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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆

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3-2 <異世界。だがそれは拉…>

 ※注意※ 異世界転生モノではありません。
「―――じゃないっ!!!!」
「ん………?」

 辺りの騒がしさから目を覚ますと、そこは異世界だった。

「どこ………?」

 何を言ってるかわからないと思うが俺もわかってない。
 回らない思考で何を考えても、結局のところ判断できないので少し時間が欲しい。

 とりあえず。とユキはキングサイズベッドから体を起こし周りを見渡すと自分の世界(部屋)ではないことを理解する。
 自分の部屋の数倍もあるこの部屋には高そうな壺とか絵とかが並び、まるでVIP部屋に通された気分だ。下手に触ることだけは避けよう。
 全くと言っていいほどユキには覚えがない。
 昨日。学校が終わり。軽くドラスレをやり。明日は土曜日だ嫌だなーっとどん底な気分で―――。

 …
 ……
 ………

 なぜ土曜どん底?
 ユキは一つの結論を見出した。


 こんなことする奴はアイツしかいない―――と。


 ユキはため息を漏らしベッド横にあった着替えに袖を通した。
 どう見ても俺の私物ではない。
 でもすごく好み。
 もうアイツの仕業にしか思えない………。

「お目覚めになりましたか?」

 アイツの声だ。
 声のする方へ視線を向けると、アイツと同じ容姿をした少女が現れた。

「こんな事する奴はお前しかいないと思ったよ―――クオリア」

 ゲーム内のクオリアとまったく同じ容姿の少女が白いワンピースを着てそこにいた。ここがゲーム内ならばどれほどよかったことか。

「何を仰ります。今日は約束の日ですよ?」
「ちょっと待て、俺の記憶が正しければ"迎えに来る"って言ってたような―――これって拉」
「朝食できてますよ。向こうの部屋でいただきましょう」

 何事もないかのように振る舞うクオリアに一層(いぶか)しげな表情を向けるのであった。



 通された部屋にはこれまた絵画とか壺に豪華なシャンデリア、洒落たテーブルクロスの上に朝食が並べられていた。
 出口らしい扉には黒服にサングラスの男が二人立っている。下手なことはさせない。との意思表示にも見えた。
 長テーブルの片方に高齢の男性が椅子を引き、そこにクオリアが腰を下ろした。長い対面の椅子を引かれユキもそこに座るよう催促された。

「それでは―――いただきます」
「い、いただきます………」




「お口に合いましたか?うちの料理は」
「美味かったよ。ちょっと朝飯には多すぎたきもしたけど………」
「男の方はよく食べると聞きましたので」
「少食の俺にはきつかったよ………」

 食事を終えた二人は談話室と思われる部屋に通された。
 唯一の出口は同じ黒服二人が見張り、静かにお茶を用意する高齢の男性。たぶん彼女の執事か何かなのだろう。それはセバスチャンという名前がすごく似合いそうというのが一番の理由なんだが。

「満足していただけたのなら何よりです」
「ったく。こんな家にこんな食事―――お前に弱点なんてないんじゃないのか?」
「弱点―――とは言いませんが………あの子だけは―――」
「あの子―――?あ、あぁ………」

 あの子ね。
 そういえば俺とクオリア共有の話題"ドラゴンスレイヤーズ"の中で出会ったあの子はコイツの天敵だったことを思い出す。

「といってもあれは反則だよな―――魔法が効かない"タンカー"って」
「今まで五〇ほど『"魔法使い潰し"潰し』を試してるんですが―――やはりあの『絶対魔法反射』スキルだけは」
「思いっきり弱点だな」
「弱点ではありませんっ!まだ試していない攻略法は五八もありますから。ふふふ………ですがさすがは【全ての魔を跳ね返す盾(アイギス)】の通り名を貰っただけはありますわ―――相手にとって不足はない………ふふ………」

 クオリアが不敵な笑みを浮かべている。
 やばい変なスイッチが入った。とユキは強張った笑顔を浮かべセバスチャン(たぶん)が入れたお茶を飲み込んだ。

「そういえばご両親は今どちらに?」
「さあな。俺自身何してるのか、どこ行ってるのかわからないよ」
「あら、そうですか―――」
「というかなんでそんな事聞くんだ?」

 そこで一瞬の間があった。
 ―――?どうかしたのだろうか?
 ユキは返って来ない返事に小首をかしげると同時にクオリアは口を開いた。

「いえ。近いうちにご挨拶をと思いまして」
「………」

 だめだ。やっぱりコイツは苦手だ。あんまり関わってはいけない奴だと体が危険信号を出している。
 正直なところコイツは美人だ。それに金持ちときている。それが俺を好いている………?何それナンテギャルゲー?でもコイツの場合はヤンデレっていうキーワードをヤホーでググったら一発で出てきそうなキャラだから困る。うん、困る。
 複雑な心境を落ち着かせるため、またお茶を入れてくれたセバスチャン(たぶん)に会釈をし、口に含んだ。

