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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

52/54

3-20 <透明な自分。だがそれは目指すべき道>

「こい、ユキ。【最強】()を凍らせてみろ」

 今までに見たことがない。
 あんなにも邪悪な笑みを浮かべたアスキラさんを。

「っ……。どうして」

 自分にとってアスキラさんは英雄に当たる、尊敬すべき人物だ。
 そんな人に剣を向けられ、俺としてはグチャグチャとした思考で直視できなかった。

「………認めねぇ」
「え?」

 そういえば忘れていた。
 俺がこうして困惑するはめになった原因(ニブル)を。

 ニブルは吼えた。

「どんなチートを使ったぁ!! ゴミ虫が!!」
「チート?」
「何を使えば、あれができる!!」

 あれ。と言ってニブルは先ほど俺を攻撃した氷像()を指さす。
 ん? ただ攻撃してきたから自衛で反撃しただけなんだが?

「お前もできるんじゃないの? だってニブル。俺と同じ大剣(モノ)、持ってるじゃないか」

 そう言って俺もニブルも持っている水氷ノ竜・穿凍(同じ剣)を指さす。

 この大剣はすごい。
 正直何がすごいのか良く分かってないが、物凄い。
 つまりはこの剣を持っているニブルは、以前よりも強いという事だ。

「ま、まさか―――レア、エンチャント」
「え、レアがなに?」
「話は終わったか」

 話の途中でアスキラさんが斬りこんできた。

 いや、終わってないです!! と声を出す前に、黒い閃光(アスキラ)が一閃。俺を攻撃してきた。
 なんとか大剣の腹で受けると、瞬時にヒットアンドアウェイで離れていく。

「なるほど。刃に触れなければ状態異常判定はないのか」
「やめてくださいアスキラさん!! 俺は、あなたとは戦いたく――」
「認めねえぞ。オレが一体いくら使って水氷ノ竜、穿凍(コイツ)を作ったと思ってんだ。それなのに、それなのにこんなクソ虫が飄々(ひょうひょう)とそんなレアエンチャントを持っていいわけねーだろがぁ。認めねぇ、認めねぇぞ……」

 もうどっちらも暴走していて、どうしたらいいのか。
 わりとマジでどうしたらいいのか教えて欲しい。

ニブル(【絶氷】)。お前は好きにしろ。俺も好きにさせてもらう。行くぞユキ。この機会を逃せば、いつ来るか分からんからなぁ!!」
「うるせえ!! うるせえうるせえうるせえうるせえ!! 認めねぇ……認めねぇぞぉおお!!!!」

 直感さん。
 どうしたらいいのか教えてくれません?

「うおおおおおおおおおお――っ!!」

 ニブルの氷魔法剣が一閃。
 俺とアスキラさんの間を通り抜け、それが開戦の合図を告げるのであった。



 * * *



「くっ………!」
「ッハ! これも避けるかぁ!!」

 もう何度目かわからない攻撃を捌く。
 上手い。流石はアスキラさんだ。
 刃に触れない限り状態異常の判定が発生しないとわかるや、アスキラさんの攻撃は常識を超える。
 絶妙な角度とスピードで、俺の剣を掻い潜った。
 なんとか捌けているが、段々とアスキラさんの攻撃は鋭さを増し、直感で軌道が読めていても体が追いつかなくなってくる。
 彼は攻撃は、着々と剣を越えようとしていた。

 そんな中、俺は尊敬するアスキラさんを攻撃できないでいる。
 だって味方だと思ってた人から殺意全開で攻撃してくるんだぜ? 心の準備とか色々できてないんだよ。もともと小心者である俺には少々堪えるんだ。
 さらには。

水剣技(スプラッシュ)――」

 “右下段から左上段への一閃”

「っち」

 このニブルによる変則的な複属性魔法剣攻撃がめんどくさい。
 直感でわかるのは、次にくる攻撃だけで。
 問題なのは。

「氷魔法――」

 “足元が凍る”

「っ!!」

 すぐさま氷結解除アイテム『種火』を準備する。

「――【凍りつく大地】(フリージングアース)

 濡れた足元。
 水という水が凍る。

 すぐさまアイテムを用意。
 砕く。
 粒子が舞って凍りが解除された。

 急いでニブルから距離を離す。

 これだ。
 前の技を正しい方法で避けなければ、次に来る攻撃は避けれない。
 それはアスキラさんにも言えることで、彼の攻撃は最短距離で通過してくる。
 そのためこちらも正しく、最速の解答(防御)で捌き、次の攻撃へいかなければならない。

