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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

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3-18 <凍る。だがそれは穿つ>

 

 斧や槍を構えた猛者達が俺に向かって突貫してくる。
 左上から右下への振り下ろし。
 左後方から二連撃スキル。
 真後ろから単体魔法っ!!

「――ッ!!」

 前方の通常攻撃は難なくかわす。
 左後方の槍使いが放つ初級ニ連撃は、同じ初級ニ連撃で相殺。
 相殺時に激しいライトエフェクトが当たり一面に乱反射すると、Str(筋力値)の差が出たのか、相手は数メートルノックバックしていった。
 ノックバックすると同時、左手で魔法を詠唱。
 予測通り、無数の火の玉が襲いくる。難なくそれを捌き、放った魔法使いに準備しておいた渾身の魔法をお返しする。

 遅い。遅すぎるッ!!
 ちょっと前の俺でもこれくらい捌けた。
 直感がある今。

 欠伸がでるほどヌルゲーだ。

 二人の武器を一つづつ弾き、がら空きの胴体に勢いづけた一閃をおみまいすると、音をたてて崩れるプレイヤー達。
 こっちは見えないが、きっと半透明のキャラクター達が「回復班! リザをくれ!」って叫んでいるんだろう。
 ならばさっさと回復魔法が使える≪光魔法≫使い(ヒーラー)を消さないと。

 この乱戦の中、わかったことが数点ある。
 まず一つ。この周辺にいるギャラリー含めた俺も、全員名前が"赤"になっているってことだ。
 それもそのはずだ。こんな密集状況で剣を一振りすれば、緑プレイヤーに当たり、"行為的にプレイヤーを攻撃した"事になる。
 実際俺も何度か当てて謝ってるし。
 次に、直接俺へ攻撃してくるのがいる。もちろんニブル達のギルド、『ロキ・フェンリル』のエンブレムをつけた奴等もそうなんだが、もうここまで来ると全員参加型のお祭りだ。もう訳のわからない奴等も俺に直接挑んでくる。
 よし、こうなったらトコトンやってやる。
 俺の【カルマ値】も既に"100"を超えている。
 もうどうにでもなれ。

「――っ!!」
「もらった!」

 視認できるエンブレムをつけたヒーラーを倒すと、一人の少年に不覚をとった。
 いや、不覚と言ってもちゃんと防いだのでダメージはない。
 しかし、おかしい。直感が囁かない。
 直感が囁かなかったもので、目視して防いだ。なんか不覚。

「おらおらぁっ!!」
「――あれ?」

 発言の勢いとは別に、少年が握る双剣の攻撃はすごく遅かった。てか遅すぎて直感で軌道とか読まなくても防げた。
 なんなんだコイツは?
 攻撃が遅い。といってもこっちが攻撃に転じると猛スピードでそれを防ぎにくる。
 何がしたいのかわからない。その猛スピードで攻撃してくればいいのに。
 わざと遅くしている? 何のために?
 俺よりも幼い見た目の少年はぴったりと俺に張り付き、ちょっとやそっとじゃ離れようとしない。
 何度目かの攻防戦の末。
 ニヤリと口元を歪ませ、外見同様幼い声が聞こえた。

「そろそろかな………」

 その台詞と同時、コイツの意図を知ることとなった。
 少年の視線の先、それは俺の握る大剣だった。

「――これでっ!!」
「っ!!」

 まるでハンマーや石砕機で岩を叩き割るような、そんな爽快音が当たりに木霊し、呆気に取られる俺の顔がそこにあった。
 何が起きた?
 え? まさかと思うが、武器破壊か?

 そんなことよりも、もしかしてコイツは、わざと俺に武器で防御させ、武器の耐久値を減らしていたのか。
 それも気づかれずに。
 おいおい。まさかそんな猛者が俺に挑んでくるとは。
 そいつの掲げるエンブレムはニブルと同じ『ロキ・フェンリル』の紋章が表示されている。

「いつ聞いてもいい音……しかもレジェンド級武器の破砕音。カ・イ・カ・ンッ」

 まるで甘美な夢心地。うっとりとヨダレまで垂らすその緩みきった顔。それを見せ付けるように少年は俺を見る。
 とんだ曲者がいたもんだと。冷静を装いつつ、口元を歪ませた。