「そんな話はさて置き、本題に入ってもよろしいですか?」
「―――本題?」
「ここに連れてきた理由―――とでも言いましょうか。それを聞けたら今回のお願いは終了でいいですよ」
「………ふむ、それで?その本題っていうのは?」

 クオリアは何か別の場所に視線を向け一つ間を置き、ゆっくりとその"本題"を口にした。

「なぜ―――貴方様は歌手になりたいのですか?」
「………」
「貴方様には運も実力ある。なのになぜ正規な方法でなろうとせず、あのような方法でなろうとしているのか―――それが私が聞きたいことであり、今日ここに連れてきた本題です」

 言い終わると同時にクオリアの頬が吊り上がる。まるで意地悪大好きな子供のような悪い顔だ。
 たぶん俺のトラウマと関係していることを知っていて、さらにそれを言わせれるネタを持っているのだろう。クオリアとはそういう奴だ。
 ユキは深くため息を吐き、ダメ元で聞いてみた。

「答えたくないって言ったら?」
「そうですね………貴方様の"ランドセル"の話とかどうでしょ?」
「ちょ、ちょちょちょちょ!!!!なんでお前がそれ知ってるんだよっ!!!!」

 乱れる度に世を流してきたウチの乱度世流(ランドセル)さんだけは触れてはいけないっ!!!!あの中には俺のムフフといやーんなお宝が入ってるんだ。さすがに高校生にもなってランドセルを開けないと考えた俺は天才だと思っている。だってあんな物押入れにあっても中身見ようとはしないからなっ!!!!
 しかしクオリア―――なんでそこまで人の情報詳しいんだよ………。実際寝ている俺を家から拉致ってくるような奴だからそのくらい造作もないのだろうが―――。
 悪い笑顔だ。もうコイツの笑顔を見てるとなんでも見透かされてる気がしてならない。

「わかったよ………話せばいいんだろ話せば。ただ個人的にはもうしたくない話だ。他言無用で頼む」
「えぇわかってます。"私"は口が固いんですよ?」

 ユキはクオリアの言葉を鼻で笑い飛ばし、あまりしたくない話を始めることにした。これは自分のトラウマの話でもあるので言葉を一つ一つ選びながら話しだした。

「先に理由だけ話すよ。俺が歌手になりたい理由は―――『知りたい』からだ」
「『知りたい』?………ですか」
「あぁ。俺は自分の歌声にコンプレクスを抱いてる。わかるだろ?歌う俺の声が女のそれと一緒だって」
「そうですね。違和感はありません」
「それで一時期馬鹿にされ、いじめられたこともある。もともとメンタルが弱いってのもあって俺は引きこもってしまったわけだ」

 当時の気持ちをごまかすつもりでユキは微笑した。こんなコンプレクスを抱く俺を笑いたいなら笑えばいいと。
 無言を続けるクオリアにユキは次の言葉を続けるため声を出す。

「その頃から既に親なんて月一で会うか会わないかの存在だったから気兼ねなく俺は家に篭ってずっとテレビだけを見続けたわけだ。ニュースに始まって昼ドラ、アニメにバラエティ。それに歌番組―――。始めの頃は歌番組なんて流れた瞬間チャンネルを変えるか消してたんだけど。この世界、音楽って奴は常に付きまとってくる。ニュースにしたり昼ドラやアニメだって歌は流れる。そんな中で一つのグループの音が常に付きまとっていた。当時流行っていた二人組の『もーにんぐ・すまいりー』って女の子達のグループが」
「確かに―――流行ってましたね。つい数年前にパタリと消えてしまいましたけど」
「最初は全然気にもとめてなかったんだけどたまたま見てたニュース番組かなんかでその子達のライブ映像が流れたわけだ。ボーイッシュで元気な子とお淑やかなロングヘアーの子。その二人の女の子が身の毛がよだつ程に笑顔で、楽しそうに、踊って、歌っているのが―――たまらなく嫌だった。………でも耳に残るんだ。あの歌が―――まるで―――どこか―――小さい頃に聞いたような歌………」

 当時流行っていたあの彼女たちの歌。それが彼女達の新曲で、誰のカバーでもなかった。なのに俺は知っている?正直何を言っているのかってレベルだが、記憶のどこかであの曲を聞いたことがある気がしている。
 今も心のどこかで引っかかっているそれを思い出そうとするのだが未だに思い出せないでいる。
 そこでふと、クオリアと目が合い、急いでユキは言葉を続けた。

