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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

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3-19 <絶氷と最強。だがそれは氷>

 謝りません!! 書き終わるまでは!!

 場面は変わり、フィールド中央。
 そこは戦場の激戦区。音とエフェクトが視界を覆う。

 赤ネーム――プレイヤーキル(PK)を行ったプレイヤー――が大量にフィールドを闊歩する。
 そんな赤ネーム達がエフェクトをまき散らしながら戦闘(PVP)をしている。
 それは長くこのゲームをプレイした者でも異様で、興味本位で集ったプレイヤー達も、まさか巻き込まれるとは思ってもみなかった。

 誰が悪いのか。
 誰が主犯なのか。
 俺は悪くない。
 私の所為じゃない。

 そんな責任の押し付け合いで攻撃を止めず、それが知らないプレイヤーへと当たり、無限ループがこの祭りの現状だ。

 そんな祭りの中心点。誰も寄り付かない場所、台風の目ともいえるポイント。
 鳴りやまない剣戟。
 薄青の閃光。
 それは警告なのか近づく者を傷つけ、死亡(半透明に)させる。
 そんな“嵐”のド真ん中。

 “赤”と“青”が衝突していた。

 赤服にハイライトの無い瞳、双剣使いの【最強】(アスキラ)
 巨漢に青服。大剣と片手剣の二刀流、氷魔法剣使いの【絶氷】(ニブル)

 双方息つく暇もない殺陣。
 お互い決定打を与えない激しい攻防を繰り広げていた。

 一瞬の隙が命取りになる。
 先に集中力を切らせた方が負け。
 システム上、リアルの体力は消費していないにも関わらず、切れる息でお互い上下する肩は止まらない。

「はぁはぁ……息があがってるぞ。【絶氷】」
「てめえもなぁ……はぁはぁ……【最強】」

 すでにどれくらい動き続けているのかわからない。
 小休憩の鍔迫(つばぜ)り合いの中、視線でも攻防する。

 目線でのフェイントも絡ませ、お互いに数手先を複数読んでは修正をかける。
 両者息がかかる距離を一気に引き離し、【最強】アスキラが高速で動いた。
 【絶氷】のニブルもまた右、左と剣を振りスキル始動を促す。

 また数度激しくスキルエフェクトが舞う。

 両者距離を離すなり、アスキラは構えを解き小さく笑った。
 その隙にも見えたその行動に嫌な違和感を感じたニブルは制止し、緊張を解かずに深く息を吐く。

「何がおかしい」

 一息ついても、まだ笑い続けるアスキラを見て、問うた。

「いや、すまない。不快に思わせるつもりはなかった―――ッフフ」

 ひとしきり笑ってみせるアスキラ。
 この隙に攻撃してやろうか? と剣を握る手を強めるが油断させる目的ではなく、別の何かを感じ取りニブルは会話に乗ることにした。

 アスキラは片手を前に、もう片方で顔を覆う。

「面白い。面白いぞ【絶氷】! 認めてやる。お前は【絶氷】を名乗れる力を持っている」
「そいつは変な冗談だ。俺は【絶氷】じゃなかったのか」
【絶氷】(それ)はお前には不相応と思っていたからな。だが杞憂だったようだニブル(【絶氷】)

 一しきり笑い終えると、アスキラはギラついた目を向ける。
 握った剣にも似た光が宿っていた。

「しかし予想以上だ。認めてやろう【絶氷】のニブル。お前はサーバーでも上位に入る腕だ」

 ニブルは苛立つ。
 頂点ともいえるアスキラに認めて貰えるのは素直に嬉しい。
 しかしこのニブル様を目の前の彼(アスキラ)と同格ではなく、五本、十本指に入れるでもなく、上位(・・)という言葉で片づけた事に。
 もっと言えばその、上から目線が一番気に入らない。

 ニブルは左手で握った大剣を盛大に地面へと突き刺した。
 ギラついた視線をアスキラに放ち、奴を切り裂く刃を取り出すために。

「その発言に後悔しろ」

 持てる限りの殺意をアスキラに向け、ニブルは別の剣を抜く。
 何もない空間から抜きさると同時、突き刺した大剣は地面から霧散して消えていった。

 そこでアスキラはまた笑う。
 うすうす気づいていた。違和感を感じていたのだから。
 ニブルは何か隠している。

 本気だったら今の行けたな。今のアレ(・・)があればいけたな。
 そのような違和感がニブルから嗅ぎとれた。
 勘に近いものだったが、自分でも良くあることだから、共感(理解)できたと言える。

