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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 外伝 -鍛冶師な俺とチートなアイツと- ◇◆

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0-2 <依頼。だがそれは真剣>

 撤回、たぶん5話構成。

(2012/09/13)番外編一話から改変しました。
 一週間の露天商売で培った"鍛冶師眼"で装備している格好から大体のレベルと装備しているスキル構成がわかる。といってもスキル構成に限っては【MP回復率上昇】【軽量また重量防具】【根性】【武器】がテンプレになっているのであとは装備を見て属性強化系の防具、武器を見れば残り二つのスキルは自ずと現れてくる。
 シュウの"鍛冶師眼"でその二人のことを見た。

 赤に近いピンク、ルビー色。少しレイヤー気味のナチュラルセミロングの少女。その格好はどう見ても"魔法使い"だろう。布地のローブ系の外装を着込み、魔法ダメージに関係しているステータス"Int"を上昇させる彼女の身長ほどある"ロングワンド"。装備を見た感じ最高性能よりも一つ下というところからこの少女のレベルは五〇~五五の間と予想した。スキル構成は【軽量装備】【根性】【MP回復率上昇】【ワンド】。あとは防具の特性で二つの属性ダメージをあげているところから【光魔法の心得】【火魔法の心得】であることが予想された。
 その横の――――。

「………」
「あ、あの………どうかしましたか?」

 ルビー色の少女よりも頭一つ大きい彼女。
 スカイブルー色の髪にフェミニンショートの髪型。可愛い。
 ルビー色の彼女とは正反対の前衛型の重装備をしていた。綺麗だ。
 重装備といっても男性型のようにガッチリ鉄甲冑で覆われるわけではない。可憐だ。
 女性の重装備はある程度見た目が重視されていて布地のドレスに鉄板を飾るように貼り付けたものでパッと見では【軽量装備】に見えてしまうのだが実際は【重量装備】に値する。彼女の場合は灰地のショートドレスに群青色の鉄板をつけている。素敵だ。

 武器の方は面白いことになっていた。
 【大剣】に【盾】を装備している。レベル四〇キャップ時代に流行った型だ。
 このゲームは装備条件のステータスさえ揃っていればどんな装備も着れる。さらにはステータス補正によりツーハンド系、俗にいう"両手持ち"の武器は要求『Str』値の二倍確保してあれば"片手持ち"が可能となっている。
 なので当時、レベル四〇時代の盾装備をして最前線に立つ"タンカー"達の間では『自身のStr÷2』の装備条件に近い低ランクの両手武器を片手で持つことが主流となっていた。
 理由としては当時の環境では【片手剣】、【片手槌】などの単一スキルだけでは使えるスキルの数が少なくヘイトを稼ぐには回転が悪かった。ならば【両手武器】スキルと【片手武器】スキルを二つ装備してスキルの量で回転をあげた。
 中級スキルまでしか存在してなかった当時とは違い、上級スキルまで開放されている現在の仕様では単一スキルだけでも十分に回る。だからその辺は好みの問題となっている。

 その大剣と盾の娘がこちらに話かけている。

「あ、あの―――………」
「―――っ!?す、すいません。ちょっと惚けてました」
「ップ。なにそれ」

 シュウの眼中になかったルビー色の少女がケタケタと悪戯に笑ってみせた。
 ヤバイ。スカイブルーの髪の騎士様はシュウのもろ好みだ。
 やばいやばい。高鳴る鼓動、火照る肌。なんか視界右下から【状態異常発生!!】とかなんとかエラーはいている。なにこれ?心拍数あがりすぎて身体の異常だと誤作動起きてるのか?
 沈まれシュウよ――――。深呼吸だ。客がいる前だというのに強制ログアウトなんてした日には某匿名掲示板で笑いもんになってしまう。ある意味美味しいが―――って違う違う。

 深く息を吸い、大きく息を吐く。右下で赤く点滅するエラーはなんとか消えたようなので安堵してシュウはもう一度息を吐いた。

「えっと………武器でしたっけ?」
「はい。お願いしたいんです」
「わかりましたっ!!!お任せくださいっ!!!」
「「へえ?」」
「例えどんな武器だろうと"あなた"の為に最高の一本を作ってみせます!!!」

 ガッシリとスカイブルー色の女騎士の両手を両手で包み、キメ顔でシュウは言った。この出会いこそ"運命"そりゃ心拍数の異常でエラーだって吐くさ。だって『恋』ってものは突然なんだからなぁっ!!!

