挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

27/54

2-19 <変わらない日常。だがそれは変わるもの>

 一章ラストです!!!
 お待たせしましたぁッ!!!!!
「それでまた速攻で帰ってきたわけか」
「………うるさい」

 なんとかギリギリ予選通過することができたアリスはそのままの姿でいると【絶炎(ぜつえん)】である炎真(えんま)に言い寄られ、己の危機と悟るや否や前半戦と同じ形ですぐさまキャラクターチェンジし、ユキの姿でシュウ達の前へと帰ってきたのであった。

「なんかやたらあたし達注目されてない?」
「そりゃそうだろ。予選上位通過者二名+通り名持ち二人ですぜ?いやでも注目しますって」

 シュウの言う通りで、この場にいる五人のうち三人はすでに前から有名な三人、全ての魔法を統べる最強の魔道師、【魔道姫(まどうき)】であるクオリア。巷で有名なレア装備を扱う鍛冶屋のシュウ。そして我らが【絶氷(ぜっひょう)】のユキである。
 さらに言えば前半戦でクオリアをパートナーにして色々と目立っていたラファ。後半戦では【最強】の通り名を持つアスキラと堂々の一位を取ったシャルナの姿がそこにあったのだから目立つのは無理もない話だ。
 もう色々と疲れきったユキは会場の壁に寄りかかってクタクタだと言わんばかりに項垂れていた。

「あら?」
「どうかした?【魔道姫】」

 なにやら女性陣二人が何かに反応している。だが疲れきっているユキにはもう色々と関わりたくない。

「ここにおったか」

 なんかすんげー聞いたことある口調と声であった。ユキは振り返り当たっていた自分の考えに吐き気すら感じた。

「「っげ」」

 なぜかその本人とユキとでハモった。
 その本人っていうのもさきほどユキ、もっといアリスのペアであった【絶炎】の炎真であった。

「誰こいつ?」
「………」
「アリスのパートナー」
「あぁ。はいはい」

 ユキが反応しないことでシュウの質問はラファが答える形となった。
 ユキはめんどくさいのが来たと眉をひそめ、炎真は嫌なものでも見たかのように同じ顔をしている。
 何が面白いのか満面の笑みで笑うクオリアが口を開く。

「二人はお知り合いですかぁ?」
「あぁ」「全然」

 これに対してもまた二人は驚いていた。
 "ユキ"としては彼、炎真のことは全くと言っていいほど知らない。現にさきの後半戦が始まるまで彼のことを知らなかったのだから。つまりはユキが出した答えは「全然」である。
 対して炎真は肯定の「あぁ」である。

「貴様っ………同じ"絶"付きなのに"絶"付き最強である俺を知らないと言うのか!!」

 今の炎真の台詞にラファ、シュウ、クオリアの三人が吹き出した。詳しく知らないようシャルナはポカンと置き去りにされ、周囲を観察するしかなかった。ユキはというともう呆れて何も言えない状態であった。

「あぁ。はいはい最強の"絶"付きの【絶炎】さんがなんの用なんですか?」

 ユキが【絶炎】という単語出したことに気を許したのか「やはり知っているではないか」と鼻を鳴らした。それを聞いてユキは心の辞書に【絶炎】という単語に『相手にしてはいけない奴』という言葉を書き、さらに"要重要"と赤印で付け足した。

「えっと―――その―――」

 急に歯切れが悪くなった炎真に対して他の四人が首を傾げる。なぜデジャヴるユキは嫌な予感しかない。いつまでもそうしているものでシュウが見かねて口を開いた。

「はっきりしろよ。男なら喋ろ」
「あ、はいっ!!アリスさんは………どこに?」

 全員一斉にユキに視線が集中した。
 もう嫌だ。今日は厄日だ。頭を抱えるユキ。

「アリス?あの子なら………用事があるとかでさっき落ちたよ?」
「そ、そうか。な、なるほどな!ふぅ~~ん―――」

 炎真は『アリス』という単語を聞いて反応示したのち、用事があると聞いた瞬間炎真は視線を逸らした。当の本人はなんだこの数分前と同じ光景はと頭を抱えずにはいられなかった。