 直感では攻撃が分かるが、避け方までは教えてくれないんだから。

「どうしたぁ! ユキィ!! 動きが鈍くなってきたぞ!!」
「っく……」

 距離を取っても、速度はアスキラさんのが上なので回り込まれる。
 変に思考しても、ニブルと言う変則攻撃が加わって、もう頭の中がグチャグチャになってきた。

 どうしたらいい。
 教えてくれ。
 俺はどう動けばいい。

 一筋の汗が目に入り、痛いほど沁みる。
 そこでようやく体中に噴き出た汗が尋常じゃないことを理解した。
 上下する肩が休み知らずに動く。
 頭がぼんやりと霞み、思考を拒絶する。



 “後ろから光魔法、光の一節(ライトニング)



「っ!?」

 瞬時に体が動いた。
 誘導系魔法ではないので屈んで避け。すぐさま氷剣技、吹牙雪がV字を描いて放つ。
 自分でも驚くほど綺麗な動作だった。
 グチャグチャだった思考がクリアになったような、洗礼された動き。
 そう、何度も何度もクーリンに言われて反復練習させられた動きだった。

「え」

 ここ一週間。ずっと見た姿を見かけた。
 クーリン()を追うV字の吹雪をあざ笑うように避け、そのまま俺の前からふわりと消える。
 夢や幻なんだと言うように、ふっと消えた。
 しかし鮮明に、彼の、彼の口元が映像として脳裏に残る。
 俺の技を避けた際に、言ったのだ。

 “つらぬけ”

 そう鮮明に、動いていた。

『そうです。“自分を貫く勇気”が貴方には決定的に足りてないです』

 彼に言われた言葉だ。
 貫け。

「っ!?」

 そこで、耳元で囁かれた。


“ほら、きついだろ? 泣けよ。あの時のように、助けを乞え。誰も来ない助けを”


 ひどく心にくる声だった。
 ()が辛いとき、いつも出てくる声だ。


“無駄なんだよ。お前は生まれてくるべきではなかった”


 だからだろうか。
 この声を前にすると、苛立ちにも似た反感を抱く。


“そもそもお前はアスキラさんを攻撃したくないわけじゃない。怖いんだ”


 違う! 俺はアスキラさんを尊敬していて――


“じゃあ、なぜ二章3-4(あのとき)躊躇った。”


 それは――。
 認めたくはない。認めたくはないが、その通りだ。
 僕は怖いんだ。一歩踏み出して、全てが崩れることが。
 恐ろしいんだ。僕の日常(世界)が消えることが。
 たった一つの事、夏祭りに歌っただけで僕の日常は壊れたんだ。
 もしここで、負けてしまったら……。


“お前はそんなに、ぐちゃぐちゃ考えながらこの一週間を過ごしていたのか?”


 何を……。
 いいや、確かにそんなことなんて考えてなかった。
 がむしゃらだった。考えることも、忘れるくらい。
 楽しかった。強くなるっていう目的なんて忘れるくらい。

 でも違うだろ! 
 クーリンとの修行と、この状況は決してイコールじゃない。

 楽しくないんだ。
 怖いんだ。
 この剣を振るう事(一歩)が。

 泣きそうになる思いを必死に堪え、心が震えた。
 決壊しそうな感情を押し殺し、長い沈黙が流れる。
 それでも、声はポツリと投げかけられた。


“お前は考えて、将来を計画して、ステージに(・・・・・)立って歌いたい(・・・・・・・)と言ってるのか?”


 いいや、何も考えてない。考えてないさ。
 歌は嫌いだ。
 でもあのときの、彼女たちも歌は嫌いだと言った。
 それでも楽しげなのを、知りたいから、僕は歌うんだ。


“違うだろ”


 違わない。
 僕は知りたいんだ。


“違わないさ。だって、お前は見てもらいたいんだ。幸運(才能)ではなく、自分の歌(努力)を。透明なお前を”


 透明な、僕……?


