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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

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3-13 <修行の成果。だがそれは果たし状>

 半年ぶりです。
 黒竜"ダインヴォルト"から放たれたブレス攻撃が頭部を撫でる。
 若干ではあるが焦げ臭い。燃えたかな?

 ―――死角に回り込んだ白竜"ダインベルト"が白煙を撒き散らしながらその巨体をフィールドを駆ける剣士へと走らせる。
 気づいた頃にはトラックが衝突した爆音と衝撃が空気を揺らす。
 白煙は広がり、遠くにいたクーリンの視界も真っ白になる。これはちょっと………やばい?下手したら死んだ?
 クーリンは苦笑いを浮かべ、その白煙の先を見ていると。

 ―――白煙が左右にズレ、切り裂かれた。

「あ、あぶな………」

 困惑した表情を一瞬で消し、体をひねり青白い外装を羽ばたかせた。
 光り輝く刀身を踊らせ八連撃、氷魔法剣上級技【雪月花(ヘルヘイム)】を白竜の体にヒットさせその巨体を吹き飛ばす。
 頭上、それと視界左上に表示されている自分のHPバーはいまだ一ドットも削れておらず、ほっと胸を撫で下ろす。
 クーリンがいる前だとどうも先読みの成功率が下がる。と眉をひそめ、後ろから来る黒竜のブレス攻撃を躱す。
 でも"その力"も段々とコツとか、的中率とかも上がってきている。個人的にはいい傾向だ。もちろんクーリンがいないときは百発百中を自負できる。

 さらに姿勢を立て直し黒竜に斬撃を飛ばす。白竜には中級魔法を飛ばして牽制する。共に青白いライトエフェクトが竜めがけて飛んでいく。命中と同時に二つは霧散し、蓄積していたダメージからか当たりどころが悪かったのか二頭の竜はその巨体を横に倒した。

 久しぶりに"運"がいいと思ってしまった。

 大剣を腰に納める。瞬間、剣が青白く光り輝く。
 最近俺はこのスキルを多用しすぎな気もする。
 理由はわからない。
 だけど俺とこのスキルが似ていると思うのだ。自分と同じで"貫けない"存在。壁の前で立ち止まる俺と同じ存在(スキル)
 正直な話、他の最上位スキルとDPS(ダメージパーセカンド。平均秒間ダメージ効率のこと)を比べたら圧倒的に下なんだけど。本当に見た目がカッコイイ以外は………。
 たぶん最大射程まで貫通してヒットするなら、どの範囲スキルよりも高いDPSを叩き出すことができる―――と思う。(それでも魔法のがDPSが高かったりする)

 俺は変わりたい。
 昔の、過去のトラウマを超えて別の自分になりたい。
 貫きたい。迷いとか不安とか逃げ出したい気持ちを全て受け入れて、それと一緒に俺が思い描く"姿"へ突き進んでいきたい。
 だからお前も貫け。俺も自分を貫くからぁ―――っ!!!!

 ズバァンッ!!!と効果音と一緒にスキルが発動する。

 氷魔法剣最上級前範囲技【氷剣技・氷月天衝アイシクル・ヴァルムーン

 扇状に青白いエフェクトが二頭の竜を襲う。
 しかし。

「げぇ」
「………」

 人間いくら願ったところで行動をしないと変われないわけであって。
 なんと言いますか………俺一人の力じゃどうにもならないこともある。
 結局システムがあって、作った人がいて。
 その作った人がコレはこういう物なんだ。という認識にしてしまうと、俺たちはその認識の内で試行錯誤しなくてはならないわけだ。

 つまり何が言いたいのかっていうと。
 たまたま通りかかった雑魚Mobが目の前に現れ、放ったスキルを一身で受け止められた。
 何を言っているか分からないと思うが、俺にもわかってない。あ、ごめん嘘。
 このスキルは貫通しないスキルなので、目の前にMobとか現れちゃうと、そこで止まってしまう。

「所詮………か」

 そう言って俺は左手の指先を動かし、最上級魔法を描くのであった。



 ◆◇◆◇



「だいぶ安定してきましたね」
「最近コツを掴んだんだよ。これもクーリンのおかげさ」

 鏡竜の時点でコツ、相手の行動の先読みができるようになってからは結構サクサク進んでいる。
 クーリンがいない状態ならこの先読みも一〇割を維持できるが、クーリンがいると何かヤバイのが来そうッ!!っていう直感じみたものしか感じられないのが難点。
 あとは自分の知らない行動とか来られると結構弱い。そのときも悪寒に似た寒気が感じる程度なんだけど。
 結局のところ先読みの前に行動パターンを覚えて避けよう。というのに落ち着いて今に至る。

