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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

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2-9 <マルチ。だがそれは殺気立つ>


「つまりは魔法剣士系のスキルってそこまでレアじゃないんだ」
「そうですね。ですが【片手剣】と属性スキルをスロットに入れていないと入手できないのであながち間違いではないです」
「どゆこと?」
「ラファさんも知ってる通り、このゲームにおいて武器の種類は多種多様です。大剣、双剣、大鎌、魔道具、片手槌、杖、弓と数えたらきりがないほどに」

 なるほど。とラファは相槌を打った。
 魔法剣士系のスキルは剣と魔法を使うことを前提としたスキルだ。右手に剣を左手には魔法を使うためにはどうしても装備する武器は剣である必要があり、【片手剣】とする必要があるわけだ。

「でもアリスは【大剣】で使ってるけどあれは?」
「あれはチートなのでいいんです………と言いたいところなんですが、"片手で剣を使える"という条件がクリアしてるんです」
「本人を見てると自然に思えるけど。話を聞いてるとドンドン化け物に聞こえる………」

 そもそもなぜこのような話題になったかというと、逃げた竜を探すため未確認のマップをしらみつぶしに探してる最中、話の種がなくなり続く無言に耐え切れなくなったラファが共通の話題である彼、ユキの話を振ったのがことのはじまりだった。
 自分よりも付き合いが長いであろう彼女から聞く彼の話は、昨夜に聞かされたシュウの話よりも実のある話だった。
 シュウはリアルでの彼の話を主にしてくれたので面白かったのだが、ゲーム内での一年間共に(ストーキング)した時間が長い彼女からの話もなかなかに面白いものであった。

「【絶氷】という通り名が浸透しだした時には既に彼は【大剣】を使っていました。っあ、そのときから掲示板などでも『"絶えず属性魔法剣を使う"なんて余裕だ』と他の属性魔法剣使い達がこぞって名乗りだしたときでもありますね」
「ん?どゆこと?」
「氷以外の魔法剣使いがいるんですよ。特に有名なのがユキ様で間違いはないでしょうけど」
「何?もしかして【絶炎】とか【絶風】とか名乗っちゃってるわけ?」

 ラファは悪戯な笑みでクオリアから否定されることを期待していたのだが、返ってきたのは『どうしてわかったんですか?』という驚きの表情だった。

「なにその馬鹿の一つ覚え………」
「二人くらい名乗りだしてしまうとそれで固定化されてしまうものなんですよ。といっても彼等の場合はユキ様のように通常時で四倍ダメは出せません。出て一.五倍、弱点で三倍といったところです」
「何がそこまでの差をつけるの?」
「そもそも絶対条件である"絶えず属性魔法剣を使う"のハードルは一つだけなんですよ」
「ハードル?」
「レジェンド級の武器に付くレアエンチャント【属性耐性貫通】があれば誰でも可能なんです」
「でもそれぞれ名乗ってるのは一人なんでしょ?」
「そういうのは大概早いもの勝ちなんですよ」

 あ、さいですか………。そういうのを羨んでいた自分が馬鹿らしくなってきたラファであった。

「それでも大概の人は【属性耐性貫通】を一つ付けるのが精一杯でその後のエンチャントは悲惨なんですよ?武器なのに【毒耐性】とかざらです」

 ラファ自身ぐうの音も出なかった。一昨日の夜、装備スキルを買った残りのお金で噂に聞くエンチャントをやってみたところ悲惨な結果で終わってしまった。
 実のところ彼女の着ている『大鳳の卵』装備一式は既に彼女自身の手によってエンチャント済みだったりする。効果の方は【Dex上昇】、【毒付与】など。どう見ても使いようの無い効果ばかりだった。(防具に【毒付与】が付いた場合はその部位に攻撃された際に一定の確率で相手に状態異常、毒を付与させる。使い方にはよっては強いが一つだとあまりに確率が低い。各部位に【毒付与】を付けることで確率は五〇パーセントまであがる)

「そこから防具の既存能力で属性攻撃を一.五倍まで引き伸ばせます――――が、そこからのエンチャントの効果によって変わるのが現状です」
「運ゲー………」

 なにその彼のためにあるようなゲームシステムは………。
 何か自分の運の悪さを思い知らされたようで気が滅入った。

「近いうちに属性システムの緩和とかで今よりは良くなる噂ですよ」
「近いうちって………一体全体いつになるんだろうね」

 何度目かのマップ移動で人が沢山いるマップに当たった。
 場所にして『G-17』。さっきまでと同様に洞窟という内装だが、上に大きく空いているドーム型で、さっきまでの息がつまる狭苦しさが一気に開放的になった。
 どうやらマルチパーティーエリアに出たのだろう。シングルエリアが多いサウラ火山には珍しいと隣でボソリと呟いたクオリアに目が行った。

「そういえばシングルとかマルチとかってどういう意味?」
「少し言えば理解できると思いますが、さっきまでいたのは一つのパーティーでしか進入できない、他のゲームにもよくあるインスタンスダンジョン(パーティー毎に一時的に生成されるダンジョンのこと)と思って頂いてください」
「んじゃマルチは多数のパーティーで進入できるエリアと思っていいの?」