「大したお手前で」
「ありがとう。僕の通り名は【武器破壊(ソードイーター)】で通ってます。どうぞお見知りおきを。"元"【絶氷】のユキさん」

 最後の発言と同時に、見た目相応のはにかんだ笑顔を見せた。
 なるほど、直感が囁かなかったのは"俺へ攻撃する意思"がなかったからだろう。
 確かに、防御させることが目的なら殺気もないし、攻撃意思もない。俺の直感囁かないのも頷ける。
 大剣の状態を確認すると、(つば)先からパックリと逝っており、そこから線香のように霧散している。
 なんという職人芸だ。相手に気づかせないなんて。
 それよりも剣だ。スペアの剣。
 コイツ以外のスペアは――ない。
 そういえば今の今まで使ってたのは、氷属性の大剣『氷覇王竜・逆震』――ニブルに奪われて、ついさっき俺自身の手で破壊した大剣――のスペアとして使っていた無属性大剣『覇王竜・森羅』だった。
 スペアのスペアなんて持ち合わせていない。
 俺は霧散する大剣の柄を投げ捨て、無手の魔法使いになってしまった。

「無手になった魔法剣使いなんて格好のカモ。お見せしましょう。【武器破壊(ソードイーター)】による"元"魔法剣使いの食し方をッ!!」
「――っち」

 確かに。俺には剣が無い状態での戦いなんて今までやったことがない。
 右手と左手で魔法を詠唱。
 左手で氷魔法初級【氷の礫(アイスストーン)】を速射し牽制、右手で最大魔法である氷魔法最上級【光り輝く氷嵐ダイヤモンド・テンペスト】を準備する。

「遅い!!」

 左手の速射を掻い潜り、少年は懐に戻りこんだ。すぐさま構えた双剣で俺の右手を攻撃。
 詠唱に集中できないッ!! すかさず詠唱をキャンセルしてそれを直前で避ける。
 左右からの少年の猛攻。
 防げない。クリティカルコースだけを避けたが、HPが二、三割削れる。
 俺のHPゲージが動いた。

 ここは距離を置くのが先決だ。
 今の俺は魔法使い。オーソドックスな魔法使いの戦い方は、自分の距離を保ち、近づかせないことだ。
 むしろその逆をされるのが一番ダメだということでもある。それが現状。自分のペースではない。まずは自分のペースにするんだ。
 足元に判り易く設置系魔法を設置する。
 少年の注意がそっちにいくのを確認した後、バックステップで距離をおく。その際、少年は離れるわけにはいかないので突貫。そこを魔法で牽制して行動を阻害する。
 よし。ニブルのときとは違ってちゃんと動けた。
 実践に勝る修行はないってことか。
 いや、どうだろうか。それでもあのニブルならHPを犠牲にしてでも俺から離れることはなかった気がする。
 ニブルを否定している一方で、ニブルというプレイヤーを認めている自分がいる。不愉快だ。

 少年と距離をおけたことで、思考がクリアになった。
 冷静になったことでこの状況が何かにデジャブる。
 こんな無手の魔法剣士状態なんて………いや、一度だけある。こんな状況に似た場面。――60キャップ時代のシュウを助けたときか。
 あのときは色々あったな。クオリアに然り、シュウに然り。

 そうだ。シュウを探す。
 あのときもシュウは俺を助けてくれた。
 こんなときシュウなら。
 シュウならこんなとき。

「ユキィ――――ッ!!」
「シュ、ら、ラファッ?!」

 シュウかと思ったが、ラファの声だった。
 声のする方向に視線を向けると、なんとまぁ。取っ組み合いを続けていたラファとテルプの姿があった。

「だから、ワタシが持っていくって!!」
「いらないってのぉ!! あたし一人で十分だってのぉ!!」
「ほらッ!! 一人じゃ持てないんだからぁ!!」
「………? ――ッ!!」

 危ない。
 二人のやり取りに気を取られすぎた。よそ見するなよと、少年からお叱りの攻撃が襲う。
 せっかく、距離を置けたというのに振り出しに戻ってしまった。
 こんなとき体術スキルでも入れておくんだったと後悔する。面白半分で入れていたのはいい思い出だ。システムアシスト無しで再現ならできるが、それだと威力が数倍にも劣り、さらには速度もでないので、レベルカンストの超人集団に向かって放っても、軽々避けられるのが目に見えていた。。
 大魔法をぶっぱさせないようにイーター――名前がわからないので仮――は常に張り付いている。こうなると早々離せれないし、対処もさっきまでとは別次元になる。
 大魔法さえぶっぱできたら、足元に放って自分を守る結界ができる。
 それは相手として、どうしても防ぎたいものだ。
 だから詠唱させない。
 常に張り付き、詠唱などするものならすぐさまキャンセルさせる。
 上手い。魔法使い対策がよくできている証拠だ。

 こちらのHPが五割をきったあたりで、ラファ達の行動に決着がついたようだ。

「「ユキィ!!」」
「なに――え」

 死闘を繰り広げている中、視線を向けてみると。グルグルと円を描いてでかい刃物がこちらに向かってきた。
 イーターは援護射撃か何かと勘違いしたようで、すぐさまバックステップで避け、俺はというと援護というよりも友軍誤射、フレンドリーファイアにしかみえなかった。