「お」
「どうかしました?」
「これでクリアかな?クーリン」

 ニコっと笑い、俺は今のクエストクリアで手に入れたアイテムをクーリンに見せた。

【暗明の宝玉★5×1】

 だいたい修行を初めて五日が経ち、最終目的である双竜無傷でソロクリアは達成したのだが、俺は『レアドロップが出るまでやってもいいかな?』とちょっとした挑戦を始めた。その何を勘違いしたのか準備運動をするクーリン。いや、俺が"ソロ"で、レアドロップ出るまでやりたいんだ。と言うとショボンとクーリンは土いじりを始めた。一体どうしてしまったのだろうか?

 そして二日が経過した今日。ようやく目的のレアドロップを出すことができた。さすがに昔のような低いドロップ確率ではないので粘っていたら出すことができた。
 一日経過してからクーリンから「僕いりますか?いりますよね?一人より二人のが早いと思いますよ!!」とかやけにうるさかった。
 ホント。今回のことで"普通"ってものを理解した。
 攻撃を受けると超低確率でアクセサリーが壊れる。とか本気で起きるんだね。希によくあるとかでスペアを持つことを推奨されてたけど初めて壊れたよ。
 やっぱり自分は異端なのだろうか………とシュウの『チート乙!!』に思い出し吹き出してしまった。

 メニューウィンドウを操作し、手に入れた【暗明の宝玉★5】をクーリンに投げ渡した。
 危なげにそれをキャッチしたクーリンは俺の顔を二度見するなり困惑しながら訪ねた。

「………?」
「ん~~授業料、かな?元々俺とPTを組みたかったのってそれを出すためでしょ?だからあげるよ」
「で、でもユキさんも必要なんじゃ―――」
「いやいやいや。俺は―――なんていうか、必要ないからさ」

 苦笑いをクーリンに投げ返した。
 そもそも俺は、四方八方から攻撃飛び交うクエストを"ソロ"でクリアすれば何か自分に足りないモノが見つかるのでは?とこのクエストに挑んだだけだ。
 正直今更このユニークレアの素材をシュウに持ち帰ったところで『こんなモンより流行りの【タフルの城】のドロップ品持って来い!!!!』って言うのが関の山だろう。

「ほ、本当にいいんですか?」
「もちろん」
「………ありがとうございます」

 渡したアイテムを大切に抱き、クーリンは優しく微笑んだ。
 やばい。なんだろ。
 男キャラだってわかってる。フレンド登録の際に『キャラクター♂』って出ていたのも確認済みだ。
 なのになんだろ。はにかむクーリンの顔がとても………。

「顔赤いですよ?」
「な、ななんでもないよっ!!」

 なにしてんだろう俺。

「と、とりあえず戻ろうか」



 ◇◆◇◆



 ガウルの港
 鍛冶屋『ヴァルカン』前

「いえいえいえっ!!!!僕はここでいいですって!!」
「なんで嫌がるんだよ!!大丈夫だって、俺の家みたいなもんだから」

 駄々をこねるクーリンを引きずるユキの図。
 こいつは何を嫌がっているんだろうか。
 こっちとしてはこの一週間修行に付き合ってくれたクーリンに贈り物を渡したいだけなんだけど………。
 もしかして気づいてるとか?

 話は少し戻って、俺がクーリンに渡したいものがあるからと、ある場所へ連れているときだ。
 最初は好奇心とかで笑みを浮かべていたクーリンであったがシュウの店『ヴァルカン』が見えてくるなり青ざめ、その場にうずくまり、「僕は死にません!!」並みの頑なさで動こうとはしなかった。
 これは彼のためでもあり、この一週間修行に付き合ってくれたお礼なので是非とも、いや無理にでも受け取って欲しい。
 前もってシュウに連絡して、クーリンにシュウのプレイヤーズハウス(店の裏側にある居住スペース)のアクセス権限を渡してある。
 駄々をこねるクーリンを力の限り引きずり、居住スペースのドアを開けた。

 開けた先には一人の男キャラと数名の女キャラが、テーブルに顔を埋めてクスクスと何か笑いをこらえていた。

 何か異様だった。
 何?
 なんか企んでる?
 俺なんかされるのだろうか………?