 笑みを崩さず二本の小太刀、双剣を構え直す。
 アスキラには夢がある。聞いた人は全員引くような夢が。

 “剣と剣で命のやり取りをする”。

 それはこの現代日本では到底叶えれないもので、VRMMOという安全が保障されたもので妥協している。
 自分がプレイしているこのゲームが、デスゲームと化することを懇願している程に。

 現実でも命のやり取りをする世界に身を置いてみたが、どうにもあの銃というものが好かなかった。
 たった数グラムの鉛玉で人は死ぬ。
 そう思うと込み上げてくるものはあるが、何かこれではないともう一人の自分が否定をした。
 戦国時代や三国志が好きだったというのも要因の一つだろう。
 だからか。剣と剣がぶつかる火花、鉄を削る感覚、焼けた鉄臭さ。
 鼻先を霞めたときに剣先から香る血の匂い。
 それらが死と至近距離で触れ合える空気。それを感じるたびに頬が緩めむ。

 渇望してる。レプリカでない殺意が。
 欲求している。本気の死合いを。

 さあニブルよ。
 俺を失望させないでくれ。

「もっと俺を楽しませろ。【絶氷】」
「生憎、俺はもう【絶氷】という枠には収まりきらんでな」

 言い切るなりニブルの手には新たな剣が納まる。

「それは………」

 流麗な片刀の刀身に、アスキラの顔を反射させ仄かに放つ極彩色。
 刃に浮かぶのは二対の竜、綺麗な弧を描き二色の属性を表現する。
 鍔もなく、護拳もない。
 蛮族風な雰囲気を醸し出す中、属性である冷ややかなオーラがそのイメージを相殺する大剣。

水氷ノ竜、穿凍すいひょうのりゅう・せんつう

 先日のアップデートで追加された剣であり、まだ知るのものが少ない伝説(レジェンド)級の大剣。
 剣を抜き去ると右手で握りなおし、左手には先ほどまで持っていた片手剣、氷帝のツルギを逆手で持った。

「コイツのお披露目にはちょうどいい相手だ」

 雰囲気が変わった。
 これがニブルが隠していた違和感であろうと察する。
 しかしアスキラはまだ違和感を感じた。
 なんだ? 何を隠している。
 新しい剣に変えただけでも十分に思えた。
 剣を変えただけ。
 それで流れが変わる要素と言えば。

「エンチャント………それもあるだろうが、違うな。スキルか」

 だいたいの武器は見ただけでレアエンチャントや効果を暗唱できる。
 しかしコイツの武器は見たことがない。
 つまりは、この間のアップデートで追加したもの。

 氷属性であるとは予想できるが、何かが違う。
 現状90からカンストまでレベリングするにあたり、経験値の美味しい狩場は全て氷属性が弱点だ。
 そのため氷属性武器は嫌というほど見てきた。自身も氷属性の双剣を作った程に。
 しかしその武器は氷属性なのか怪しい。
 氷属性の武器には刀身部分にエフェクトが発生する。薄青の結晶が舞うのだ。
 だがこいつのは似ているが、どこか雪に似た白い綿が舞っている。
 氷属性にも見えるが、今まで見たエフェクトとは違う。

 つまりは。

「―――水剣技(スプラッシュ)

 やはりか。
 一時的に思考を停止し、リソースを全て回避に集中させる。
 初見の技だ。油断したら何が起きるかわからない。

砲牙水(ウェイブ)

 放たれたのはV字の放水。一直線に高圧の水が放たれた。

 それを寸前のところで避ける。

 すぐさま前進。
 この男がそれで終わるはずがない。

「―――氷魔法」

 放水が氷となり、避けた背後から氷柱(つらら)がアスキラを襲う。

 ギアを上げてそれを弾いては、砕く。

「っち。初見で躱すか」

 なるほど。水魔法剣と氷魔法の複合技。
 驚きはしたが、それでは俺を殺せない。

「確かに。【絶氷】と名乗れないな。【絶水】? いや、【絶水氷】?」
「っは。そんな“絶”が付いたダセーのはいらねぇ!! 俺が求めてるのはただ一つ!! 【最強】の称号だけだ!!」

 そう。ニブルが欲しいのはその称号だけだ。
 こいつを倒すとそれが手に入る。
 そのために用意したこの伝説(レジェンド)級の大剣。水氷ノ竜、穿凍すいひょうのりゅう・せんつう

