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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

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3-3 <帰還。だがそれはデュエル>


 一体全体何話構成なのか謎。

「楽しい一時をありがとうございました。帰らずともここで生活できる備品は揃えたつもりですが………」
「え、遠慮するよ。ここでなんか言ったら本当になりそうだから………」
「残念です」

 本当に残念がるクオリアを乾いた笑いでやり過ごす。
 心の中では絶賛帰れることに歓喜していたユキであったが、拉致されたときは本当に俺の人生終わったと思った。本当によかった………。本当に―――。

 彼女の執事である瀬場(せば)さんが玄関前で止まったリムジンの後部座席を開けると俺はそれに乗り込んだ。
 元から開いていた窓を見るとクオリアが乗り出して微笑んでいる。

「またお会いしましょう。今度はご両親を交えて」
「か、考えとくよ………」

 クオリアが手を振ると同時に窓は閉められると、スモークで周りの景色は真っ黒になった。
 え?なにこれ?俺どっかに連れて行かれるの―――?
 え?本当に帰れるの?大丈夫?
 え?え?え――――――――――――っ!?

 ゆっくりと発車するリムジン。たぶん向こうからは姿は見えないのだろうけれど、それでも手を振り続けるクオリア。
 グルリと敷地を周り、門をくぐり終わりまで見送り続けた。

「お嬢様」
「―――わかってるわ瀬場」

 暮れる夕日を背にし、クオリアは変わらない笑顔のまま屋敷に戻っていく。
 重く大きなその扉はゆっくりと、ゆっくり閉じていく。

「さて、第二幕といきましょうか」


 ◇◆◇◆


「はぁ~~~………」

 帰ってこれた………。本当に帰ってこれた。
 深い溜息を吐きつつ、ユキは生還の喜びを噛み締めてゲームにインした。
 インしてすぐにシュウの店に転がりこみ、何も言わずに定位置のソファーに陣取り体全体を沈めた。

「仕事から帰ってきたオッサンか」
「うっさい。ついでにこれ修理しといて。防具がガタきてるから先に防具からお願い」

 投げ渡した装備をシュウがキャッチし、ユキはうつ伏せのままそう言った。
 今ならそのオッサンの気持ちもわかるかもしれない。とユキは心で思いつつ深い溜息を吐いて目をつぶった。

「おい。いい加減アリスでインしてやれよ」
「………なんで?」
「表見てみろ」
「―――やな予感しかしないから遠慮しとく」
「その予感はあたってると思う………といってもスレでも話題になるほどだからな―――」
「店主なんだから追い払ってこいよ」
「そもそもの火種お前だからな」
「知らん!!不可抗力!!俺の所為じゃないっ!!」
「―――。一回お前は不幸って物を味わってみるんだな」
『ウオオオオオオオオオオオオオオ――――――――――――っ!!!!』

 それにしても今日はやたらと街が騒がしい。オチオチ休むことすらままならない。
 何かイベントでもやってるのだろうか?

「なんかさっきからうるさいけど………なんかイベントでもやってんの?」
「そういえば広場でアスキラが百人斬りやってるとかなんとか………」
「マジでっ!?」

 正直、他のユーザーなら興味はなかったが、アスキラさんなら話は別だ。

「何時からやってんの?」
「ん~~~………二時間前?そろそろ終わるんじゃないか?」
「修理終わったろ?行ってきます!!」
「あ、おいっ!!!!」

 すぐさまシュウから装備を回収し、一目散で飛び出した。
 飛び出してしまったユキを止める術がなかったシュウは目をパチクリと開閉するなり。

「まだ武器の修理―――終わってないぞ?」

 頬をかきながら「大丈夫かな?」と呟いた。
 武器の耐久値を見てないが防具はすべて終わっている。だから大丈夫であると思うが―――。
 まあいいかと鼻歌交じりで店前に出るとキョロキョロと店を覗く女アバターと目があった。

「えっと―――ユ、ユキっている?」

 絶―――違ったあれは男だ。えっと………テルプとか言ったか?
 どこぞの二人が着ている『大鳳の卵(たいほうのたまご)』装備ではなく、普通の狩り装備をしていたので一目では気づかなかった。
 青いジャケットに黒のホットパンツ、それに白の腰マント。ジャケットから覗かせる黒いビスチェがまたエロかった。それとは別に彼女の身長ほどある長弓が背中から見える。
 狩りでもしていたのだろうか?そんなことはどうでもいいかと話を戻す。

「あ………テルプとか言ったっけ?ユキなら広場の方に向かったぞ?」
「そ、そう。ふぅ~~~ん………。ならワタシも用事あるから広場に行こうかな。か、勘違いしないでよねっ!!別にアイツのことなんてどうでもいいんだからっ!!ほ、ホントなんだからねっ!!」