“そうだ。お前は無色透明。
 幸運という才能を持ちながらも、お前は生真面目で、とても物語の主人公とは言えないほど影が薄い。
 しかし、お前はそれを肯定し、才能を否定をする”


 それの何がいけない。
 だって、そんなもの面白くないじゃないか。
 きっと僕が本気で願えば大概のものは手に入るだろう。
 お金や、地位、望めば、なんでも。

 でもさ。
 僕は知ってしまったんだ。
 こんな才能(モノ)でも、願っても、手に入らないものを。

 僕は家族を、僕の心の暖かさを求めても、普通の人が持っているものをくれなかったんだから。

 だから僕は努力をする。
 才能(こんなもの)がなくても、見て欲しいから。
 だから僕は真面目に歩く。
 幸運(こんなもの)がなくても、僕が前を見るために。

 そうだ。
 僕は、()は、才能(これ)がなくてもステージに立って歌えることを。こんなにも透明な、ガラスみたいな僕が、歌いたい。キラキラと輝きたい。
 それがどれだけ難しく、苦しくて、恐くてもだ。

 だが、それが俺の中に通る芯だ。
 これが折れない限り、俺は前を見続ける。
 一歩が怖いなんて、今さらだ。
 だって俺は、既に二歩ほど進んでいるんだ。
 あと一歩踏み込んだくらい、何を恐れる。

 確かに重みは違うだろう。前の一歩よりも次の一歩のが辛いかもしれない。
 だけど、勇気を、貫く勇気がないならいつまでたっても暗い部屋に閉じこもった()のままだ。


 俺は、ユキだ。
 女だと馬鹿にされた奴じゃない。
 【絶氷】でもない。
 弱くて、生真面目で、無色透明な、ただのユキだ。


“ならば、再度問おう。 お前は――今まで何をしてきた(・・・・・・・・・)?”


 ただがむしゃらに、自分ができることを、精一杯、一生懸命、やってきたんだ。

 証明するために。


「俺を、ユキ(・・)を見てもらうために、前を見てきた!!」



“なら答えは、簡単だろ?”


 簡単か、どうかはわからない。
 だけど。
 やることはわかった。


“双方から――。
 いや、もう不要か。
 今のお前なら、こんなものなくても避けれるだろう?”


 いつもの直感が、攻撃の軌道を教える。
 しかし、もう不要だと思うなり軌跡は消えた。
 だって、やることは一つなんだから!!

 技が、光が軌道を描いて円を描く。

 氷剣技・氷月(アイシクル・サークル)が二方向の攻撃をかき消した。

「ム」

 刃に触れたことによって、武器が凍ったアスキラさん。
 凍ってしまっては攻撃が通らない。そのために距離を取る。
 何度も反復した動きだから勝手に体が動く。
 逃げていくアスキラさんに向かって多段ヒット系魔法を放って更に距離を取らせる。

 これで――っ!!



 * * *



「あらら。あっさり未来視に迫る直感を捨てちゃったよ。ユキさん(あの人)

 ひょっこりと穴ぼこから顔を見せるクーリンが、ユキの雄姿を見守っていた。

「いやぁ~~……まさか助言でもしようかと近づいたら、フィールドトラップにハマるとは思わなかったなぁ……」

 フィールドトラップ。
 極々稀(・・・)に、フィールド上に宝箱などが発生する場合がある。
 本当に稀であり、さらには一度発生したらもう一度発生するまで莫大な時間が経過しないといけない代物。
 そんな罠を、こんな人が密集しているフィールドに、しかも未だに踏まれていない罠に落ちるクーリン。
 どんだけ運が悪いんだろうか。
 いや、もしかしたらたまたま踏んだ瞬間に罠が生まれた?
 結局のところ不運であるので違いはないわけだが。

「稀って言われるフィールドトラップも、見慣れてるから対処もできてるんだけどね――よっと!」

 そういって穴ぼこから体を引きずり出す。
 あともう少し反応が遅れたら、穴底にある一撃死のトゲに当たっていただろう。
 経験は力なり。
 これがクーリンを強くする秘訣の一つなのだろう。

「でも、なんとか僕のエールは届いたみたいだね」

 目前ではアスキラがユキの放つ誘導型魔法を全て躱しており、さらに一歩、一歩とまた距離を開けていた。
 今のユキから、さきほどまで見せていた迷いが見えない。
 それに、決断が早すぎる。まるで思考するよりも前に体が勝手に動いてるような。

「やっぱり考えてちゃ、見てから(・・・・)じゃ遅いんですよ。叩き込んだ動作、見たことがある盤面での最適模倣をする動き。それらをできてようやく一流に迫れるんだから」

 ユキに足りないものは圧倒的勇気であったのもある。
 だけど、この一週間叩き込んだのは、いくつもの危機的状況とその対処法だ。
 気持ちで絶望していも体が動けば勝率は0パーセントにはならない。
 確率が0.1でもあれば、彼の幸運は100パーセントにできるんだから。

