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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ プロローグ ◇◆

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1-4 <エンチャント。だがそれはチート>

 ガウルの港。
 長いウェーブのかかった銀髪が揺れ、赤と黒のチェック柄の衣装に華奢なその身を包んでいた。
 その少女は頬を朱に染め、通る人通る人の視線を気にしていた。
そのどこか恥じらいにも似た仕草がプレイヤー達の注目を呼んでいるとも知らず。
少女の正体は、さきほど幼馴染に完璧なハイキックを決めたアリスだった。

 死にたい………というかすでに死んだんだけど

 さきほどの攻撃により、戦闘禁止エリアでの戦闘を行った。とシステムが感知したらしく、その名目で門番NPCが三人の目の前に突然ワープして現れた。
全身鉄甲冑に守られたNPCは、持った槍で無慈悲に一突きした。
長くこのゲームをプレイしていたアリスとシュウだったが、門番NPCを呼んだことは初体験で、驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。
一瞬にして【九九九九九】という大ダメージを受け、アリスは復帰ポイントへと戻され今に至る。
 そういえば、ガウルの港で復帰登録をし忘れていた。アリスは渋々アイルの転移NPCにまた大金を渡し、今に至る。

「おい見ろ。オーディション参加者だろ、あれ」
「レアな装備してるな。おい話しかけてこいよ」
「かわいいー!!こっち向いてー!!」

 シュウへの怒りから物凄い形相で歩いていたアリスだったのだ。
が、内気な性格がドンドンと増える野次馬に怯え、その表情を見た野次馬達は待ってましたとばかりに歓声が沸いた。

「うおぉぉぉ!!今の表情ぱねぇ!!」
「脅えてる…はぁはぁ。大丈夫。お兄さんと遊ぼう…はぁはぁ」
「お姉さんと……はぁはぁ。一緒に百合の花畑を見ましょう……はぁはぁ」

やばい。いろんな意味でこわい。



 * * *



鍛冶屋『ヴァルカン』

「ただいま………」
「あ。おかえりなさい」
「おかえり。遅かったな」
「いや………それがね」

 アリスはさっきまでのことを話、自分がどんな思いをしたか共感を得ようとするも。現実は残酷だった

「お前、それで歌姫になれるのか?」
「うぐ……。だ、大丈夫。問題ないよ」
「それフラグですよ」

 お茶をすすりながらそっけなくツッコミをするラファ。
もうすっかり馴染んでしまったなと呆れてしまった。
どうやら自分がいない間にシュウとも打ち解けたようだ。
そしてふと気づく。ラファの装備が初期装備ではなく、真っ白な衣装になっていることに。

「あれ?ラファ。それって………」
「どうです?かわいいでしょ?作ってもらっちゃった」

 アリスがやっと気づいてくれたことに喜んだラファ。
その喜びを表現しようと、座っていたイスに立つやいなや、クルリと一回りしてみせた。
ヒラリと短いスカートが舞い、アリスは慌てて目を反らした。
ラファの格好はアリスが着ている装備『大鳳の卵(たいほうのたまご)』と瓜二つ。赤と黒のチェック柄が特徴的なアリスのに対し、ラファのそれは白と青のチェックで純情さを出していた。
なにか自分よりも輝かしさ、正統派アイドルのオーラを持っていると思わずにはいられなかった。
自信に満ちた笑顔。
ハキハキと喋る声。
真っ直ぐと向ける視線。
自信のない自分にとって、それは輝かしくて、眩しかった……。

 しかし、内気ではあるがどこか大人びたアリスと、活発でどこか幼さを持ったラファの二人が並ぶと、ある意味コントラストが取れていた。
色合いも対称的で、さながらどこかのアイドルグループ?と、間違われてもおかしくはない。
その事はアリスは知らない。

「アリス?」
「う、うん。とってもよく似合ってる」

 あまりの可愛さと、眩しさに目を逸らす。だって……自分も同じ格好をしてるとは思えなかったから。
ラファに感想を述べるも、沈ませるアリスの表情を見て、ラファは。

「それでもアタシよりアリスのがカワイイよ。ほら笑って!はいっ!すまーいる」

ニコッと、アタシみたい笑ってよ。と笑ってみせるラファ。
そうだよね――。ここで気持ちを砕いてしまったら、きっとまた昔にもどってしまう。

「ありがとう。ラファ」

 柔らかく笑ってみせるアリス。
その表情がツボにはまったのか、ラファはいてもたってもいられず、アリスの胸に飛びついた。

「え、えぇ!?」
「アリス……卑怯。そんな顔……アタシできない……」
「え?なんか言った?」
「なんでもなぁーい。む、アリスさん。胸に爆弾入ってますぜ」
「あひゃぁ!!!?やめて、やめてラファ!!くすぐったいって!!」
「よいではないか。よいではないか!!」

