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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

26/54

2-18 <後半戦終了。だがそれは早く帰りたい>

 後半戦終了です。
 何マップか進むと巣に当たったようだ。
 そこは"炎王竜(モトグニル)"同様にマップの端であり半身を水に覆われた場所であり、所々深い場所の存在を見せた。

「あれ?」

 さっきまで見た翡翠(ひすい)色の竜は所変わって柘榴(ざくろ)色の赤いウロコの竜が横たわって存在していた。

 ……
 ………
 …………

 ―――柘榴色!?

 そういえば中層のレベル帯で一定のダメージを与えることによって体の色を変えたMobがいたことを思い出す。
 つまりはこれがHPが半分になった証?いや、そもそもさきほど逃げたとき体の色を変えていなかった。どういうことだ?まさかマルチエリアで他のプレイヤーが………?それこそありえない話だ。
 ズカズカと歩み寄ってもかの竜からは起きる気配がない。

「もしかして………瀕死?」

 ファーストコンタクト時にHPを半分まで持っていき今みたいな状況になった場合、警戒して近寄るとすぐ起きてしまうものだ。
 だが瀕死時は違う。無くなってしまった体力を回復するため一発攻撃を喰らうまで深く眠り、HPが半分まで回復するまで起きることはない。(ついでに寝ているときに攻撃を喰らうと二倍ダメージになる。)

「さすがは俺様だ。ガッハッハッハ!!見たかアリス殿!!この【絶炎(ぜつえん)】にかかればこんな竜とて造作もないわっ!!ガッハッハッハ!!」
「は、は、ははは………」

 まったくこの【絶炎(ぜつえん)】さんは―――。
 乾いた笑いを浮かべながらアリスは炎真(えんま)を見た。すると炎真は剣を抜き、そのまま竜目掛けて歩き出した。

「どれ、速攻で終わらせるために止めと行こうか」
「ちょ、ちょっと待―――」

 待って、先にユニゾンして弱点にしてからでもいいんじゃないだろうか。
 そう提案しようと声をかけるも、それは音をたてて彼の前からなくなった。

「はあああぁぁぁぁぁぁ―――っ!!!!」
「あ~~、あぁ………」

 何も考えてないんだろう。最大威力の技である片手剣最上級技【月華・幻(げっか・まぼろし)】を放つ。氷魔法剣最上級技【夢幻の雪月花ファンタズム・ヘルヘイム】と同じ一六連撃の大技ではあるのだがそれは一六回の合計ダメージの話だ。二倍ダメージは最初の一撃にしか適用されないので一撃が重い技をしたほうがいい。

 もうやだ。いろんな意味で帰りたい。
 とりあえずユニゾンしよう。今度こそ炎属性のユニゾンをすればこの瀕死の竜くらいなら余裕であろう。

炎真(えんま)さん。もう一度"ユニゾン"します。そのためにも僕と炎真さん自身に支援魔法の【炎属性付与ファイヤーエンチャント】をお願いします」
「ん?必要あるのか?」
「はい。実は最初にやったユニゾン、あれは完璧ではないんです。完璧にするためには支援魔法でさらに属性値を底上げしないといけません」

 これは嘘だ。最初のユニゾンの時点で二人の属性値が『アリスの氷>炎真の炎』だったためそうなったのだと理解するしかない。なぜアリスのが属性値が高いのかというとこの装備一式につけたチートエンチャントの性なのだとこの時ばかりはエンチャントしてしまったことを後悔したアリスである。
 普段ならば装備を外して属性値をさげてもいいのだが、"装備ロック"の性であと四日間は外せないことになっている。
 ならば外せれる武器のマイクを外し、支援魔法で炎属性の属性値を底上げしてくれてようやくアリスの属性値を越すであろうという計算である。

「わかった。だが少々慣れておらんので―――」
「きゃっ!?」

 "海王竜(オケアルス)"に背を向けて話いたことを思い出した。会話の最中でもお構いなしに海王竜のブレス攻撃、水弾が二人を狙ってきた。それからアリスを助けるようにアリスを抱えて炎真は横にステップする。もう女の子言葉が普通に出てしまうことに少し顔を赤く染め、もう大丈夫だとわかるとアリスを下ろした。

「えっと………あ、ありがとうございます」

 慌てふためいている場合ではない。アリスはすぐさま目の色を変え、支援魔法を確認したのち「それじゃ―――いきます」と【属性の斉唱エレメンタル・ユニゾン】を歌った。
 歌いきると同時に目を開け、すぐさま頭上を覗くと、どうやら成功したようで赤い業火の球体が浮いてることがわかる。
 それは術者へ応えるように拡散する。

「これが………火のユニゾン………」

 周りの水は全て蒸発した。それはここは炎で覆われた星にでもなったかのように水というものを全否定して彼ら二人を中心に水蒸気と共に姿を消した。
 問題の"海王竜"自身も全身を燃やし、赤いそのウロコを黒くくすぶらせた。

「これならいけますよ炎真さん!―――っ!?」

 マジマジと真剣な目でアリスを見つめる炎真がいた。
 なんだろう。嫌な予感しかしない。

「アリス殿。いや、アリスさん。僕と―――つ、ぐへぁっ!!」
「ぐへぁ?―――ひゃぁっ!!………炎真さん?………炎真さん!!しっかりしてください!!」

 もたれかかってくる炎真から避け、受身も取らず倒れる炎真に声をかけると返事がない。ただの気絶者のようだ。
 背中が水にでも浸かったかのようにグシャリと濡れている―――濡れている?