 乾いた笑いを浮かべながら手を振り、シュウは『テンプレ乙』と心で言った。
 そこで遠くからこちらを覗く"赤い男"の姿だけは見ないようにして店に戻るのであった。


 ◆◇◆◇


『これで九十九人抜きだあああああああああああああ――――――っ!!!!!!誰も倒せないっ!!!!強い。強すぎるううう―――っ!!【最強】の通り名は伊達じゃないっ!!!!』
「すいませーん。ちょっと通して………」

 辺りは真っ暗だが、さすがに人が多いだけあってそこに明かりが集中していた。
 歓声がすごい。つか観客もすごい数だ。さすがはトップに君臨するだけはあるとユキは興奮する人の波をかき分けながらその先へと進む。
 さすがに来たからには一戦くらい見たいものだ。
 ずっと憧れていたというのもある。ユキははやる気持ちを抑えその人波の一番前へと進んだ。

 そこでユキは後悔する。一番前へと行かずに一望できる丘にでも登ってそこから月と一緒に眺めていればよかったと―――。

『それでは次の相手は―――?』
「すいま………せんっ!!ふぅ~~~………やっと一番前に………」

 やっと人波から抜け出すことができたと思うと何やらその場にいた全員と目があった。
 辺りは昼間のような明るさがあり、そのおかげもあってか全員の顔がはっきりとわかる。
 片腕をユキへと向けたアスキラは声高らかに指名する。

「来い【絶氷】。最後の相手はお前だ」
「え?」
『おっと!!最後の相手はなんと―――っ!!あの"絶対氷結"の異名を持つ【絶氷】のユキが登場だあああああああ―――――――――っ!!!!』
『ウオオオオオオオオオオオオオオ――――――――――――っ!!!!』
「え?」

 理解もできないままユキは司会に押され前へと向かわせる。
 え?嫌だよ?なんで見に来ただけなのにいきなり対戦って―――。
 戸惑うユキに微笑みかける【最強】のアスキラ。だが目は死んでる。そういうキャラメイクだから。

「怖気づいたか?【絶氷】?」
「いやぁ~~~………俺は見に来ただけであって―――」
「そういえばオーディション通過したらしいな。おめでと」
「………」

 そういえばこの人、知ってるんだっけ?
 アリス=ユキだって。

 是非も聞かずにアスキラから『 アスキラ からデュエル申請です。受理しますか? Yes/No 』と表示された。
 アスキラを一瞥すると、血気盛んな笑顔を浮かべ。今にも動きたくてユキが『Yes』を押すことを切望しているように見える。
 もう『Yes』を押すしか選択肢がないわけであって、大きく息を吸い込み本日最大のため息を吐いてウィンドウの『Yes』をタップした。

『百人斬りラストの挑戦者。【絶氷】のユキいいいいいい――――――っ!!!!四ヶ月連続百人斬り達成できるのかっ!?それとも阻止されてしまうのかああああああああ――――――っ!!!!』

 ユキとアスキラの中央に『60』の数字がカウントされていく。
 六〇秒のカウントが終わると自動的に両者は対戦属性となり、観戦者への攻撃、または観戦者からの攻撃はすり抜けるようになる。
 ルールとしては回復アイテム、回復スキルは禁止。装備の付け替えはデュエル中可。どちらかのHPがゼロになったら時点でゼロにした者が勝ちというルールだ。
 このデュエルシステムが追加されてからは害はないということで街中でも気軽にデュエルをする者も多くなった。もともとマルチエリアではPKが可能なのでその対策、または練習という名目もある。
 また腕自慢とばかりにこうしたユーザーイベントが起きたりもする。ユキもよく挑まれたりはする方だが、あまり乗り気になれずトンズラする場面が多々ある。
 ユキ自身そこまで強くないと思っているのもあるのでデュエルというシステムは好きではない。

 ―――だが。

 大剣の柄を握る右手が震えている。
 目の前のアスキラを恐れているのか?それともこの大観衆の元で緊張しているのか―――?
 ユキは目をつぶり、大きく深呼吸する。
 左手を胸の前に置き、ドクドクドク―――と鼓動を感じる。
 もう一度深呼吸し、ゆっくりと目線をアスキラに向ける。それに応えるようにしてアスキラは口元を釣り上げる。

 あぁ結局のところユキは戦ってみたかったのだ。
 溢れる笑顔に武者震いする体。いまかいまかと柄を握る力が強くなっていく。

 残り時間が『10』を切った。

 アスキラのロングウルフヘアーが風に大きく揺れる。
 潮風が吹き、両者の外套が大きく揺れた。
 ユキの青いロングコートの裾が左へと動き、アスキラの赤い腰マントはバサバサと右へと揺れる。
 両者ともに鞘から剣を抜かず。ユキは右手を背に、アスキラは両の手を腰に持っていく。

