!?」

 余所見してるユキ目掛けて結界竜の尻尾が襲い掛かる。なんとか掻い潜りバックステップで距離を取ることにした。

「なるほど。『絶氷』はネカマだったと………」
「ねえねえ。絶氷って?」
「だから人違いだって!!くそ………」

 色々と誤解?を解きたいが今はコイツをなんとかしないと。
 結界竜と称されたこの竜は黒い岩のように硬い外装を纏い、体の節々に飛び出した形で白いクリスタルが発光している。全高四メートルはあるであろうその体躯は翼の生えた西洋風のドラゴンではなく、岩をまとった黒いティラノサウルスといった方がイメージできるだろう。

(いちおう弱点はわかってるんだけどなぁ………)

 以前のイベントで討伐できたパーティーは存在していた。それが最強の名を持つこととなった『アスキラ』という双剣使いのパーティーである。
 そのイベントの時、ユキはというといつものように低いコミュ力のおかげで誘わる、パーティーに入ることもできず、ソロで挑戦したのだがあえなく敗北した。
 それからアスキラ本人とシュウの鍛冶屋で会ったときその話をし、攻略法は聞いていた。だが、それはとてもソロでできるような内容ではなかった。
 結界竜と言われる由縁である向こうさんの特殊スキル『アンチエレメント』。それは角や体の節々についてあるクリスタルが発する結界なのだと彼は言っていた。
 ざっと見た限りだとコイツには十五個のクリスタルがついている。これを一つ一つ通常攻撃で壊すというのも中々骨が折れる。
 しかもソロだと、タゲが常にこちらを向いているため体の各所のクリスタルを破壊するのは不可能だ。

 結界竜は離れたユキを一瞥するなり咆哮を唱え、口から何かを吐き出した。
 やばい!!とユキは体を横にずらして避けると、元いた場所に何か透明なブロック状のものが突き刺さったような痕ができた。結界竜のブレス技、『結界砲』だろう。透明で初見は絶対くらってしまうのがいただけない。
 しかし、いざこのキャラで来たわいいけど何もすることがなくて無意味だと悟る。さて………どうしたものか。フレンドリストを覗くと変な奴しかいないから呼んでもさらに無意味だ。どうしようかと思っていると、その変な奴からの念話がかかってきた。

『お困りのよう―――』
「今忙しいから切るぞ」
『ちょっとぉ………せっかく助けてあげるって言ってますのよぉ~~?』
「属性ダメージ効かない奴に『魔道姫』様が来たところで守る奴が増えるだけっつーの!!」
『「来ちゃった」』
「なんでいるのぉ!!!!」

 すぐさま念話を切るなり後ろにいたクオリアを引っ張り出して前に出した。

「来たって事とは打開策でもあるんだろぉ!?」
「だって………ユキ様が守ってくれるって聞いて………」
「やめてぇ!!遠まわしに足手まといって言ったのぉ!!察してぇ!!」
「ユキ様怖い………」
「抱きつくな………」

 なんか遠くの方から殺意が感じるが気のせいだよな………。

「アリスの浮気者」
「んじゃアタシは落ちるんで………」

 殺意の波動をいちゃついている二人に送っていると、さきほど一緒に逃げた長い赤髪の少女がログアウトしようとしていた。それを阻止するようにラファは軽く頭にチョップをかました。

「あんたカンストしてるんでしょ?いかなくていいの?」
「そんな………『絶氷』と『魔道姫』の二人がいるし、あの人の約束では着たらログアウトしていいって。ねぇ?」

 まさか彼女自身がこの結界竜を呼んでしまったなんて言えるわけない。しかも大鳳装備の嫉妬にだ。
 それを見兼ねた名探偵ラファさんの目が光った。

「ねえ。もしかしてあのドラゴン出た原因しってるんじゃない?」
「ギク。い、いや………ちょっと道歩いてたらなんか出会っちゃった、んだよ?」
「嘘。アリスが言ってた。あれは強すぎて実装が後回しになってるって」
「そんな………アタシがあれを出した証拠なんて………」
「『封印されたお札』………」
「!?」

