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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 外伝 -鍛冶師な俺とチートなアイツと- ◇◆

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0-5 <告白。だがそれは信じない!!>


 番外編最終話です。

 朦朧(もうろう)とする意識の中、うっすらと目を開けると自室のベットに横になっていた。
 えっと………俺は今まで何を………。
 頭に手を当てると何か冠のような物が付けてる。イクスフィアだ。
 こんな輪っかを頭に被るだけでVR(バーチャルリアル)世界にいけるようになるなんて技術の進歩すげーと、いまいち回らない思考でそれを外す。
 んで。なんだっけ?俺が今まで何をしていたか………。

 …
 ……
 ………

 あぁ。【鏡竜・ニトクリウス】のクエストをやって―――ユキ達に助けられて―――最後クリアして―――。

「っ!?」

 クリアした。まで思い出すと急いでベッド横に置いた携帯端末を拾った。
 日付と時刻は最終日の昼間。
 ってことは今からまたユキを捕まえてクエストを回せばなんとか―――。

 急いでユキに連絡しようとすると、シュウの携帯端末にユキからのメールが来ていることに気がついた。
 まさか―――とメールの内容を見てみると予想通りの内容だった。

『目的のレアドロップは預かった。欲しければ本日十三時にいつもの場所で待つ。 ユキより』

「あのチート野郎―――」

 いろんな気持ちが入り混じり、シュウは笑みをこぼした。さすがは最高のチート野郎だ。いったいどんなチートソフト使えばあんな低確率のレアドロップ出せるようになるんだろうな。
 急いでシュウはベッドに横になるなり投げ捨てたイクスフィアを頭に被り「ダイブ、イン」の言葉でダイブするのであった。


 ◆◇◆◇


「きたきた。おぉ~~~い!!シュ――――――ウッ!!!!」
「この野郎………。いつもの場所っていっぱいありすぎてどこかわかんなかったぞ………」
「いつもの場所っていったらシュウが"露天開くところ"に決まってるだろ」
「知らんがなっ!!!」

 このやり取りも疲れてきた………。それよりも。

「本当にどうしたんだよ。お前ら」
「―――ノーコメントで」

 会話に全く参加しないがユキの腕を掴み隣でベッタリとくっつくクオリアの姿があった。しかしべっぴんさんだ。あまり俺の好みではないが―――むしろ俺はカルアさん一筋なのでクオリアなんて興味がなかった。ホントだよっ!!!カルアさんラァ―――――――――ヴッ!!

「ほら、約束の【鏡宝玉(きょうほうぎょく)】」

 ユキから渡されたのはまるで銀塊と間違えるほどのメタリックな球体。鏡の球だった。大きさにしてソフトボールくらいの大きさ、重さも片手にずっしりとくる。

「おぉ………なんかもっと光り輝いてるもん想像してたんだけど、なんか安っぽいな」
「ふふ。違いない―――そろそろ離れてくれません?クオリアさん………」
「"クオリア"って呼び捨てにするまで離れません!ね、"ユキ様"?」
「うぅ………」

 助けを乞うユキに対してシュウはいいざまだと笑ってみせた。

「お似合いだぜ?お二人さん」
「ですって"ユキ様"」
「………覚えてろ」

 そんなユキの言葉もお構いなしにシュウは手に入れた【鏡宝玉】の詳細を確認する。確かに本物であり星五つのユニーク等級のレアだ。
 すぐさまシュウはフレンドリストの"カルオルティア"に連絡を入れるのであった。

「もしもしカルアさんですか?―――」


 ◇◆◇◆


 発光するシュウの手元からドンドンと片手剣の形へと変化していく。

『精錬完了、【鏡剣(きょうけん)・ニトクリスレイヴ】が完成しました』

「ふぅ………」

 額の汗を拭い、シュウは完成した片手剣を両手で持った。まるで飾太刀(かざたち)のような銀色の刀身。鍔にはここ数日お世話になった【鏡竜】の翼に酷似している。柄頭にはその尻尾と思わしき物が弧を描いていた。

「これが【鏡剣・ニトクリスレイヴ】………」

 やっと作れたことによりなんか涙腺が………。アイツが一発で出すことは当然っちゃ当然な結果なんだが、なんか腹立つ。
 そんな煮え切れない感情とやっと完成できたことからシュウはふぅと息を吐くのであった。これで残るは………。

「告白しかないだろっ!!!!」

 そうだよっ!!ユキに春がきたんだから俺にも来るだろう?常識的に考えて!!むしろここで俺だけ春が来なかったら俺は何を信じたらいいんだ!!
 とうのユキはクオリアから逃げるようにクエストへと向かった。PT(パーティー)を組んでるから逃げれないっていうのに………。

