挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

39/54

3-7 <幸運+不幸。だがそれは貫く勇気>


 いつも四千文字前後で投稿してますが、次回から二千文字前後でもいいんですかっ

「うお………」

 俺いらないんじゃない? そう思うような光景が目の前にあった。
 西洋風なドラゴン二体、右には黒竜"ダインヴォルト"が長い首を伸ばし、その大きな口を開けクーリンを喰らいつこうと草地を這う。左からは白竜"ダインベルト"が白く大きな翼を羽ばたかせ、台風に似た突風で俺たちの姿勢を崩される。同時に白竜の頭部も上下に動く。ちょっとかわいい。
 クーリンは紙一重で黒竜の攻撃をくるり躱し、風で姿勢が怪しくなるも重い斧を上段で構えながらバランスを保ち、振り向きざまに振り下ろした。黒竜首筋に一撃がヒットする。
 このフィールドには双竜以外にもMobが存在する。それも厭らしく基本不意打ちだ。だがクーリンはまるで背中に目でもあるかのように避けてはその行動を予備動作にして攻撃する。
 大事なので二回言おう。俺いらないんじゃない?

「ユキさんっ!!」
「は、はいっ!!」

 彼の後ろでぼーっと勇姿を眺めていた俺へお呼びがかかった。こっち向いてるのにホントよく避けれるな………。

「正直言って僕の攻撃はダメージソースになりません!!タゲなんとかしてみるので暴れてくださいっ!!」
「わ、わかりました」

 もうどっちから『一緒にやってください』と頼んだのかわからないこの立場。もう今が衝撃過ぎて昨日のことなんか考えてる場合ではない。
 肩に担ぐようにして剣を構え、その体勢のまま駆ける。段々と黒竜の口から地鳴りのように腹に響く唸りが耳に入ってきた。
 射程に入るなり剣を上段に構えると黒竜と目が合った。宝石のような柘榴(ざくろ)色の瞳に俺の姿が映る。一瞬剣を握る手が震えたが払いのけ柄を強く握りしめた。
 氷魔法剣中級技【氷剣技・激しい氷撃アイシクル・グラソンフォール】が黒竜の顔を撫でる。
 やはりダメージが大きいのですぐこちらにタゲが移る。クーリンは盾持ちのようにヘイトを稼ぐスキルを持っていない。タゲを維持することは不可能だ。

「こっちです!!」
「っ!?」

 俺が黒竜に一撃を与えている間に下がって白竜のタゲを取っていたのだろう。広くまっ平らなマップの中央でクーリンは白竜を吹き飛ばし叫んだ。とりあえず従っておこう。言われるがままに俺は黒竜に背を向けそこへと向かう。
 黒竜は怒りの雄叫びを叫び散らした。いやだなー。この後少し行動パターン変化するんだもん。と尻目で見ながら走った。
 視線をクーリンに向けると"ある物"と彼の意図に気づいた。
 なるほどね。 俺はそれごとクーリンを走高跳の要領で背面飛びし、そのまま一回転して着地する。変に地面に設置したそれを意識してしまい、地面に手を付けてしまう形となった。だがそれを功を奏したのか、着地と同時にクーリンの攻撃が頭上を通過していく。どうやら俺を雑魚Mobから守ったようでMobがふっ飛ばされた。一瞬ヒヤッとしたのは内緒。
 改めて彼の視野広さに驚き顔をあげると、キョロキョロと視線を動かすそのの頭上には草が張り付いていた。たぶんあれを設置していたからだろう。これ単体で見れば歳相応の男の子と言った感じなんのだが、今の状況では口が裂けても言いたくない。
 黒竜が雄叫びのあと目前まで迫ってきた。突進だ。少し距離を取るため俺とクーリンはバックステップし一呼吸入れる。
 まるで黒の大型トラックのよう、赤く光る瞳二つはライトように奇怪な輝きを放ちながら迫る。
 地を揺らす走行音、エンジン音のような叫び。リアルなら恐怖に震えて足が動かないであろう。だがここはゲームだ。
 黒竜はクーリンが設置した物に足を踏み入れた。
 それは"地雷"だ。大きな爆発音と悲鳴に似た叫び声と共に閃光があたり一面に乱反射した。効果としては踏みつけたものにダメージと三〇秒間の行動制限が科せられる。ついでにプレイヤー自身も引っかかると爆発してダメージと三〇秒間の行動制限が科せられるので注意が必要だ。そもそも設置にかなりの時間がかかるのでPVPではやる暇はない。
 これで三〇秒間黒竜は動かない。ダラリとうつ伏せに気絶する黒竜をあとに、横にいたクーリンは猛ダッシュで威嚇する白竜に向かう。その間にも迫る雑魚Mobを払いのける。俺はそれに行動制限させられ前に進めずにいた。
 白竜は空を仰ぎ、口から白い炎を出し陽炎が立つ。
 ブレス攻撃の予備動作だ。歩幅を調整しながら白竜に向かうクーリン。ようやく俺は雑魚Mobの攻撃をやり過ごしクーリンの後を追った。
 人一人分ある大きさの火球が白竜から吐き出される。クーリンはそれをジャンプして躱し、何も知らない俺は見てから慌てて横に逃げた。

