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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

22/54

2-14 <水の古城。だがそれは無理>


 壇上を背にし正面を向いて左側、シャルナの姿が見えた。長い赤髪に死神チックなデス感漂う大鎌を肩に抱き、ミスマッチにもほどがあるだろと突っ込まざるおえないそのアイドル衣装。その漂うアンバランス感は周囲の視線を釘付けにした。
 そんな視線を釘付けにするものの理由はもう一つあった。彼女のパートナーはというと………アスキラさんだった。そんなアンバランス感と最強のコラボレーション。もう全員の視線を集めていた。
 かという本人、アスキラさんふとアリスと目があい、彼はニヤリと口元を釣り上げ「どゆこと?」と小首を傾げずにはいられなかった。

「ん?あんな小物に掬われると思うてか。大船に乗ったと思え、ガッハッハッハッ!!」

 アスキラさんを小物って―――。
 この唯我独尊、絶なる炎さんは現状【最強】と歌われている彼を小物と呼んだ。
 アリスは抑えきれない気持ちを抱え一つ変な誤解を生んだ。

 きっとこの人は―――。
 すごい人に違いない。

 何やらよくわからないガッツポーズと勝機のある目でアリスはアスキラを見返した。そのアリスの表情にアスキラも小首を傾げ、肩をすくめて前に視線を戻した。

 突如としてガチャリと照明が落ちるとまた現れたのは毎度お馴染みのGM、マツ×三が壇上でスポットライトをあびていた。

『それでは後半戦に移りたいと思います。前半戦でお気づきになられたペアもいると思いますが歌スキルはサポートスキルで、耐熱、対属性に優れたスキルです』
「前フリはいいからさっさと進めろぉ!!」
『ヤジ飛ばさないでくださ~~い。そうすると終わる時間長引きますよぉ~~。―――ゴホン。それでは後半戦の相手は【海王竜-オケアルス-】です。今回のアップデートで追加された新たな属性『水属性』と新たなマップ、【タフルの城】でのクエストとなります。『水属性』につきましては後日スキル実装となる【歌スキル】と同時に【水属性の心得】も実装予定となりますのでお楽しみください』

 『水属性』と聞いて思い出したかのようにラファはクオリアを見た。クオリアの横顔は変わらずにただユキだけを見ていた。

『今回実装されましたマップのうち一つ、【タフルの城】では現状上位の狩場とされている【ナタル山脈】推定レベル八〇~八五となっていますが、【タフルの城】ではその上となる八五~九〇となっています。ですので出てくるモンスターは先ほどのよりも倍は手ごわいと思ってください』

 なるほど。映像付きで前半戦を見ていた後半戦なら"戦い方"、いうならば主な歌スキルの使い方や戦術なども練られるものだ。しかし未知なるマップ、さらには道中出てくる雑魚Mob(Movable objectの略称、動く物体=モンスター、暴徒・乱民などの意味を持つ英語のmobを掛け合わせ)ですらトッププレイヤー達でも未知なる敵、さらには高レベルのMobともなれば相当苦戦するもとなるだろう。

『それでは恨みっこなしの後半戦スタ―――トッ!!!!』

 ハウリングのノイズで耳を塞ぐ全プレイヤーを尻目にアリス達は各々、新マップ【タフルの城】へとワープするのであった。


 ◆◇◆◇


「すっご――――い!!」

 水辺に囲い込まれた柵に身を乗り出すようにしてアリスは広がる水、大海原に向かって声を張り上げた。
 新マップ【タフルの城】。城というと日本の城やヨーロッパの城などを思い浮かべるだと思うが、この新マップに関してはヨーロッパの城にあたった。小奇麗に整備されたわけではなく、それは廃城として彼らの視界で水に浸り、水と共にあった。いうなれば"水の古城"。彼、アリスにしてみればベネツィアを連想させた。色とりどりの彼の地に比べれば少々埃っぽく、白い石レンガに緑のコケやツタで彩られているので実物を知っている人には否定されるが、行ったことのない彼は水の都を連想したのだと思う。