 ビンゴ。色々と鎌かけるてみるもんだと久しぶりに出た腹黒モードであった。

「ど、どうして初心者のお前が………」
「あんたもオーディション受けるんでしょ?これでもゲーム始める前にwikiとかに乗ってるアイテムとか全部覚えてるんだから………」

 忘れているが、このラファと言う少女は目的のためならどんなことでもやってのける少女だ。この目的というものは、明日に控えているオーディション。もともとゲームをやっていないラファにとって知識力というハンデが物凄いものだと、ゲームを始める前に三日かけてモンスター名と町や村、NPCの名前からアイテム名まで全部暗記してしまったのだ。
 それだけ彼女は明日のオーディションにかけている思いが大きいと言える。
 中途半端な心構えであるこんな子には絶対負けない自信がラファにはあった。

「どうする?このこと二人に言ってもいいんだよ?それだったらまだ戦った方がいんじゃない?」
「っく………ならお前はどうしてもここにいる?あの『絶氷』のため?」
「さあね。―――ただ、あたしは自分に甘い人が嫌いなだけ」

 自分に甘い………か。言われて改めて自分の甘さを思い浮かぶ。
 この子達に嫉妬したのは事実だ。大鳳装備にしたってそうだ。あれは自分の根気と努力さえあればどうにでもなるようなもので、たとえ確立が低くても百回以上やれば素材だって集まるに違いない。そうだ、この子達だってすごい大変な思いをして作ったに違いない。(実際はユキの強運のおかげ)

「………なら今回だけだから―――っねぇ!!」

 少女はそういうなり大鎌を装備するなり、猛スピードで結界竜の元へと翔けていった。
 ならあたしはここで見てるだけでいいのか?否、自分だって何かできるはずだ。戦闘以外で彼らの役に立てるような………。
 そうだと、思いたったラファは急いでメニューを開き、フレンド欄を覗いた。

「もしもし、シュウ?ちょっと今大変なことになってるの―――」



 * * *



「私が知ってる限りですと結界は竜を中心にして半径十メートル範囲で展開されるようですよぉ」
「簡単に言えばその範囲内ではスキル使えないってことだろ。どうすんだよ、今から弓スキルでも買ってくるか?」
「いえ、方法はありますよぉ。だって私はアスキラさんのパーティーにいましたからぁ」

 そこで何か閃いたものを感じるユキ。そういえば魔道師って六属性以外のスキルも使えるって聞いたな。もしかして無属性の魔法とかもあるのか?
 その何かに気づいたユキの顔を見て、クオリアは頬を緩める。「察しのいい方は好きですわ」と漏らし横長に何か文字を書き込んだ。

「なっ!?」
流星・咆哮(メテオ・シュリーク)―――!!」

 スキル名を知らないだろうと、親切にクオリアはそのスキル名を発した。それと同時に結界竜を選択すると、結界竜目掛けて空から隕石が降ってきた。それも大量に。
 初めて見るスキルに唖然とするユキだったがさすがは『魔道姫』だと冷や汗をかきながら笑顔を作った。まさか無属性魔法なんてもの持って来るとは………。緊迫した雰囲気に深呼吸一つしていたクオリアだったが、ユキの笑顔に気づき微笑みで返した。

「派手なエフェクトですけど大して効いてませんよぉ」
「まじでぇ!?」
「えぇ。無属性耐性持ちですからぁ………」
「―――ちょ、ちょっと今の何」

 そう言ってこっちに向かってくるのはさきほどラファを任せた赤髪の鎌使いだった。白いファンシーなアイドル衣装とは似つかない物騒な大鎌を装備しているから余計アンバランスが際立っていた。