 直感が囁く。絶対当たるからしゃがめ、と。
 頭を抱えながらしゃがむと、頭上をかすめ、俺の横へとソイツは突き刺さる。
 これに当たったら死んでいたかもしれない。そう直感する。
 え? 技でもない、ただの武器を投擲しただけであと五割も削れるの? 嘘でしょ?
 恐る恐る地面に突き刺す剣を抜いてみると、サクッとスポンジにでも刺さっていたのか、剣は軽く抜けた。

「お、おっと――」

 引き抜くのは軽かったが。この剣、やたら重い。
 俺がさっきまで使ってた大剣や、氷属性大剣よりも重い。
 あの二本は現状最強の剣だ。つまりはあれよりも要求Str(筋力値)を持つ武器なんて存在するはずが――いや、俺がついさっき言ったじゃないか。『もしかしたら今回のアップデートであれよりも強い剣が作れるようになったかもしれない』って。
 アップデートで追加された剣。
 その剣は流麗な片刀の刀身に、この月光を反射し仄かに極彩色を放っていた。刃に浮かぶのは二対の竜が綺麗な弧を描いて象る姿。
 鍔もなく、護拳もない。抜き身の大剣。
 蛮族風な雰囲気を醸し出す中、属性である冷ややかなオーラがそのイメージを相殺し、神秘的な、まさに伝説級の宝剣。

水氷ノ竜、穿凍すいひょうのりゅう・せんつう

 武器の詳細ウインドウを開いた。
 思った通り、製作者のところに【シュウ】の名前があった。
 レア度はレジェンド。
 要求Strは俺が使ってた大剣よりも高く、能力値も高い。
 ってか、複合属性? 氷属性と水属性を併せ持ってる。
 エンチャントも―――。

「俺の相手も忘れないでよ」
「ッ!!」

 悠長にこの武器を確認している暇はないようだ。
 イーターの攻撃を防ぐと、鍔迫り合い(つばぜりあい)という形になった。
 少年の吐息がかかる距離。そうとう興奮しているようで、嫌に荒い息がかかる。
 たぶんこの武器を壊したくてしょうがないのだろう。もう壊すことで頭がいっぱいのようだ。

「はぁはぁ……新しい武器だね。えへへ、その輝きは間違いなくレジェンド級。さぞかし甘美な"()"なんだろうなぁ……」
「っち………」
「いいのかい? 鍔迫り合いに持ち込んだ時点で、僕の術中にはまってるようなものなんだよ? 僕の双剣、ソードブレイカーは剣をへし折るためのものだからねッ!! さあ、この剣はどんな音を奏で―――え?」
「え?」

 お互い驚きだった。
 鍔迫り合いをしていると、イーターの握る剣がいきなり凍り出したのだ。
 え? え? え?
 お互い状況を理解できない。
 二人同時に慌て、すぐさまイーターは俺から離れた。

「……どんな"魔法"を使ったの?」
「し、知らない」

 俺は物凄い勢いで頭を振った。
 え? なにこれ? 俺自身、何もしてないんだけど。

「――いいね。ますます"(味見)したい"」

 涎をたらすイーター。
 さすがにこればっかりは壊されるわけにはいかない。
 シュウが俺のために作ってくれた剣だ。せっかく作ってくれて、気を使って俺に渡してくれたものだ。それをその日に壊されてはシュウに合わせる顔がない。

 イーターが構えると同時に、俺も肩で担ぐようにして構える。
 来るッ!
 猛スピードで地面を蹴り飛ばして飛び込んでくる。
 直感が囁かないので、どうやらまた武器破壊のようだ。

 すかさず肩に担いだ構えから、横一線にスキルではない攻撃。
 もう一度言おう。
 スキルではない、ただの通常攻撃の横一線を放った。

「「え?」」

 ハモった。イーターと俺の驚きの声が、確かにハモった。
 それもそのはずだ。
 たった一撃で、しかもただの通常攻撃で、さっきまで苦戦していたイーターを一撃で倒したのだ。
 それよりもあの一瞬、イーターは武器でガードしていた。のにも関わらず、その武器ごとたた斬った。
 手ごたえも、なんというか豆腐を斬るような感覚で。これは夢です! と言われたら納得してしまいそうなほど。現実離れしていた。

「な、なんだこの剣」

 困惑する俺の表情とは裏腹に、覗き込んだ大剣の刀身は、人をおちょくるように俺の顔を映すのであった。
 レベルアップしたことにより、ユキちゃんの能力≪行動予知≫を開眼させたのち、前々からチート臭ただよわせた新武器装備。
 こっからユキちゃん無双はじまります。

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