「ど、どうした?みんな?」
「ユキさまぁっ!!?!?!!!」
「えっ!?―――ふ、ふん!!遅いじゃない」
「よ、よぉユキ。ッククク………タイミング良すぎるだろう」
「………?」

 俺は眉をひそめて返し、事態を理解できず呆けているクーリンに苦笑いを向けるしかなかった。
 その間、俺の周りをうろちょろするハイテンションストーカーお嬢様を思いっきりスルーした。何やらマシンガンのように言葉を発しているが理解したくないのでスルーしよう。
 しかし人間、初めての体験と予想外の物事には適用の仕方を模索しようと思考する。自分はこのクオリアへどう対応したらいいのか。そう問うように困惑するクーリンがいたのだった。
 もしかして?とシュウが物珍しそうにクーリンに近づいていった。

「コイツがこの間言ってた、お前の"シショー"ってやつか?」
「あああああああた、ぼ、僕は、くさか、違う。クーリンとも、申します!か、かの有名なシュ、シュウさんにお会いできるなんて強烈至極でごじゃりますっ!!!!!!!!」

 盛大に噛み、顔を真っ赤にしながらシュウに向かって深々とお辞儀をするクーリン。
 それが気に入ったのか、シュウは笑顔になった。

「なかなか面白い奴だな」
「どうしたの?クーリン?」

 しかし俺はというと、ここ一週間過ごした彼とは思えない挙動で少し困った。
 棒立ちで赤面しているクーリン。なんだよ、強烈至極って。
 その彼の肩をバンバンと叩くシュウの図。
 おい。シュウやめろ。そいつ結構Sだし嫉妬深いぞ。

「シュウ。頼んでたものは?」
「あぁそうだったな。今持ってくるから待ってろ」

 ふぅ。今は思考停止しているからいいけど、シュウも空気読めないからいつクーリンの逆鱗に触れるかわからない。
 というか。

「いい加減離れろよ、クオリア」
「"ユキ様成分"が足りないんですもの………まだ足りませんっ!」

 さっきから背中から抱きつかれて………色々ちょっと、当たってたり、つか邪魔なんですけど。
 何その………"ユキ様成分"って?
 俺は栄養ドリンクか何かなの?

 自分でもコイツの扱いに困っているとデカイ荷物を抱えたシュウが帰ってきた。

「―――よっと。こんなんでどうよ?」

 シュウが持ってきた物は重量装備。シュウの店に余っていた素材で作ってもらった装備一式だ。
 マネキンに着せた一式を覗き、クーリンがため息混じりに吐いた言葉に戸惑いを覚えた。

「うわ………すごいレア装備」
「え?」

 レア度は上から三つ目の★4の"エピック"だ。
 正直、今の今まで"ユニーク"か"レジェンド"級の装備を着けていた身としては"エピック"がすごいレア装備には思えない。
 あ、ごめんなさい。また変なこと言って。だから笑顔で俺を見ないで。

「え、えっと………クーリン、受け取ってよ。修行に付き合ってくれたお礼と思って」
「え?え、え、え?これを………僕に?」

 すぐさまシュウからクーリンへトレード要請を出した。

「いいんですか?」
「あれ?足りなかった?ならシュウ。追加でなんか―――」
「いやいやいやいや!!!!!十分です!!ありがとうございます!!」

 クーリンは引きつった笑顔で感謝を述べ、「よ、用事がありますので!!」とそそくさといなくなってしまった。
 シュウも俺の"シショー"を気に入ったらしく。ちゃっかりとクーリンとフレンド登録と「また来てくれよ。格安で装備の修理とかしてやるからさ」と言っていた。そういえばそのときのクーリン、顔真っ赤だったな。
 なんだろ?よくわからない奴だったな。

「あ。そういえばユキ」
「ん?―――なに?この手紙みたいなもの」

 白い紙が縦長に折られている。裏にしてみると【果たし状】の四文字が書かれていた。
 え?なにこれ?

「ニブルからだ。煽っといたから!!」

 最高の笑顔でサムズアップするシュウ。

「………はぁ!?」

 
 ご無沙汰しています。
 teraとかいうクソゲーに時間を奪われ書く暇がありませんでした。
 そしたらPCぶっ壊れてさらに書けなくなりました。

 そんなこんなで更新ペースはかなり遅いと思われますが、気長に待ってください。

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