「こいつの魔法」
「クオリアです。ユキ様の妻です。ポ………」

 ポ。と自分で発したクオリアは頬を両の手で隠し、恥ずかしそうに顔を隠した。
 それを煙たがるユキは急いで彼女に否定をする。うん、こんな変な奴と恋仲なんて噂が広まったら一番ユキが困る!!と判断してだ。

「自分でポ。とか言うな!!ついでに妻でもなんでもないから」
「は、はぁ………」

 目が点となっている赤髪だったが、そう言えば名前を聞いてなかったとユキは名前を尋ねることにした。

「知ってると思うけど俺はユキ。こっちはクオリア。あんたは?」
「シャルナ。作戦とかはあるのか?」
「ない」
「………」

 ジと目で見られているが無いものはないのだから。するとクオリアが口を開いた。

「ならアスキラさんのときと同じ方法でいくしかありませんねぇ。ついでに………」

 クオリアはもう一度さっきの無属性魔法の魔方陣を描きはじめると同時に、さっきまでお互い様子見していた結界竜が三人目掛けて突進してきたのだ。
 結界の影響で描いてた文字が泡のように弾けて消える。なるほど、詠唱反応か。とユキはスキル硬直になっているクオリアを抱えて右に避けた。

「こんな荷物みたいに抱えるんじゃなくてお姫様だっこを所望しますぅ」
「うるさい。なら俺が離れて詠唱すれば―――」
「無理ですよぉ。相手は私の無属性魔法にしか反応しません」
「そっか。六属性効かないんだもんね」
「だからユキ様は私の護衛に徹し、シャルナさんにクリスタルの破壊をお願いします」
「あ、アタシ!?」

 まさかそんな大役を任せられるとは思わなかったシャルナ。よくて人数合わせにしか思っていなかった。

「この三人の中で結界竜の攻撃を防げるのはユキ様しかいません。少しタゲが移るかもしれませんがぁ……そこは気合で頑張ってください」
「気合って………」
「来るぞ―――」

 三人は四方八方に散開し、「それではお願いしますねぇ~~」とやる気のない声と共にシャルナに言い放った。
 ユキは襲いくる結界竜の牙を剣で防ぎ、クオリアが結界外に移動するのを待った。
 しかしステ的には何とかなってるけど。正規の盾職と比べたらとても褒めれるようなものではなかった。ヘイトを維持し続ける挑発スキルもなければ完全に相手の攻撃を防ぎきる盾なんてものはないのだから防ぎきれずにガリガリとユキのHPを削られていく。

(StrとVitはその辺の盾職に勝ってると思うけど………慣れてないからきつい………)

 ほぼ見よう見まねのその行動。クオリアは苦戦するそれを見て苦笑し、中層プレイヤーであるシャルナには驚きでしかなかった。
 大剣というアタッカーに分類される武器を使って盾職と同じようなことをしている。中層基準で考えるととても理解し難いものだった。
 シャルナ自身。大鎌という武器を使うアタッカーであるがユキのように盾をやれと言われても不可能だ。まず盾職のように挑発スキルでヘイトを集めるスキルがないのでそれと同じ量のヘイトを集める攻撃力が絶対的に必要になる。大鎌という武器の特性は自分を中心とした中距離への範囲攻撃だ。攻撃力もあるにはあるが、範囲特化型の武器であるので大量の雑魚モブのヘイトを集めるという点ではユキよりも勝っているが、今回のような大型のボス一体のヘイトを集めるとなると確実にユキに負けるだろう。それは武器特性もそうだが、両手武器を軽々と片手で扱っているStrの攻撃力差もあった。
 目算して彼のステータスはAgi寄りのStr型だというのはわかる。完全にAgi特化のシャルナの動体視力でなんとか目で追えているのだからAgiはシャルナより少し高い程度。
 問題はStrだ。両手武器を片手で扱うには要求Strよりも二倍以上振らないといけないようになっている。それを身内のStr型の人でもギリギリ片手で持てないStrを要求する武器だと言っていた『覇王剣・森羅』を片手で持っているのだ。それはその身内のStrよりも頭一つ上だと言える。何を言いたいのかと言えば中層プレイヤーと上位層の差というものを見せつけられ、シャルナはその差を身を持って知り愕然としていたのであった。

