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チートな俺と歌姫な俺と 作者:真幸

◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆

16/54

2-8 <異変。だがそれは演出>

 

「そうですか―――」

 彼女に全て伝えたつもりだった。しかしそれは驚きよりもやはり知っている。または自分の情報は正しかった。という確信を持っているそんな表情をラファは感じた。

「これで満足?」
「えぇ。興味は惹かれます」
「人の不幸話聞いて喜ぶなんて趣味悪―――」

 皮肉を込めて言い放つ。これで何か言い返しくるのを待ってみるも反応がなかった。
 いや、むしろ聞いていない―――?

「わかった。終わり次第教えて」

 念話だろうか?なにやら仕事口調みたいでさきほどから感じる彼女の印象をコロコロ変わるラファだ。

「何かおっしゃってましたか?」
「………アリスは―――彼はあんたのこと知ってるの?」
「知らないと思いますが………たぶん本質くらいは気づいているんじゃないでしょうか?」
「ふーん………鈍感なんだが鋭いのやら」

 運と感は別物ってことなのだろうと小首を傾げるラファ。

「んで、これからさっきの竜探すんでしょ?場所わかるの?」
「いいえ」

 すごく無邪気な顔でNOと言われるとこれはこれで何も言えなくなったラファ。苦い顔で自分の頬をかいてしまう。

「HP半分までダメージを与えると自分達の巣に帰って籠城してしまうんでよね」
「んじゃ巣に行けばいいってこと?」
「巣に行ってみるのはいいんですけど。巣はモンスター毎に違っていて被ったりはしません。ですので該当しない地点を当たればいいんですけど………」
「ですけど?」
「その地点が二十一も存在するということです」
「うへぇ………」

 二十一という数字を聞いてラファは開いた口が塞がらなかった。
 一つのフィールドは約四〇〇平方キロメートルで二〇×二〇、計四〇〇マップに区切られている。視界右上に表示されているマップには小さく『C-15』と表記されている。この記号はマップを縦にA~T、横に1~20までで区切り、そこに合う数字と英字でそのマップを記している。
 マップの中には街、休憩場、マルチパーティーエリア、シングルパーティーエリアが存在し今彼女達がいるマップはシングルパーティーエリア。大抵こういった大型モンスターが巣になるのはシングルパーティーエリアになる。それが約三十六存在し、被りなしなら二十一となるわけだ。
 あと二十一もの数を探し歩くのかと思うと………。

「まだまだ時間はあります。他の話もお聞かせくださいね。ラファさん」

 それはいつもの猫を被った表情でラファを見据える。
 コイツ―――絶対あたし以上の曲者だ。自分でもある程度自負しているつもりだったがクオリアはそれ以上だと散らばった彼女の印象を再構築させた。

「ならあたしも色々聞きいちゃおうかな?"お嬢様"」

 その単語にクオリアはピクリと反応してみせた。ラファは不敵に笑い視線をもどした。

 クオリアは一瞬自分の正体に気づかれたのかと思ったがブラフか何かだと信じ、同じように微笑んで視線を前に戻したのであった。

 ◆◇◆◇

 さきほどの溶岩地帯とは別の火山内部に侵入した。辺りは溶岩は存在しないものの、黒い岩場によって生成された洞窟となっておりさらに湯気を立てて熱さが充満しサウナになっていた。

「熱い………疲れた」

 テルプと呼ばれる少女はしゃがむ様に体を小さくしてその場にうずくまった。
 ユキは額に玉のように存在する汗を拭い、テルプに視線を向けた。上からの目線だとギリギリスカートの中が見えなかった。