 アリスの姿をしていても、あいつはあいつなんだとうつむいたまま、シュウは笑った。

 自分から離れようとしないラファ。なんとか揉むことだけやめてくれたので、彼女を引きずりながらシュウの目の前に座った。

「頑張れそうか?」

突然の、親友の言葉にアリスは傾げそうになった。

「何年幼馴染みやってるんだよ。お前の考えてることくらいわかるさ」

なるほど。ラファとのやりとりで見透かされたのか。
アリスは困った風に笑って応えた。
心配いらないよ。と、

「二人ってさ……幼馴染みって言ってたけど本当?カレカノじゃなくて?」
「ないない。間違ってもないから」
「そうそう。兄弟みたいな感じ?」
「えぇ~~全然見えないけど」

実際に、俺には妹がいるわけで、ユキも弟みたいなものだから間違ってはいないな。とシュウは必死に頷いた。

「そ、そうそう忘れてた。これお願い」

 急いで話題を変えるため、アリスは瞬時にシュウへとトレード申請を送った。
さきほど戻るついでに、取りにいったものをシュウに渡した。

「あぁ嵐王竜の宝玉か。これでマイクを?」
「そ、いちおうアクセ三種ともにステータスアップ付けてるし、来る途中でこの装備にエンチャしたら全ステアップついたから装備はできると思うんだ」

 このゲームには装備条件というものが存在する。大抵のゲームの場合はレベルとステータスで制限されているのだが、このゲームはステータスのみが条件となっている。
Str、Int値が必要以上に振られているとどんなに低レベルでも最強の装備を装備できる。だから上位陣ほどお金を積み、レベルの概念をも無意味にする。
 お金が全てといえばリアルもこっちも同じなんだと深く痛感する。
お金がないなら、ないなりにレベルアップ時のポイントで振り分けるしかない。
 シュウに「チート乙」と浴びせられるも、聞きなれたアリスには、もう褒め言葉にしか捉えられなかった。

「ちょっと待ってろ」

シュウは早速、閉じた炉を起こし作業に取り掛かった。

「何作るの?」
「このキャラの武器かな」
「装備かぁ~~……ねえシュウ。あたしにもなんか作ってよ」
「あ~~……あぁ。わかった一緒に作っとくわ」
「やたぁ」

 言い終えると同時にシュウはアリスを見た。
なるほど、俺が払うのね。と納得するなり、シュウはもくもくと作業に取り掛かった。

しばらくの間、物珍しさにシュウの作業風景を見ていた二人だったが、飽きたラファはアリスから離れ、隣のイスに座りだした。
ふと、何かを思い出したように、再度アリスに詰め寄る。

「アリスは明後日までどうするの?」
「か、顔近いって……えっと、明後日って、オーディションまでってこと?」
「そそ。アタシ初心者だから。よかったら色々と教えて欲しいんだ」

 アリスが経験者なのはわかっている。ラファは、経験者なら経験者なりのテクニックというものがあるはずと踏み。そうきりだした。
 実際のところ、アリス――ユキは運八割、経験一割、テクニック一割という構成成分でできている。
彼に教えをこうくらいならまだその辺のプレイヤーに聞いた方がましだ。と、シュウは後ろで噴出した。
それを見てアリスは『どうせ、なんちゃって上級者だよ』と、ムスっと眉を寄せた。

「いいよ。僕でよければ」
「やたぁ!!いつも何時からいるの?」
「学校あるから早くて五時かな?」
「へぇ~~学校行ってるんだ。高校生?大学生?」
「あ、いや、あの………」

 ラファの攻めの姿勢に、慌てふためくアリス。
ネット内でリアルを詮索するのはよろしくない話だ。
急に萎縮してしまうアリスだが、それを助けるようにして二人の前に、盛大な鈍い音が鳴り響いた。
 鉄でも投げたかのようなゴスッ!!となるや、二人はびくりと跳ねた。

「リアルのこと詮索すんのはマナー違反だぞ。ほら」

 隣で舌打ちするのを聞きつつ、アリスは『さんきゅう』と伝えると呆れた顔で『大変だな』と返された。
 アリスとラファはシュウに正式にトレードされたものを装備することにした。