「シャルナッ!!そっち向いたぞぉ!!」
「え―――」

 ユキに目を奪われていたシャルナの視線に結界竜の太い尻尾が大きく表示されいた。
 やばい。これを喰らったら―――ッ!! 
 避けれないと悟ったシャルナは急いで大鎌の峰の部分で身構えのだが、全体的にステータス不足のシャルナでは結界竜の攻撃を耐えることができず大きく吹き飛ばされた。

「―――所詮。アタシなんて………ガハァッ!!!!」

 受身も忘れ体ごと地面に衝突し、肺の中にあった空気が全て抜けたような感覚が襲う。

「シャルナッ!!」
「ユキ様!!詠唱行きます!!」
「っく………」

 遠くに飛んでいったシャルナのHPを見ると今ので五分の四ほど削られていた。すぐさま回復POTを飲ませないと根性が発動できずにデスペナを受けることとなる。しかしここでこの場を離れると結界竜がクオリアに向かうだろう。

「せめて魔法が使えたら………」
「アリス!!」
「ッ!?………」

 つい昨日から呼ばれ続けていた名前に反応してしまい、ハッと目を大きくしてしまうユキだったが疑いのないラファの目を見てもうラファ自身アリスが男だと気づいていたのだろうと悟った。
 すぐさまユキは右手で結界竜を抑え、左手でメニューを開きアイテム欄のHP、MP回復剤を半分その場に落とした。

「取得権限が二十秒で切れる。それまでヒールライトを彼女に!!あと取得権限が切れたら回復剤で回復しろ!!」
「わかった!!」

 と足元に落ちた二つの赤と青の回復剤をラファは拾い、トロトロとシャルナの元へと駆けていった。さすがにレベル一なだけあって歩みが遅いなとユキは苦しくも苦笑する。

「うぉッ………」

 どうやら後ろで詠唱を開始したのだろう。クオリアの詠唱を止めるために全力でこちらを退かそうとしているのがわかる。
 自分が真っ当な盾職だったら―――と変な後悔をするが、今はもう遅い。なぜなら自分はすでに近距離、遠距離をこなす魔法剣士なのだから。
 サードキャラを作るときは盾職だな。と心に決めて最後の力を込め、結界竜のブレスを弾き返した。




「シャルナ!!」
「―――」

 どうやら気を失っているようだ。シャルナを抱きかかえたラファはさきほど練習したヒールライトをシャルナに向ける。それは虚しくも小さな【一四〇】という数字しか回復せず、ラファのレベルの低さを思い知らされる。それと同じくして後ろの結界竜に向けて空から隕石を降らし、ものすごい音を立ててかの竜に攻撃していた。なんて自分は弱いのだろうとラファは唇をかみ締めるしかなかった。
 回復剤の栓を抜こうとしたが、視界に【取得権限がないため使用できません】の文字がポップする。

「ならぁ!!」

 ヒールライトを繰り返すも彼女のHPの一割も回復しない。繰り返していくうち、丸を描いてもその光が泡のようにはじけてしまうようになった。どうやらラファのMPが枯渇してしまったことに気がついた。すぐさま腕の中にあった回復剤に手を伸ばすと今度は無事に使用できた。
 フラスコのような形をしたビンのふちをシャルナの口元へと近づけてゆっくりと液体を注いだ。すると【二〇〇〇〇】という五桁の数字でシャルナのHPが九割まで回復した。

