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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

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2-15 <ユニゾン。だがそれは不思議?>

 絶炎が動かしずらい。
「だめだ。無理だわ」

 彼、【絶炎(ぜつえん)】こと炎真(えんま)は柵を乗り越え、あらわにした姿と同時に大量の水がその場に溢れた。水は地面に広がるなり蒸発したかのように一瞬にして消え、ずぶ濡れの姿も同時に乾いてしまった。その様子を見ていたアリスはさすがはバーチャルと思わずにはいられなかった。

「あ、あの………何が無理なんですか?」

 落胆する彼にそもそもの問題を聞いてみた。これでもさきほどの前半戦で戦った"自称"トッププレイヤーだ。とアリスはまだ人見知りしてドキドキとする胸に手を当てた。緊張して少し声が震えているのがわかる。
 それをどう勘違いしたのか炎真はため息混じりに微笑し、アリスの頭を撫でた。

「ガッハッハッハァッ!!すまんすまん。心配かけてしまったなぁ!!」

 その行為をよくわからないアリスは「?」と困った顔でその行為を仕方なく受け入れた。

「無理といっても水中では火属性が機能しないという意味だ。だが奴が陸に上がりさえすれば勝機はある!アリス殿のスキル構成を教えてもらってもいいかの?」
「え、あ、はい。火、氷、光。あと歌です」
「ふむ。レベル1ということはスキルも―――?」
「いえ、初級の範囲魔法は覚えてます。あとは歌が一次予選のときにだいぶ上がってます」

 アリスのスキルレベルは最初の狩りのときで二、三レベルまであげることができていた。しかし使えるのは初期に使える初級単体魔法と初級の範囲魔法だけだ。範囲といっても指定した場所から半径二メートルのみの可愛らしいものだ。前半戦で使ったユキの氷魔法最上位魔法、『光り輝く氷嵐ダイアモンド・テンペスト』は直径二五メートルと最上位を語れる広さだ。
 問題の歌スキルに関してはスキルレベルのカンストが一〇〇に対して既に四〇まであがっている。よくこのゲームを知っている者としたら驚異のスピードだと彼自身も驚いていた。スキルレベルも序盤はサクサクあがっていくものなのだが、二〇を超えた当たりから上がらなくなっていくのだ。普通にプレイしていた場合この四〇という数値は三ヶ月ほどかかるペースで、それを時間があったから一次予選の段階で四〇まであげれるとは………。どのくらい経験値倍率をいじったのか気になるところだ。

「なるほどな―――とりあえずアリス殿。"あれ"をやろうではないか?」
「―――"あれ"?」
「なんといったか………えれきてる・ゆにばーす?」
「ゆにばーす?」

 掛け声?∀?………??
 もう彼の頭の中では野郎二人による「ユニバァァァス!!」が木霊し、それに伴って「黒歴史にしてたまるかぁぁぁ!!」というものも聞こえてきた。いかんいかん。と頭を振り、ある程度予想をする。たぶん彼が言いたいのは歌スキルのことだろう。なぜならこの二次予選の要は歌スキルだ。さらにさきほどの前半戦を見ているのなら自分とテルプのも見ていた。そしてその中で一番印象に残ったもので、さらにイントネーションが近いもの………。

「もしかして、"属性の斉唱エレメンタル・ユニゾン"ですか?」
「そう。それだ!」

 なんとなくでしかあってない気がする。
 確かに"属性の斉唱エレメンタル・ユニゾン"はアリス自身切り札的なスキルだ。これは体感した感想なのだが、フィールドと一体化した気分だった。フィールド全てが氷に、さらには自分という氷が全て一つになったような一体感。うまく言葉にすることができないが、"世界"として敵に退治したと言えばいいのか―――ますますわけがわからなくなったきがする。

「あれならばこの状況を打破できるはずだ」
「確かにそうですね………」

 演出的なことを考えたら最後のがいい気もしたがタイムアタックだしそんなこと言ってられないなと結論にいたり、アリスは楽譜が読めないのを考慮して口頭で音を教えた。案の定楽譜が読めないから助かったと言われ、アリスは微笑した。

「まずは僕が一節歌うので続けてください」
「………」
「―――?」

 返事がない。ただの生者のようだ。―――意味がわからない。

「―――なるほど。ボクっ娘だったか」
「………はい?」

 そういえばアリス自身の一人称を言ってなかったことを思い出しこの人めんどくさいなぁ………と面食らい一節歌った。




するといつぞやの無音の空間が広がった。

 ユニゾンしたのは数節のみでそのあとはアリス自身での独唱だった。中々今日は声の調子がいいのでオクターブ上まで綺麗に入る。裏声でもさらに上が出そうなほどに。ビブラートを交え、ちらりと横を見るとこちらを見入っている彼が見えた。
 テルプを真似た「ラ」の言葉のみの歌なのだが彼はどうやら聞き入ってくれているようだった。試しに一つウインクをしてみた。おもむろに顔を伏せたので少し頬がつり上がった。

 まるで真っ暗な空間にスポットライトを浴びたような感覚だ。
 一昔前のトラウマが脳裏を過ぎったが今の自分はこの美少女、アリスだ。
 なにかスッと胸の内が軽くなった気がした。

 最後に一番長いビブラートを枯れるまで鳴らした。音が小さくなるにつれ段々と周りの音も戻ってきた。
 大きく息を吸い込むのと同時にきつく閉じたまぶたを開けた。
 頭上を見る。水色の球体がフワフワと浮き、スキルが成功したことを――――水色?