「おぉ―――!!浮いてる――――!!!!」

 いち早く装備したラファを見るや、彼女の口の前に小さな青い鳥の形をしたモノが浮いていた。
 ラファはそれを手でつついたり、飛ばしたりして遊んでいると、シュウがどかりと座り、説明しだした。

「エピック級装備、ザ・ブルーバード。今あるのだとそれくらいかな」
「え~~……エピック~~……」
「言っとくがな。一般人はエピック武器つけるのが普通なの。それ以上のユニークだったりレジェンド級っていうのは限られた人しか装備できないんだよ」
「んじゃアリスは限られた人?」
「僕の場合は―――」
「こいつはチート使ってるからな」
「ちょっと!!変な誤解されるからやめてよ!!」
「チート?どんなことどんなこと」
「こらぁ!!食いつくな!!」

 そこからはシュウとラファ、二人してアリスをからかいだした。
ふと、思い出したようにシュウが口を開いた。

「そういえば……スキルどうするんだよ」
「あ。忘れてた」
「すきる?そういえばこのゲーム、職業とかないよね?」

 両者ともにアリスを見るや、
『あ。俺が説明すんの?』
『お前以外誰がいるんだよ』
『アリス。お願いしますっ』
肩をすくめ、アリスは説明をすることにした。

「えっとね。このゲームは―――」

 このゲームは職業という概念が存在せず、装備しているスキルによって色分けされる。装備できるスキルの数も決まっており、六つ好きなスキルをつけれるようになっている。
 初期の場合は固定で【軽量防具】【短剣】の二つのスキルが装備されており、メニュー欄にあるスキルで自由に変えれるようになっている。
 基本的な戦闘系のスキル構成だと、装備する【武器】、【防具】。HPが半分以上ある状態で即死級のダメージを食らうと一残る【根性】。MP回復手段がアイテムしかないので【MP回復率上昇】とあとは魔法なり趣味なりのスキルを二つつけるのが鉄板だ。
 ユキの場合は【氷魔法の心得】、【氷魔法剣士の心得】、【大剣】、【軽量防具】、【根性】、【MP回復率上昇】の六つ装備している。

 アリスはスキルの説明をしていると、ふとその構成を考えているときのことを思い出した。
 始めたばかりの頃、まだテンプレらしいテンプレもないときのことだ。
【片手剣】、【軽量装備】、【根性】、【MP回復率上昇】まで考えていたのだが、シュウはオススメだと【氷魔法】を装備することとなった。
シュウ自身冗談のつもりで言ったのだが、それを信じてしまったユキ。序盤はどちらかというと炎属性が弱点な敵が多く、接近タイプのプレイヤーなら【光魔法】、【炎魔法】、【盾】のどれかを選ぶのがテンプレ化していた。
当時、【氷魔法】を選択していたユキは異端中の異端だった。
掲示板でも『氷使うくらいなら土を使え。氷は状態異常の『氷結』がつくが、あまりにも確率が低いし、動きを止めるだけで攻撃はしてくる。だが土は一〇〇パーの確率で『鈍足』がつくし、十秒と効果時間は長い。だから氷はゴミ』と言われていた。
野良パーティーに入っても「え。うそマジで!!氷魔法なんて使ってるの―――!!」「氷魔法使っていいのは小学生までだよね―――!!」と馬鹿にされていたのはいい思い出だった。
 しかしユキ自身言われるほどゴミだと思ってはいなかった。氷結確率もユキ本人が持っているステータス、強運のおかげで二回に一回は氷結していたので、逃げる相手にはかなりの効果を出していた。
 そして後半になるにつれ氷属性が弱点な敵が増えだし、最終的に【氷魔法】と【片手剣】のスキルレベルがカンストして【氷魔法剣士の心得】というスキルまで手に入れた始末だ。
そのときには周りも、使わざるおえなくなり、氷結確率も見直され、【氷魔法】の評価もウナギ上りにあがった。
それもあってか、今まで馬鹿にされていたのが嘘のように【絶氷のユキ】の通り名まで貰うしまつ。
あのときからだろう、シュウに「チート乙!!」と言われ始めたのは。本当シュウには感謝している。

 などと思い出に浸っていると、このゲームのシステムを理解したラファはすぐさま「アリス。スキル買いに行こう」と腕を組んで拉致されようとしていた。
 シュウに助けを求めようとしたが、シュウは手を振るだけで、助ける気などさらさらないご様子。
観念したアリスは自分のも買うしちょうどいい、と無理矢理納得してスキルを買いに行くことにするのであった。
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