 着地間際にチラリとユキの様子を伺う。体勢を立て直し、またこちらに向かうようだ。ならば。
 自分の三倍はある白竜を見据える。さきほど吐かれた炎の影響なのか、正面にいるだけで熱気を感じる。熱い、まるでサウナのようだ。
 クーリンは両刃戦斧を右手で引きずりながら左手で詠唱する。中級防御光魔法【光の壁(ライトウォール)】を正面に作り、そのまま左に回りこむ。
 走ってくるユキにタゲを向かわせないために、微弱ながら攻撃しつつタゲを維持する。

 体勢を立て直した俺はそのまま白竜に向かって突き進む。白竜は左を向いており無防備であり、さらにお膳立てしてあるように自分よりもほんの少し高く、白く発光する光の壁が立っていた。
 なるほどこれを使って弱点である背中を狙えってことだな。
 装備はあれだけどこのクーリン腕は一流だ。初めてペアを組んでここまでやりやすく動く人なんて経験をかなり積んでいる証拠だろう。
 俺はその壁を使って高らかに飛翔した。
 左手には魔法を、右手には大剣を振り回しスキルのモーションを始動させる。
 背に着地すると同時に左手より最上級氷魔法【光り輝く氷嵐ダイヤモンド・テンペスト】を足元に指定し、最大スキル―――氷魔法剣最上級一六連撃【夢幻・雪月花ファンタズム・ヘルヘイム】を放った。
 『氷結』は耐性のため発生しないが、氷耐性はない。ダメージにはなるので魔法は放っておいただけなので深い意味は無い。
 これで白竜を倒すことが―――できない。
 あれ?大抵の奴はこれで―――あぁ。【氷属性ダメージ倍】のエンチャントもないんだっけか。
 ピンピンしている白竜は激しく体を動かし背中の俺を払いのける。掴まる場所なんてなかったもんで無残にも吹き飛ばされた。その着地へと口を開け狙いを定める白竜。
 直撃を食らえばただではすまないだろう。吹き飛ばされ着地までの時間がとても長く感じられた。白竜の口から灼熱の火球が生成されるのをジワジワと熱と共に感じる。
 腕をクロスさせ、ガードの姿勢のまま落下する。このままでは―――。

「っ!?」

 白竜の口から白い光が発光すると同時、視界が白に包まれた。眩しい、眩しすぎる―――。
 閃光に続いて爆発が起こる。俺死んだかな………?
 腕をクロスさせ、防御の姿勢のまま地に足が着いた。HPゲージは―――あれ?減ってない。
 よく見るとさっきの閃光と爆発は白竜の足元から起きたよう。そしてそこには先程見たクーリンの地雷が………。黒竜に続いて白竜までノビている。
 先の先まで計算しているのだろう。末恐ろしいな、おい。

「ユキさんっ!!黒竜起きました!!」
「わ、わかった」

 何もわかってないが彼に着いて行けばいいだろう。わからなくてもわかるように動いてくれるはずだ。


 ◆◇◆◇


 結果から言えばパターンに入った。
 黒竜に地雷。次は白竜。黒竜、白竜………。
 クエスト開始して三〇分といったところでようやくクリアした。

「はぁ…はぁ…」

 前のようにちょっと体を動かして瞬殺していた頃が懐かしい程に今回はかなり体を動かした。現実よりも数倍の体力があってもこのハードワークはかなりのものだ。動くのが億劫だが体に鞭を打ち起き上がり、隣のクーリンを見やる。俺とは違い慣れているのか、小さく肩を揺らしながらドロップアイテムを覗いていた。
 俺よりも頭を使い、俺よりも体を動かしていたはずなのにこの差は一体なんなのだろうか。
 むしろこのまま弟子入りしたい気分だ。
 色々と複雑な心境のままため息を漏らし、ユキはクーリンに近づくと。