「じゃ、じゃあ………その………言伝を伝えてもらえるか?」
「そういうのは直接本人に言った方がいいですよぉ~~?」

 これまた嫌味たっぷりに言うクオリア。言い終えると同時にさっきよりも何倍も嫌な笑顔でユキを見た。
 止めてくださいクオリアさん………僕のHPは既にゼロです。
 それに応えるようにシュウが"また"同じセリフを吐こうとしていることに気がつき、ハッと顔をあげた。

「そうそう。基本ゴールデンタイムとか俺のみ―――」
「おっと、手が滑った」

 すぐさま左手で背に担いだ大剣を抜き去り、シュウの足元に大剣が数センチずれて突き刺さる。

「えっと、ごめんシュウ。続きいいよ」

 笑顔でユキは言った。目だけは笑わず「続き喋ってみろよ。次は当てる」と目で脅した。

「い、いや………そのうち帰ってくるから。待って―――みたらぁ?」
「え?帰ってくる―――」
「なんか言った?」

 ユキの指先には【光り輝く氷風ダイヤモンド・テンペスト】の紋章を表示し、あとは指先指定するだけで発動できる状態になっていた。
 それを見かねた四人はようやく理解してくれたようで。炎真に誤情報を教え、早々に帰っていただくことにしたのであった。

「はぁ~~~………やっといなくなったか」
「んで。どしたの?」
「今疲れてるからまた今度でもいいかな?」

 その場に座り込むユキを心配してラファがしゃがみこんだ。あまり話したくない内容でもあるので"また今度"ということにしてもらうことで納得してもらえた。
 それに何か察したのかラファは「よしよし」とユキの頭を撫でるのであった。

「そっか。お疲れ様"ユキ"」
「む」
「………」
「ほぉ………」

 眉を寄せるクオリアに、口笛を吹くシュウ。
 初めて彼の名前を口にしたことにより、ラファはハッと自らの落ち度に気づき。「な、なによ………なんか変なこと言った?」と、顔を赤く染めながらラファは立ち上がるとそれを見かねたシャルナがラファを抱きしめてユキからラファを遠ざけた。

「ちょ、ちょっとシャルナ!」
「【絶氷】にはあげない」
「は、はははは………」

 もう色々と疲れたよ。と乾いた笑いがその場に残るのであった。


 ◆◇◆◇


 バタリと周囲の照明が一斉に消える。あと少し長引けば寝てしまいそうだと、ユキの頭はグラグラと舟を漕いでいた。

『お待たせしましたぁ!!それでは閉会式となります。引き続きGMのマツ×三がお送りいたします』

 軽快なBGMと同時に壇上の上に現れるGMを拍手で迎える音でユキは目をこすりながら起き上がった。

『本日のイベントはここまでとなり、最終予選は一ヶ月後となります。予選通過しました参加者の皆様への告知は後日改めてこちらからメールで送らせていただきます』

 いちおう落ちて寝る予定であったが最後の閉会式で何かあったら損なので残っていたユキであった。正直シュウ達がいたからいらなかったかもと後悔しながら欠伸を堪えた。

『それでは最後に本日主催してくださいました。ワンダーランド代表取締役、神城 桐生(かみしろ きりゅう)様からお言葉を頂戴いたします』

「っ!?」
「………」
「ラファ?」
「ん?」

 ラファがどうかしたのか?他の三人がラファを気にかけているようだ。どうかしたのだろうか?
 ラファの顔を覗くと、今までに見たことのないほどに目を大きく見開き、顔を歪め、強く興奮しているようだった。
 壇上ではこのゲームでは珍しく現実的なスーツ姿をした男性アバターが現れた。あれが"神城 桐生"なのであろう。GMのマツ×三からマイクを受け取ると同時に隣にいたラファが腰に携えた双剣を抜いた。



「神城ぉ……………神城ぉっ!!!!きりゅううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ―――――――――――――――――――っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