「はぁ?まだ一つしか回ってないだろ。あと二〇個もあるんだせめて半分くらい見てから言ってくれ」

 目線を同じにするためにユキもしゃがみこむとテルプは足を納めて完全に座り込んでしまった。一瞬舌打ちしそうになるのを抑えて視線を合わせた。

「ちょっとあんた。先に行って倒してきてよ。私は近場の休憩所で休んでるから」
「はぁ?こちとら別に本気になって倒しにきてるんじゃねんだぞ?頼まれたからだ」

 さっきからこのテルプという少女はこんな感じだ。わがままで強情で自分が一番。お姫様気質とでも言うのであろうか。

「んじゃ私からの命令。倒してきて」
「………」

 なんだろ。段々腹たってきた。
 ユキとしては自分同様に頑張っている子達を一緒に手伝っている。そういう気持ちで挑んだのだが………これは。

 ユキはため息を漏らしながら立ち上がると、背に収めた大剣を抜き構えもせずにテルプに近づいた。

「なっ、何よ。脅すつもり?どうせ攻撃してこないんだからそんなことしても無駄よ!!」

 それでも無表情と無言で近づく。その様子にビクついたのか。テルプはすぐさま起き上がって弓を装備する。

「近づかないでよ!!打つわよ!!ここでPKしたって恥じを晒すのはアンタなのよ!!」

 ユキは剣先をテルプに向け、突き刺すように上段で構える。テルプは後ろへと後ずさる。
 なにコイツ………。本気でワタシをPKするつもり………?
 弓なんて対人戦に不向きな武器を装備しているのもあって襲われた日には勝ち目なんてないことも知っている。さらにはユキのようなトッププレイヤーに挑まれた日には武器なんて捨てて無様に逃げてしまうのが普通だ。そんな無様な光景なんて自分の記録には一切存在しない。自分は特別であっていつも華麗でいないといけない。そう心に根をはって他の意識を阻害する。

 ユキは左手で彼女の左肩を掴めるなり、構えた剣先を横から縦に変えた。
 テルプはPKされたと思い、すぐさま目を閉じるのだがその瞬間システムがユキのモーションを感知しスキルが発動する。氷魔法剣初級技【氷剣技・突撃する氷斬(アイシクル・アサルトエッジ)】。淡い水色のライトエフェクトを発しながら物凄い速度で彼女の横を貫いた。
 目を閉じていたテルプには何が起きたのかわからず。とにかく自分は無傷であることを理解すると、起きたことを確認した。
 後ろを振り返ると辺りの岩と同化していたストーンドラゴンを倒してくれたようだった。張り詰めた緊張が一気に無くなり、ユキがその大剣をしまいながら前を振り向いたと同時にテルプはペタンと腰を下ろした。腰が抜けてしまったようだった。
 さっきまで異様な殺気が今になって蘇り、弓を握っていた両手がすごい勢いで震えだした。

「行くぞ」

 行くぞと言われても腰が抜け、さらには全身振る上がってしまっている。そんな状況彼に見せられるはずもなく、何か言い訳を考えないと。
 そうこうしているとユキはまた呆れたように振り返りさっきのような冷たい目でテルプを上から見下ろした。

「さっ、先に言ってなさいよ!!ちょっと一休みくらいしたっていいでしょ!!」

 ユキはめんどくさそうに頬をかき、すぐさま歩いて隣のマップへと向かってしまった。
 ふぅ。なんとか誤魔化せたと安堵し、テルプは深呼吸しながら近場の壁に手をかけて起き上がろうとした。重い腰、いや"軽い"体を起き上がらせながら内股でなんとか体を支えた。
 右上にあるマップにはすでにユキの位置を知らせる点が存在しない。すでに隣のマップへ行ってしまったようだ。
 急いで彼の後を追おうと走りだした。
 その瞬間だった。

「なっ!?」

 足元からいきなり溶岩が噴出されたのだ。こういった地形はリアルでは崩れたりそんな事態になることがあるかもしれないがこれはゲームである。フィールドを壊すようなことは絶対にありえないことなのだ。しかしそれが演出的な効果であり、何かシステム的な物であるなら別だ。
 テルプは辺りを見渡すとどうやらそれは数秒おきに他の地点でも起きているようだった。
 壁を背にし、辺りを見渡すとドンドンとこちらに近づいてきている。
 ゴクリと喉を鳴らす。
 さっきのさっきではびびらない自信があった。あんな初級スキルでも瞬殺されるような状況を味わったあとではこんな演出怖くは無いとテルプは言い聞かせながら弓を構えた。
 噴出が目の前までくると、一定のリズムだったそれは綺麗に止まり戸惑いすら覚える。
 数分経ってもかわない状況に小さく安堵しながら少女は急いで足を進めるのだが―――。

「え―――っきゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

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