「やば。もう約束の時間じゃん」

 喜びのあまりシュウはカルアさんとの約束を十五時に予定していた。
 今は十四時四十五分。着替えを―――タキシード作ってる時間なんてないかも。つかタキシードって材料なんなんだ………?
 そうこうしてるうちに露天の前に二人の女性が現れた。
 数日前に見たルビー色の髪の魔法使いベルと、スカイブルー色の髪の騎士カルアの二人だった。

「お久しぶりですシュウさん」
「………」

 やばい。頭の中で彼女のこと美化していたがやっぱり生カルアさんは美人だ。
 思考だけは猛スピードで働くものの、口だけは半開きのままシュウはカルアを見つめた。

「だめだカルア。また旅立っちゃった」
「あ、あの―――シュウさん?」
「………好きだ」
「「え………?」」
「カルアさん!!好きだぁ!!お付き合いを前提に結婚してください―――ッ!!」
「「………」」

 公衆の面前で彼の取った行動はもういろんな段取りふっ飛ばしての告白だった。
 シュウはカルアさんに手を差し出し、視線を下に向ける。

「―――お付き合い前提ってなんだよ………」
「告白キターーーーーーーー」
「公開処刑はいります」

 野次馬達の声に我にかえるシュウ。
 何してんだ………。俺は………。先に依頼の物を渡してからでもよかったじゃねーか………。なに気分高まって口走ってるんだよ………。
 もう出てくるものは後悔しかなかった。
 言ってしまったものは仕方ないと下を向いた顔を上げカルアさんを見ると、すごーーーく申し訳ない顔でこちらを見ている。
 え、え、え、え?ま、ま、ま、まかさ?かまさ? ま・さ・かっ!?

「ご、ごめんなさい―――」

 いつの間にか街にいたプレイヤー全員集まったと思うほどに増えた野次馬達。そのプレイヤー達から玉砕されたシュウに向けて「どんまーい」や小さな拍手が鳴り響いた。
 想像以上に大事になりシュウ自身結構驚いてたりする。
 すると突如、カルアさんはシュウの耳に近づきボソリと囁いた。

「あの………実は―――」
「え―――ええええええええええええええええええええええええ」


 ◆◇◆◇


「そんでそのカルアさんっていう人は"男"だったわけか」
「うるせえええええええ―――っ!!このチート野郎がぁ―――っ!!俺の気持ちも知らないで!絶対運営に"コイツチート使ってるんで垢BAN(管理会社にアカウントを剥奪、ないし停止されること)にしてください"ってメール毎日送ってやるからなぁっ!!」

 ツバを飛ばしユキに暴言を吐きながらシュウは必死に砥石を動かしていた。
 そんな脅迫じみたことを言っていても、その作業台の上にはユキの装備が置いてある。なんだかんだ言って仕事はするんだとユキは腕を組んだまま微笑をこぼした。
 すると、ユキは何か思い出したように口を動かす。

「ん?カルアとベル―――?もしかして"カルオルティア"っていうスカイブルー色の髪した大剣持った"タンカー"?」
「そうだよ!!!!」
「あれだろ?ベリールーっていう魔法使いとよくペアしてる女性キャラ二人」
「ベリールー?そんな奴いたっけ………あ、あぁ………ん?」

 シュウ自身眼中になかったルビー色の魔法使いのことを言われ少し戸惑う。そして何か引っかかる物言いだ。コイツまさか―――。

「あの二人………"ネカマ(ネットオカマの略)"って結構有名な話だよ?」

 シュウの何かが崩れ去る音がした。いや、手から砥石が落ちた音のようだ。

「俺は―――俺はこの気持ちを―――な、何にぶつければいいと―――思う―――?」
「おいおいおいおいっ!!ハンマー持ってこっち来るなァッ―――!!」
「いいよなぁっ!!お前はあんなべっぴんさんに"ユキ様"って言ってもらえてよ!!―――むしろあれじゃね?クオリアもネカマなんじゃね?男なんじゃね?そうに決まってるんだよおおおおおお―――!!」
「―――死ね」

 そんな言葉を聞いた瞬間、シュウの体は七色の光に包まれてその姿を半透明にした。
 その場にいた二人は今何が起きたのかまったくわからない状態のまま沈黙していると、どこからともなく臙脂(えんじ)色のフードを被った魔法使いがこちらに歩いてきた。

「誰がネカマですって―――?誰が男ですって―――?」

 二人の視線がその人物に集まると、彼女はそのフードを外し綺麗な空色の髪を(あら)わにした。

「ちょ、クオリアッ!!つか、今何したの?」
「ディレイかけて六魔法同時に発動させただけです。痛みは一瞬ですが次は―――」

 するとシュウの画面に『【リザレクション】を クオリア から受けました。蘇生しますか? Yes/No』と出ている。
 やばい。蘇生してもっかいHPをゼロにするつもりだ。
 慌ててシュウは『No』を押すとまた【リザレクション】を受けた。
 怖い!!この人ガチだぁ!!町外れなもんで圏内PK扱いにならない!!ここで間違って『Yes』を押したもんならじっくりいたぶるようにHPを削っていくだろう。それだけは阻止したい!!!!
 急いでシュウは『No』を押してその裏にある『復帰ポイントに戻りますか? Yes/No』の『Yes』を押したいのだが、押そうとするタイミングで『【リザレクション】を クオリア から受けました。蘇生しますか? Yes/No』と出ている。間違って押しそうですごく危ない。