 怒り狂ったラファは会場中に聞こえんばかりの声で叫び、壇上へ向けて駆けた。
 何が起きたのわからないでいる周りを置き去りに、ラファという突風は障害物を排除するように「どけえええぇぇぇぇぇぇぇ――――ッ!!!!!!」と双剣を振って進路を作る。

『え、え?』
「………」

 壇上の上でも何が起きたのかわからないようでGMのマツ×三は予定外の出来事に慌て、壇上にあがっている神城は目を細めてそちらへ向かっていくラファを見ていた。

「かみしろおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――ッ!!!!!!!!!」

 とうとう壇上までたどり着くとラファは跳躍し、神城めがけてその剣先を向けた。
 だが。

「ああッ―――ッ!?」

 バリアでも張っていたのか。見えない壁にラファの攻撃は弾かれ、その場に叩きつけられ、転がるようにして起き上がった。

「ハァハァハァ………」

 全力疾走したラファは壇上にいる神城を見据え、きつく睨みつける。
 事態をようやく理解した神城は手を合わせて何か頷いた。

「その声―――なるほど」
「神城桐生………」
「このオーディションに参加していたんですね。いやはや、驚いた」
「神城ぉッ!!!!お前だけ………お前だけは絶対ッ!!!!!」
「フフフ………せいぜい頑張ってください。影ながら応援してますよ」
「お前だけは―――お前だけは絶対この手で―――ッ!!!!!」

 周りを見渡せばザワつき、イベントの閉会式とはとてもじゃないが言える状況ではなかった。
 止めるべきなのだろうか?
 ユキは見渡していた視線をラファに向ける。
 怒りに狂い、さきほどまで見せていた綺麗な顔立ちはその怒れた顔で鬼気迫るモノへと変貌している。
 正直言っていつものラファを知っている自分として彼女のあの姿は恐ろしく感じた。

「早くあの子を止めろッ!!」

 すかさず左右から現れたファンタジックな格好をしたスタッフがラファを止めるために駆けつける。
 それを見て慌ててユキとシャルナが駆けつこうと踏み出そうとするのだが―――。

「クオリア―――」
「【魔道姫】―――どいてッ!!」
「大丈夫ですよ。むしろ彼女のためにも行かないであげてください」

 散々暴れたラファは「はなせッ!!!!どけろおおおォォォ――――ッ!!!!!」と奇声をあげるも数名のスタッフに押さえつけられ、そのまま数名のスタッフと一緒に会場の外へと運ばれた。

「カミシロオオオオォォォォォォ――――――――ッ!!!!!!!!!!!!!絶対、絶対殺してやるからなあああぁぁぁ―――――ッ!!!!!!」

 静まり返った会場に物騒な言葉が木霊し、会場をさらに複雑な雰囲気へと変える。
 その雰囲気からイベントを早く終わらせるため、GMマツ×三は口を開いて声出した。

『え、えっと………それでは本日のイベントは以上で終了となります。お疲れ様でしたぁ~~~!!!!!』

 なんとも締まらない終わりでこうして長い一日は終わった。
 ザワつきと同時に各自出口に動くものや、さきほどの事態に興味を惹かれるものと千差万別であった。
 うまく事態を飲み込めていないラファの知人達はどうすることもできず、ただただラファが消えた出口を黙て見つめることしかできなかった。


 ◇◆◇◆


「よろしいのですかぁ?お咎めなしで」

 裏のスタッフルームにて真っ暗な空間に二人の男の話声とカツカツと鳴らす靴の音が反響していた。

「いいじゃないですか。結果的にはイベント自体は良好。最後のもあれはあれでウケたみたいですし」
「ですが神城社長の命云々と言ってましたが―――」
「この業界で命を狙われることなんてしょっちゅうですよ。私自身少々手荒なこともしてますしねぇ」

 ちょうど通った唯一の光り、防火用の赤ランプが神城社長の口元に照らされた。
 笑っている―――?あんな物騒なことがあって?

