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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 外伝 -鍛冶師な俺とチートなアイツと- ◇◆

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0-4 <デスペナ。だがそれはいいとこ取り>


 5話にするため無理やり詰めた感じになりますた。
 このゲームには『デスペナ(デスペナルティ)』というものが存在する。『デスペナ』はレベルに応じた時間過大なステータスダウンがついてしまう他に、自身の装備の耐久度が大幅に減少してしまう。
 装備の耐久に関してはシュウが"鍛冶師"であるので問題ではない。問題は時間過大なステータスダウンの方だ。シュウのレベルが五〇というものあり、三時間の間自身のステータスが半分になるというものだ。
 半分。簡単に言えばレベル二五~三〇代のそれと変わりないステータスだ。いちおうクエストの方はもう一度受けることができるのだが、赤子みたいなダメージで攻撃しても相手の一撃ですぐ死んでしまう。
 それだったらネットゲームによくある経験値減少の『デスペナ』の方がまだマシだよな………。とくにかく『デスペナ』の影響でこのあとの時間を取られるのはいただけない。
 別にこの状態でもクエストに向かうなりレベル上げの狩りに向かってもいい。だが、この『デスペナ』中、もう一度『デスペナ』を受けるとさらに同じ時間プラスされ、さらにさらにそのステータスも半分にされてしまう。ただでさえ赤子みたいなダメージなのにそれはもう蚊に刺された程度のダメージになってしまうわけだ。
 そうなってしまっては元も子もないのでとりあえずは『デスペナ』を受けている間は戦闘以外のことで時間を過ごすことにした。
 外部サイト『ドラスレwiki』にアクセスして、ちょうど流行っているのか専用ページ【鏡竜(きょうりゅう)】の攻略を見ることにした。
 どうやらシュウが即死した攻撃はブレス攻撃だったようだ。なんでも【鏡竜】のHPが半分を過ぎてから定期的にやる技で長く息を吸い込み、その全身の鏡で周囲に即死級の光線を出すとか。

 なんだよそれッ!!!初見殺しかよッ!!!とこの記事を読んでてツッコんでしまった。Wikiも読まずに挑戦した自分も悪いのだが………。
 対策としてはこれの予備動作がきたら素直に下がって光線が打ち終わるのを待つしかない。
 そのほかにもHPが半分を過ぎた辺りから他の行動も変わり、また行動を覚えましょうの時間が来るらしい。また覚えゲーが始まるのかと想像するだけでゾッとする………。

 だがそれでも。

「それでも―――やるしかない」

 意を決してみるも『デスペナ』の残り時間はまだ二時間もあるのだ。
 とりあえずは借りてきた映画を見ながら時間を潰すことにした。


 ◇◆◇◆


 そしれでも時間だけは無慈悲にただ流れ期日前日。
 シュウは一人、フィールドの木陰で(うずくま)りただただ頭を抱えていた。

 だめだ。だめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだ。

 だめだ―――――――ッ!!!!!

 いくら頑張ってもレアドロップの前にあの【鏡竜】が倒せない。
 E缶だけは最後まで取っておくとか言う前にソロには無理がある。タイム連打とかネトゲにはねーからっ!!そもそも『デスペナ』ってシステム消せよッ!!!!なんで三時間待ってクエスト行って一時間もしないうちに死に戻りしなきゃならないんだ!!!!あああああぁぁぁあぁあああ~~~………。

 シュウはやりきれない感情でハンマーを振り回すが、『デスペナ』を二度食らって四分の一されたステータスでは周りの木々さえも蚊に刺された程度で微動だにしない。
 この『デスペナ』が回復するまであと五時間もかかる。そんなもの待ってる暇なんてシュウにはなかい。
 今日中に素材を集めて武器を作らないといけないのに。

 いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!いけないのにっ!!