 その通りです。とニコリと微笑まれ、笑みがこぼれそうになった。いかんいかん、この女に騙されてはいけない。ラファは表情を戻すと、クオリアはそれを見てクスリと笑った。

「にしても………」

 やたらと空気がピリピリしている。しかも皆が皆、こちらを見ているような………。

「フフ………これだから人気者は嫌なんですぅ………」

 口調が戻ったのに気づき、ラファはもう一度クオリアに視線を向けると、口元は笑っているが目だけは笑っていないことに気づく。
 な、ななな何この一触即発の空気は………。まるで今すぐにでも火花が散ってここが戦場にでもなってしまいそうな………。
 そしてラファは恐る恐る気がかりなことを聞いてみた。

「あ、あのクオリア―――さん?このマルチエリアというのは―――PK………はぁ?」
「何を言ってるんですかぁ~~?もちろん"あるに決まってる"じゃないですかぁ~~」

 なるほど。このピリピリとした空気の意味が理解できたラファは無事でこの場を逃げれることだけを祈った。
 このタイムアタックには回復剤の制限が設けられている。支給品として配られたHP、MP回復剤各十個のみである。他のPTの回復剤の数を減らせたら上等、撃破できたら儲けという感覚なんだろう。
 クオリアは一歩一歩ゆっくりと前を歩く、数秒してからそれに気づいたラファはその後を追うようにし、彼女の左肩の布を掴んだ。
 物凄く周囲から注目を浴びている。本来ならばここらでウィンク一つ投げていたいところなんだが、まさに爆発寸前。いつここが戦場になるかわからない状況だった。
 祈るように目をつぶると、急にクオリアが歩みを止めたことに気づきラファも歩みを止めて目を開けた。

「あれ―――?アリスぅ―――!?」

 ◆◇◆◇

 あれから幾らかの時間が経過した。
 いい加減この殺気だった空気から逃げ出したかった。

「はぁ………」

 ユキは何度目かわからないため息を吐いて元来たマップの入り口に目を向ける。
 ユキとしてはこのマルチパーティーエリア内にいるほかの参加者からの殺気は嫌に感じていた。一体俺が何をしたというのだろうか。
 確かに俺は【絶氷】と呼ばれているがそう呼ぶのは一部であって、そこまで有名であるとは(本人は)思っていない。だからここらにいる連中の注目を浴びるのなら右端にいる『SEED』のギルドエンブレムを肩につけた『正義自由運命』さんを見るべきだろう。と思わずにはいられなかった。
 そんな逃げ出したい雰囲気だが、さきほどのシングルエリアに戻れない理由がユキにはあった。
 それは先ほどのテルプと呼ばれる少女への行動に深く反省していたからであった。
 小心者のユキにとってあの態度と突然襲い掛かったような行動は女性に対して気を悪くさせてしまったのではないだろうか?と変な勘違いを起こしていた。コミュニティー能力〇。さらには女性に対しての接し方もよくわかっていない彼にとって、さっきまでのは場の雰囲気とかでなんとかなっていたが、いざ離れて見ると俺って奴は何をやっているんだ………と深く後悔し、全身震えていた。
 彼女がさきほどあげた悲鳴もマップ移動してしまったことによって聞こえたわけもなく、何かあったことすら知らずユキはこの殺気立つ他のプレイヤーのおかげでさらに気分が滅入っていた。

「あれ―――?アリスぅ―――!?」

 ユキは顔を上げると、見たことある二人と目が合い軽く微笑んでみた。
 殺気立つほかのプレイヤーに臆していたようだったラファだったが、ユキの姿を見るなりすぐさまこちらに走ってきた。

「アリスもいたんだ」
「二人も順調?」
「えぇ―――。たぶんそちらと状況は一緒だと思いますよぉ?」

 なるほど。二人も探してる最中か。

「ユキ様。どちらから来られましたか?」
「そこのマップから。二人は?」
「えっと―――北?から」

 マップの上からだから北。ということなのだろう。ユキはそこである西を指差した手を下ろした。

「少し情報交換しましょうかぁ?」
「っ!?―――助かるよクオリア」

 そこから自分たちが回った地点を教え合った。まだそんな時間も経っていなかったもあり教えあった数はクオリア達は二つ、ユキは一つ教えた。
 教えあったあと、キョロキョロと辺りを忙しなく見回すラファにユキはどうしたのかと投げてみた。

「そういえばヘルプの姿が見えないけど?」
「――――――」
「どうかしたんですかぁ?ユキ様」

 さすがに言うわけもいかない。言って何か言われた日には………。

「い、いや。ちょっとはぐれちゃってさ―――は、はは」

 ラファとクオリアは何か隠していると直感で感じ取った。
 ラファ自身は女の感としかいえなかったが、ストーカーであるクオリアにとっては彼が動揺するということは大抵慣れないことをしてしまったことだとは理解できた。となると―――。

「なにか―――破廉恥なことでもしたんですかぁ?」
「は、はははは破廉恥って―――」
「っむ。アリス"また"なんかしたわけぇ?」
「そっ、そんなぁ!!まるで俺がいつも破廉恥なことしてるみたいな言い方やめろぉ!!」

 ユキ自身破廉恥と言われると自分では"恥を恥と思わないこと"だったと否定はできなかった。
 クオリアはジト目を止め、呆れるようにして表情を変えた。

「―――本当にはぐれたんでしたらPT欄の現在地でも見ればいいんじゃないですかぁ?」
「………」

 実は隣にいます。なんて言えず、催促するように二人がシステムのPT欄を表示するので観念するようにユキはシステムを開き、左のメニューバーからPTのタブをクリックした。

「あれ…………?」
「どうかした?」
「いや………。」

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