 理由も内容も聞かずに即了承するシュウに二人の美少女は唖然と声を漏らした。
 ドン引きのスカイブルーの女騎士に心配になってきたルビー色の少女はチラリと女騎士を見た。

「あ、えっと―――依頼内容とか聞かなくても………」
「あ、え、えっと―――そうですね………」

 改めて自分のとった行動に恥ずかしくなったシュウは視界右下に出るエラーを右手で払おうとするが視界に表示されているだけで払えないことを忘れ、まるで虫でも払うように手を動かした。

「この人大丈夫かな―――」
「あ、あはは………」



 ◆◇◆◇


 なんとか落ち着いたシュウは露天をしまい、二人の美少女を連れて近場にあったNPCが経営する喫茶店で話をすることとなった。綺麗な女性をこんな道端で立たせるのは紳士としては心が痛む。
 こういった場所はプレイヤーの憩いの場や待ち合わせの場所としてよく使われている。
 ちょうど時刻が一九時に差し掛かっているので人の姿は少なかった。

 店の大きさ的に約二〇〇人が定員の広さで入口近くにカウンター席、その後ろには木製の仕切りで囲まれたソファーとテーブルが置かれている。まるで二一世紀初頭のファミレスのようだ。
 三人は喫茶店の角の一角に座り、シュウの対面に少女二人が腰を下ろした。

「好きな物注文してください。僕はコーヒーで」
「えっと―――もう一九時ですが鍛冶師さんは大丈夫なんですか?」

 かっこつけて飲んだこともないコーヒーを注文したシュウであった。
 それとは別に騎士様は上目遣いでシュウを見て口を開いた。こちらの気も使ってくれる。なんという気配り上手な女性なんだろう。ますますシュウの好感度はお構いなしに加速していった。
 シュウは口元を両手で隠すように組み、その印象を変えた。

「お構いなく。あと僕のことはシュウと呼んでください」
「あ、自己紹介。自己紹介がまだでしたね、私の名前はカルオルティア。カルアと呼んでください。こっちは同じギルメン(ギルドメンバー)のベリールー」
「ベルでいいよっ」
「カルア―――さんか………」

 もう第三者からしたら不気味だろう。口元を隠し、真剣な眼差しでずっとシュウはスカイブルーの騎士、カルアを直視しているのだから。しかも横から見ると鼻の下がすごく伸びていた。
 ついでにスカイブルーの騎士がカルア。ルビー色の魔法使いがベルである。
 さらにドン引きするカルアだった。

「は、はぁ………」
「むっ。それで鍛冶師さん。ベル達武器を作って欲しいの」

 チラリとシュウはベルを一瞥するなり、すぐにカルアに視線を戻し口を動かした。

「武器―――ですか?」
「は、はい。私達どうしても武器を作って欲しいんです」

 完全にシュウがカルアしか興味がないとわかるや、ベルは注文したオレンジジュースを手に持ち、行儀悪くストローに息を送ってブクブクと音を出してそっぽを向いた。

「一週間後に私たちのギルマス(ギルドマスター)の誕生パーティーがあるんです。それで何を贈ろと考えたら入手が難しい"あの"武器を渡そうと思い立ったんです」
「ついでに色んな鍛冶師にも話てるんだけどそいつレア過ぎてどこもお手上げ。いちおう素材が手に入ったら連絡くれるようにはなってるけどね」
「なるほど―――わかりました!!!カルアさんの頼みなら仕方ありません!!!!不肖このシュウが身を裂いてでもその武器を作ってみせます!!!」

 嬉々として立ち上がったシュウはもう一度カルアの手を取り、強く、力強く言うのであった。もう関わるのがめんどくさくなったカルアは乾いた笑いを、完全に気分を悪くしたベルはジュースを飲み干したあともズルズルと音を立てた。
 何を理解したのかわからないがシュウはカルアの気を引くために一生懸命アピールしたつもりでいるらしい。


 ◇◆◇◆



「それじゃあとで依頼書の方送ってください!!期日までに絶対作りますので!!」

 会計を済ませ三人は喫茶店を出ると辺りは真っ暗になっている。所々ついている街灯が足元を照らすも少し先には深い闇に覆われた森が待ち構え、そこから虫の音だけが鳴りその先の見せないままだった。
 いちおう依頼人であるカルアとフレンド登録を済ませるとシュウは大喜びで走り出した。

「本当に大丈夫かな―――?」
「大丈夫じゃないと思う。とりあえず狩り行こ!!狩り!!こういうストレスは狩りでスパーっと行こ、スパーっと!!」

 一人走り去って行くシュウに対してなんとか終わったことでホッとするカルアと、すっかり無視されている自分に苛立ちを隠しきれずにいたベルのため息がこぼれた。
 二人はそれぞれの顔をしてシュウとは反対側の道へと進んだ。

「とりあえずカルア。まだあの武器にこだわるなら明日も他の鍛冶師に頼んでみるか、別のプレゼントを考えるしかないわよ?」

 まだ不機嫌な表情を残すも頭一つ小さいベルは上目遣いにカルアを見た。
 カルアもやっと終わった安心感からふと笑顔がこぼれる。

「そうね。でもあれが一番喜ぶと思うの」
「わ、わかってるわよっ!!カルアのばあーーーかっ!!!」

 不意を突かれたカルアの笑顔に困惑するように暴言を言うベル。
 のほほんと笑っている、が少し気がかりなことを思い出したカルアは後ろ―――シュウが走り去っていった方向を見た。
 あの"武器"はそうやすやす作れる代物じゃない。やすやす引き受けてしまったシュウを心配するカルア。眉をひそめ、もう見えないあの少年の姿が彼女の脳裏を過ぎった。

「カルア~~~っ!!!先に行っちゃうわよっ!!!」
「今行く~~~っ!!!」

 ベルの一言に急かされカルアは急ぎ足でベルの一歩後ろを歩くのであった。
 シュウに春はくるのか―――?

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