 いけないのに――――っ。

 立ち上がった際軽い眩暈が足元をおぼつかせる。すぐさま手に持ったツーハンドハンマーを使って倒れそうな体を支えた。この時ばかりは両手持ちの武器でよかったと過去の選択に感謝した。
 こんな体になるまでゲームをした覚えはない。だって期日はまだ………。

「って明日か………」

 かれこれ四日も寝ずに続けていたのか。
 自分の真剣さを鼻で笑い、頭の中ではカルアさんに謝ってる姿しかない。もう次で辞めようと心に誓う。
 前に決めていたように次がもしダメだったらカルアさんに謝ってお金も返そう。

 シュウは立ち上がりまたクエストへと向かった。『デスペナ(、、、、)』を抱えたままで。


 ◆◇◆◇


「くっ―――――――――そぉッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 だいぶ慣れてきたので無傷というものの、まったくといっていいほどダメージを与えてる気がしない。かれこれ一時間はヒットアンドアウェイを繰り返すが、あの範囲ブレスをしてくる気配はまったくない。
 それもそうかと『デスペナ』の影響でシュウのステータスはレベル十代のそれと大差ないものになっている。むしろ敵の防御力的にダメージすら与えていないのではないだろうか?
 積もり積もった負の感情がマイナス思考を呼び覚ます。
 気持ちは焦り、なぜ『デスペナ』状態のまま挑戦してるのか自分に苛つく。

 すると見たこともない行動をとった。
 翼を広げ、その巨体を空へと浮遊させている。

 なんだあれは?あんな動きwikiにすら書いてなかった。と思ったがすぐに理解する。

 どうやらマップ移動をするようだ。そういえばクエストを受けて戦う竜は、ある一定時間経過すればどこか別のフィールドに移動してしまうことを頭の片隅から引っ張り出す。
 浮遊した竜の影は"北"へと移動した。

 北っていうと………マルチエリアか。もしかしたら誰か他のPT(パーティー)がいて手伝ってくれるかもしれない。
 そんな淡い期待をこめてシュウはトボトボと足を動かしエリア移動特有の黒い壁に触れるのであった。



「嘘………だろう?」
「何惚けてんだよ。シュウ」

 シュウがマルチエリアに進入すると同時に現れた木々によって入り口は塞がれられる。中央には見知った竜と、見知った二人。

ユキ様(、、、)。来ます」
「だ、だから。その呼び方や、やめてくれません?クオリア………さん」

 クオリアと呼ばれていた人物の被っていたフードは消え、整った美しい顔立ち、長くて綺麗な空色の髪が(あらわ)になっている。
 というか―――女の人だったのか。

「くるぞっ!!」

 ユキの声に慌てて反応して体を動かす。シュウが元いた場所にガラス片の礫が降り注ぐ。ブレス攻撃だ。
 危ない危ない。ただでさえ『デスペナ』の影響でステータスダウンしているのだから一撃でも食らったら即死亡だ。そんな惨めな姿ユキにだけは絶対見せたくない。

「というかお前―――メインクエは?」
「ついさっき全部終わらせてきたんだよっ!!クオリア………さんのおかげでなっ!!!」
「だから。"クオリア(、、、、)"でいいですってば。"ユキ様"!」
「だったらその"ユキ様(、、、)"ってのもやめてくれ………」

 この何日かメインクエストをやっている間に何かあったのか、数日前に見た二人の関係は劇的に変わっていた。

 ユキは【鏡竜】の尻尾攻撃をジャンプして躱し、そのまま片手剣の斬撃をユキの左手が魔法を描く。氷魔法中級技【突き進む氷槍(バージジャベリン)】が【鏡竜】目掛けて走る。
 魔法は【鏡竜】に着弾するなり凍結させ動きを封じ込めた。
 相変わらずの狂った氷結率だ。とシュウは呆れるのを通り越して笑いすらこみ上げてくる。

「支援―――いきますっ!!!!」
「なっ!?」

 クオリアの凛とした声と共にユキとシュウの体にバフ(有益な効果を持つ補助魔法)がかかる。シュウは驚いたのはバフのことではない。その速さだった。
 彼女、クオリアの「いきます」の声のあと一瞬にしてステータスが上昇させるバフをかけたのだ。これはあまりにも早すぎる。現状存在するバフは単一の物ばかりで一つ一つずつかけていけば軽く一分はかかる。それをものの数秒で………。
 その答えは簡単だった。

「クオリア―――っ!!!」
「わかってます!!」

 クオリアの両手が瞬く間に紋章を描いた。しかも同じの魔法ではなく別々の魔法をだ。
 右手では攻撃魔法、風魔法中級技【突風の軍団(アルメ・ラファル)】を、左手では空中にいるユキを再度ジャンプさせるため足場を作る土魔法上級技【大地の壁(ガイア・ウォール)】を発動させた。
 紋章を書く速度からして相当に『Dex』を振っているんだろうが、そのことよりもその両手での動きに注目した。