「せめてアカウント停止くらいは―――」
「面白いじゃないですか。主催者の命を狙う歌姫。というのもある意味ファンタジーですよ、フフフ………」

 分かってはいたがこいつはイカれているとスタッフは足を止めた。
 スタッフの彼が流す汗は何を意味しているのか本人にもわからなかった。
 それはこれからのイベントに対する不安なのか、神城社長への恐れなのか………それは誰にもわからなかった。


 ◆◇◆◇


「こんにちはッ!」
「「「「………」」」」
「あれ?どしたのみんな?あたしの顔に何かついてる?」

 あんなことがあったもんだからラファはアカウント停止処分や、心境からINすることはないのではと思ったが次の日何食わぬ顔でシュウの店、『ヴァルカン』に顔を出してその場にいた四人全員驚かずにはいられなかった。

 ラファはシャルナが座る横長のソファーに飛びつき、シャルナにじゃれだした。その表情はいつもと変わらない。むしろ不思議なくらいにいつものラファであった。
 色々と疑問に残るところはあるが、変化しないのも俺たちの日常であり、非日常もまた変化してすぎていく。
 何事もないという不安を隠しきれずにユキとシュウは彼女を見つめた。
 そんな不安をものともせずに攻める不安をユキはすっかり忘れているのであった。

「そういえばユキ様。約束覚えてますかぁ~~?」
「え、約束ってナンデスカ?クオリア様」
「フフ。冗談がお上手ですね。"なんでも一つお願いきいてくれる"約束じゃないですか」

 アァ。ソンナコトモ約束シマシタネ。

 テルプのことや、【絶炎】のこと、最後にラファのことがあってすっかり忘れていたユキであった。
 飲み込めていないシュウは「なになに。何の話?」と野次馬根性で食いつくのであったがクオリアの一笑顔、もっとい殺意を込めた笑顔に踵を返して「さぁ~~~って。今日も俺はトンカチを振るぞ~~~」と片腕をグルグルと回して作業場に戻って行ってしまった。親友カムバアアアァァァァァァ――――ック!!!!!

 その助けを乞うユキに対して逃しませんとガッチリと肩を掴んだクオリアは笑顔のまま言葉を続けた。

「それでは今週の土曜日、貴方様のおうちへお迎えに向かいます」
「迎えって………なんで俺の家を―――」
「さぁ?なぜでしょうかぁ?」

 フフフ………と不敵に笑うクオリアの表情にダラダラと汗を流すしかなかった。
 ならばその前に逃げ出して―――。

「逃げるとか。考えない方が身のためですよ?私、約束破る人にはお仕置きをしないと済まない性分ですからぁ」

 お仕置きって………ナニサレルノ?

「あ。それと着替えとかは必要ありませんから」
「え………つまりそれって―――」
「こちらの方で準備は済ませました。大変でしたよぉ~~~ユキ様の着るサイズや好みを調べるの」
「えっと………あの………つまりそれって…………」

 どどどどどどどど、どういうことなのでしょうか?

「フフフ………どうなんでしょうねぇ~~~?」

 あれ?これはまさか………本当に一回は一回の"一生監禁生活"ってやつですか?

「ん?どしたのユキ。顔青ざめてるけど」
「た、助け―――」
「なんでもないですよねぇ?―――ユ・キ・サ・マ?」
「………ハイ。ナンデモナイデス」
「??………変なユキ」

 訂正。
 変化するのも俺たちの日常であり、非日常もまた変わらずにいくのであった。




 一章 - 完 -


 二章へ続く。
 はい。色々とあれであれな一章でした。
 長かった。我ながら絶炎が動かしづらくて書いてて辛かったです。

 このラストの話は前々から考えていたものだったので、2-18を書きおえた段階で2、3時間で書き終えました。

 このラファの話は本編の方でしっかり組み込んでくものなので期待して待っていてください。または予想して「~~なのではないのかぁ!!」ババアン!!というコメントも大いに歓迎いたします!

 次回からは箸休めとして番外編を挟みたいと思います。
 毎章終わりのあとはサブキャラをスポットに当てた番外編を予定しておりますので乞うご期待ください!!



+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