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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

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3-14 <決闘。だがそれは交差する視線>

迷走してます。

 "果たし状"に書かれていた内容はこうだ。

『再度、貴殿との決闘を申し込む。
 明日、21時にガウルの港北部の"マルチエリア"にて待つ。
 【絶氷のニブル】』

 ご丁寧に"通り名"付きだ。個人的にはどうでもいいんだけど。

「う、うわ………」

 そう。自分が前呼ばれていた通り名なんてどうでもいいんだ。
 そんなことより、なに?このギャラリーの数は。
 ガヤガヤと声が地鳴りをあげる。まるでここだけ別世界のように存在した。
 埋め尽くさんばかりの人、ひと、ヒト。やばい。こんな大勢の人集りを見て、心臓が破裂しそうに体の内側からノックしてくる。まじでこんな中でやるの?想像しただけで恥ずかしくて死にそう。

 そんなことを考えていると、ギャラリーの一人と目が合った。

「絶氷だぁ!!生絶氷だぁ!!」

 色々突っ込みたいことはあるけど、なんか歓声があがってる。
 そして視線が全部こっちに―――やばい。なんか視界右下から【状態異常発生】とかなんとかエラー出てる。なにこれ?リアルの心拍数があがりすぎて身体の異常だと誤診されてるってこと?やめて!顔真っ赤にして目の前から急に消えるとか。アガって落ちたと思われるじゃん!

 今すぐ逃げ出したい。
 真っ赤な顔を両手で隠し、そのまま走って逃げようとしたときだった。

「きたか。腰抜け」

 とても小さな声だった。 
 今にして思えば、なぜあの豪雨じみた騒音の中コイツの声だけあんなにもハッキリと聞こえたかわからない。
 アイツの声以外がまるで掻き消えたようにハッキリと届く。
 気づいたときにはゆっくりとアイツに向かっていた。
 視界には気だるそうに立つアイツの姿だけになっていた。さっきまで視界を埋め尽くさんばかりの人集りなど消え、アイツに向かって歩いてた。
 二メートルに近いほどの大岩のような巨体。自分と似た氷属性を強化する軽装。腰には氷系最強の片手剣。そしてあの、憎ったらしい大人ぶった顔が嫌に俺の心を刺激させる。

「ニブル」
「おいおい。様をつけろ様を」




「これは面白くなってきたんじゃないか?」
「あぁ。仕事を投げ出して来た甲斐があったな」

 人ごみに紛れ、会話する男二人の姿があった。
 しかしそれはオーラを纏っているかのように周囲の人間に存在を知らせていた。
 その二人はかの有名なギルド、≪SEED≫を作った二人。"アスキラ"と"自由正義運命"の二人だった。

「なぁアス。結局どうなんだ?あのぜ――"元"絶氷って、お前が本気出すほどに強いのか?」

 自由正義運命はずっと疑問だった。
 この間の"百人斬り"で、なぜこの【最強】とまで呼ばれている彼が本気を出してまであの氷魔法剣士と戦ったのか。正直な話、あの戦いを見た限りでは"元"絶氷に本気にならずともアスキラの圧勝だった。
 アスキラが本気になった姿は彼が知る中で自分だけ。それをあんなただ運がいいだけのガキに使った。それが彼、自由正義運命の嫉妬にも似た疑問だった。 
 しかし、問いかけた物とは別の物が彼の口から返ってきた。

「―――変わったな」
「はぁ?」
「前に戦ったときよりも何か―――いや、まるで別人のようだ」

 そう言ったきりアスキラは口を閉じ、このイベント主催者へと向かう青い大剣使いを見続けた。
 こいつは自分など見ていない。そう思うだけで握り締めた手がギリギリと音を立てて唸る。
 なら自分も見極めなければならない。
 我がライバルであり、尊敬する友がここまでする彼の価値を。
 見極めなければならない。



「っへ。見てるぜ見てるぜ。いいのか?そんなにこの俺様、【絶氷】のニブル様を見て」

 自分に向けられた言葉だと思ったユキであったが、彼の視線は自分など見ていなかった。
 彼が送る視線の先へと向けると、予想外の大物がそこに佇んでいることにユキは衝撃を受けた。