「面白い造りだ。まるで城内戦じゃな」

 後ろを振り返ると【絶炎】と呼ぶプレイヤー、炎真が顎に手を当てその建物を仰いだ。
 彼の言うとおり、今までの『ドラゴンスレイヤーズ』にはなかったマップ、城内戦ならぬ市街地戦だった。FPSのようなガンシューティングゲームではお馴染みであるその戦であるが、ドラゴンを狩り尽くすという名目のファンタジーを謳うこのゲームにおいては少々芳しくないかと思われた。しかし箱を開けてみるとそのヨーロッパ風の廃城を水で覆うという風景がファンタジー色を煽った形で全プレイヤーの心を鷲掴みにした。
 しかし玉に瑕なのが大型モンスター、さきほどの炎王竜-モトグニル-を見て予想するならば水中に潜って移動したり行動するのだろう。そのため不自然なほど大きな水路や池があちらこちらに設置されていて美的感覚を少々狂わせた。

 突如としてさきほどまで流れていた心地よくその水の古城を表現していた新BGMが一変して聞きなれたベース感あふれる戦闘BGMに変わる。

「おっと………お出ましのようだな」

 腰に携えた片手剣を鞘から抜き、周囲に熱風が吹いた。
 レジェンド級【炎帝のツルギ】。西洋の両刃刀の形状ではあるが鍔が日本刀のように丸い鍔を、樋の装飾が刀身の半分よりも上向きに施され、デザインも燃える赤い炎を細かく施しているものでまるで赤い峰のように存在している。そのデザインから刀に見える両刃刀の剣。それが彼が持つ【炎帝のツルギ】だった。
 現状存在している炎属性の剣ならばこれが二番手、トップとなるとユキが装備するレジェンド級の大剣【氷覇王竜・逆震】の炎版、【炎覇王竜・鱗地】。作り方といえばユキもスペアとして使う現状無属性最強のユニーク、【覇王竜・森羅】に覇王竜と炎竜のレア素材でアップグレードできるようになっている。ついでに【氷覇王竜・逆震】も属性の部分が違うだけで一緒である。他二属性、土と風も同様だ。

 アリスよりも前に出た炎真はアリスを背に隠し中段で剣を構えた。何やらチラチラとこちらを見てくるので嫌に視線の置き場に困ったアリスであった。とりあえず笑顔を返しておく。

 高らかに水しぶきをあげ、たぶん全身なのであろうかの竜はまるでトビウオのように全身をさらけ出しジャンピング入場で彼らの視界に登場した。

 【海王竜-オケアルス-】

 簡単に姿を言えばトカゲに魚のヒレをこれでもかとつけたような姿であった。全身緑色、翡翠色の綺麗な宝石のようなウロコを煌びやかに全身くまなく飾り、まるで翼のように生えた背中の大きなヒレは綺麗な弧を描いて、それ一体捕獲して売りさばけばいい値で売れそうだと汚い考えがアリスの脳裏を過ぎったので振りほどいた。まさしく海という宝を象徴させる竜であった。もう名前を変えて宝石竜とかにしてもいいのかもしれない。
 まさにこのマップである城に眠る宝といえよう。
 アリスはかの竜がまたしぶきをあげて水中に潜っていく様子を彼の肩ごしで眺め、口から感想がこぼれた。

「キレイ―――」

 海も綺麗に澄んでいるようでコバルトブルー色の水が底まで見えている。さすがは幻想という名の仮想世界かと納得し、差し込む日光にかの竜の翡翠色が水中で反射して位置取りを教えた。まるで宝箱のようだ。

「ゆくぞ!!海王竜、オケアルス!!―――とぉっ!!」

 しびれを切らした彼、炎真は手すりをまたがって大海原へを自身を放り投げた。

「え、ちょ―――ッ!?」

 この手すりはよくある見えないフィールドの壁だったり進入禁止エリアのそれだと思っていたアリスだったので飛び込めたことに驚きを隠しきれなかった。
 水の中に飛び込んで早一分ほどで水面から彼が顔を出した。

「だめだ。無理だわ」
「諦めはやっ!?」

 感想等いただけましたら幸いです。
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