 『3』

 アスキラが左へと動いていく。

 『2』

 ユキもそれに習って時計回りに動く。

 『1』

 ツバを飲み込む音が重なって大きく聞こえた気がした。

 『0』

「はああああああああ―――――――――っ!!!!!」
「せええああああああああああ――――――っ!!!!!」

 ―――速い。

 一瞬にしてアスキラは間合いまで距離を詰める。それと同時に振りかぶる。軌道からして右は首、左は腹といったところだ。

 ―――ならばとユキは抜き去った大剣をそのまま振り下ろした。

 激しい金属音と同時に火花と突風。
 アスキラは双剣をクロスしてユキの大剣を防ぎ、ユキは両の手で剣を握る。
 両者今のではHPゲージを少しも削れていない。
 鍔迫り合いの末、さすが『Str』型だとユキがジリジリとアスキラの体を押す。近接戦は分が悪いと悟ったアスキラはすぐさまそこから離れ、左手を前に右手を後ろにして構える。
 ユキも肩に担ぐようにして大剣を構え直しアスキラを見据える。

 ―――先手必勝っ!!!!

 大剣を担いだままユキは動き出した。
 アスキラは余裕の表情を浮かべ『来い』と意気込む。
 そういう上から目線は個人的にも助かる。あなたがそうしてくれるだけで胸を借りる気持ちで挑めると晴れた心のままユキは剣を振った。

 ―――氷魔法剣初級二連撃【雪】

 左右からの下段二連を難無く躱し、そのままユキの背後へと回るアスキラ。
 逃さないと左手で詠唱していた氷魔法初級技【凍る半月フリエレンハルトムーン】を背後に放つ。ユキの背後をグルリと半周氷のツララが下から上へと飛び出す。飛び出していれば危うくあのツララが貫いていただろう。
 アスキラはまた微笑み、次は自分からだとばかりに体を動かして攻めてきた。

 双剣の乱舞が襲い来る。

 確かに速いが十分に見れるスピードだとユキはその斬撃の嵐を躱していく。
 避けれるものは避け、無理なものは大剣で弾く。

 ―――行けるっ!!あのアスキラと渡り歩いてるっ!!!!

 避けながらユキは心の中で叫んだ。
 隙を見計らい襲い来る双剣二つ弾き飛ばし、ユキは右手の剣で氷魔法剣中級技【貫く突風ピアッシングブリザード】を。左の手で氷魔法中級技【突き進む氷槍(パージジェベリン)】をアスキラ目掛けて飛ばす。
 両サイドからアスキラ目掛けて飛ばされた二本の線。躱そうと思い立つアスキラだったが、その判断を鈍らせる。
 なぜならその二本の線は直撃の前にクロスさせ、標的を両サイドから逃がさないようにするためのものだった。
 両サイドにはツララの壁。意図に気づいたアスキラは視線をツララからユキに向けると彼が誇る最高攻撃を準備していた。
 右手では氷魔法剣最上級十六連撃【夢幻の雪月花ファンタズム・ヘルヘイム】を。左手では氷魔法最上級技【光り輝く氷嵐ダイヤモンド・テンペスト】の詠唱を開始していた。

 さすがのアンタでもこれを耐えれないだろ―――っ!!!!

 左手の魔法を指定発動と同時に駆けた。

「うおおおおおおおおおおおお―――――――――っ!!!!!!!!!」

 最初の垂直斬りでクロスされたツララごと切り裂く。
 下段二連で両サイドのツララをと、アスキラと一緒に切り裂いて行く。
 【光り輝く氷嵐ダイヤモンド・テンペスト】が一二〇ヒットもすればいずれは『氷結』する。その魔法でのダメージと『氷結』で動きを止めたところを魔法剣スキルが当たれば勝てる―――っ!!!!

 これでラストだっ!!!!と十六連撃最後の上段を振り下ろすと同時に【光り輝く氷嵐ダイヤモンド・テンペスト】の大魔法も消し飛ぶように消えるのであった。

 ・補足・

***【アスキラ】***

 ギルド『SEED』のギルドマスター。または【最強】の通り名を持つ双剣使い。
 ついでに同ギルドに所属する『自由正義運命』とはリアルで知り合い。
 描写がないのでここで彼の服装を。赤いジャケットに黒いタンクトップ、黒のニッカポッカ。それに赤い腰マント。

******************

 ユキ 対 アスキラ
 勝つのはどっちだっ!!!!

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