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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

24/54

2-16 <絶炎。だがそれは本気>

「はあああぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!」

 かの竜、"海王竜-オケアルス-"が上半身しか現していないことをいいことに彼、【絶炎(ぜつえん)】こと、炎真(えんま)は旋回しつつ首周りを切りつけた。

 ピィアアアァァァァァァ―――ッ!!

 その部位が弱点だったのか海王竜は大きく体を仰け反りその鳥のような甲高い声で周囲を木霊させた。
 炎真はその横顔を悦に浸らせ握る剣をさらに力を込め走る。海王竜(オケアルス)はその長い首で器用にアイスリンクをつばむようにトカゲの口をぶつける。それを危なげに交わしながら炎真は左手で炎の受け皿である三角を描き、右手に握った片手剣の剣先で受け皿の中に紋章を書いた。

「ッ!?」
炎剣技・噴牙火フレイム・イラプションッ!!」

 完成した赤い紋章を縦に切り裂き、紋章はガラス塊が砕かれた破砕音のSEを鳴らし、さらにはその斬りつけたことによりキラキラと煌びやかなな粒子を散らして剣に吸収させた。
 剣を上下に大きく二振りする。淡い赤のライトエフェクトを発した剣撃がかの竜に切りつけ爆炎が彼の周囲を巻き起こした。

 何かおかしい。
 威力があがった―――?スキルモーション自体は片手剣上級中距離技【飛牙影(ひえい)】と同じであり、それの氷版である氷魔法剣上級中距離技【氷剣技・吹牙雪アイシクル・テンペスト】ともモーションは一緒であったことから、これの炎版であることを促した。だが明らかにユキのよりも"キレ"があった。
 それは初めて見る詠唱の仕方。前工程である剣先での詠唱方法からアリスは"詠唱した属性魔法を武器に乗せて技の威力をあげる"やり方だと直感した。
 これとはやり方は違うが同じように"詠唱の二度書き"があり詠唱待機時間までに紋章を重ねて詠唱する度に魔法の威力をあげるやり方も存在する。それらの裏技的なやり方は広く一般化されており、むしろ知らない彼は異端であった。そもそもコミュニケーション能力が乏しい彼には最近のパーティーでの流行りやテンプレなど全然知らないし、そういったテクニックも知らなかったので無理もなかった。そんなこともせずに戦える彼の装備がチートなのだと彼はいまだにわかっていない。
 他のVRMMOがどんなものか知らないアリスではあるが、幼馴染であるシュウの言葉を思い出す限りではこの指での魔法詠唱システムはまだどこもやっていないこのゲーム独自のシステムのためまだ俺たちプレイヤーが知らない未知なところが多いと言っていたことを思い出す。
 確かにテクニックとか裏技的なものがあってもおかしくはない。一度彼はクオリアの魔法合成を真似たことがあった。結論から言えばやはりあれは【魔道士(まどうし)の心得】のスキルだと結論づけざるおえないのだが、実は裏技で自分でもできるんじゃないか?とそう思わさせ、またそういったものがあってもおかしくはないとは前々から思っていたのだ。
 アリスはなるほど。と氷解した―――【絶炎】なだけに。

 それでもこの状況は芳しくはなかい。
 この場にいるのだから彼、炎真自身トッププレイヤーであることはわかるのだが、かの竜が【炎属性:弱点】になっているのではなく【氷属性:弱点】になっており、【炎属性:耐性】になっているのが問題だ。足場があれなのでさきほどよりはマシではあると思うがこの"ユニゾン"も完璧ではない。

「うぉ―――。うわあああぁぁぁぁぁぁ―――っ!!」

 どんなものでも効果時間は設定されている。永続的に起こるものなんてどんなMMOにもないことくらいは彼でも知っている。
 時間にして約三分。まるでさっきまでの空間が幻想であったかのようにパタリと消え、つまりはドボン!と音を立ててそのまま彼とかの竜は水面に落とされたのだった。

 炎真はまた柵を乗り越え、周囲を水浸しにする。つい先ほど見たような光景に呆れるアリスを余所に彼は勢いよく体を乗り出した。

「見たかアリス殿!この炎真の勇士を!」
「あ、あ、あははは………」

 アリス自身どうしたらいいのかわからないもので乾いた笑いを零すも、なにやら熱意ある視線が嫌に伝わってくる。
 そのままアリスの手を掴む炎真。
 え、なにこれ………まさか。ははは………まさか―――。