「―――ゲホッ!!ゲホゲホ………」
「気がついた!!」
「―――あれ?アタシ………気を?」

 ラファは一つ頷いてシャルナにユキから受け取った回復剤を渡すのだが………。
 彼女はトレードOKボタンを見るとすぐさま視線を逸らした。

「どうせアタシなんて―――」
「―――ッ!?」

 気づいたときにはラファの手はシャルナの頬を叩いていた。それはシャルナというカンストキャラのHPを微動だにしない攻撃だったが、ラファにとっては今持てる最大の意志をこめて放ったつもりだった。シャルナは何が起きたのか理解できずに呆けると、数秒して殴られたのだと知り、止め処ない怒りをラファにぶつけた。

「アンタに何がわかる!!アタシみたいな中層プレイヤーじゃアイツに傷なんてつけられないんだよ!!見てみろよ、通り名持ち二人を!!あの二人でも無理なんだよ?アタシにできるはずないじゃん!!」
「『できるはずない』で終わらせるの?その場に立てるだけいいじゃない!!あたしなんて………」

 歯を食いしばるラファを見て、ようやく殴られた意味を知ったシャルナだった。そうだ、目の前には彼女の知り合いが自分のために戦っているのだ。しかし自分は見てるだけしかできない。これほど耐え難い苦痛はないだろう。

「―――ごめん」

 シュン。とさきまでの威勢が消えたシャルナは自分では彼女には勝てないと悟った。悟るなりさきほど言われた言葉を思い出す。

 『あたしは自分に甘い人が嫌いなだけ』

 リアルでフリーターをしているシャルナにはとっても身に染みている言葉だった。人生というものは努力できない人を蹴落すようにできている。それは勉強にしろ就職にしろ甘い奴はそこで終わってしまう。大学を卒業して就職に失敗したあとによくよく考えるのだった。学力というものは結局『その人がどのくらい努力できるか』という数値だったと。もう少し努力して有名大学でも入っていたら大手の会社も受かっていただろうと今でもすごく思っている。
 そんな考えの奴が、明日のオーディションを受けようと思っているのだ。その時点ですでにシャルナはラファに負けていると悟る。ならどうしたら負けないのか?そういう考えが新たにシャルナの中で生まれた。
 突如としてシャルナの目の色が変わったことを気づくとラファは軽く微笑み、シャルナの頬に手を添えた。 

「知ってる?人間って意思と行動があればいつでも変われるんだよ?」

 それは誰かの受け売りなのか。彼女自身辿り着いた答えなのかシャルナにはわからなかったが、その意味だけはちゃんと彼女自身、心に伝わった。
 アバターの外見的にラファの方が年下に見えるからか。無性に恥ずかしくなったシャルナは飛び上がり、武器を構えて背中を向けた。

「できるかな?アタシ―――」
「できるか?じゃないよ。やるんだよ」

 そうだね。と零し、シャルナは結界竜へ向けて翔ける。彼女の名前、なんて言ったっけ?
 ラ………ファ………?

「ラファ?」

 ラファだったかな。と、彼女の名前を呟き。今自分が着ている格好に目が向いた。
 そうだよ。この装備エンチャしてないし、防御力も低いんだった。と思い出したように右手でメニューを操作し、本来の防具を呼び出す。ボロボロの布地を外装にして纏い、零れる赤い髪と赤い瞳で獲物を捉えている。その鎌を構える姿はさながら『死神』そのものだった。

 まずはクリスタルを一つ破壊する!!目の前の目標を一つずつクリアしていけばきっとゴールは辿り着く!!
 振りかざした大鎌を尻尾についた白いクリスタルを攻撃した。
 突然の結界竜が仰け反るような行動をしたことにユキとクオリアはアタッカーの帰還に喜び、お互いの視線が合った。