「早く押してくれません?シュウさん?」

 怖い。あの笑顔ちょー怖い。

「さあさあ」
「ひいいいい―――っ!!」


 ◆◇◆◇


 それからシュウは一心不乱にハンマーを振った。
 夜な夜な町外れの方から「もう誰も信じな―――いっ!!!!俺は誰も信じな―――いっ!!」という言葉とハンマーを打ち付ける音が鳴り響き、新クエストのイベントでは?という噂が流れた。

「おいシュウ。これ今日のぶ………ん………。なにしてんだ?」
「見てくれよユキ。この素材、ちょープリティじゃね?」
「………シュウがおかしくなった」

 もう誰も信じられなくなったシュウは「人間は俺を騙すけど、素材だけは嘘をつかない。ほら、見ろよ。こんな立派な武器になるんだぜ?」と喋るその瞳には正気がなくなっていた。

 それからというもの。申し訳なくなったユキはクオリアと共に【鏡竜】のクエストに足を運び、お土産と【鏡宝玉】をゴロゴロと持ち帰った。

「おぉ~~~………いつ見ても素晴らしい輝きだ」

 最近のシュウは行き過ぎた感情故、素材にキスや愛情表現をする趣味が増えた。なんでもそれでいい武器ができるとかできないとか。

「ユキ様。見てはいけません」

 それからはもう一瞬だった。
 某匿名掲示板で【鏡剣・ニトクリスレイヴ】が大量に並ぶ露天があるとの情報が流れ店は大繁盛。【鏡剣】以外にもこの店にはレアでいい装備が揃っていると評判になり、いつしか"鍛冶師シュウ"の名前を知らないものはモグリか初心者。とまで言われるようになった。

 ある日、『週刊ドラスレ』とか言うゲーム内雑誌を発行している記者がシュウの露天に取材で現れた。そこで記者は一つの質問をした。

「え?いい武器を作るコツ?人を信じるなっ!!素材を信じろっ!!」

 この回答に即答だったのは言うまでもない。
 この記事が反響を呼び、一部の引篭もり達に『つまり三次元を信じるなっ!!二次元を信じろってことだろ!ウオオオオオォォォォ―――シュウさぁ―――ん!!!!』と絶大なる支持を得た。当の本人はこのことに全否定ではあるが。

 そこから店舗を持つのに一週間もかからなかった。一番の問題であった『循環システム作り』なんて余裕でクリアし、武器を作れば飛ぶように売れた。
 売上の何割かをユキとクオリアにもくれるようになったり、シュウの店で知り合った人達に引っ張りだこになるクオリア。それにちょっと妬いたりするユキがいたりいなかったり。


 月日は流れ、彼の親友とパートナーは【絶氷(ぜっひょう)】、【魔道姫(まどうき)】の通り名をもらい、シュウは素材に変な愛情表現をすることもなく普通に鍛冶屋を営んでいた。
 いつものようにユキはシュウの店でダラダラと過ごし、たまたま目に入った『週刊ドラスレ』を読んでいると当時のシュウを思い出し聞いてみた。

「よくもあの頃から立ち直ったよね?」
「ん―――?まあな。けど―――」
「けど?」
「未だに"女アバター"だけは信用してないけどなっ!!」
「………」

 根本の部分は深いようだ。

「いらっしゃい!ようこそ【ヴァルカン】へ。何をお探しですか?」

 今日もシュウはローマ神話に出てくる鍛冶神【Vulcan】と共に素材を愛し、装備を作るのであった。






           番外編 - 鍛冶師な俺とチートなアイツと -    - 完 -







 ・補足・

*****【垢BAN】*****

 ウェブサービスなどの管理会社にアカウントを剥奪、ないし停止されることである。「(あか)」はアカウントを意味するネットスラング、「バン」は英単語のbanであり、「禁止する」などの意味がある。

**********************

 はい。番外編終了です。
 どうもお久しぶりです真幸です。

 次回からは本編に戻って二章のスタートを予定しています。
 アドバイザーIさんと話し合い。いいプロットができ、「おぉwwww二章から本編wwwwww」という言葉もいただけました。現段階でプロットは三章まで書き上がっているので、あとはそれに沿って書くだけの作業。それが一番大変なんですが………。

 文章力はあれですが面白い話を皆さんにお届けしたいと思います!!
 それではまた次回。二章本編でお会いしましょう。
 真幸でした!!


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