「えっと………なんだっけ?あぁ、その曲が常に俺の頭の中に流れていたんだ。そんなある日、とある番組で司会が彼女達にこう質問した。『本当に楽しそうに歌ってるけど歌が好きなんですか?』って。そしたらボーイッシュな子がこう答えたんだ『実はあたし、歌は好きじゃないんです』おかしいだろ?好きでもないものを楽しそうにする。所詮芸能人なんて歌手なんてそんなものだよなって最初は思っていた。でも彼女たちは本当に、本当に、本当に―――楽しそうなんだ。そう見えるだけかもしれない。でも楽しそうなんだ………」

 そう。自分の記憶の中にある彼女たちはすごく楽しそうで―――それでいて、とてもまぶしかった。今でも彼女たちがいなかったら、あの歌が無ければ俺はあの家でずっと引きこもっていたと思う。

「それからはずっと彼女たちを追いかけていた。歌番組も彼女たちが出るものは見ては歌も覚えて振り付けとかも覚えて―――ひ、暇だったからなっ!べ、別に可愛らしく踊ってたりしてたわけじゃないからなっ!!―――………ま、まあ時間だけはたくさんあったからさ。けど俺の中の疑問はわからないままだった。なぜ彼女はそこまで楽しそうに歌うのか、歌うのが好きではないのなら踊るのが好きなのか、知りたかった」

 知りたかった。彼女たちを見ていればいずれ答えが出ると思って。
 知りたかった。彼女たちの踊りを覚えれば何が楽しいのかわかると思って。
 そして知りたかった。彼女たちが歌うあの曲を歌っていれば思い出せると思って。

「それで俺は一つの結論を見つけた。彼女たちと同じステージに立てばその答えが見えるのかもしれないって―――それからヴォーカル教室に通うようになったりと我ながらめまぐるしい日々だったよ。一歩ずつ前に進んで、一歩ずつ答えを探した。それでも………未だにわからない。さっさとその辺のオーディションでも受ければいいのかもしれないんだろうけど。リアルで、さらに知らない人の前で歌うのって………未だに躊躇(ちゅうちょ)して震えるんだ………」

 それを言い終えるとユキは誤魔化すように笑った。それに応えるに変わらぬ笑みのまま彼女も笑って応えた。
 しかし視線を下に向けると視界は黒ずんだ。たまたま目に入ったテーブルの影を見たからなのか、自分のトラウマを再確認させられて気分が下がっただけなのか。それと同時に少し吐く息が重くなった気がした。

「だから俺は『知りたい』んだ。きっと同じ場所に行けば『知ること』ができると思うから」
「―――なるほど。そうですか」

 最後に見せたクオリアの笑顔はなにか見透かされているような。俺を見ていない?どこか別の場所を見ている。そんな表情を見せるのであった。
 ・補足・

**********【アイギス】**********

 一章にもちょっと出てきたユニークスキル【絶対魔法反射】のスキルを持つタンカー。アスキラのSEEDに所属してギルド内では【イージス】、ギルド外では【アイギス】と呼ばれている女性プレイヤー。
 イージスとは英語読みであるので正直どちらでも正しい。意味は【全ての魔を跳ね返す盾(アイギス)】クオリアさんの天敵でアイギスの姿を見ると一瞬でどこかへ逃げる。

*****『"魔法使い潰し"潰し』*****

 よくある。魔法使いを無力化する方法を逆手にとってそれを先手で無力化させる方法
 クオリアさんの潰し潰しは108ある。

***『セバスチャン(たぶん)』***

 命名ユキ。本名は瀬場 杉蔵(せば すぎぞう)。クオリアの執事。運転にピッキング、盗聴、盗撮、拉致、なんでもござれ!!

**********【乱度世流】**********

 意味ランドセル。乱れる世(乱暴に扱われた六年間)を渡ったランドセルに付けられた名前。今となってはユキのアダルトな本とか物の入れ物と化し、それを称えるためにそう呼んでいる。(出してほしいとの要望を受けて出しただけなんで深い意味は無い)

*******『ヴォーカル教室』*******

 一回一時間五〇〇〇円。ユキは毎月決まった曜日に四回受けている。
 レッスンはサクラという先生にユキは学んでいる。よく同い年くらいの生徒を品定めしてるとかしてないとか。ユキはガキとしか見えない様子。

***『もーにんぐ・すまいりー』***

 中学生くらいの女の子二人のユニット。その割りには大人びていていた。
 ファーストシングルが爆発的にヒットし、そこから1~2年で数枚シングルと2枚アルバムを出してすぐ解散。
 解散理由は謎。

********************************


 主人公であるユキの目的をはっきりさせる回でした。
 自分でも思うのは二章じゃなくてこっから一章で本編。
 僕自身頑張りますので皆さんも是非ついてきてください!!

 感想、評価等していただけたら幸いです。
 不躾なお願いですが誤字脱字等ありましたら報告していただけたら嬉しいです。

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