「やっと………復活か―――クオリア、ペースあげるぞ!!」
「りょーかぁ~~~い」

 そこからはほぼ順調ともいえた。クリスタルを一つ壊すごとにタゲがシャルナに移り、その隙にユキがクリスタルを攻撃する。その際も移動しながら安全圏で魔法を詠唱するクオリア。三人のコンビネーションが取れ、現状最強と言われてるモブを倒すのも時間の問題だと。
 誰もが勝利を確信したときだ。

 倒すことを経験していたクオリアだったがそのことを忘れていた。HPが半分を過ぎると結界竜の攻撃が変わることを。
 何度目かわからない無属性上級魔法『流星・咆哮(メテオ・シュリーク)』を発動したときだ。
 結界竜の様子がおかしい………。空を仰ぐようにして何かを見つめているように見える。

「―――ッハ。二人とも!!離れてぇ!!」
「何言ってんだ!!あと二つでクリスタル全て破壊できるんだ。無防備な今行かないでいつ行くって言んだ!!」

 その通り!!と前衛である二人は両肩にについたクリスタルを破壊しようと武器を伸ばしたときだ。

「アリス!!」
「―――ッ!?」

 前衛の二人、ともに吹き飛ばされ傍に立つ樹木の柱に叩きつけられた。
 何が起きた?まったく見えなかったぞ。とユキは自分のHPを見ると運良く根性が発動してHPが1残る形になっていた。反対側に飛ばされたシャルナも同じ状況のようだった。すぐさま回復剤を飲もうと回復剤のボトルを開けたときだ。

「ユキ様ぁ!!避けて!!」

 何を言ってるんだ―――攻撃するモーションなんて―――何も―――。
 そのとき一瞬見えた気がした。礫にも似た透明で小さな結界が。
 さっきの吹き飛ばしが即死級の攻撃だとすると、これは追い討ちなのだろう。根性スキルが一般化されているスキル事情を考えて運営が考えたユーザー潰しの追い討ちスキル。
 なんの珍しくもない。かのバアルグニルの嵐丸砲も最初の一撃でHPの半分を削り、その後の落下ダメージで確実にプレイヤーを葬るようになっている。
 すぐさま体を動かして大剣でガードしないと死ぬ。そう思うが体がアイテム使用するという行動に移っている。
 だめだ、死―――――――。

「爪が甘いぜ。『絶氷』」

 そう言って自慢の双剣が見えない結界を切り裂き、ユキの前に現れた。

「アンタは―――」
「遅くなった。ちょっとうちのギルドの連中連れてくるのに時間がかかってな」

 現状、『最強』と謳われた双剣使い。アスキラがそこにいた。
 アスキラ。キザなイケメン面なのに死んだ魚みたいな目でユキを見つめていた。どうやら昔見ていたロボットアニメのメイン格のキャラクターが覚醒するときになる目だとかでその目にしてる、と言ってたのをユキは思い出す。ついでに名前もその男主人公二人の名前を取ってるとも言っていた。

「どうして―――アンタが」
「礼ならそこにいるお嬢ちゃんにでもするんだな」

 初心者が降り立つアイルの村を出てすぐのフィールドとは思えないほどのカンストキャラクターが埋め尽くしてる最中、その奥の方で涙目でこちらを見ている少女を見つけた。
 どうやらラファが彼らに連絡したようだ。しかしどうやって―――。

「お前の幼馴染の頼みでな。どうやら嵐王竜を馬鹿みたいに早く倒せるらしいじゃねーか」

 なるほど、シュウの奴―――。と苦笑いを漏らし、ユキは回復剤を一気飲みし大剣を握りしめた。

「報酬としてそれを教えてやる!!だから力を貸してくれ!!『最強』」
「いいだろ。俺達ギルド、『SEED』が勝たせてやるよ。行くぞ『絶氷』!!」

 総勢三十名というトップレベルのギルド『SEED』。そのトッププレイヤーと共にユキたちは結界竜に翔けるのであった。



 * * *




「何はともあれ、倒せてよかったね。アリス」
「だからそのアリスっての止めてくれ………」
「何を言ってますのぉ?アリスはアリスではないのですかぁ?」
「クオリアまで―――」