 水色の球体がはじけて拡散した。波紋を発するようにアリスを中心にしてマップ全域を"凍らせ"、まるで雪国のように―――ちょっと待て、これはさっきユキで見たぞ。
 急いでアリスはメニューを開き、スキル欄の【属性の斉唱エレメンタル・ユニゾン】のスキル説明に目を通した。


『対象者とユニゾンすることによって、スキル使用者と対象者の属性値を合わせた数値を周囲に拡散する』


「………」

 つまりどういうことなのだろうか?
 確かに自分はエンチャントで氷属性を強化している。ユキの装備のように【氷耐性貫通】のエンチャントがついてないにしても氷属性強化系のエンチャントがついているため、"弱点をついて四倍"といったところだろう。
 おかしい。自分のパートナーとなっている彼は【絶炎】と呼ばれる『自分と同じ"絶"付き』なのだ。"弱点で八倍、無効以外には四倍"のはずだ。
 この状況をおかしいと思っているアリスとは別に、当の【絶炎】こと炎真は一面氷の世界にキャラを忘れて素の声で歓声をあげていた。


 ◇◆◇◆


「ね?」
「………」

 ね?と言われても………。ラファは微笑むクオリアにどう反応したらいいのか悩ましかった。
 【属性の斉唱エレメンタル・ユニゾン】の件になった瞬間、クオリアは「だめです………だめです………」と彼に聞こえるはずもないのに小さく言ってたときにはちょっと堪えるのに必死だった。「絶対氷属性になってしまいます………!」

「ね?」
「いや、わかったから。そんなドヤ顔全開で言わないで」

 ラファとしてはクオリアと親しくなったつもりはないのだけれど。やけに馴れ馴れしくなったと、昨日までの態度と比較するとため息がこぼれた。

「それで―――。なんで氷属性になるってわかったの?」
「だから前に言いましたよね?ユキ様以外の"絶"付きですと"出て一.五倍、弱点で三倍"と―――」

 そういえばそんなことを言ってたっけ―――、とラファは明後日の方向を向いて頬をかいた。

「それなら特化せずに弱点属性で揃えた方がいいんじゃない?」

 まだ彼のように通常時で四倍というダメージが出るのならその属性でこだわるのもわかるのだが、彼以外の"絶"付きというものは何かこだわりを感じずにはいられなかった。

「下手に通り名がついてしまったから引くに引けないってところでしょうね。いちおうあれでも得意属性には三倍ですから、普通に弱点ごとに武器を持ち替えたとしても二倍がいいところですからね」

 それでも常時二倍の弱点属性を持ち歩くのと、彼らのように特化の通常時一.五倍、弱点で三倍ではどちらがいいのかと言われたら―――。

「通り名持ちのサガってことにしておくわ」

 ラファはめんどくさい問答に(さじ)を投げ、終わりにしましょう。と人差し指でクオリアの唇を刺した。
 それを察してかクオリアはクスリと笑い、また彼の映像に舌舐りしていた。その様子を見てラファはまたため息を漏らすのであった。


 ◆◇◆◇


 一通り歓声をあげたあと、【絶炎】こと、炎真はまた柵を乗り越え、凍った海上のアイスリンクに足をつけた。
 依然としてアリスはこの事態に納得がいかないで腕を組んで彼の姿を観察していた。

 それとは裏腹にかの竜、"海王竜-オケアルス-"はアイスリンクを割いて海上に姿を見せた。さきほどのジャンピング入場時に見せた姿よりもふたまわりは―――大きい。
 前半戦で見た"炎王竜-モトグニル-"とためを張る大きさだ。目算して三階建てのビルくらいだろう。ついでに言えばこれは上半身のみでだ。

「はぁぁぁぁぁ―――ッ!!!!」

 所々で足を滑らせてしまいそうであるが炎真は海王竜めがけて走った。
 少し気になったのでアリスは両手で三角の受け皿を作り、二つの魔法を詠唱した。右手に炎、左手に氷。両手を目の前に佇むかの竜に指定する。炎魔法初級技【炎の弾(ほのおのたま)】と氷魔法初級技【氷の礫(こおりのつぶて)】で時間差で攻撃して反応を調べてみた。
 ―――うん。氷属性が弱点になっているようで反応が見れた。

 彼が斬りつけてダメージを食らっている様子を見ても一目瞭然だ。どうやら【炎耐性】ということがわかった。
 いちおう彼も"絶"付きなのでそこはいいだろう。むしろ【炎属性無効】がついていないだけましかと結論づくだが………。

「なんかデジャヴ―――」

 その彼の様子が数時間前の自分とダブって見える。不思議。
 誰だよ絶炎と組ませたやつ!出てこいよ!!
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