「―――"デュアルスペル(二種同時詠唱)"」

 "デュアルスペル"―――右手と左手でまったく違う魔法を詠唱のことをそう呼んでいる。これは練習すれば誰でもできるようになれるがクオリアのような速度で"デュアルスペル"をする魔法使いなんて見たことも聞いたことなかった。
 彼女の『Dex』値が高いのもあるかもしれないが、リアルでもあれに近い速度で描くことができるのだろう。そう思わせるほどに完璧で無駄のないものだった。

 さすがはレベルカンスト魔法剣士と魔法使いだ。例えそれが初見だったとしてもすぐさま回復し、次の行動へと移った。
 そうこう言ってる内に例の範囲ブレスをするHPまで削っていた。そうとも知らずにユキはチャンスとばかりに【鏡竜】に近づこうとしている。例えユキだとしてもあの攻撃は耐えれない。

「ユキ!下がれ―――っ!!!」
「―――大丈夫だよ」

 だがユキは下がろうとはしない。何が大丈夫だよ!!大丈夫じゃないから言ってるのに………。

 とうとう範囲ブレスが発生しようとしている。大きく息を吸い込んだ【鏡竜】はその体を発光させその周囲を"白"一色に染めた。

 発光が終わり、ユキがいた地点を見るもユキの存在はどこにも見当たらなかった。
 まさか―――。

氷剣技(アイシクル)―――ッ!!!激しい氷撃(グラソンフォール)ッ!!!!」

 空からの落下速度をプラスされた振り下ろし、氷魔法剣上級技【氷剣技・激しい氷撃】が【鏡竜】の頭にクリティカルヒットした。
 頭が弱点の【鏡竜】は大きく仰け反り、すぐさま体勢を整えたあと大きく後ろへと距離を取った。

 ユキはナイスアシストとばかりにクオリアに向けてサムズアップを。クオリアはそれを見て一安心していた。
 まさかと思うが今の一瞬で空高くジャンプしたのか?でもどうやって?

「今のは【大地の壁(ガイア・ウォール)】。それと【天へ登る風(ヴァン・アサンシオン)】での飛翔です」
「え………?」

 答えを求めていたシュウにまるで助言でもするかのように隣から声がした。まさかと思うがそれもあんたが………?そのあとの言葉は区切ったように返って来ない。

「大した力をお持ちで………」

 シュウは少し前ユキに言った言葉を思い出して鼻で笑った。

『類は友を呼ぶっていうじゃん?もしかしたらその子、お前に似た大きな力持ってるんじゃね?―――知らんけど』

 まだ無名なのがおかしいくらいだ。コイツはあのアスキラのように通り名とか付くのだろう。―――知らんけど。

 え?ユキ?あいつはよくやってるよ。常にあの【鏡竜】に張り付いてダメージ食らうのもお構いなしに攻め入れる。基本的には常にHPとMPポーションがぶ飲みで本当にやばい時だけクオリアの回復が飛んでくる。
 正直クオリアのアシストが大きすぎて印象が薄い。

 そんなユキにも印象に残る事件が起きた。

 周囲にパキ―――ンッ!!!!と盛大な効果音鳴り響く。

「おいおいおいおい―――ッ!!!!」

 なんとユキの片手剣【ダイヤモンドブレード】が砕けたのだ。そういえば最近ユキの装備を修理したことも触ったことすら記憶に無い。
 もしかして―――俺のせい?いやいや、そんな馬鹿なさすがに装備のメンテナンスくらい他の鍛冶師に頼むだろう―――。頼むはずがない?そんな馬鹿な。
 すると本人も予想外の出来事に困惑するも魔法でタゲだけは維持し、前線から大声をあげた。

「やばいよシュウ!!剣がない!!」
「いや、剣がないってなんだよ。予備の剣はっ!?」
「んなもん持ってるわけないだろっ!!ちょっと前まではタダで修理してくれてたからいらないと思って売った!」
「お前って奴は………」