「貫くのです。ユキさん。きっとその先には貴方が求めていたものがきっとあるはずです」

 今のユキならばアスキラともいい勝負をするだろう。
 きっとどんな素晴らしい勝負が見れるのだろうか。

 わくわくしながらクーリンは両の手を握り締める。
 それに同調するように、目の前にいるアスキラもまたユキを迎え撃つ準備をしていた。
 なのだが。

「え、ちょ!」

 猛突進していくユキ。
 それがアスキラへではなく、ニブルへと。

「そこは空気読んでくださいよ! ニブル(そっち)よりアスキラ(こっち)でしょ! ――ほらぁ」

 予想通りというかなんというか。
 ワナワナと震えているアスキラの姿が見える。
 あれちょー怒ってるよ。
 アスキラさんちょー怒ってるよ怖いよ。

 アスキラは一歩大きく踏み込むと、音や振動が辺りを振るわせた。
 それがアスキラの怒りの八つ当たりにも思われたが、目にも止まらなぬ速さでユキを追いかけるのであった。



 * * *



「行くぞ! ニブル!」
「こい! チート野郎!」

 極まったユキのAgi(速さ)が、主張や思考を置いて行く。
 用意していた数発の魔法やスキルがユキへと放たれる。
 それをHPなどお構いなく、ただがむしゃらに、向う見ずに、前を向いて走っていた。

 ガリガリと削られるHP。
 しかし奴の表情は変わらず、真剣な顔だった。

「っち」

 焦りを見せるのはニブルの方だった。
 どんな攻撃で牽制するも、物怖じせずに突っ込む凶器(ユキ)に、背筋が冷たいものを通る。
 あの剣は危険だ。
 どうにかして足を止めねば。

「ならば――っ!!」

 ニブルの剣が光る。
 氷魔法剣、最上級前範囲技【氷剣技・氷月天衝】アイシクル・ヴァルムーン
 開いた場ならば輝く最高位の前方範囲技。
 防ぐにしても防御魔法なりで、進行を妨げねばならない。
 これならばユキの進行を止められる。

 大砲のような大きな音。スキルは放たれた。

 ユキへと着弾。
 それと同じくして、冷やかな白煙が舞う。

 これで終わりではないとニブルもわかっている。
 だから構えを解かずに白煙を見据えた。

「っ!?」

 白煙を切って、上空よりユキが姿を現す。

 ユキの姿は健在。

 未だ変わらず真剣な表情に、ニブルの目を大きく開いた。

「ニブルぅ――――――っ!!!!」

 落下してくるユキは大剣を腰に納めていた。

 ユキが持つ剣の特異性を理解はしていない。
 その謎を知らずして、接近戦をユキに挑むなど大きなハンデだった。
 しかしニブルはその謎を、レアエンチャントを予想していた。

 あれは第一章2-3(以前)に見た。白髪の歌姫、アリスたんのマイク。カリダ・ニンブスに付与されたレアエンチャント、【広域化】だ。
 単体スキルを範囲スキルにするエンチャント、【広域化】。

 ユキが放とうとしているスキルは一発で理解している。
 さきほどニブルが放ったスキル、【氷剣技・氷月天衝】アイシクル・ヴァルムーンだ。
 それは元々範囲スキルのため、エンチャント効果、【広域化】の適用外だ。

 そうだ。
 あのスキルは当たった物、例えるならば壁などに当たればその裏に隠れたものには当たらない。
 防御魔法等で防げば無効化することができる。あれは奇襲でなければ当たらないスキルなのだから。

 だからここでニブルは防御魔法を使えばいい。

 そうすればいいのだが、何か違和感を覚える。
 あの剣に付いているレアエンチャントは本当に【広域化】なのか、と。

 しかしニブルは頭を振るう。
 俺は間違ってなどいない。
 このスキルを防げば、ユキはスキル硬直で動けない。
 その隙にフルコンボを叩き込めば、ユキの残HPを全て持って行ける。

 それで、俺の中にあるバグが、ユキと言う幻影が消えるのだから、と。

「うおおおおおおおおお―――――――っ!!!」

 しかし、なんなんだこの、違和感は。



 * * *



 この水氷ノ竜、穿凍(武器)にはレアエンチャント、【貫通】が付与されている。
 この【貫通】とは、はじめは【耐性貫通】等のものをひとまとめにしたものだと思っていたが違う。
 これはすべての障害を取り除き、貫く(・・)というものだ。
 剣の名の通り、穿ち凍せる(・・・・・)のだろう。


“いいのか、信じて。この技は防がれると負ける”


 消えたのにうるさい奴だ。
 俺は、貫くと決めたんだから。

 でも、不安で仕方がなかった。
 このスキルを放つの(一歩)は怖くて仕方がない。
 だって、もし(・・)貫通しなければ。

 だけど!
 勇気だ。
 貫く勇気を。
 俺はそう決めたんだから。

 だからぁ!! 【氷剣技・氷月天衝】(お前)も貫けぇ!!