「これって………もしかしてブレス攻撃?………ひゃぁっ!?」

 どうやらブレス攻撃のようで水弾がアリスの頭上をかすめていった。すぐさまアリスはそこから離れ、炎真から離れながら右手で光属性初級回復魔法である【小さな癒し(ヒールライト)】を詠唱した。さすがに炎真自身カンストしてるだけあってHPが高く、一回の【小さな癒し(ヒールライト)】では一割の半分も回復しなかった。
 その回復行動がヘイトを稼いだようで"海王竜"のタゲがアリスに向かった。
 回避行動をとりながら何十回目かの【小さな癒し(ヒールライト)】でようやく炎真を安全圏までHPを回復させることができた。おかげで光魔法の経験値を稼げてホクホクである。―――とか言ってる場合ではないとアリスは首を振り、この状況の打開策を考えた。
 このまま攻撃しようにもアリスの攻撃手段は初期魔法くらいしか打てない。たぶんこの【属性の斉唱エレメンタル・ユニゾン】の効果時間全てを使っても倒すことは難しい。それに【属性の斉唱エレメンタル・ユニゾン】のクールタイム(再使用時間)が一五分と待ってる時間なんてない。
 正直言うと時間も結構ギリギリだっていうのもある。すでにタイムアタックが開始して四五分が経過していて、トップ集団はすでにクリアしてもう予選通過の五〇名も大詰めに入ってる頃合だ。肝心の【絶炎】自体いつ起きるかわからないし、彼の行動はアリスの予想を斜め上にいってしまってあまり期待したくないというのが現状だ。
 つまりは、自分の手で道を切り開くしかない。

「じゃ、どうする。アリス―――。あっ!!」

 周囲に熱風が、赤いきらめきが彼の視界を占領した。
 西洋の両刃刀の形状ではあるが鍔が日本刀のように丸い鍔を、樋の装飾が刀身の半分よりも上向きに施され赤い炎の峰。そのデザインから刀に見える両刃刀の剣【炎帝のツルギ】。
 すぐさま彼の傍で横たわるその伝説級の武器を拾い、そのまま"海王竜"に斬り付けた。

 ピィアアアァァァァァァ―――ッ!!

 さすがに弱点になってるだけあってよく効くし、アリスの初級魔法よりもダメージが通る。これならば―――。
 要求ステータスが足りないため物凄く重く、今のままだと一振りが限界だった。すぐさま支援系の歌スキルの音符を見る。ステータス上昇系のスキルを全部歌い、ユキほどではないがさっきほどよりマシなステータスになっていることがわかる。
 片手剣を両手で正眼に構え、チラリと横で倒れる炎真を覗いた。まだ眠っているようだ。

「―――行くぞっ!!」

 スキルスロットに片手剣スキルが入ってないのでスキルを使うことができない。だがしかしスキルは再現するくらいはできる。もう一年も付き合ってきたものだ。動作が体にしみついているのでシステムアシストなしでもできる。
 一層柄の握りを強くし、翔けた。
 "海王竜"の右腕があがる。ストレート!
 クルリと逆時計周りで体を回し、その回転力を利用する。片手剣初級全方位技【円月(えんげつ)】で腕と胴を切り裂く。左フックを警戒してすぐさまバックステップすると案の定フックという名の捕獲の左腕が掠りヒヤリと頬を強張らせた。
 今の掠りだけで"HP:1300"という数値が”HP:347”という数値にまで減っていた。一撃が当たったらどうなるのだろうか。想像するだけでも怖い。
 視界左側に存在する支援系の効果時間、それにユニゾンの効果時間を確認しつつMP的に最後の【小さな癒し(ヒールライト)】で自身のHPを全快させた。
 ブレスの予備動作に反応して体が回避の動作に移ろうとするがかの竜はむせるように動作をやめる。

「っ!?」

 今ので直感する。あと数撃で倒せる。
 アリスは見よう見まねの攻撃。かの竜に突貫しつつ、左手で受け皿である三角を。右手で握る剣の先でVを書き完成した紋章を縦に切り裂く。成功したのかわからないが紋章は綺麗に粒子を舞って破壊される。
 システムアシストがないのでかなりの接近になる。片手剣上級中距離技【飛牙影(ひえい)】を、上下ニ連撃を放った………。が、やばい。―――浅いっ!!
 スキルもどきを打った瞬間に"海王竜"は少し後ろに下がり、さっきまで当たると"海王竜"は仰け反り、アリスに回避する時間を与えてくれていたのだが………それがないのであれば。
 アリスはすぐさま防御の姿勢をとる。剣の腹を前面に腕を強くクロスさせて少しでもダメージを減らすために後ろに飛んだ。

 それの案が功を奏したのか少し強く衝撃を前面で受け、地面に手と足をつけ滑りながらなんとかHPがあることが確認取れた。ギリギリ"10"と残っている。
 運がいい。スロットに【根性】のスキルが入っているなら安心していられたのだろうが、どうせ後方支援型の魔法使いならいらないだろうと思っていたのがいまさら後悔していた。
 すぐさま回復しようとするのだがMPが―――。

 あ、―――終わった。

「【赤く燃えゆる業火(ガーネット・バーン)】!!!!!!」

 赤い結界を竜を囲み、その囲い埋め尽くさんばかりに火柱が下から上へと燃え上がった。炎魔法最上級魔法【赤く燃えゆる業火(ガーネット・バーン)】。最上級の一二〇ヒットを終えると、HPをゼロにしたのだろう。"海王竜"は俯きで倒れ、アリスもペタンと腰を下した。

「いやぁ~~恥ずかしいところを見せてしまったなアリス殿。【絶炎】の炎真。ただいま復活した!!して、"海王竜"は?」

 もうこの"絶"付きはよくわからない。とアリスは堪えることを忘れて声をあげて笑っていたのであった。



 アリス&炎真 ペア。
 二次予選通過順位 47位。

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