「アスキラ―――さん」
「この"前菜"を消したら次はお前だ。自称"最強"」

 確定ではないが、俺はあのアスキラさんを呼ぶための餌だったのでは?
 なぜだろうか。ここに着て怒りがメーターを振り切れるのかと思ったが嫌に冷静な自分に驚く。

「………」

 空が綺麗だった。
 このゲームはリアルの時間帯と同じ空になる。リアルでは二一時を過ぎたあたりなので満天の星がこのステージのスポットライトの役目になっていた。
 初めてなのかもしれない。このゲームで空を見たのは。
 こんなにも綺麗だったのか。

 一つ目蓋を閉じ、深呼吸と同時に目蓋を開く。

 俺は勝てるのか?
 相手はあのニブルだぞ?
 前に戦ったときは一ドットもHPを削れなかった相手だぞ?

「………」

 こちらの目つきが変わったことに気づいたようで、ニブルは一度視線を俺に戻したあと鼻で笑い飛ばした。
 『この虫けらが』
 何度でも言うがいいさ。
 俺をあのときの俺だと思うなよ。

 すると俺とニブルの間を割るようにして一人の男キャラクターが現れた。

「シュウ」
「―――っは。【変態】鍛冶師が。そういう約束だったな」

 約束?
 頭を傾げるユキに向かってシュウがウィンクして応える。

「この決闘の立会い人だ」
「身内贔屓だけはやめろよ?負けたときの言い訳が苦しくなるからよ」
「んなもんするかよ。ユキ、準備はいいか?」
「ルールは?」
「ここがマルチである以上PK形式はなしだ。邪魔など入らないように決闘形式でいく」

 ここ、ドラゴンスレイヤーズというゲームの決闘にはローカルルールが存在する。
 PK形式と決闘形式の二つがあり、後者は街中でもよく見かける普通の決闘で、決闘を行うプレイヤー同士のみ攻撃を与えることができる。ギャラリーから、また決闘プレイヤーから非決闘プレイヤーへのダメージを与えることができないというものだ。
 では前者はというと、これはとあるエリア、マルチエリアにのみ許された決闘方法で横槍も途中参加も可能な決闘方法だ。
 それだけは是が非でも許可できない。それはニブルにとっても同じことなので決闘形式に決まった。

 シュウの合図と共に俺とニブルの目の前にウィンドウが表示される。

『 ニブル からデュエル申請です。受理しますか? Yes/No 』

 ニブルが『Yes』のボタンを押すのを確認したのちに俺も同じく『Yes』を押した。

 両者の間、シュウの目の前に大きくカウントダウンの数字が表示される。
 六〇秒。短いようで長いこのカウントがゆっくりと、ゆっくりと減っていく。

「っは。逃げるなら今のうちだぞ。"腰抜け"」
「………」
「おいおい立会い人。対戦相手びびっちまってるぞ?大丈夫か?」
「―――ユキ」

 修行してきた。といってもたかが一週間やそこらで強くなったとは思えない。おいおい。これで負けたら洒落にならんぞ。色々とマジで。
 しかし、そんなシュウの考えとは別の明るい答えが返ってくる。

「大丈夫さシュウ。俺は負けない」

 ニヤリと笑うユキ。
 固唾を飲み込み、シュウは一つ決心するようにユキを見つめる。

『これで負けたら覚えてろ』
『そのときは、そのときさ』

 そう鼻で笑って応える。
 両者共に抜剣。
 ユキは今日まで一緒に修行した相棒、無属性大剣【覇王竜・逆震】を肩で担ぐ。
 ニブルは自慢の愛刀、氷属性片手剣【氷帝のツルギ】を下段に構える。

 両者今にも飛び掛りそうな雰囲気を漂わせる。

 カウントが『10』を切った。

 『5』を切った。

 『4』

 『3』

 『2』

 『1』

「うおおおおおおおおおおおお――――――ッ!!!!」
「はぁあああああああああああ――――――ッ!!!!」

 さぁ2章ラストに突入です。
 雰囲気だけで書いたら、自分でもよくわからなくなったとです。
 とりあえずいい終わり方ができるように祈っててください。

 感想、評価等していただけたら幸いです。
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