 この一歩が、俺の証明だ―――!!


「いっ―――――けぇ―――――――――っ!!!!!!!!!」

 大剣を抜き放つ。
 ニブルへとゆっくりと向かう。
 この地平線と同じ長さの青い三日月。

 放つ同時に遠心力で俺の体が回る。
 視界がグルグルと回りながら着弾を見守った。

 ニブルは防御魔法、【氷の壁】(アイスウォール)を唱え、迎え撃つ。

 怖くて、不安で、恐くて。泣きそうだった。

 本当にこの答えは正しいのか。
 間違っていたんじゃないのか。
 これがもし、防いで負けるようなことがあれば、きっと俺はこのゲーム(世界)から居場所を無くすだろう。

 だがもう賽は投げられた。

 俺は信じるしかない。
 胸が締め付けるようにいたく、結果から目を逸らしたくて必死だった。

 それでも。
 思いを。
 これからを。
 俺は貫く(・・)と決めたから。

 だから

「つ――ら―――ぬ―――けぇ――――――っ!!!!!」

 言葉に、願いを込めた。



 着弾と同時に白煙が舞いあがる。
 手ごたえはあった。
 防御魔法に防がれるも、突き進むスキルが見えたのだ。
 硬い氷壁を、名刀で斬ったかのような綺麗な一閃が見えた。

 空中でクルクルと回る体をなんとか着地させると、今だに力を残す大剣を肩に当てて止めた。

「やっ――た、か?」

 言ったあとで気づいた。
 これ、フラグだと。

 突如として、白煙から氷の塊が高速で放たれる。
 その拍子に握っていた大剣を吹き飛ばされ、ザクリと音を立てて刺さった。

「あと一歩だったな」
「ニブル……」

 白煙が消え去り、現れるニブルの頭上にはHPゲージが見える。
 苦しそうにするニブルを体現するかのように、30パーセント以下(赤ゲージ)が光って見えた。

 避けられた?
 いや、確かに手ごたえはあった。
 それにあの技は最上位スキルだけあって、直撃すればプレイヤーなど一撃だ。

「俺クラスになればぁ、そんなスキル耐えれるんだよ」

 そんなはずはない。直撃すれば絶対に耐えれない。
 それは俺のステータスからも、経験からわかる。

 やせ我慢に似たニブルの表情の後ろ、霧散していく剣が二本見えた。
 その二本の武器は、さっきまで構えていた武器とは違う。

 もしや――。

「まさか武器で防御して、無理やり耐えたのか」

 俺の攻撃を無理やり武器破壊攻撃にし、武器の耐久値と自身の耐久値で無理やり受けたのだろう。
 そんなテクも持ってるのか、コイツは。
 それなばら武器のHPを犠牲にして、自分へのダメージを軽減できるだろう。

 ニブルのスキル始動が見え、俺が動こうとしたときに剣がないことに気が付いた。
 早く剣を拾わなけば。

「おっと」

 動こうとする俺を見るなり、用意していたスキルを放ち、剣と俺の間に壁を作る。
 触れた氷壁は冷たく厚く、殴って壊れるような代物ではなかった。
 それに見た瞬間に理解した。
 この壁は俺の魔法では破壊できないことに。

「さぁ、これでお前はチート野郎からゴミ野郎に成り下がったわけだ」

 俺は奥歯を軋ませ、ニブルを睨みつけるのであった。
 次でラストです。
 初めていい引きができたと思いました。

 今更書いていて、この主人公特徴ないし、まるでNPCみたいだなぁと思いまして、なんでこんなキャラになってしまったのか色々考えたのが今回の話になりました。

 幸運という絶大な能力を持っているのに、それを全開で利用するわけでもなく、なぜ自己主張が乏しいのか。
 確かに、小さい頃に消極的な性格になってしまったのもあるのですが。努力するユキちゃんを思うと、やはり幸運ではなく培ったもので前に進みたいんじゃないのか。そう思いまして、直感を捨てるというものになりました。

 と言いつつも、思いつきと勢いで書いてますので、何かご意見ご感想がありましたらお願いします。
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