 もう呆れて何も言えない。そんな都合よく俺が予備の剣を持ってる―――は………ず。
 あった。
 なんかあった。
 アイテムストレージを見ると露天の品が入っている。その中に前ユキが気に入った大剣【ロイヤルオーダー(精霊王の順序)】。大剣とは思えない細い刀身に鍔からナックルガードにかけて赤薔薇の装飾をされている。だがこれはまだ完成ではない。持ち主が付けたい属性を付けて完成になる。だから今やるしかない。都合よく弱い片手剣とかないのがムカつく。
 あぁ~~~あ。結局これをアイツに無料提供するのかと思うとしてやられた気がする。なるほど、あの時ユキが欲しがってた時点で自分でもフラグだったと思ったんだ。さすがチート持ってるだけあるわ~~~。欲しがればいずれ手元に来るってことだろう?叶わないわ~~~。

「ユキっ!!」
「なに!?早くしてくれ!!」

 ユキに一本指を立てシュウは叫んだ。

「一分だ。一分持ちこたえろ」

 一瞬難しそうな顔したのち、『お前を信じるよ』という言葉を感じ取れた。なんか横から殺気を感じたようだが―――き、気のせいだと信じたい。

「さて………行きますか」

 取り出した大剣【ロイヤルオーダー】の詳細ウィンドウを出す。選択肢一番下にある『強化』をタップ。『以下の素材が必要です(以下略)』揃っているので『Yes』を押す。
 『成功率は九〇パーセントです。それでも(以下略)』いいから始まれ!!と『Yes』を押す。

 『合成中~合成中~』

 するとシュウの手元にあった大剣は光を放ち、その色を変えた。

『合成完了、【セルシウスオーダー(氷精霊王の順序)】が完成しました』

 赤薔薇の大剣が青薔薇の大剣に変わった。刀身もなんだか氷のように透き通っている。

「シュウっ!!まだか―――っ!!」
「ちょうど今できたところだ!受け取れチート野郎っ!」

 ユキの隣にできた氷柱へ向けて投げた。シュウ自身『Str』に大きく振っているのもあり勢い良く飛んでいく。しかも綺麗な青の軌道を描いて。
 重く響く金属音と共にそれは真横に突き刺さる。竜はちょうど範囲ブレス中だ。
 ユキは大剣を片手で抜き去る。それと同時に氷柱は下半分を残して崩れていった。
 左右に数回振り回し、ニヤけた表情で『気に入った』と笑顔を向けた。
 能力値的にはユキが使っていた【ダイヤモンドブレード】の等級、ユニークよりもエピックとランクは下がるが剣自身に属性がついているので氷魔法剣や氷魔法のダメージに更なるブーストがかかる。

 範囲ブレスが終わるを見計らい、ユキはその歩みの速度を早めた。剣を勢い良く真横へと移動させ駆けた。
 ブレスが来る!
 尚も全身するユキはそのまま着弾地点を読んで軌道を避ける。次のブレスが来るのと同時にユキは飛翔した。

「ウオオオオオォォォォォォォ―――――――――っ!!!!」

 ユキの咆哮と同時に剣先から青い斬撃が二つ放たれる。氷魔法剣上級中距離技【氷剣技・吹牙雪アイシクル・テンペスト】。
 着弾するなり竜はその体を大きく仰け反らせ怯んだ。結構効いている。
 そのまま接近し氷魔法剣初級全方位技【氷剣技・氷月(アイシクル・サークル)】で円を描き、二連撃【雪】で十字を、四連撃【雪月】で二重十字を放ち、最後のなぎ払いでその巨体を吹き飛ばした。
 まだ入る。左手で詠唱、右手の剣でスキルを走らせる。氷魔法剣上級八連撃【雪月花(ヘルヘイム)】と氷魔法上級技【凍える突風(フロストガスト)】。一ヒットする度に苦痛の悲鳴をあげ、かき消されるように氷結する。
 すべてが終わったときはメタリックシルバーだった鏡型竜の姿は動かぬ氷像と化し、ユキはその大剣をガチャリと背にしまう。ユキはその氷像を一瞥するなり背を見せ、それを合図に氷像は静かに崩れ去るのであった。

「かっこつけやがって………」

 やっと倒すことができた。安心感と疲労が混ざり合いすごく眠い。
 眠い目を擦る。獲得アイテムウィンドウを開きながらユキがシュウを手招きしている。
 なんだよ………。俺は眠―――い………。

 そこでシュウの意識はプツリと途切れ、気づいたときにはすっかりと寝息を立てているのであった。
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