「見てくださいユキさん!!レアドロップですよっ!!!!」

 大げさに抱きついてきた。お、俺………そんな趣味ないんですけど。
 このクエストでのレアドロップと言えば、光属性と闇属性の武器や防具の素材になる『暗明の宝玉★5』―――最高レアはレジェンドの★6。★5はユニークになる―――がここで手に入る最高レアだろう。前より確率上がってるのもあるので昔よりは出やすいだろう。

「★3なんてはじめて見ましたよ!!これなら―――」
「ちょ、ちょちょちょちょっと待って!!」

 ★3って言ったらドロップ率九〇%と、ほぼ出て当たり前の確率だったはず―――え?聞き間違いかな。初めて見たって………。
 慌ててドロップ品を覗くと、『暗明の双爪★3』が一つだけというなんというショボさ。普通は五つくらい乗ってるはずなんだけど。今までドロップがなかったっていうのもあながち嘘ではないのかも知れない。

「こんなの全然レアじゃないよ。普通すぎて誰でも取れるし買える」
「ま、まさか………この上があるんですか?」
「一番高いのが★5。★3は簡単に手に入るよ」
「でも初めて見ましたけど………?」
「いちおう九〇%だから運良く一〇%を引き続けてたのかな?」
「そうですか………」

 さすがの俺もこんなドロップ初めてだ。いつもの調子なら★4が五つ、おまけで★五が二つ。とかなんだけど………さすがにこれは―――。
 心の中でクーリンに向けて合掌するも、落ち込んだ様子を見せずクーリンはもう一度クエストに向かうようだ。

「またやるの?」
「はい、僕はどうしてもその★5の素材が欲しいんです」
「そっか」

 これなら好都合だと、口元を隠しながら考える。彼と一緒なら色々と学んだり得るものがあるだろう。教えも請えるかもしれない。

「それじゃパーティーありがとうございました」
「ちょ、ちょっと待って」
「………?」
「あのさ。あのユニークレア、『暗明の宝玉』が欲しいんでしょ?なら手伝わせてくれないかな?」
「でも………僕といたらレアドロップしませんよ?いいんですか?」

 自分の運の悪さを苦笑してごまかした。色々と彼にもあるのだろう。
 俺はそのまま頭を振りながら目的を言った。

「構わないよ。そもそもドロップ目的じゃなくて武者修行のために来たんだから」
「武者修行………ですか?」
「あぁ。俺は弱い………クーリン、君の動きはかなり参考になる、まるで俺が思い描いた強さに似てるんだ。だからレアドロップが出るまででいいんだ。君と一緒にやらせてくれないかな?」

 クーリンは目をつぶり、口元を隠しながら考え込んだ。何度か首をメトロノームのように一定のリズムで動く。

「ユキさん」

 首の動きを止め、クーリンは目を見開きと同時に首の位置を戻し、こちらを見つめていた。
 それはとても真剣な眼差しで、さっきまで自分の不運を苦笑していた顔ではなかった。

「本当に弱いと思っていますか?」
「え………?」
「確かに基本がなっていないですね。ですがあなたはそれを補う装備と閃きがあります。あのアスキラさんとの戦いだってそうです。『Agi』値にほとんど振ってないのでアスキラさんの動きは捉えれませんでしたが、だいたい何が行われていたのかはわかります」
「な、なかなかズバッと言うね………」

 俺の動きってそんなにひどいかな?
 それにしても、あれを見られていたのか。見物人もかなりいたから不思議ではないが………。

「見てていて動きに無駄しか感じられませんでしたが、最後のあれだけは良かったですよ」
「あれは………」

 たぶんあの躊躇してしまったことだろう。打ったところで普通に避けられてたんだけどね。

「あのとき躊躇わずに打ていればペースは掴めたでしょう」
「躊躇わずに………ね」
「そうです。"自分を貫く勇気"が貴方には決定的に足りてないです」


・補足・

***【レア度】***
 最初の方で説明していましたが、もうここでもう一度。
 レア度は下から順に『ノーマル』『マジック』『レア』『エピック』『ユニーク』『レジェンド』と6つ存在します。順に★1~★6まで存在していて、基本的には★4からが中々出にくい物だと思ってください。

****************

 クーリンの戦い方を考えるのに時間かかりました。次回はたぶん速いはず………!!

 次回予告
 クーリンに基本を教わりながらクエストを続けるユキ。
 二人はそれぞれ目的を達成することができるのか!?

 次回 チートな俺と歌姫な俺と 二章 第八話 【 クーリンの目的 】

 感想、評価等していただけたら幸いです。
 不躾なお願いですが誤字脱字等ありましたら報告していただけたら嬉しいです。 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