「そ、それよりも………Mobは………?」

 必死になって話を逸らした。このまま押し倒されたりしたらたまったもんじゃない。

「あぁ。奴ならどこかへ逃げてしまった。どうやらHPを半分にしたようで巣に逃げてしまったようじゃなっ!ガッハッハッハ」
「そ、それはよ、よかったです………」

 アリスはもう一度空笑いをするのであった。


 ◆◇◆◇


 しかし自分としてはラッキーなことこの上なかった。
 知り合い経由からこのイベントに誘われ、さらには"女の子と親しくなれる"と聞いては黙ってはおけなかった。
 確かにゲーム内では沢山の女の子キャラを見かけるが大概はネカマ(ネットおかまの略称)で、中身は男ですっていうのがオチだ。話しかけてみたらもろ男みたいな声だったり、ボイスチェンジャー使ってまでやってる奴を見かけた際には「必死乙www」と草つけて言ってやりたい気分だ。
 しかしこのイベントの問題点は"国籍、年齢、性別問わず誰でも参加できる"という点だ。国籍、年齢は―――行き過ぎなければ問題ない。自分でもストライクゾーンは広いほうだと自負しているつもりだ。しかし問題なのは"性別"だ。他のVRMMOだと本来の性別とは違う性別を禁止しているところもある。それは長時間異性のアバターを使用すると、精神的、肉体的に悪影響が起きるという眉唾物を信じているものとされている。実際問題は個人差の幅が大きいのでそう言われているのだ。
 そういうのもあって今回のイベントは期待半分、諦め半分といったところなんだが………。

 当りだろ。

 銀髪でふわっとウエーブのかかったロングヘア。垂れ目で赤茶色の瞳。小柄だがしっかりと女性という特徴は出ている。なんとも男の好みをわかってらっしゃる。と自分の好みドンピシャな女の子アバターがパートナーとなったときはもうロールとか忘れて素を出しそうになった。危ない危ないと自分をなだめ、いつもの大らかな騎士風の男をロールした。
 しかもその子、アリスはとても可愛かいらしかった。声もさることながら一番は仕草だろう。緊張しているのだろうか?やたらオドオドとした仕草がとても心を揺らし、守ってあげたい!という気にさせてしまう。

 新モンスター相手というのに少し不安もあったが、彼女の前では立派な騎士をしなくては。好感度をあげるのはどの恋愛ゲームでもリアルの恋愛でも大事だ。少しずつあげていけばこのイベントが終わったころには………ガハハ。
 だから言ってやったのだよ。

「見たかアリス殿!この炎真の勇士を!」
「あ、あ、あははは………」

 彼女のレベルは1。自分のレベルはカンストの99。たぶん彼女のステータス的には何が起きたのかわからないだろうが生で見るトッププレイヤーの戦闘ならコロッといってしまうに違いない。

「ほ、ほら。逃げたのなら追いませんか?いちおうタイムアタックでもありますから」
「ふむ―――そういえばそうだったのぉ。どれ―――」

 そう言って俺は立ち上がり、握った彼女の手を引いて立ち上がらせる。無論、勢いと力強くだ。

「っ!?―――キャッ!」

 目論み通り、彼女の体を強く引いてしまったもので抱きしめる形にとなる。役得役得………ガハハ。
 アリスは視線を逸らし、体を縮めて俺の腕の中にいた。見せる頬が赤く染まりさらに笑みがこぼれた。彼女は「す、すいません………」と言ってすぐさま離れしまい、危うく舌打ちがこぼれそうになるのをこらえる。

「いやいや、あまりにも軽いもので強く引いてしまった。すまんすまん。ガッハッハッハッ!!」

 嘘ではない。うん。

「それでは行こうか」

 と彼女に手をさし伸ばした。少女は小さく「え………」とこぼすが俺への好感度は結構あがってるはずだ。きっと差し出した手の意図に気づいて握ってくれるだろう。まさかリアルでは味わえなかった女の子とお手てつないでどこかへ行くというものが叶うとは―――。
 彼女はこちらの意図に気づいたのか一瞬目が合ったがすぐさまその視線を逸らし、困ったような笑顔でまた視線があった。

「こ、これで―――いいですか?」

 彼女がしたのはこちらの手ではなく、赤いロングコート、【炎属性ダメージ上昇】のステータス効果が付いた【外装: 紅竜王(こうりゅうおう)のロングコート】の袖を掴んだのだ。
 ちょっとこれは―――。いや、むしろアリだ。
 そうだよな。いきなり手を繋ぐなんてレベルの高いことはできない。だから袖を掴むとは………この子わかってる。むしろこんな子をパートナーにしてくれてありがとう。神様。
 もう自分の中ではこの子と出会えたのは"運命"であり、きっと自分と結ばれる"運命"なのだと勝手に結論ずけてしまっていた。

「え、炎真………さん?」
「アリスさん!絶対あなたを歌姫にさせてみせます!」

 やばい。素が出てしまった。
 告白してないだけまだマシかと一息ついて彼女を見つめると。さっきまでと一緒な困ったような笑顔で「あ、ありがとうございます」と言った。
 やばい。本気になりそうだ。



 そんなアリスのことをよくわかっていない炎真であった。
 つまりはアリスもヒロインになるってことでおk?

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