 無事に結界竜を倒せたユキ達四人はボロボロの状態のままアイルの村を歩いていた。もう三人の女性の中ではユキ=アリスというのが確定してしまっていた。

「『絶氷』はネカマ―――」
「違うぞシャルナ!!ネカマじゃなくてだな」

 あれをネカマじゃなきゃなんなのかユキ自身聞いてみたかった。あやふやな思考が巡るもそれを咎めるものは誰一人としていなかった。
 こうしてユキとして話すときと同じようにアリスの姿でも彼の声は違和感がなかったのだから。

「むしろあたし的にはちょっとショックなんだけどなぁ―――」
「………ごめんなさい」

 もう仕方なく変な見返りを求められる前に謝ってしまおうと思っているユキは頭を下げた。
 そんな中、一番二人を見ていたクオリアだけはラファの態度を見て悪戯に笑ってみた。

「とか言って結構前に気づいていたんじゃないんですかぁ?」
「ええ!!そうだったの?」
「あはは………なんのことかあたし分かんないなぁ~~?」
「『絶氷』。一つアタシの口から言えることはコイツの腹内は真っ黒だってことだ」
「もぉ。シャルナまでそういうこというのぉ!!」

 本当のことなんだけどね。と内心笑ってみせるラファであった。実際のところは昨日のうちに大体察していて、確信をついたのは今日会ったときだ。そして今日遅れた原因もそこにあったりする。
 実際のところ、ラファは彼よりも早くアイルの村にいたのであった。ラファは新しいキャラクターを作り、そこで影からアリスを見つけ様子を観察していたのであった。(その様子をクオリアは見ていたとも言える)
 その一番の理由としては確認のためと言っておこう。人を待つときの姿勢というものは男女として異なるのだ。長い時間待つとなると人というものは楽な姿勢を取ろうとする。その姿勢によって素の性別が出てしまうのだ。たとえ一目がなくても女性なら可愛らしくあろうとしたり、男性であるならば一目がなければだらしのない格好をするのだ。
 一部猫と仮面を被っているストーカー気質の姫は別としよう。あれはユキのためなら人の目なんて気にしない生き物なのだから。
 それでラファは確信した。よかった。自分が好きになった人物は男だったと。

 彼は何かしらアイドルになる理由があって仕方なく『アリス』という少女をロールしていることは察している。それを咎める理由はラファにはないし、はじめの段階で気づけなかった自分にも原因はあるのだから。

「そういえばアリス。なんて呼べばいいの?」

 そういえば。とラファ自身、ユキの姿でもアリスと呼んでしまっていて彼のその姿のときなんと呼べばいいのか分からないでいた。その言葉の意味を理解できなかったユキは困ったように。

「好きに呼んでいいよ。ラファ」

 とりあえず笑っとけ。と笑顔でラファに言った。余計困りはてたラファはもう『彼=アリス』でいいや。と結論付けたのであった。
 その様子を察し、すっかりラファのファンとなってしまっていたシャルナが睨むようにユキを見た。

「な、何?」
「『絶氷』。オマエは今日からライバルね」
「はぁ?」
「ふふ―――」

 あらあら。と全てを理解してしまったストーカーさんはそれでも私達の障害になるなら二人まとめて潰す。と殺気だっていたのであった。

 な、なげえよ!!本来なら分けようと思ってたんだけど前編と言っちゃったからこのまま書き続けました。
 あぶねえあぶねえ。昨日の段階で少し進めてよかったと改めて思い知った。

 遅くなりましたが、新キャラの『シャルナ』と『アスキラ』です。もう作者の作品読んでくださった方なら知っていると思いますが、結構な確率でアニメキャラの名前を使ってます。
 ネトゲやってる人ならわかると思いますがやってると名前がアニメのキャラの名前って人、結構いるんですよ。はい。


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