 持てる全財産を叩いて作り、エンチャントを付けては消しての作業を繰り返して手に入れた。
 やっとの思いで作ったこの武器。

 【Strアップ】、【氷結耐性貫通】、【氷属性ダメージ倍化】、【水属性ダメージ倍化】、【氷耐性貫通】。

 神を引いてしまった。
 実際ガウルの港に豪邸が数件建てれるほどの金がとんでいるので、もしこのエンチャントが完成しなかったら引退も考えた。
 しかしこれを引ける辺り、女神は俺に微笑んでいる。

 お互い剣を構え、出方を(うかが)っている。
 アスキラはどう自分を追い込んでくれるのか。
 ニブルとしてはどのカード(秘策)を切ればいいのか、それが隙にならないようにと、ロジックを組み立てるもアスキラ相手では難しいと眉を寄せた。

 そんな中、二人は寒気を感じる。

 相手にではなく、周りにだ。
 変わらず騒がしいのだが、お祭りのような騒がしさではなく、阿鼻叫喚する騒がしさなのだ。
 さらに言えば、肌寒い。
 そんな違和感を抑えきれず、ニブル、アスキラは堪らず周囲を見た。

 見た瞬間両者、目を丸くする。

 氷像があった。集団の氷像が。
 逃げ惑う団体が。吹き飛ばされ、数人が空中で氷の檻に囚われている像が。
 不自然なほど、その囚われ人は同じ方向を見ている。
 自然と二人は誘われるように彼らが見る先へと首を動かす。

 一人の少年がぬらりくらりと歩いている。

「うおおおおおおおお―――ッ!!」

 雄たけびをあげながら彼に向かっていくものがいた。
 しかし少年がスキルを放つなり、彼は呆気なく凍りつく。

 それで終わりではなかった。
 少年が放ったスキルの余波が、突風がこちら、アスキラ達の元へと届くなり二人のHPが一ドット削れた。

 放たれた技は、始動モーションから見て氷剣技、初級二連撃【雪】(せつ)
 見間違えるはずがない。どう見ても初級の単発(・・)スキルだ。
 しかしスキルの余波、喰らえば確かにダメージが入るモノが届いた。まるで範囲スキルのように。
 冷やかなダイヤモンドダストのカーテンを薙ぎ払い。彼は姿を現す。




「遅くなりましたアスキラさん」




 彼を見る両目が大きく見開く。

「ユキ………なのか?」
「―――? そうですけど。とりあえず時間稼ぎありがとうございました」

 それは全く同じ見た目のキャラだと言われてたら納得できるほどに、先ほどまでの彼とは明らかに変わっていた。
 冷やかな、スキルか雰囲気からかわからないが、決定的に以前まで全く感じられなかった“氷”というものがユキの周りを覆っている。そうアスキラには見えた

 ユキがアスキラの横を通り抜ける。
 アスキラの全身がビリビリと鳥肌を立てた。
 堪らず口元を緩める。
 今のこいつは絶対的な強者。俺を十分に楽しませられると。

「ニブル、行くぞ」

 だからか。
 自信に、力に、己に満ちたその顔に、不意打ちを入れたとしても、こいつならば――。



 ユキの予感が過った。

“後ろから上段斬り”

 ユキは振り返る。

 剣がぶつかり、スキルエフェクトが輝いた。

 辺り一面にエフェクトが、火花が乱反射する。

「ア、アスキラ―――さん?」

 何が起きたのかわからない。
 しかしアスキラさんに攻撃された事実だけは目の前にあった。
 察知と同時に動けたが、そんな……。

「っくくく………ハハハッ―――!!」

 あの憧れていたアスキラに攻撃された。
 それだけで過る直感(真実)を否定していいのか困惑する。

 直感が双剣の軌道を教えるが、直視したくなかった。

「!?」

 しかし異変に気づいたアスキラさんは足を止め、それと同時にユキの直感は霞のように消える。

「ほぉ。触れると、凍る。―――そんなところか」
「なんで、なんでアスキラさんが俺を……?」

 問いには答えず、アスキラは自身に何が起きたのか分析する。
 さきほどの、短い接触で剣が凍った。
 つまりは、ユキの剣に触れた時点で状態異常判定がくる。
 理解するなり、アスキラは空を仰ぎ、笑った。

「っくく………面白い。面白くなったな、ユキ」
「何を言ってるんです……?」

 アスキラは氷結解除アイテム『種火』を使用し、ユキ(こちら)へと歩いてくる。
 向かってくるアスキラの表情は。

「お前になくても俺にはある」
「え………?」
「こい、ユキ。【最強】()を凍らせてみろ」

 今までに見たことがない笑顔だった。
あと3話と続きます。
毎日更新します。
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